愛を請うひと

くろねこや

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その後の話

温泉 3

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事後、オレ達は仰向けに荒い息を整えていた。


ぐしゃぐしゃに湿ったシーツが気持ち悪い。


喉を潤したくて、やっと身体を起こすと、近くに用意されたポットからグラスに冷水を注ぐ。
ごくごく飲むと、食道を通る水が気持ちいい。

詩音にも口移しで飲ませてやる。

ふと、冷たい水が通った喉から胸、腹に向けて指を滑らせてみる。

まだ夕飯を消化しきらないせいか、ナカにたくさん射精されたせいか、少し膨らんでいるオレの腹。
対して、詩音は割れるほど腹筋があるせいか引き締まっている。

彼を見ていると、オレも鍛えようと思う。

最近、詩音から護身術を少しずつ習い始めているところだ。例えば手首を掴まれた時、肩を掴まれた時などの対処法など、合気道を応用したような動きを教わった。…足首を掴まれた場合はまだ教わっていなかった。

彼から子どもの頃の話を聴いて、中学生のころ殻に閉じこもらずに、ミサト先生からちゃんと教わっておけばよかったと後悔していたところ、詩音に『お前は男に狙われやすいという自覚が足りない』と言われてしまったからだ。

(男に狙われやすいってなんだよ……)

だが、実際5人の男達に囲まれてしまうと身体が全く動いてくれなかった。

ニヤついた男達の顔、アルコールの匂い。
内腿を這う、湿った手のひら…。

無意識に右足首と喉を押さえていた。

(……考えるのをやめよう。吐きそうだ)



オレがあまりに彼の身体を見つめていたからだろう。

「なぁ、オレはお前を満足させられているか?」

と、詩音は不安気にオレの尻を撫でる。

「んっ…」

尻たぶを動かされると、濡れたままの穴がクチュクチュ音を立てて恥ずかしい。


「彩人やおっさんと比べると、オレのは小さいだろ。体位を工夫しないと結腸抜けないし」

(急に何言ってるんだコイツは…)

「お前なぁ。結腸なんか…いいんだよ。お前のを奥にゴツゴツ当てられるだけでヤバいのに」

奥の奥まで男根におかされると、腰が抜けて力が入らない感じがして気持ち悪いのだ。それに、デスクワークしかしていない30過ぎたおっさんの腰には絶対に良くないと思う。

「そもそもな…オレのだって人並みで十分なサイズなんだ。…その二回り以上デカいんだから、オレから見るとお前だって十分『巨根』なんだよ」

怠い身体で、ゆっくりと彼の上にまたがる。

「ん……」

その拍子にナカから詩音の精液が流れ出しそうで、必死に尻を締める。

2人の陰茎を並べて見せてやると、オレが凹みそうだ。

ピンクっぽいオレのに比べて、詩音のは使い込まれたような濃い色をしている。

「ほら……っ」

『ほらな?』と言おうとしたオレの腰は簡単に持ち上げられ、いつの間にか勃っていた詩音のソレの上に『落とされた』。

「っあ”あ”!!」

先ほどまで散々抜き差しされたナカは、簡単に彼を全部受け入れてしまう。

「凛からの騎乗位、嬉しいよ」

ーーー詩音が言葉通り嬉しそうに笑っているから、先ほどの会話は『わざと』だったのだろう。


膝の裏を持ち上げられ、さらに深く沈められる。

ぐぼっ、

「~~~~っ♡♡」

「やっぱりこの体位なら少し届くな」


詩音からのクリスマスのお願いは『朝まで好きなだけ挿れさせて』だった。

抵抗したいのに、涙目で耐えるしかない。
願いはなんでも叶える、と安請け合いした自分を殴ってやりたい。






「凛。ごめんな…」

荒淫の疲れにぐったりしていると、詩音がオレの頭を撫でてきた。

突然の謝罪にオレが反応したのは、結合部から伝わっただろう。

「今日はお前と初めて旅行に来れて、完全に浮かれてた。油断してお前を1人きりにするなんて…」

横向きになり、背後から抱きしめられているせいで詩音の顔が見えない。

(さっきの『自信なさげな会話』は凹んでたからか…)

「……ヤられる前に助けてくれただろ?」

声が枯れて酷いなオレ。


「それでも…お前にあんな顔…『あの頃』みたいに犯されることを諦めた顔させるなんて…」

ーーーどうせオレの身体は汚れている。
……どんなにお前が『綺麗だ』と言ってくれたとしても、この事実は変わらない。

オレの尻を犯すちんこの数がたった5本増えたところで……今更だ。


「本当にごめん、凛。『あんな顔』二度とさせない。オレはお前を幸せにしたい。お前が望むことだけを叶えたいんだ……」

「……お前は罪悪感でオレと一緒にいるのか?」

「違う!」

「お前専用の穴を他の男に使われたくないだけじゃないのか?」

「違う!!」

「オレは女じゃない。男に犯されたくらいで傷付いたりしなっ……ぐっ」

いきなりズルリと結合を解かれ、身体を仰向けにされる。

「違うよ凛…。お前は傷付いてる。もうオレ以外としたくないって思ってくれたんだろう?」

「っ…」

「オレはもう、凛としかセックスしたくない。お前しか愛することができない」

「…うん」

「お前は違うのか?」

「………違わない」

「怖かったな」

「………怖かった…」

詩音に身体を抱き起こされ、ギュッと抱きしめられた。

「こわかったぁ……」

気持ちを正直に認めた瞬間、涙が止まらなくなった。

大人になってから初めて、子どものように声を上げて泣いた。


詩音はオレが泣き止むまで『怖かったな』『我慢して辛かったな』と頭を優しく撫でてくれた。


ひくっ、ひくっ、としゃくり上げながら、詩音の肩を見てみると涙と鼻水でぐちゃぐちゃになっていた。



「おふろ…連れてって」

子どもみたいに『望み』を口にすると、詩音は破顔した後、オレを抱き上げて風呂に入れてくれた。





「星が綺麗だ……」

深夜、明かりを点けないまま露天風呂に入った。

小さな星、暗い星、星雲まで見えた。

星座がどれかわからないほどの見事な星空に、声を忘れて2人で見惚れた。



ジョボジョボと掛け流しのお湯が湯船に注がれる音だけが響いている。



のぼせそうになり、風呂の縁に腰掛ける。



ーーーふと、今夜はまだ『いつもの』をオレから返していないと思い出した。

オレは湯に戻ると、詩音の右足を手に取りアンクレットに口付けた。

詩音もオレを座らせると、同じように口付けを返してくれた。

「「愛してる」」

どちらともなく重なり合った言葉に、2人で声を上げて笑ってから深いキスをした。






朝、目が覚めると布団の中で詩音に抱きしめられていた。


身体は怠くて重かったが、胸が妙にすっきりとし、そんなオレの心を映したように、今日の空は昨日より青く輝いて見えた。



ーーー帰りの車は、ずっと詩音に運転してもらった。

明日は大晦日だ。
おそらく彼の仕事は夜遅くまで忙しくなる。
途中で摘めるように、おにぎりと唐揚げをたくさん差し入れてやろう。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





『 結城  凛 / 結城  詩音 』


旅館にチェックインした時。

宿帳に2人の名前が並んだのを見て、嬉しそうに微笑んだお前をオレは死ぬまで忘れないだろう。




オレ達2人は似ていない。
年齢差と雰囲気で察したのだろう。

「お連れ合い様でいらっしゃいますか?」

とフロントの女性に問われる。


ーーー『連れ合い』、あぁ。いい言葉だな。


オレ達は同時に頷いた。

「「はい!」」





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





また2人で出かけような、詩音。
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