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本編 3 番外編
束縛 1
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慎一郎は縛るのが本当に上手くなった。
縄を全身に掛けられて、『心から好きな相手に支配されている』という状況が堪らなく気持ちいい。
「奈津。僕だけのものだ」
ギラギラした目。
独占欲に満ちた、余裕のない表情。
以前の彼なら、目の前で他の男達に抱かれていても、笑みを浮かべていたのに。
陵辱され、『助けて』と泣き叫ぶオレの姿を、愉しんでさえいたのに。
ある『完全オフ』の土曜日。
久しぶりに会う友人達と、映画を観に出かけた。
『シャドウ オブ トワイライト』の続編が公開されたからだ。
以前、依頼がきっかけで知り合った3人。
佐藤 桜さん、佐藤 悠馬さん。
そして桜さんの友達で、悠馬さんの彼女、柏崎 雪さん。
今日は、さらにもう1人。
『Opus』の『作品』として、ステージで時々ペアになった、『ニーナ』こと新名くん。
彼は、ゲームに課金するため、効率良く金を稼ごうと店で働いている変わり者だ。
最初にオレを『王子じゃん』と言ったのはこの人だった。
彼に会うたび『王子』『アレウス』と呼ばれるから何かと思っていた。
『シャドウ オブ トワイライト』というゲームのキャラクターだと知ったのは、佐藤 桜さんの両親から依頼を受けた時。
桜さんの最推しキャラが『王子アレウス』だった。
新名くんがあまりに『似ている』と言うから、桜さんに信用してもらうため、それを利用することにした。
よりゲームの『王子』に近づくため、話し方や仕草、表情を研究し、新名くんが『カンペキ』と言ってくれるレベルまで近づけた。
そのおかげで、男に傷つけられて泣いていた、彼女の信頼をすぐに得ることができたのだと思う。
事情を説明しないまま、協力してくれた新名くんには、いつか恩返しをしたいと思っていた。
新名くんはゲイでもバイでもない。
『金色チケットは使わせない』という条件でオーナー自らスカウトしてきたらしい。
彼は黒髪・短髪で、一見爽やかストイックそうなビジュアルだ。眉もキリッとしてカッコいい。
細身ながら筋肉質の身体、ハリのある白い肌には縄がよく似合う。ご主人様たちの舌に溶かされ、玩具で遊ばれた後の色っぽい姿を見ると、例え『挿入なし』であっても、オーナーが『作品』にしたくなるのがよくわかった。
口を開きさえしなければ…。
彼は重度のゲームオタクで、かなり早口だ。
話始まると止まらなくなる。
一見すると無口そうなビジュアルとのギャップが酷すぎて、高校生の頃に友人だと思っていた相手や、告白してきた相手からドン引きされて以来、本音を口に出せなくなってしまったそうだ。
オンラインの友人はいるらしいが、リアルでは友人ができないのだと言っていた。
容姿に恵まれ人当たりの良い彼は、なぜか嘘くさく感じ、正直苦手だと思っていた。初対面でいきなり『王子じゃん』と言われたことも不信感を持ってしまった原因だった。
『アレウス』と『シャドワ』について教わるため話をするようになってから、彼の印象が180度変わった。
『本当の自分を隠してまで、他人と付き合うのがツラい』『友達とゲームの話をしたい…』と寂しそうによくこぼしていた。
ちなみに、肩が凝ると吐き気に襲われてしまうから、『なるべく長時間ゲームを楽しみたい』という理由で、筋トレを始めたそうだ。
今の美しい肉体を手に入れるまでトレーニングを続けていることを考えれば、彼はやはりストイックな人間なのだと思う。
そんな彼だから、あの3人に紹介するのだ。
最初、新名くんは『他所行きの仮面』を外せなかった。だが、映画の帰りにはテンションが上がっていて、みんなと意気投合していた。
『映画の感想を喋りたい』と、5人で訪れたのはカラオケボックス。『シャドウ オブ トワイライト』のコラボルーム目当てだ。
「新名さん、最高!!こんなにカッコいいのに残念で最高!!好き!!」
悠馬が彼を絶賛した。
おかげで完全に緊張がほぐれたみたいだ。
桜と雪は、仲良くなった2人を見て嬉しそう。
出かけてからいつの間にか6時間も経っていたらしい。楽しくて時間を忘れてしまったみたいだ。
コラボルームのレンタル時間が終わる頃。
いつかのように慎一郎が迎えに来た。
危険な依頼でもない、完全なオフの日だというのに、出かける直前、無理矢理ナカに仕込まれた『発信機』。
彼が近づいてきているのは、ブブッ、となる振動がどんどん強く、間隔が狭くなっていくからわかった。
ホラー映画かよ…。
30分に一度だった振動が、5分に一度、1分に一度になった頃。
彼らの話を聴きたいのに、『っ…、』と声が出そうになって焦る。頻繁になるくぐもったバイブ音と、おそらく顔が紅潮してきたオレに、すぐ隣にいた新名くんが気づいた。
他の3人は話に夢中になっているから気付いていないはず…。
『パートナーにローターでも仕込まれてる?』
コソッと聞かれて頷く。
『束縛がキツくて大変だねぇ…』
汗に張り付く前髪を彼が払ってくれた瞬間。
部屋に突然、『黒い服の男』が乱入してきた。
「イテッ」
新名さんが男に押しのけられ、
「んんっ…!!!」
「「「「!!!」」」」
舌を絡めた濃厚なキス。
近すぎて男…慎一郎の顔がボヤけ、よく見えない。
前にもこんな事があった。
迎えに来られたファミレスの前。窓から見えるように唇を奪われたせいで、オレと慎一郎の関係を3人に知られている。
新名くんは『Opus』の『卒業イベント』を見ていたから、オレ達がパートナーだと知っている。
それでも、恥ずかしいものは恥ずかしい。
腰が砕けてぐったりしたオレは、友人たちに『またね』と挨拶することさえ出来ず…、
いや、新名くんの『ゴメンネ』というジェスチャーを受け…、
慎一郎の手に腰を引かれるまま、マンションへ帰ることになった。
縄を全身に掛けられて、『心から好きな相手に支配されている』という状況が堪らなく気持ちいい。
「奈津。僕だけのものだ」
ギラギラした目。
独占欲に満ちた、余裕のない表情。
以前の彼なら、目の前で他の男達に抱かれていても、笑みを浮かべていたのに。
陵辱され、『助けて』と泣き叫ぶオレの姿を、愉しんでさえいたのに。
ある『完全オフ』の土曜日。
久しぶりに会う友人達と、映画を観に出かけた。
『シャドウ オブ トワイライト』の続編が公開されたからだ。
以前、依頼がきっかけで知り合った3人。
佐藤 桜さん、佐藤 悠馬さん。
そして桜さんの友達で、悠馬さんの彼女、柏崎 雪さん。
今日は、さらにもう1人。
『Opus』の『作品』として、ステージで時々ペアになった、『ニーナ』こと新名くん。
彼は、ゲームに課金するため、効率良く金を稼ごうと店で働いている変わり者だ。
最初にオレを『王子じゃん』と言ったのはこの人だった。
彼に会うたび『王子』『アレウス』と呼ばれるから何かと思っていた。
『シャドウ オブ トワイライト』というゲームのキャラクターだと知ったのは、佐藤 桜さんの両親から依頼を受けた時。
桜さんの最推しキャラが『王子アレウス』だった。
新名くんがあまりに『似ている』と言うから、桜さんに信用してもらうため、それを利用することにした。
よりゲームの『王子』に近づくため、話し方や仕草、表情を研究し、新名くんが『カンペキ』と言ってくれるレベルまで近づけた。
そのおかげで、男に傷つけられて泣いていた、彼女の信頼をすぐに得ることができたのだと思う。
事情を説明しないまま、協力してくれた新名くんには、いつか恩返しをしたいと思っていた。
新名くんはゲイでもバイでもない。
『金色チケットは使わせない』という条件でオーナー自らスカウトしてきたらしい。
彼は黒髪・短髪で、一見爽やかストイックそうなビジュアルだ。眉もキリッとしてカッコいい。
細身ながら筋肉質の身体、ハリのある白い肌には縄がよく似合う。ご主人様たちの舌に溶かされ、玩具で遊ばれた後の色っぽい姿を見ると、例え『挿入なし』であっても、オーナーが『作品』にしたくなるのがよくわかった。
口を開きさえしなければ…。
彼は重度のゲームオタクで、かなり早口だ。
話始まると止まらなくなる。
一見すると無口そうなビジュアルとのギャップが酷すぎて、高校生の頃に友人だと思っていた相手や、告白してきた相手からドン引きされて以来、本音を口に出せなくなってしまったそうだ。
オンラインの友人はいるらしいが、リアルでは友人ができないのだと言っていた。
容姿に恵まれ人当たりの良い彼は、なぜか嘘くさく感じ、正直苦手だと思っていた。初対面でいきなり『王子じゃん』と言われたことも不信感を持ってしまった原因だった。
『アレウス』と『シャドワ』について教わるため話をするようになってから、彼の印象が180度変わった。
『本当の自分を隠してまで、他人と付き合うのがツラい』『友達とゲームの話をしたい…』と寂しそうによくこぼしていた。
ちなみに、肩が凝ると吐き気に襲われてしまうから、『なるべく長時間ゲームを楽しみたい』という理由で、筋トレを始めたそうだ。
今の美しい肉体を手に入れるまでトレーニングを続けていることを考えれば、彼はやはりストイックな人間なのだと思う。
そんな彼だから、あの3人に紹介するのだ。
最初、新名くんは『他所行きの仮面』を外せなかった。だが、映画の帰りにはテンションが上がっていて、みんなと意気投合していた。
『映画の感想を喋りたい』と、5人で訪れたのはカラオケボックス。『シャドウ オブ トワイライト』のコラボルーム目当てだ。
「新名さん、最高!!こんなにカッコいいのに残念で最高!!好き!!」
悠馬が彼を絶賛した。
おかげで完全に緊張がほぐれたみたいだ。
桜と雪は、仲良くなった2人を見て嬉しそう。
出かけてからいつの間にか6時間も経っていたらしい。楽しくて時間を忘れてしまったみたいだ。
コラボルームのレンタル時間が終わる頃。
いつかのように慎一郎が迎えに来た。
危険な依頼でもない、完全なオフの日だというのに、出かける直前、無理矢理ナカに仕込まれた『発信機』。
彼が近づいてきているのは、ブブッ、となる振動がどんどん強く、間隔が狭くなっていくからわかった。
ホラー映画かよ…。
30分に一度だった振動が、5分に一度、1分に一度になった頃。
彼らの話を聴きたいのに、『っ…、』と声が出そうになって焦る。頻繁になるくぐもったバイブ音と、おそらく顔が紅潮してきたオレに、すぐ隣にいた新名くんが気づいた。
他の3人は話に夢中になっているから気付いていないはず…。
『パートナーにローターでも仕込まれてる?』
コソッと聞かれて頷く。
『束縛がキツくて大変だねぇ…』
汗に張り付く前髪を彼が払ってくれた瞬間。
部屋に突然、『黒い服の男』が乱入してきた。
「イテッ」
新名さんが男に押しのけられ、
「んんっ…!!!」
「「「「!!!」」」」
舌を絡めた濃厚なキス。
近すぎて男…慎一郎の顔がボヤけ、よく見えない。
前にもこんな事があった。
迎えに来られたファミレスの前。窓から見えるように唇を奪われたせいで、オレと慎一郎の関係を3人に知られている。
新名くんは『Opus』の『卒業イベント』を見ていたから、オレ達がパートナーだと知っている。
それでも、恥ずかしいものは恥ずかしい。
腰が砕けてぐったりしたオレは、友人たちに『またね』と挨拶することさえ出来ず…、
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