痛みと快楽

くろねこや

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本編 3 番外編

幸せ(後編)

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「…じゃあさ。最近のオレはお前とセックスしてる時、どんな目をしてる?」

抱きしめられた腕の中、くっついた胸から互いの呼吸と鼓動が伝わりあう。

「僕に身体を許してくれている時のあなたは、『Opus』にいた頃とも違います。あのステージの上で縛られていたあなたより、さらに強い快感を得てくれているようだと感じています」

『身体を許す』。

うん。オレはいつもお前がくれる痛みや気持ちいいことに安心して身を委ねて、自ら望んでお前を受け入れてる。

「…それはそうだよ。オレは慎一郎とシてる時、幸せなんだから」

「…幸せ」

ギュッと抱き込まれていた腕が緩み、僅かに身体を離されると、真剣な瞳がオレの顔を確かめるように見つめてくる。


「あとさ。昨夜のことで改めて分かったんだけど」

「はい」

「オレ、お前とのノーマルなセックスが1番好きみたい」

「ノーマルなセックスが1番…」

そんなショックそうな顔するなよ。
本当に表情が豊かになったね。

まぁそうか。散々フレンチのフルコースを頑張って作って食わせてきたのに、『米と味噌汁が1番好き♡』って言われたようなものか。

それとも玩具の使い方にダメ出しされたと思った?それは経験の違いというか…人体と玩具の扱いに関しては、百戦錬磨の『ご主人様たち』にまだ敵うわけないだろ。


でも、そういう意味で言ったんじゃない。

「『お前との』が抜けてる」

お前がいいんだよ。

「僕とのノーマルなセックスが一番…」

「そう」

「もちろん、お前に縛ってもらうのも、玩具で遊んでもらうのも大好きだよ」

「はい」

慎一郎の心にちゃんと伝わるといい。

「…でも、」

綺麗な黒い瞳を見つめて、言葉にする。

「抱き合ってキスして、身体を繋ぐだけで、」

ちゅっと唇を合わせ、鼻先をすり寄せて、

「……いや、こうして…」

もう一度、目を合わせる。

「お前がいればそれでいいなって」


「っ……!!」

いきなり慎一郎は自分自身の顔を右手で覆って、オレの身体の上に崩れ落ちてきた。

「えええ、どうした?!」

本当に壊れた? 大丈夫か?


見ると耳が真っ赤だ。

「……嬉しいです」

「……そうか」

つられてオレも顔がカァッと熱くなった。



「僕と、ノーマルなセックスをしませんか?」

まだ外は明るい時間。

ディックを迎えに行くまで、あと6時間と少し。

「したい」


仰向けに横たえられたベッドの上、シャツのボタンをひとつずつ外されていく。

オレも慎一郎の服に手をかける。


まずはもう一度キス。


ちゅ、ちゅ、っと唇を合わせ、

口を開き、舌を絡めていく。


歯列や上顎、舌の裏側と、互いの気持ちいいところを舐め合って、背中がゾクリと震えたところで、

開いたシャツから覗く両方の乳首を親指でくりくり捏ねられる。

まだ腫れの引かないぷっくり膨れた突起は、ビリビリと電気が走るような快感をもたらしてくれる。

指先でキリキリと抓られ、

ペロペロ舌先に舐められ、

唇に挟んでピンと引き伸ばされ、

カジカジ歯にやわくまれる。

びくびく跳ねてしまう身体。


「んっ、ぁ、やばい…、でちゃう」

思わず胸元にある慎一郎の髪を掻き乱していた。

「あぁぁ!!」


ぐっちょり濡れた前が気持ち悪い。

「はぁ、はぁ、…でるって言ったのに」

ようやく乳首が解放された時には、前に触れられることなく達してしまっていた。


パンツやアンダーウェアが脚から引き抜かれ、ベッドの下にするりと落とされる。


次に慎一郎の舌先が向かったのは、達したばかりで柔らかくなったオレのちんぽ。

「まって、イッたばかりだから…、ぁ…、」

敏感な裏筋をぬろーっと舐め上げれられるだけで、またムクムク勃ち上がってしまう。

昨夜の長時間にわたる吸引によって過敏にされたソコは、涎を垂らしたまま快感の電気を走らせた。

腹が、腰が痺れる。

トロトロと幹を流れ落ちる薄い白濁液。慎一郎の指がツーッと掬い取るから、オレの脚は自然に開き、両手の指はソレを迎え入れるための穴を晒した。

「いい子ですね」

褒めてくれる声。フッと笑ったその顔に見惚れた瞬間、まだ腫れぼったい入り口にしなやかな指が挿し込まれた。

「んっ…、」

ビリッとする。けっこう痛い。

マシンによる激しい抽挿で長時間苛め尽くされた穴は、ディルドの摩擦によってキズがついていたらしい。

「いい子にはご褒美をあげなくては。今度のお休みは、ふっくり美味しそうに膨らんだココ・・を吸引してくれる玩具で遊びましょうか」

ベロリと熱い滑りが入ってきた。

え…、そんな玩具があるの?

期待にキュンとそこを窄めれば、ジュッと慎一郎の唇が吸い付いてくれた。

「んっ!!」

腫れぼったい粘膜を強く吸っては、舌が優しく舐めてくれる。

苛めながら、労わるように。

『ノーマルなセックスが好き』と言いながら、玩具も欲しがる貪欲なオレの身体。

慎一郎は呆れることなく愛してくれる。

「あぁ…、」

好きだ。

慎一郎、好き。



ようやく舌が離れていき、パキッと蓋の開く音がしたからローションを足してもらえるのだろう。

案の定、ぬるりと粘度の高い滑りを纏って指が戻ってきた。

まだヒリヒリする。

それでも熱く滑る口内にちんぽを迎え入れてもらいながら、ぐっとナカの快感スイッチを押されてしまえば、あっという間に慎一郎を受け入れる準備が整ってしまう。

挿入れてほしくて仕方がなくなってしまう。


「あ…、あぁ…、も…だいじょぶ…だから、」

じゅぷ、じゅぷ、ぬぽ、ぬぽ、

その唇と指が奏でる卑猥な音が前と後ろから響いてくる。

内腿に触れるさらさらした髪。見せつけるように綺麗な口へ出し入れされる腫れたちんぽ。唇や舌に擦られ、唾液さえも滲みてジンジン痛む。

慎一郎の頭がゆっくりと上下に動き続け、体内に埋められた指も同じように動かされる。


「も…いれて…」

ビリビリと走る電気。

またイく。

その前にどうか、

「おねがい。いれて…」

お前と繋がりたい。

「んんっ!!!」

慎一郎は喉奥からオレのをゆっくり引き抜くと、もう一度裏筋をべろーっと舐め上げ、透明な糸を引きながら舌を離していく。

蕩けた穴に挿入された3本の指も、最後にくちくち動かすと、こちらもゆっくりと引き抜いていった。


ぴとりと当てられた熱くて硬い肉棒の先端に、オレの尻穴が媚びてパクパクとキスをする。

早く。早く来て!

「ぁ……、」

思ったように声が出なくて、

両手を伸ばし、慎一郎の首を引き寄せる。

唇を合わせ、舌を絡めながら、

「ん…!!」

ぬぷ、

肉の輪をくぐるように入って来てくれた。

ぬーっとしたゆっくりの挿入に、痛みを与えないようにという優しさを感じる。

だけど…もどかしい。

早く奥まで来てほしい。

痛くていいから。

血が出てもいいよ。


かぷっと唇に噛み付き、その瞳を見つめれば、オレの望みが伝わったみたいだ。

「!!!!」

ゴッ、と音がしそうなくらい、大きな振り幅で腰を一気に打ち付けられた。

一晩中開かれ続けていたから、奥まで一突きで来てくれた。


そこからは、まるで嵐に翻弄されるようだった。

ゴチュ、ゴチュ、ゴチュ、ゴチュ、と続けられる激しい抽挿。

「あっ、あっ、あっ、あっ、」

自然に声が出て、過ぎる快楽から逃れようと上体が反ってしまう。


身体が離れてしまわないように脚を慎一郎の腰へ巻きつけて、自分からも腰を振り迎えに行く。

腰と尻がぶつかり合うぱちゅ、ぱちゅ、という恥ずかしい音。

滲み零れ落ちる涙。

僅かな血の匂い。

さらに深まる結合。

腫れぼったい内部の粘膜はズキズキと熱を持った痛みを訴えるのに、それさえも快感に変わってしまう。


「ぐっ!!」「ああぁぁ!!」

慎一郎が放ったのが先か、

オレが達してキュウキュウ搾り取るように肉襞を蠢かせたのが先か。

もはや出るものもなくナカイキしたからか、ちんぽが別の生き物みたいにヒクヒク動いてしまって恥ずかしい。


「はー、はー、はー、」

口を閉じることも出来ずに涎を垂れ流しながら必死で呼吸するしかない。

息が苦しいのに、再びどちらともなく唇を合わせ、ただ抱き合った。



あぁ、幸せだなぁ。

こうして腕と脚を絡めて、全身で繋がるのが一番…幸せだ。

「今のあなたの目、好きです」

「…オレもお前の目、好きだ。『幸せだ』って思ってくれてる?」

「はい。あなたとひとつになれて幸せです」


視線を合わせたまま、互いの唇は弧を描く。

熱を持って潤んだ黒曜石の瞳は、オレが知っているこの世のどんなものよりも綺麗だ。


そのままゆっくりと額を合わせ、もう一度唇を重ねていった。
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