愛を請うひと

くろねこや

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その後の話

裏側 4

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風呂上がり。

ドアスコープを覗くと廊下には誰もいなかった。


ベッドに寝かせた凛をかかえ起こす。
ボトルから水を口に含み、口移しで飲ませる。

喉が渇いていたのだろう。

んくっ、ごくっ、と送り込んだ水を必死に飲み込む姿が愛おしい。


すっかりとろけた凛が可愛くて、身体中…胸も腹もちんぽも、首筋も背中も腰も尻も、足の指先まで全てを舐めて、吸って、齧って、また舐めた。

オレの舌先が水で冷えていたのだろう。最初に苛めた乳首はすぐ真っ赤に腫れあがった。


「愛してる、凛」

仰向けにした凛の右足首を持ち上げアンクレットに口付ける。すると凛もオレの足首を欲しがる。

枕の横、顔の側に右足を置くと、

「…んっ、オレもあいしてる、しおん」

チュッとオレの足首にもキスを返してくれた。


下にクッションを敷き、持ち上げた尻。舌でグチュグチュに舐め溶かした内部に粘度が高いローションを足しながら指でもう一度開く。『早く早く』とキュウキュウ食い締めてくるのを宥めながらヌチュヌチュ濡らす。


枕元に用意しておいて良かった。
理性を必死に呼び戻してゴムを着ける。

「なんで? なか…だしてほしいのに…」

悲しそうな凛の声に、ゴムを危うく引きちぎりそうになった。

いつ男の襲撃があるか分からない。

男を取り押さえた後、警察を呼ぶ。
すぐに掻き出してやれないかもしれないから、凛の唇にキスをしてグッと堪えた。


すぐ動けるように、
バスローブを椅子に掛けてある。
万が一、男に奪われることがあっては、と迷ったがポケットにカードキーを入れた。


あとは、凛が深い眠りに落ちるように、2人の時間を楽しもう。


「んっ、」

熟れた穴に先端を当てると、クプッ、と呑み込まれていく。ゴムで亀頭のサイズが抑えられているから、やはりナマより挿入がスムーズだ。

ヌチュ、ヌチュ、ヌチュ、

と腰を送り込む度に粘着質な音がし、

「あっ、あっ、あっ、」

と艶めく凛の声が部屋に響く。

アパートの薄い壁に、いつもは声を抑えてしまう彼だが、ホテルという安心感からかアルコールのせいか、良い声で啼いてくれるから歯止めが効かない。

イイトコロを突いてやると凛の脚がピンと伸びる。達したナカにキュウキュウ締め付けられたオレも、ほぼ同時に達した。

抜かずに続けたいが、たっぷり射精したからゴムが外れそうだ。
ちんぽを引き抜くと、新しいゴムに取り替える。


3回取り替えても男は来ない。


うつ伏せにした凛を寝バックで責める。

「まだイけるだろ? ほら、気持ちいいな? イけ、イけ、凛、イけ、」

「あっ、うそっ、またっ、やっ、も、やめっ、」

中イキが止まらなくなった凛の甘い声が堪らなく好きだ。

「あっ、あぁっ、」

ナカの痙攣が止まらなくなり、快感が過ぎるのだろう。ビクビクと暴れて逃げようとする尻をオレの身体で抑え込む。

ちんぽとタマが潰される痛みもさらに快感になったのか、『んーっ、んーっ、』と苦しそうに甘く唸る声も堪らない。

射精せずに何度も小さくイき続ける、白い背中を舐め上げ、首筋にがぶりと噛みつく。

「ああぁぁあ!!」

凛はトんだらしい。



その時だった。

ドンドンドンドン

激しくドアを叩く音がした。



良いタイミングだがムカつく。
凛の『声』をドア越しに聴いて、この部屋を特定したのだろう。

凛からちんぽを引き抜こうと尻たぶを開くと、

「ぬかないで…」と小さな声がした。

可愛い。凛、可愛い。


クソ。
抜きたくない。


引き止めようと蠢く媚肉をじっと味わい、凛の意識を奪うべく最奥を激しく一突きする。

「~~~~!!!」



眠りに落ち、脱力した凛からゆっくり引き抜くと、汗と噴き出した潮に濡れた彼の肌を、ベッドに敷いておいたバスタオルで優しく拭う。

さっともう一つある未使用のベッドを整え、うつ伏せの身体を抱き上げてそちらへ移す。

彼が好きな横向きの姿勢に寝かせると、布団を掛けて柔らかい髪にキスをした。



佐久間に合図のメッセージを送り、

バスローブを着て、ドアを開けば…

ナイフを握りしめた男が立っていた。



葛谷だ。



さんざん待たせてやったから、苛立っているのだろう。オレの腹を目がけてまっすぐ飛び込んで来る。






オレの身体は無意識にナイフを持った手を叩き払い、男を投げ飛ばしていた。

ナイフと男の身体が床に落ちる、重い音が廊下に響く。




隣の部屋のドアが開き、

大きなテレビの音が廊下に漏れ出してきた。



深呼吸して力を抜き、葛谷の身体を離す。



「うるさい!」

ドアから出てきた『隣の部屋の男』が叫ぶ。


その声に腹を立てたか、床に倒れていた男がナイフを拾い、ターゲットを変えた。


ザッと音がした後、葛谷は再び床に転がることになった。


血の匂いがする。


隣の部屋の男。

佐久間の友人。

刑事だ。

その白いシャツ。

脇腹が真っ赤に染まっていた。






本当は佐久間が『軽く』斬り付けられる筈だった。
その現場を部屋で一緒に飲んでいた友人の刑事に目撃させる。

その狙いは
『葛谷を刑務所へ再び収監すること』


佐久間へ依頼したのはオレだけではなかった。

かつて、ヤツに薬を使われて犯され、人生をめちゃくちゃにされた女性、男性、その親や恋人から佐久間の元に数件の依頼が来ていたらしい。

出所が早すぎる。ヤツが表に出てくると思うだけで怖くて眠れない。娘を、恋人を傷付けた男を許せない。


ところが、佐久間の計算が狂った。

刑事の友人、坂本という男が佐久間の身代わりになったらしい。

「オレの目の前で親友に怪我させてたまるか」

その男は、バスタオルを腹にギュッと巻いて縛り止血する佐久間に言った。


「こんなに深く受けるなんて…。…お前は…本当に…馬鹿野郎」

泣いているみたいに震える声。

「『傷が深いほどいい』んだろ? 堂々と仕事を休めていい。しばらく休んでねぇんだよ。まぁ、書類はいろいろと面倒だが」

坂本は佐久間の頭にポンと手を乗せた。

「言い訳の文章。ちゃんと考えてくれんだろ?」




葛谷は2度も投げられて気を失ったらしく、ぐったりと伸びている。

坂本の求めに応じてバスローブのヒモを解き渡すと、手際良くその両手と両足が後ろで一纏めに拘束されていく。刑事とはいえ非番だから手錠は持っていなかったらしい。

「警察と救急車は呼んである。あまり動くな。思ったより出血が酷い」

止血を続けながら坂本に声を掛ける佐久間。
オレに対する丁寧さはなくなっていたが、おそらく普段はこんな話し方なのだろう。

「大丈夫だって。証言の信頼度が下がるから、って誰かさんが飲ませてくれなかったからなー」

対する男はのんびりと言葉を返す。

「怪我が治ったら2人でまた飲もう」

その声はすでに震えを止めていた。



騒ぎに気付いた他の宿泊客が廊下に出てきた。

「不審者が現れましたが確保しました。警察を呼んであります。とりあえず部屋にお戻りください」

佐久間の冷静な説明に、全員部屋へ戻っていく。

「男の身柄はこちらで預かります。話は通してありますので、聴取は簡単に済む筈ですが、着替えなどは済ませておいたほうがいいでしょう」

とオレの“状態”を見て苦笑いした。
男を拘束するために使ったからバスローブのヒモがない上、下着を身につけていないから“不完全燃焼のモノが見えた”のだろう。

「分かった。すぐに準備する。凛は寝かせておいてもいいか?」

今日はデートだった。
オレを見て、凛の“状況”を察したのだろう。

「ええ。今夜は詩音さんのみの証言で足りると思います。目を覚まされましたら凛さんに状況を説明させていただき、お2人から簡単にお話を伺い、詳細は後日改めてお願いすることになるかと思います」

ストーカー被害を訴えるのに、被害者の凛も必要なのだろう。できれば書類で済むといい。ヤツに会わせたくない。



部屋に戻ると、凛は寝かせた姿勢のまま熟睡しているようだった。

「よかった」

思わず声が出ていた。


『会社』で悪用して汚してしまった、
ミサト先生に教わった技が、
凛を『守る力』になった。

じわじわと目が熱くなる。

「……先生、ありがとう。ああ、よかった…」






冷たい水で顔を洗い、気持ちと身体を落ち着かせると、チェックインした時の服を着て、警察の到着を待つ。


葛谷は刑務所に入る。

これで数年は出て来られないだろう。
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