愛を請うひと

くろねこや

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本編

12 揺蕩う

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(あったかい)

ちゃぷん…、と水音がする。
ぬるい風呂に入れられているようだ。

正面から大きな身体に包まれ、男の胴を挟むように脚を開かされている。膝の上に乗せられているらしく、尻の中に『あの男』を感じる。ただじっと中にいるだけ。
疲れに目が開かない。


「シオン、オレはお前を傷つけたこの男を許さないよ。あの言葉だけは、絶対許さない…」

男Bの声だ。先程までのふざけた口調と違い、苦しそうな声。

(しおん……なまえ?おれが…このおとこを……きずつけた?)

あの日、オレはこの男に……なんて言った?
感情のままに吐き出した言葉が思い出せない。男の表情が抜け落ちた顔が目に焼き付いて離れないというのに。

「凛…」

ナカのうごめきで覚醒かくせいに気付いたのか、男Aがオレの唇を大きく開かせると、冷たいトロリとしたものが口移しで流し込まれる。反射的に男から与えられるものをゴクリゴクリと飲み込む。
久しぶりのまともな味だ。
甘く、酸味のある、おそらく果物と野菜のペーストだろうか。次は豆乳のようなもの。お粥のようなもの。

男が与えてくれたものが、染み込んでくる。


目を開けたい。男がどんな顔でオレに口付けているのか。


「お前がなんて言おうと、来月の『クソイベント』にはコイツを出すからね」




あったかい。


「………し…おん?」


無意識にオレの口から出た言葉が聞こえたのか、男の動きが止まる。


きもちいい。


「……やっぱり…あんた…のが……すきだ…」


最後に水を与えられ、そのまま深く口付けられた。
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