愛を請うひと

くろねこや

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その後の話

犬の回想 3

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撮影が終わり、ジジイとカメラ機材を持った男が部屋を出て行く。


部屋に残った男…響さんに、シャワーで腹の奥から精液を掻き出す方法を覚えさせられた後。

ぐったりしたオレはベッドに倒れ込もうとして、『替えてから寝ろ』と新しいシーツを渡された。さらりと肌触りのいいものだ。

服も貸して貰えないだろうか。裸なのが落ち着かない。そういえば、着てきた服はどこだ?

首に嵌められた革ベルトも外してほしい。まるで犬の首輪だ。鍵をかけられたらしく、頑丈そうな素材で引きちぎることも出来そうにない。

自分だけ服を着て、壁にもたれている男をつい恨めしく見てしまう。


痛む身体を庇いながら、ドロドロに汚れたシーツをベッドから引き剥がす。

「ジジイの好みは、ヒョロくて女みたいなツラの、セックスのことなど何も知らないガキだ」

替えのシーツをふわりと広げたところで、響さんが話し始めた。

手を止めて振り返ると、目を逸らすように顔を背けられた。

「…だから安心しろ。ヤツが早く飽きるように、くれぐれも興味を持たれるようなことはするな」

ぐしゃぐしゃのシーツを拾い上げると、部屋から出て行ってしまった。




身体が怠いのに、眠れない。

尻や手足の関節が痛むせい…だけじゃない。


「ジジイの好みって…」

『昔の響さん』のことか?

ジジイに強姦された、子どもの頃の響さんを想う。

モヤモヤ? ズキズキ? して苦しい。


心を伴わない相手からの一方的な行為を『強姦』と呼ぶのなら、中学生だったオレがあの女に押し倒された夜は、まさにそうだったのだろう。

あの時オレが小学生だったとして、男に、あのジジイに尻を犯されたと想像してみる。

その恐怖と嫌悪感にゾクリとした。



それなら、今夜のは何だ…?

響さんは『挿れる』と宣言し、オレは了承した。

一方的に快感を得ようとするのではなく、オレの反応を確認しながら行為を進めてくれた。

オレが痛がると、喚くジジイの指示を無視して慣らしてくれた。


「気持ちよかった」

無意識にポツリと呟けば、あれこそが『セックス』だったのだと思った。


響さんはどうだったのだろう。

ジジイに命じられたから仕方なくオレを抱いた。おそらく、それだけのこと。


「あの人も、少しは『気持ちよかった』と思ってくれてるといいな」





いつの間にか眠っていたらしい。

ジジイが言っていた『山神』という言葉の意味を思い出したのは、目が覚めてすぐのことだった。

この辺りの人間なら、大抵一度は世話になる地元の大病院。そこを経営する一族の名前だった。


「初恋って言ってたな…」

山神のお坊ちゃん。

響さんが好きな人は、その家の息子か。








「夜までにしっかり準備・・しておけ」

厳しい表情の響さんから、朝食のサンドイッチと一緒に軟膏のチューブを渡されていた。

何故か服も与えられた。この部屋にいる時はずっと裸に首輪だけだったから、その嬉しさに油断していたのだ。

もっと念入りにほぐしておくべきだった。


5回目の夜。

いきなり部屋に2人の屈強な男が入って来た。カメラを構えた男の後ろに響さんがいてホッとしたのも束の間。

今回は『陵辱』がテーマらしい。

服を与えられたのは、男達に引き裂かれ、剥ぎ取られるためだった。


「へぇ、筋肉すげぇな」

男の1人がオレの胸を揉みしだいてきた。

「っ…、」

わざとだろう。男の親指が乳首を掠め、思わず息を呑んだ。

たかめられないまま、仰向けの身体を無表情の響さんにロープで縛められる。

口が閉じられなくなる器具を後頭部に回したベルトで固定されてしまえば、口から喉奥、尻穴から腹奥へと、2人の男が上下から体内へ侵入してくるのを、受け入れるしかなかった。

抵抗など許されない。


ベッドの端、後ろに仰け反らされた喉。

「ごぉ……!!」

床に膝をついた男がいきなり口に突っ込んできた。

洗っていないのか臭くて、苦しい。

男根に口を塞がれてしまえば鼻から呼吸する以外なく、むわりとした尿臭と雄の臭いを嫌でも吸うしかない。舌を擦られるから、気持ち悪い味まで感じてしまう。

美味うまいだろ? いっぱい…味わえ…よっと」

嫌がっていることが分かるのだろう。愉しむようにわざと、ちんぽの先を逃げる舌の表面へ擦り付けるように、ヌチヌチ出し入れされる。


「あー、処女マンコみてぇにキツイ穴だな。血でヌメれば少しはマシになるか?」

事前の慣らしが足りなかった。乾いたままの太くて長いちんぽをいきなり突っ込まれたせいで、尻は当然のように裂けてしまった。


男達は自身の快感を追うことしか考えていないのだろう。喉と腹奥を襲う、まるで串刺しにされたような酷い痛みに悲鳴を上げるどころか、自由に呼吸することすら許されない。


「全然勃たねぇな、コイツ」

オレを下から突き上げながら男が笑った。

激痛と息苦しさに強張った身体は、響さんの手で乳首とちんぽを弄られてもどうしようもない。

口と尻穴に打ち込まれる男達のちんぽは一度引き抜かれ、『何かの薬』が塗られたらしい。再び喉奥を責め始めた肉杭から舌の上に溶け出し、変な苦味が口の中に広がると同時に、『その効果』が表れ始めたのだ。

グボグボ抽挿を繰り返される度に嘔吐えずきや痛みが鈍くなり、だんだん喉と腹が熱く、おかしくなっていった。


早くイってくれ…!

『そうだ。イイぞ。そのまま舌と上顎、頬、喉で包み込むんだ。さっきオレがしてやったのを思い出せ』

その時、声が聴こえた気がした。

痺れる舌と上顎で男のモノを包み込むようにし、レロレロ動かしたり、喉を締めたり緩めたり。同時に尻もギュッギュッと力を込めて、体内のちんぽをしごき、搾るように意識する。

「お? 急に上手くなったな?」

男が抜けそうなほど腰を大きく引くと、飲み込めない唾液が口からダラダラと溢れていく。

「じゃあご褒美だ…なっ」

そのストロークで深く突き込まれれば、息が出来なくなる。

「ごぉ…ぉ…、ぉぉ…、」

オレの乳首とちんぽにも薬が塗られたせいで、全身が熱くて仕方なかった。


激しい抽挿が繰り返され、男達のモノがさらに膨らんでビクビク震え始めた。

グッと乱暴に頭と腰を引き寄せられた瞬間、

ゴブッ、ゴボッ、

噴くように勢いよく吐き出されたものが、ドロドロと食道と腸へ同時に流れ込んでくる。


終わった…?

ようやく引き抜いてくれたと安堵するも束の間。すぐに上下を交代して再び肉棒が押し込まれた。

血の匂い、味に吐き気がする。

排泄口を犯していたモノが口の中に入ってくるのも気持ち悪い。しかも、先ほどの男より太いせいで気道が塞がれ、さらに息が出来なくなった。


2度目の射精までが長かった。

酸素が足りないからだろう。途中で何度か意識が飛び、『ちゃんと絞めろ』と叩き起こされる。

オレは『男をしごくための肉筒』。

ただの『オナホ』だった。

この苦しみは、男達が満足するまで繰り返される。


イヤだ

でていけ

くるしい

たすけて

ひびきさん


ようやく解放された時、逆流したザーメンに鼻の穴が塞がれたせいで意識を失っていたらしい。

鋭い頬の痛みで意識を取り戻した。

「が、っ、」

開口器具を引き抜かれた唇、開かされ続けた喉が思うように閉じない。上手く咳き込めないまま、口から息を吸おうにも、ドロリとした精液が喉に膜を張っているようで吸えない。

パニックに暴れたくとも、縛られた体は動くことすら出来ない。

死?


「こっちを見ろ」

身体を起こされて、響さんと目が合う。

「っ!!…んっ、んっ、」

そのまま唇を合わせて息を吹き込んでくれた。お陰で、やっと空気が肺に入ってきた。

「げほっ、げほっ、」


あなたがいい

あなたが


「ひび…き…さ…、」

掠れた声で無意識に響さんを求めていた。






響さんはシャワーから出ると、剥がしたシーツを頭から被ったオレに話しかけてきた。

「汚ねぇな。寝るならシャワーを浴びて、シーツを替えてからにしろ。腹壊すぞ」

「…はい」

汗と飲み込みきれずに溢した男達のザーメンで、濡れたシーツは臭いしベタついて確かに汚い。身体も酷い状態だ。


「あの映像は、お前が未成年だと知っていて観るような、後ろ暗い変態の金持ちしか買えない裏ビデオだ。世間一般には出回らないから安心しろ」

男達に犯されて泣き、響さんのちんぽをねだる様を、散々カメラに撮られた。


だがシーツを被っていたのは、不安のせいじゃない。


気付かれたくなかったからだ。


シャワーを浴びようと、

服を脱ぎ捨てたこの人が、

透明なガラス越しに晒した、

その綺麗な裸身。


それをじっと見つめて、

目が離せなくなっていたことを。



「新しいシーツとバスタオルはここに置いておくからな」

返答しないオレに呆れたのか、『はぁ』と溜め息を吐いた響さんは部屋を出て行ってしまった。




シャワー室に入ると、石けんの匂い。

それと、わずかに香る、あの人の匂い。


「………………すきだ」
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