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本編 3 番外編
遊園地と(後編)
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「何があったのか訊いてもいいですか?」
リビングのソファ。
いつものように、慎一郎が背中からオレを包み込んでくれている。
「……ずっと忘れてたんだけどさ。子どもの頃、父さんと2人で出かけた最後の日のことを思い出したんだ」
ゆったりした服に着替えて、安心できる匂いにほっとして、ようやく口を開くことができた。
動物園に出かけたあの日、家に帰ると。
ぬるぬる、ぢゅぼぢゅぼ、
お風呂で父さんがオレの尻を舐めて、舌で『ナカ』を唾液まみれにした。
ぐにぐに、ぐちゃぐちゃ、
指を突っ込んで掻き回して拡げてくる。
バスタブのフチに掴まって、後ろからの刺激に耐えた。
気持ち悪かったけど、そこまでは『いつものこと』だった。
でもあの日は、それだけで終わらなかった。
ぴと、
尻の穴を指で開かれ、押しつけられる大人の肉棒。
怖かった。
子どもの尻の穴に収まるサイズじゃなかった。
まだ小さかったオレには、恐ろしい凶器のように見えた。
ガクガク震えても、『やめて』と言っても止まってくれない。
『父さんと仲良しだろう?』
耳元に囁かれて、震えながら頷く。
『◯◯◯しよう。奈津』
逃げようとする腰を捕らえられ、メリリと捩じ込まれる太いちんぽ。
たぶん亀頭が入ってたと思う。
『実の父親のモノ』が、オレの『ナカ』に入っていたんだ。
気持ち悪さと割り裂かれる痛みで泣いたら、後ろから手のひらで口を塞がれた。
その時。
ボディソープか、シャンプーの詰め替えを忘れていたと、母さんがバスルームのドアを開けてしまった。
脱衣室のドアを開ける音に気づかなかったから、たぶん母さんはお風呂で何が行われているか察して静かに開けたんだと思う。
狂ったような甲高い叫び声。
母さんはキッチンから包丁を持ち出して振り回し、裸のまま逃げる父さんを追いかけた。
姉さんが泣いていた。
気がつくと自分の部屋にいて、動物園に行ったことから全てを忘れてしまった。
オレは、記憶に蓋をしたんだ。
母さんの叫び声だけは、心に深く刻まれていたのか忘れなかった。
それからは、お風呂での気持ち悪い『スキンシップ』をされなくなった。
その代わり、父さんはオレに話しかけなくなった。近づいて来なくなった。
記憶をなくしたオレにしてみれば、ますます冷たくなった母さん、何も言わない姉さん、視線を合わせなくなった父さんが理解できなかった。
お尻から血が出て、しばらく痛くて怖かったけど、誰にも言えなかった。母さんは血で汚れた下着に気付いていた筈だ。
「父さんも馬鹿だよね。ホテル代をケチらなきゃ好きなだけヤれたのに」
小さな子どもを連れていたからラブホは無理だったとしても、ビジホなら入れた筈だ。
あぁ、そうか。
お金を使いたくないから、手近な息子で性欲を発散してたんだ。
別に『オレ』とヤりたかったわけじゃない。
高校1年の頃、オレを嬲って弄んだアイツらと同じ。
「父さんも、オレのことが好きな訳じゃなかったんだな」
「…つ」
やっと気付いた。
「なつ」
…いや、気付いていた。
ぽとぽと涙が零れ落ちていく。
「奈津」
静かな声が、何度も名前を呼んでくれていた。
「慎一郎…」
「あの男へ、相応のお礼を致しましょう」
「…!」
びくりと身体が震える。
「大丈夫ですよ。『ご自身の罪』と向き合っていただくだけです」
思わず慎一郎の手を握っていた。
「やらなくていい。慎一郎、いいよ」
「あの男を庇うのですか?」
「違う」
「じゃあ何故…」
ヒクリと喉が震える。
「…慎一郎の手を、汚すことない」
あんなヤツには、その価値すらない。
握っていた手を開き、愛おしい人の手のひらに口付ける。
「奈津…」
貰ったその気持ちだけで嬉しい。
「今日は楽しかった。遊園地は初めてだったし、ジェットコースターに乗ることができた。ぐるぐる回るコーヒーカップも面白かったね」
「はい。僕も、とても楽しかったです」
「2人で食べたソフトクリームは美味しかったな。抱っこしたウサギはかわいくて、お前が買ってくれたマフラーも嬉しかった」
「あなたの方が可愛かったです」
真剣な顔で褒められると茶化せない。
頬が熱い。
「…これからも、2人で思い出をいっぱい増やしていきたい。慎一郎との記憶で、オレの頭の中をいっぱいにして」
バスルームで飲ませてもらったものを思い出して、食道から胃にかけて指で辿っていると、
「はい」
慎一郎の親指で唇を撫でられる。
「オレを抱いて。全部忘れさせて」
「はい。僕であなたの身体も心もいっぱいにしてみせます」
「うん。慎一郎。いっぱい、して」
慎一郎のベッドに抱いて連れて行ってもらう。
「キスをしていいですか?」
「うん。してほしい」
チュ、と互いの目を見ながら唇を合わせた。
鼻先を触れ合わせて、
頬を擦り寄せる。
はむっと耳たぶを唇で挟み、舌で輪郭に沿って舐め上げれば、すぐにお返ししてくれた。
「ふふ…、」
擽ったくて可笑しい。
「恋人って感じがする」
嬉しい。
「恋人もいいですが、僕はあなたの番になりたい」
「つがい?」
岩の上で一緒に寝ていたライオンを思い出す。
オスがしつこく舐め過ぎて、メスに猫パンチならぬライオンパンチをされていた。
たくさんのメスに囲まれて暮らす筈のオスライオンは、たった一頭のメスとだけ暮らして幸せなのだろうか。
慎一郎だって、本当は…。
「僕は、あなたと2人で生きていきたい」
オレの心を見透かすように、言葉が贈られた。シャツのボタンは開かれ、喉にキスされる。急所を晒し、相手に委ねる生き物は、たぶん人間だけだろう。
「死ぬまで?」
「死んでも、です」
「…それは…オレの死体をコレクションするって意味?」
どく、どく、と鼓動が速くなる。
先輩のちんぽみたいに、慎羅くんに加工されて木箱に入れられる?
それとも、あの部屋に飾られる?
嫌だ。
「樹木葬を考えています」
「…ジュモクソウ?」
大きな木や、芝の植えられた広い丘。
火葬した骨を、その地中深くに埋めるのだという。
海堂家では先祖代々、墓地として所有する広大な土地から好きな場所を選んで眠る習慣があるそうだ。遺族は法事の代わりに芝生の上でピクニックをするらしい。
「いいね。オレ、死んだら土に還りたいと思っていたから嬉しい」
「土に?」
「壺に入れられるなんて嫌だ」
狭くて暗い場所に閉じ込められるのは嫌。
「オレが死んだら、土に還してほしい」
「分かりました。僕もあなたの隣で土に還りたい。あなたと混ざり合いたい」
じっとオレを見つめる瞳。
「それまでは僕と生きてくれませんか?」
それを見つめ返す。
「うん。慎一郎と一緒に生きたい」
胸の真ん中に唇が落とされる。
心臓が速くて恥ずかしい。
「では、今は共にある生を楽しみましょう」
「うん。…っあ、」
そのまま左の乳首を食まれ、思わず声が漏れる。
右の乳首も指で摘まれ、先端をくりくり捏ねられるから堪らない。
その間にも、慎一郎の右手は下半身に伸ばされる。スウェットパンツがずり下され、下着の上から膨らみを揉みしだかれれば、すぐに布地ごと先端は濡れてクチュクチュいやらしい音を立ててしまう。
「慎一郎も脱いで。触りたい」
快感に震える指先でシャツのボタンを外していく。お返しに舌を伸ばし、慎一郎の小さな乳首をツンツン責めると、悪戯を咎めるようにオレの双丘の狭間を責め返される。
「んっ…」
もどかしい。
下着の上から、ぐにぐにと穴を刺激され、思わず求めるように脚を開いてしまう。
昨夜もシたから、後ろも既に『慎一郎を受け入れたい』とヒクヒク震えている。
下着を下ろされれば、ローションを使われるまでもなく先走りがトロトロと穴を濡らしてくれた。
慎一郎の親指が、穴の縁をぐにぐに悪戯してくる。
「もう…、準備できてるから。挿れて」
早く早くと思わず尻を振っていた。
「求愛のダンスですか?」
「そうだよ。愛して。早く、挿れてほしい」
ゴクリと慎一郎の喉が動いた。
寛げられた前は、すでにオレを求めてくれているようだ。こちらも先端から涎を垂らし、ヒクンヒクンと揺れている。
「ん、んぅ…」
唇が合わせられ、舌が侵入すると同時に、クプリと侵入ってきてくれた。
くちゅ、くちゅ、という水音に耳が侵され、下から突き上げられるから視界が揺れる。
「んっ、んっ、んっ、」
封じきれない甘えたような声が、鼻から漏れてしまう。
オレの。オレだけのちんぽ。
気持ちいい。
唇を離せば、はぁはぁという互いの呼吸音。
奥を突く腰の動きをそのままに、左脚だけ肩へ抱え上げられれば、結合がさらに深まる。
慎一郎の形を覚えてしまったオレの内部は、もっと奥へと迎え入れる準備をしてしまう。
ギュッと締めてみる。
「っ…、」
慎一郎の堪えるように寄せられた眉と、声が色っぽい。好きだ。
ぐっ、ぐっ、と押し込まれ、カリ首に擦られる度に、落下するジェットコースターみたいな制御出来ない快楽に襲われ続ける。
持ち上げられた太腿を掴む、慎一郎の指に縋るしかない。
枕を握りしめていたもう片方の指先を開かされ、慎一郎の首へ導かれる。
ぐちゅぐちゅ舌を絡め合いながら、じゅぼじゅぼ抽挿してもらう。
それだけで、どうしてこんなに満たされるんだろう。
オレには穴が空いている。
そのせいで、
愛を注がれても、注がれても足りなかった。
なのに、
慎一郎が注いでくれる愛は違う。
「愛しています。奈津」
もっと、と求めるだけ与えられる。
「愛してる。慎一郎」
オレも、お前に返したい。
お前が笑ってくれると嬉しい。
幸せだ、と思う。
「ずっと一緒にいよう」
ぐちゅぐちゅ、
すぶずぶと泥濘んで、
溶けて一つになってしまいそうだ。
「はい。ずっと」
誓い合った言葉は、他の誰の耳にも届かない。
それでも、オレ達は互いが唯一無二だと確信してる。
穴が空いたオレと、それを塞ぐほどドロリと重い愛をくれる慎一郎。
「次はもっと遠くの遊園地で、回るジェットコースターに乗ってみたい」
「はい。一緒に乗りましょう」
お前なら、例え『地獄の果て』でも『一緒に行きましょう』と笑ってくれるんだろう。
オレ達は指を絡め合い、ギュッと手を繋いで、もう一度キスをした。
リビングのソファ。
いつものように、慎一郎が背中からオレを包み込んでくれている。
「……ずっと忘れてたんだけどさ。子どもの頃、父さんと2人で出かけた最後の日のことを思い出したんだ」
ゆったりした服に着替えて、安心できる匂いにほっとして、ようやく口を開くことができた。
動物園に出かけたあの日、家に帰ると。
ぬるぬる、ぢゅぼぢゅぼ、
お風呂で父さんがオレの尻を舐めて、舌で『ナカ』を唾液まみれにした。
ぐにぐに、ぐちゃぐちゃ、
指を突っ込んで掻き回して拡げてくる。
バスタブのフチに掴まって、後ろからの刺激に耐えた。
気持ち悪かったけど、そこまでは『いつものこと』だった。
でもあの日は、それだけで終わらなかった。
ぴと、
尻の穴を指で開かれ、押しつけられる大人の肉棒。
怖かった。
子どもの尻の穴に収まるサイズじゃなかった。
まだ小さかったオレには、恐ろしい凶器のように見えた。
ガクガク震えても、『やめて』と言っても止まってくれない。
『父さんと仲良しだろう?』
耳元に囁かれて、震えながら頷く。
『◯◯◯しよう。奈津』
逃げようとする腰を捕らえられ、メリリと捩じ込まれる太いちんぽ。
たぶん亀頭が入ってたと思う。
『実の父親のモノ』が、オレの『ナカ』に入っていたんだ。
気持ち悪さと割り裂かれる痛みで泣いたら、後ろから手のひらで口を塞がれた。
その時。
ボディソープか、シャンプーの詰め替えを忘れていたと、母さんがバスルームのドアを開けてしまった。
脱衣室のドアを開ける音に気づかなかったから、たぶん母さんはお風呂で何が行われているか察して静かに開けたんだと思う。
狂ったような甲高い叫び声。
母さんはキッチンから包丁を持ち出して振り回し、裸のまま逃げる父さんを追いかけた。
姉さんが泣いていた。
気がつくと自分の部屋にいて、動物園に行ったことから全てを忘れてしまった。
オレは、記憶に蓋をしたんだ。
母さんの叫び声だけは、心に深く刻まれていたのか忘れなかった。
それからは、お風呂での気持ち悪い『スキンシップ』をされなくなった。
その代わり、父さんはオレに話しかけなくなった。近づいて来なくなった。
記憶をなくしたオレにしてみれば、ますます冷たくなった母さん、何も言わない姉さん、視線を合わせなくなった父さんが理解できなかった。
お尻から血が出て、しばらく痛くて怖かったけど、誰にも言えなかった。母さんは血で汚れた下着に気付いていた筈だ。
「父さんも馬鹿だよね。ホテル代をケチらなきゃ好きなだけヤれたのに」
小さな子どもを連れていたからラブホは無理だったとしても、ビジホなら入れた筈だ。
あぁ、そうか。
お金を使いたくないから、手近な息子で性欲を発散してたんだ。
別に『オレ』とヤりたかったわけじゃない。
高校1年の頃、オレを嬲って弄んだアイツらと同じ。
「父さんも、オレのことが好きな訳じゃなかったんだな」
「…つ」
やっと気付いた。
「なつ」
…いや、気付いていた。
ぽとぽと涙が零れ落ちていく。
「奈津」
静かな声が、何度も名前を呼んでくれていた。
「慎一郎…」
「あの男へ、相応のお礼を致しましょう」
「…!」
びくりと身体が震える。
「大丈夫ですよ。『ご自身の罪』と向き合っていただくだけです」
思わず慎一郎の手を握っていた。
「やらなくていい。慎一郎、いいよ」
「あの男を庇うのですか?」
「違う」
「じゃあ何故…」
ヒクリと喉が震える。
「…慎一郎の手を、汚すことない」
あんなヤツには、その価値すらない。
握っていた手を開き、愛おしい人の手のひらに口付ける。
「奈津…」
貰ったその気持ちだけで嬉しい。
「今日は楽しかった。遊園地は初めてだったし、ジェットコースターに乗ることができた。ぐるぐる回るコーヒーカップも面白かったね」
「はい。僕も、とても楽しかったです」
「2人で食べたソフトクリームは美味しかったな。抱っこしたウサギはかわいくて、お前が買ってくれたマフラーも嬉しかった」
「あなたの方が可愛かったです」
真剣な顔で褒められると茶化せない。
頬が熱い。
「…これからも、2人で思い出をいっぱい増やしていきたい。慎一郎との記憶で、オレの頭の中をいっぱいにして」
バスルームで飲ませてもらったものを思い出して、食道から胃にかけて指で辿っていると、
「はい」
慎一郎の親指で唇を撫でられる。
「オレを抱いて。全部忘れさせて」
「はい。僕であなたの身体も心もいっぱいにしてみせます」
「うん。慎一郎。いっぱい、して」
慎一郎のベッドに抱いて連れて行ってもらう。
「キスをしていいですか?」
「うん。してほしい」
チュ、と互いの目を見ながら唇を合わせた。
鼻先を触れ合わせて、
頬を擦り寄せる。
はむっと耳たぶを唇で挟み、舌で輪郭に沿って舐め上げれば、すぐにお返ししてくれた。
「ふふ…、」
擽ったくて可笑しい。
「恋人って感じがする」
嬉しい。
「恋人もいいですが、僕はあなたの番になりたい」
「つがい?」
岩の上で一緒に寝ていたライオンを思い出す。
オスがしつこく舐め過ぎて、メスに猫パンチならぬライオンパンチをされていた。
たくさんのメスに囲まれて暮らす筈のオスライオンは、たった一頭のメスとだけ暮らして幸せなのだろうか。
慎一郎だって、本当は…。
「僕は、あなたと2人で生きていきたい」
オレの心を見透かすように、言葉が贈られた。シャツのボタンは開かれ、喉にキスされる。急所を晒し、相手に委ねる生き物は、たぶん人間だけだろう。
「死ぬまで?」
「死んでも、です」
「…それは…オレの死体をコレクションするって意味?」
どく、どく、と鼓動が速くなる。
先輩のちんぽみたいに、慎羅くんに加工されて木箱に入れられる?
それとも、あの部屋に飾られる?
嫌だ。
「樹木葬を考えています」
「…ジュモクソウ?」
大きな木や、芝の植えられた広い丘。
火葬した骨を、その地中深くに埋めるのだという。
海堂家では先祖代々、墓地として所有する広大な土地から好きな場所を選んで眠る習慣があるそうだ。遺族は法事の代わりに芝生の上でピクニックをするらしい。
「いいね。オレ、死んだら土に還りたいと思っていたから嬉しい」
「土に?」
「壺に入れられるなんて嫌だ」
狭くて暗い場所に閉じ込められるのは嫌。
「オレが死んだら、土に還してほしい」
「分かりました。僕もあなたの隣で土に還りたい。あなたと混ざり合いたい」
じっとオレを見つめる瞳。
「それまでは僕と生きてくれませんか?」
それを見つめ返す。
「うん。慎一郎と一緒に生きたい」
胸の真ん中に唇が落とされる。
心臓が速くて恥ずかしい。
「では、今は共にある生を楽しみましょう」
「うん。…っあ、」
そのまま左の乳首を食まれ、思わず声が漏れる。
右の乳首も指で摘まれ、先端をくりくり捏ねられるから堪らない。
その間にも、慎一郎の右手は下半身に伸ばされる。スウェットパンツがずり下され、下着の上から膨らみを揉みしだかれれば、すぐに布地ごと先端は濡れてクチュクチュいやらしい音を立ててしまう。
「慎一郎も脱いで。触りたい」
快感に震える指先でシャツのボタンを外していく。お返しに舌を伸ばし、慎一郎の小さな乳首をツンツン責めると、悪戯を咎めるようにオレの双丘の狭間を責め返される。
「んっ…」
もどかしい。
下着の上から、ぐにぐにと穴を刺激され、思わず求めるように脚を開いてしまう。
昨夜もシたから、後ろも既に『慎一郎を受け入れたい』とヒクヒク震えている。
下着を下ろされれば、ローションを使われるまでもなく先走りがトロトロと穴を濡らしてくれた。
慎一郎の親指が、穴の縁をぐにぐに悪戯してくる。
「もう…、準備できてるから。挿れて」
早く早くと思わず尻を振っていた。
「求愛のダンスですか?」
「そうだよ。愛して。早く、挿れてほしい」
ゴクリと慎一郎の喉が動いた。
寛げられた前は、すでにオレを求めてくれているようだ。こちらも先端から涎を垂らし、ヒクンヒクンと揺れている。
「ん、んぅ…」
唇が合わせられ、舌が侵入すると同時に、クプリと侵入ってきてくれた。
くちゅ、くちゅ、という水音に耳が侵され、下から突き上げられるから視界が揺れる。
「んっ、んっ、んっ、」
封じきれない甘えたような声が、鼻から漏れてしまう。
オレの。オレだけのちんぽ。
気持ちいい。
唇を離せば、はぁはぁという互いの呼吸音。
奥を突く腰の動きをそのままに、左脚だけ肩へ抱え上げられれば、結合がさらに深まる。
慎一郎の形を覚えてしまったオレの内部は、もっと奥へと迎え入れる準備をしてしまう。
ギュッと締めてみる。
「っ…、」
慎一郎の堪えるように寄せられた眉と、声が色っぽい。好きだ。
ぐっ、ぐっ、と押し込まれ、カリ首に擦られる度に、落下するジェットコースターみたいな制御出来ない快楽に襲われ続ける。
持ち上げられた太腿を掴む、慎一郎の指に縋るしかない。
枕を握りしめていたもう片方の指先を開かされ、慎一郎の首へ導かれる。
ぐちゅぐちゅ舌を絡め合いながら、じゅぼじゅぼ抽挿してもらう。
それだけで、どうしてこんなに満たされるんだろう。
オレには穴が空いている。
そのせいで、
愛を注がれても、注がれても足りなかった。
なのに、
慎一郎が注いでくれる愛は違う。
「愛しています。奈津」
もっと、と求めるだけ与えられる。
「愛してる。慎一郎」
オレも、お前に返したい。
お前が笑ってくれると嬉しい。
幸せだ、と思う。
「ずっと一緒にいよう」
ぐちゅぐちゅ、
すぶずぶと泥濘んで、
溶けて一つになってしまいそうだ。
「はい。ずっと」
誓い合った言葉は、他の誰の耳にも届かない。
それでも、オレ達は互いが唯一無二だと確信してる。
穴が空いたオレと、それを塞ぐほどドロリと重い愛をくれる慎一郎。
「次はもっと遠くの遊園地で、回るジェットコースターに乗ってみたい」
「はい。一緒に乗りましょう」
お前なら、例え『地獄の果て』でも『一緒に行きましょう』と笑ってくれるんだろう。
オレ達は指を絡め合い、ギュッと手を繋いで、もう一度キスをした。
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