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独白
男Bの独白 4
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シオンが『凛』という、妻子がいる会社員の男を狩ってきた。
くたびれてはいるが綺麗な男だった。
面倒を避けるため、いつもは金が必要そうな男を選ぶのに、今回の男にはそんな雰囲気がない。
それにノルマは達成しているから、新しい奴隷はまだいらないはずだったのだが……。
いつものように『仕事』を進めていたはずが、結局シオンは、オレとおっさんには『凛』を抱かせなかった。
シオンが誰かに執着するところを初めて見た。
それから毎週末、シオンは『凛』を抱くため外泊するようになった。ただセックスするだけじゃなく、一緒に晩ご飯を食べているらしい。
シオンが家にいない夜が増えると、おっさんの腕の中で目を覚ますことが増えた。
毎回驚いて飛び跳ねそうになるのを堪える。
身体はサラッとして石けんの匂いがするし、お互いに服を着ていたから、行為の怠さはあっても吐き気は感じなくなった。
それに、初めて会った時から不思議と『この人は怖くない』と思った。この人の笑顔は優しくて好きだ。低く響く声も。彼の声を聴くと心が落ち着く。
怖いのは酒を飲んだわけではないのに『記憶がない』ことだけ。
おっさんの温かい腕の中にいると『すごく懐かしい感じ』がして、また眠くなってしまう。
『ここは安心だ』と思った。
顔色が悪いシオンが、意識のない『凛』をラブホに運びこんだ。今回は『監禁用の部屋』だ。少しずつ聞き出すと、こいつはシオンを否定する酷い言葉を吐いたらしい。
オレはシオンが持っていた離婚届に、『凛』の字を真似てサインし、金で雇った男に『代理人』として役所へ届けてもらった。
オレ達によって妻子と仕事を失った男は、首に『奴隷の印』と、足首に枷を付けられている。前回ここに来た時よりさらに生気がなく、鎖に囚われ逃げられないと分かっているからか、従順にオレ達3人に抱かれている。おっさんの巨根を突っ込まれてあまりに痛がるから、『気持ちよくなる薬』を使ったせいもあるかもしれない。
オレは始め、『シオンを傷つけたコイツを許さない』と怒りをぶつけていたのだが、話してみると悪いヤツじゃなかった。……むしろいい奴だった。シオンを傷つけたのは確かだったが、救えるのもおそらくコイツだけなのだろうと思う。
シオンが『凛』に執着を深めるたび、3人で『凛』を抱くたび、おっさんの腕の中で目を覚ますたびに、『オレ』は『僕』のことを思い出していく。
『僕』の記憶をなぞるように『凛』への調教を進める。まるで『凛』が『僕』の苦しさを引き受けてくれているみたいに、ドロドロしたものが整理されて、軽くなっていくようだった。
どんなに汚れた『凛』を見ても、シオンが彼を愛しく思い続けていると安心した。
『あの頃の僕』も受け入れてもらえた気がして。
オレが辛い時、おっさんは必ずシチューとプリンを作って食べさせてくれる。
食べられればなんでもいいと思っていたのに、おっさんが作ってくれたものしか美味しいと思えなくなってしまった。
寒い日も、暑い日も、オレが弱っているのを敏感に察してくれる。本当はカレーにしようと思ってたくせに。
……涙が出そうに視界が滲む。
オレの心と体はもう、全ておっさんが作ってくれたものに入れ替わっていると思う。
『いつもと違う反応をする僕』に気づいたのだろう。行為の途中、おっさんの優しい視線は『僕』に辛くないか?ちゃんと快感を得られているか?と聴いてくれる。
おっさんは風呂が嫌いなのに、『オレ』が臭いと言ったからちゃんと石けんの匂いになってくれている。
心から『欲しい』と希うと、やっと挿れてもらえた。
待ち望んでいた大きなモノで、身体の奥の奥まで熱く満たされて気持ちいい。
怖い、痛い、汚い、臭い、気持ち悪い。
男に痛めつけられ、辱められ、犯される。
セックスは『汚される』イヤなもの。
そう思っていたのに……。
この人は、本当に…オレの身体を作り替えてくれた。『大切にされている』『愛しいと思われている』。彼の気持ちが伝わってくると、心が快感に溶かされるのだ。身体もそれにつられてさらに熱くなる。
行為が終わると、『オレ』の身体を優しく抱き上げ、風呂で清めて、服を着せてくれる。
口付けて、『好きだ』と微笑ってくれた。
朝日が眩しくて目を覚ますと、
おっさんの暖かい腕の中で、昨晩の記憶がちゃんと残っていることに……涙が零れた。
ーーー『僕 / オレ』はこの人が好きだ。
くたびれてはいるが綺麗な男だった。
面倒を避けるため、いつもは金が必要そうな男を選ぶのに、今回の男にはそんな雰囲気がない。
それにノルマは達成しているから、新しい奴隷はまだいらないはずだったのだが……。
いつものように『仕事』を進めていたはずが、結局シオンは、オレとおっさんには『凛』を抱かせなかった。
シオンが誰かに執着するところを初めて見た。
それから毎週末、シオンは『凛』を抱くため外泊するようになった。ただセックスするだけじゃなく、一緒に晩ご飯を食べているらしい。
シオンが家にいない夜が増えると、おっさんの腕の中で目を覚ますことが増えた。
毎回驚いて飛び跳ねそうになるのを堪える。
身体はサラッとして石けんの匂いがするし、お互いに服を着ていたから、行為の怠さはあっても吐き気は感じなくなった。
それに、初めて会った時から不思議と『この人は怖くない』と思った。この人の笑顔は優しくて好きだ。低く響く声も。彼の声を聴くと心が落ち着く。
怖いのは酒を飲んだわけではないのに『記憶がない』ことだけ。
おっさんの温かい腕の中にいると『すごく懐かしい感じ』がして、また眠くなってしまう。
『ここは安心だ』と思った。
顔色が悪いシオンが、意識のない『凛』をラブホに運びこんだ。今回は『監禁用の部屋』だ。少しずつ聞き出すと、こいつはシオンを否定する酷い言葉を吐いたらしい。
オレはシオンが持っていた離婚届に、『凛』の字を真似てサインし、金で雇った男に『代理人』として役所へ届けてもらった。
オレ達によって妻子と仕事を失った男は、首に『奴隷の印』と、足首に枷を付けられている。前回ここに来た時よりさらに生気がなく、鎖に囚われ逃げられないと分かっているからか、従順にオレ達3人に抱かれている。おっさんの巨根を突っ込まれてあまりに痛がるから、『気持ちよくなる薬』を使ったせいもあるかもしれない。
オレは始め、『シオンを傷つけたコイツを許さない』と怒りをぶつけていたのだが、話してみると悪いヤツじゃなかった。……むしろいい奴だった。シオンを傷つけたのは確かだったが、救えるのもおそらくコイツだけなのだろうと思う。
シオンが『凛』に執着を深めるたび、3人で『凛』を抱くたび、おっさんの腕の中で目を覚ますたびに、『オレ』は『僕』のことを思い出していく。
『僕』の記憶をなぞるように『凛』への調教を進める。まるで『凛』が『僕』の苦しさを引き受けてくれているみたいに、ドロドロしたものが整理されて、軽くなっていくようだった。
どんなに汚れた『凛』を見ても、シオンが彼を愛しく思い続けていると安心した。
『あの頃の僕』も受け入れてもらえた気がして。
オレが辛い時、おっさんは必ずシチューとプリンを作って食べさせてくれる。
食べられればなんでもいいと思っていたのに、おっさんが作ってくれたものしか美味しいと思えなくなってしまった。
寒い日も、暑い日も、オレが弱っているのを敏感に察してくれる。本当はカレーにしようと思ってたくせに。
……涙が出そうに視界が滲む。
オレの心と体はもう、全ておっさんが作ってくれたものに入れ替わっていると思う。
『いつもと違う反応をする僕』に気づいたのだろう。行為の途中、おっさんの優しい視線は『僕』に辛くないか?ちゃんと快感を得られているか?と聴いてくれる。
おっさんは風呂が嫌いなのに、『オレ』が臭いと言ったからちゃんと石けんの匂いになってくれている。
心から『欲しい』と希うと、やっと挿れてもらえた。
待ち望んでいた大きなモノで、身体の奥の奥まで熱く満たされて気持ちいい。
怖い、痛い、汚い、臭い、気持ち悪い。
男に痛めつけられ、辱められ、犯される。
セックスは『汚される』イヤなもの。
そう思っていたのに……。
この人は、本当に…オレの身体を作り替えてくれた。『大切にされている』『愛しいと思われている』。彼の気持ちが伝わってくると、心が快感に溶かされるのだ。身体もそれにつられてさらに熱くなる。
行為が終わると、『オレ』の身体を優しく抱き上げ、風呂で清めて、服を着せてくれる。
口付けて、『好きだ』と微笑ってくれた。
朝日が眩しくて目を覚ますと、
おっさんの暖かい腕の中で、昨晩の記憶がちゃんと残っていることに……涙が零れた。
ーーー『僕 / オレ』はこの人が好きだ。
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