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裏側で
3’ 本番後 〜小屋にて 男A side
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「…今日のお前変だぞ」
ラブホの裏にある砂ぼこりで汚い小屋。
隙間だらけで壁も薄く、真冬の空気は石油ストーブを点けていても暖まらない。
深夜だというのに、
甲高いジリリリと金属を削る音が響く。
ここは人家から離れた所にある、オレの『仲間たち』が共有している拠点のひとつだ。
意識を失った凛は拘束したまま部屋に寝かせてある。
ふいに不快な音が止む。
「ほら、『愛しの凛ちゃんち』の合鍵」
鞄から拝借した鍵をコピーした。
「ああ」
『全く、お礼もできないんだから』と、ブツブツ言いながら機材を片付ける親友。
「惚れちゃったんでしょ?」
オレの身体がフリーズする。
「わかるよ。独占欲すごいもん」
たまたま乗った電車にあいつがいた。
体調が悪いのか、近くにいる酔っぱらいの呼気が辛いのか、下を向いて座る男の顔色は優れない。…だがふと、男はスマホの画面を見て表情を変えた。
ーーーその瞬間、くたびれた男から目が離せなくなる。
優しくて、慈しむような笑み。
懐かしい人の笑顔を思い出す。
それと同時に、伏せた睫毛や少し尖った耳、鼻と唇の形に色気を感じた。
この耳を齧ったらどんな声で啼くだろう、この形の良い唇に突っ込んでやったら瞳を潤ませるだろうか。頭の中で、男の服を脱がせ、犯してみた。
(あぁ、こいつにしよう)
ちょうどオレが車を停めている駅で降りていく。
跡をつけるとロングコートの後ろ姿越しにも、その腰の細さが際立ち、尻もキュッと締まっているだろうと想像する。
はじめはいつもの『標的』だと思っていた。
だが、オレに捕まってからも見返してくる強い瞳に惹きつけられた。覚悟を決めてからは、ムダな抵抗をせず、泣き喚きもしない。
お上品そうな見た目のわりに、案外口が悪いところもいい。
薬で意識が朦朧としているなか、親友に言わされただけだとわかっているのに、『オレに犯されて幸せだ』と言われた気がして興奮した。
会ったばかりの相手に『愛』を請うほどに。
『他の人間に触らせたくない』とさえ思った。
それは初めての感情だった。
ラブホの裏にある砂ぼこりで汚い小屋。
隙間だらけで壁も薄く、真冬の空気は石油ストーブを点けていても暖まらない。
深夜だというのに、
甲高いジリリリと金属を削る音が響く。
ここは人家から離れた所にある、オレの『仲間たち』が共有している拠点のひとつだ。
意識を失った凛は拘束したまま部屋に寝かせてある。
ふいに不快な音が止む。
「ほら、『愛しの凛ちゃんち』の合鍵」
鞄から拝借した鍵をコピーした。
「ああ」
『全く、お礼もできないんだから』と、ブツブツ言いながら機材を片付ける親友。
「惚れちゃったんでしょ?」
オレの身体がフリーズする。
「わかるよ。独占欲すごいもん」
たまたま乗った電車にあいつがいた。
体調が悪いのか、近くにいる酔っぱらいの呼気が辛いのか、下を向いて座る男の顔色は優れない。…だがふと、男はスマホの画面を見て表情を変えた。
ーーーその瞬間、くたびれた男から目が離せなくなる。
優しくて、慈しむような笑み。
懐かしい人の笑顔を思い出す。
それと同時に、伏せた睫毛や少し尖った耳、鼻と唇の形に色気を感じた。
この耳を齧ったらどんな声で啼くだろう、この形の良い唇に突っ込んでやったら瞳を潤ませるだろうか。頭の中で、男の服を脱がせ、犯してみた。
(あぁ、こいつにしよう)
ちょうどオレが車を停めている駅で降りていく。
跡をつけるとロングコートの後ろ姿越しにも、その腰の細さが際立ち、尻もキュッと締まっているだろうと想像する。
はじめはいつもの『標的』だと思っていた。
だが、オレに捕まってからも見返してくる強い瞳に惹きつけられた。覚悟を決めてからは、ムダな抵抗をせず、泣き喚きもしない。
お上品そうな見た目のわりに、案外口が悪いところもいい。
薬で意識が朦朧としているなか、親友に言わされただけだとわかっているのに、『オレに犯されて幸せだ』と言われた気がして興奮した。
会ったばかりの相手に『愛』を請うほどに。
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それは初めての感情だった。
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