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本編 3
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睡眠と水分と血糖値が足りていない。
尻と腰がおかしいし、腹も痛い。
2時間半近く縄で吊され、連続絶頂させられたショーの後よりも身体が怠い。
ふらつきながらシャワーを使わせてもらい、さっぱりしたところで、男に『あげる』と差し出された服を着る。
サイズは驚くほどぴったりで、慎一郎のマンションに引越しさせられた時、クローゼットに用意されていたのと同じ、オレが好きなデザインの服だった。
シンプルでとても着心地がいい。
靴のサイズもちょうどいい。
しかし、身体を洗っている間は外が気になって落ち着かなかった。
研究室っぽいこの部屋に設置されたシャワーブースは、オレの部屋と同じ、湯気に曇らない透明なもので、あのゾンビのような男が2人の作業服を着た男達に持ち上げられ、どこかに連れ出されていくのが見えたからだ。
ゾンビ男がどういった『工程』を経て、今の状態になったのかも気になる。
以前は噛み合わないながらも会話できていたはず。
それよりも気になったのは…オレが尻の穴を指で開いた時、それを至近距離でじっと観察していた男の存在だ。…しかも、ゾンビ男の精液をナカから掻き出すところ、お湯を体内に注いで流すところを、堂々とスマホで動画に収めていた。
この高そうな服と靴は、その対価としてありがたく頂くことにした。
その男、慎一郎の弟は『慎羅』というらしい。
彼の仮眠用だというソファに2人、横に並んで座る。
「僕が見た範囲の話だけどさ…」
突然、慎羅くんが口を開いた。
名前は呼び捨てで構わないと言われたのだが何となく『くん付け』することにした。
年下だと思うのに、年上みたいに感じる時があるからかもしれない。
「アンタの周りにいる4人の中で、本当にアンタだけを愛しているのは慎一郎兄さんだけだよ」
オレの隣で、こちらを見上げてくる瞳は嘘を感じさせない。
「オーナー、曽根崎 咲耶の愛は本物だろう。でもその男には今、可愛がってるペットがいる。しかもそれは、よりにもよって『工藤先輩』とアンタが呼ぶ男だ」
セックスが下手な先輩のトラウマを解消する為だけに、失ったちんぽ代わりのペニバンをわざわざ着けさせてまでオレを抱かせた。あの時は焦らされて頭がおかしくなっていたし、目隠しされて先輩だと知らないまま同情して受け入れたけど、後から考えてモヤモヤした。
男を知らなかったオレの身体を無理矢理犯し、仲間達と一緒に犯し、その後も助けようとしなかった。あの工藤を許すと思うのか。
「福太郎さん、幸屋 福太郎の愛も本物だ。だけど、彼は自己評価が極端に低いだけで、実は周りの人間からかなり愛されている。特に『常田』という秘書の男とは幼なじみで子どもの頃からずっと想われている。福太郎も常田を信頼しているし、本人は気づいてないだろうけど好意もあるみたい」
確かに、オレと夜を過ごした後、いつもホテルに迎えに来る男がいた。
「アンタはその男の本気を知ってるでしょ?常田は『愛しい幼なじみの初めて』を奪ったアンタを殺そうとしたことがあるよね」
いつもオレを凄い目で睨んでくるし、福太郎さんがシャワーしている時、蔑んだ目で見ながら首を絞められたことがあった。『男娼ごときが…』と吐き捨てられた。
優しい福太郎さんは、不誠実なオレなんかより、一途に想ってくれる相手に愛された方が幸せだろう。
「アンタの父さん、佐久間 秀一の愛も本物。ただし、あくまでも『父親』としての愛だね。未だに亡くなった妻と子を愛し続けている」
今でも月命日に墓参りを欠かさない。春さんと、娘さんをずっと大切にしている。
誘ったことがあるけど、応じてくれたのは『手のひら越しのキス』までだった。
「慎一郎兄さんの愛は全くブレたことがない。疑いようもない本物だよ。しかもアンタが望む『唯一』だ。中学3年の頃アンタを見てから、ずっとずっと追いかけてる」
彼の愛は深すぎて怖いくらいだ。
「たぶんアンタには簡単そうに伝えただろうけど、4回行った『手術』で、一度死にかけてる。アンタに早く会いたくて急いだからだ」
心臓が止まりそうな衝撃を受けた。
……死にかけた?
「アンタと2人きり閉じ込められて、餓死させられそうになった事もあるよね?」
そうだ。まぁ、あれは慎一郎が望んで監禁された感があるが。あの時も死にかけたのに、オレといられて『幸せな時間』だったと笑っていた。
「アンタの脇腹とお揃いの傷。兄さんがあんな男に刺されるわけない。アンタのために兄さんが自分でやったんだろう?」
オレの脇腹を撫でられる。ああそうだ。
時々まだ痛むその傷を、彼も受けてくれた。
「今も、これから先だってずっと…兄さんの頭の中にはアンタだけだ」
尻と腰がおかしいし、腹も痛い。
2時間半近く縄で吊され、連続絶頂させられたショーの後よりも身体が怠い。
ふらつきながらシャワーを使わせてもらい、さっぱりしたところで、男に『あげる』と差し出された服を着る。
サイズは驚くほどぴったりで、慎一郎のマンションに引越しさせられた時、クローゼットに用意されていたのと同じ、オレが好きなデザインの服だった。
シンプルでとても着心地がいい。
靴のサイズもちょうどいい。
しかし、身体を洗っている間は外が気になって落ち着かなかった。
研究室っぽいこの部屋に設置されたシャワーブースは、オレの部屋と同じ、湯気に曇らない透明なもので、あのゾンビのような男が2人の作業服を着た男達に持ち上げられ、どこかに連れ出されていくのが見えたからだ。
ゾンビ男がどういった『工程』を経て、今の状態になったのかも気になる。
以前は噛み合わないながらも会話できていたはず。
それよりも気になったのは…オレが尻の穴を指で開いた時、それを至近距離でじっと観察していた男の存在だ。…しかも、ゾンビ男の精液をナカから掻き出すところ、お湯を体内に注いで流すところを、堂々とスマホで動画に収めていた。
この高そうな服と靴は、その対価としてありがたく頂くことにした。
その男、慎一郎の弟は『慎羅』というらしい。
彼の仮眠用だというソファに2人、横に並んで座る。
「僕が見た範囲の話だけどさ…」
突然、慎羅くんが口を開いた。
名前は呼び捨てで構わないと言われたのだが何となく『くん付け』することにした。
年下だと思うのに、年上みたいに感じる時があるからかもしれない。
「アンタの周りにいる4人の中で、本当にアンタだけを愛しているのは慎一郎兄さんだけだよ」
オレの隣で、こちらを見上げてくる瞳は嘘を感じさせない。
「オーナー、曽根崎 咲耶の愛は本物だろう。でもその男には今、可愛がってるペットがいる。しかもそれは、よりにもよって『工藤先輩』とアンタが呼ぶ男だ」
セックスが下手な先輩のトラウマを解消する為だけに、失ったちんぽ代わりのペニバンをわざわざ着けさせてまでオレを抱かせた。あの時は焦らされて頭がおかしくなっていたし、目隠しされて先輩だと知らないまま同情して受け入れたけど、後から考えてモヤモヤした。
男を知らなかったオレの身体を無理矢理犯し、仲間達と一緒に犯し、その後も助けようとしなかった。あの工藤を許すと思うのか。
「福太郎さん、幸屋 福太郎の愛も本物だ。だけど、彼は自己評価が極端に低いだけで、実は周りの人間からかなり愛されている。特に『常田』という秘書の男とは幼なじみで子どもの頃からずっと想われている。福太郎も常田を信頼しているし、本人は気づいてないだろうけど好意もあるみたい」
確かに、オレと夜を過ごした後、いつもホテルに迎えに来る男がいた。
「アンタはその男の本気を知ってるでしょ?常田は『愛しい幼なじみの初めて』を奪ったアンタを殺そうとしたことがあるよね」
いつもオレを凄い目で睨んでくるし、福太郎さんがシャワーしている時、蔑んだ目で見ながら首を絞められたことがあった。『男娼ごときが…』と吐き捨てられた。
優しい福太郎さんは、不誠実なオレなんかより、一途に想ってくれる相手に愛された方が幸せだろう。
「アンタの父さん、佐久間 秀一の愛も本物。ただし、あくまでも『父親』としての愛だね。未だに亡くなった妻と子を愛し続けている」
今でも月命日に墓参りを欠かさない。春さんと、娘さんをずっと大切にしている。
誘ったことがあるけど、応じてくれたのは『手のひら越しのキス』までだった。
「慎一郎兄さんの愛は全くブレたことがない。疑いようもない本物だよ。しかもアンタが望む『唯一』だ。中学3年の頃アンタを見てから、ずっとずっと追いかけてる」
彼の愛は深すぎて怖いくらいだ。
「たぶんアンタには簡単そうに伝えただろうけど、4回行った『手術』で、一度死にかけてる。アンタに早く会いたくて急いだからだ」
心臓が止まりそうな衝撃を受けた。
……死にかけた?
「アンタと2人きり閉じ込められて、餓死させられそうになった事もあるよね?」
そうだ。まぁ、あれは慎一郎が望んで監禁された感があるが。あの時も死にかけたのに、オレといられて『幸せな時間』だったと笑っていた。
「アンタの脇腹とお揃いの傷。兄さんがあんな男に刺されるわけない。アンタのために兄さんが自分でやったんだろう?」
オレの脇腹を撫でられる。ああそうだ。
時々まだ痛むその傷を、彼も受けてくれた。
「今も、これから先だってずっと…兄さんの頭の中にはアンタだけだ」
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