愛を請うひと

くろねこや

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裏側で

20’ 新しい生活 〜足りないもの 凛 side

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「なぁ、この部屋にあった荷物はどこへやったんだ?」

今この部屋にあるのは部屋のほとんどを占める大きなベッドと、水・食料や『玩具』が入ったクローゼットだけ。


監禁される前、ベッドはシングルサイズで、元のクローゼットには服はもちろん、両親との思い出の品や、学生時代に使った物が入ったダンボールなど、捨てられると困る物をたくさん置いていた。

部屋の隅には本やブルーレイなども、忙しくて開かないまま通販のダンボールごと積んであったはずだ。

娯楽のないこの狭い部屋での監禁生活は、それらがあるとマシになると思うのだ。


「全部向こうの部屋に積んである」

男Aは壁の向こうを指差す。

妻と息子の物がなくなり、空いたスペースに置いてあるという。自分で借りている部屋アパートなのに取りに行けないのは釈然としない。

これまで何度も何度も試したことだが、足に繋がれた鎖はやっぱり外れない。

『本を取ってきてほしい』と男に言っても、頑なに『ダメだ』と断られる。


「どうしてそんなに情報を遮断するんだ?」

テレビならニュースなど、見られたら困るものがあるのかもしれないが、本くらい良いと思うのだ。


「社長が『セックスだけに集中させろ』と」

…最低な理由だった。

人は『何もない真っ白な部屋』に閉じ込められると気が狂うらしい。

セックス以外の全てを奪われる。

監禁された人間にとって、残された『それ』が唯一の『楽しみ』になるのだという。

暗いグレーの防音板に囲まれた部屋は、薄暗く、狭く、閉塞感が酷かった。

玄関にもリビングにも行けない廊下は、外の光を遮断されているためやはり薄暗い。


「他のグループのヤツらは『それでも従わない奴隷は薬漬けにしてセックス中毒にさせる』と聞いた」

他のグループとは、オレを捕まえに来たヤツらだろうか。

詩音たちのグループに監禁されている状況は、不幸中の幸いだったのかもしれない。



それでも、『せめて外が見えたなら』と思うのだ。

太陽の光を浴びたい。



しばらく紫外線を受けていないせいか、オレの肌は真っ白くなり、手触りも良いらしい。





この前の相手は『肌が綺麗だ』と言って、さんざんオレの身体中を舐めまわした後、キスマークと歯形を至る所に付け、

「キミの肉襞にくひだのうねりで感じさせて」

と言って、一番奥まで突っ込むと、抜き差しもせず背面側位で朝までじっと入れられっぱなしにされた。動かされないせいで、男達に躾けられた内壁が勝手にパクパクと食い締めてしまい男を悦ばせてしまう。

「白くて吸い付くようなお尻でタマを挟んで?」

と、さらに結合部を指でなぞったり、オレの尻の肉を撫でまわしてから左右に開いたり閉じたりされる。
男のごわついた陰毛ごと陰嚢をオレの尻たぶに挟まされ、会陰にベッタリと押し当てられる感覚に吐き気がする。

「動いてほしい?僕を自分から欲しがるまでお預けだよ」

男の言葉はいちいち気持ち悪いことこの上なかった。

オレが吐き気を抑えるため、男を欲しがらなかった腹いせだろうか。
男Aが迎えにきた瞬間、激しく抽挿され、彼の目の前で喘がされた。

まだ、いつものように始めから乱暴に抱かれた方が『暴力を受けただけ』だと割り切れる分マシだと思った。

『セックスだけに集中させる』という意味がわかる。何もないホテルの部屋。動かれないことで、かえってナカの男根だけに意識を集中してしまい、もう少しで気持ち悪い男に『動いてほしい』と自分から強請ねだるところだった。

男Aのマーキングを受け、オレはその『気持ち悪い感覚』も塗り替えてほしくなり、『派遣』であったありのままを男に話した。

その日はキスマークと歯形を上書きされた後、一日中キスされながら対面座位で彼のモノを嵌められたまま過ごすことになった。

彼には自分から『動いて』と強請ってしまった。




余計な事を思い出したオレは、振り払うように首を振ると、男に本を持って来てほしいと懲りずにまた頼むのだった。
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