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幕間 2
ある加害者(もしくは被害者)の独白 3
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あの男と仲間達が卒業し、枷がなくなった僕は、工藤さんに負けないくらい高く飛べるようになった。
あの男に負けないくらい速く走れるようになった。
抑圧され、萎縮していた後輩達も解放され、僕達は実力で全国優勝を果たした。
あの男と同じチームに入団が内定すると、コーチは得意げに僕のことを触れ回った。
『オレが育てた教え子が2年連続でプロになる』のだと。
確かにお前の指導は的確だった。
でも、僕にバスケの基礎を教え、育ててくれたのは先生だ。僕の初恋の人。
お前じゃない。
僕がこれからすることは、コイツへの復讐でもある。僕を騙し、工藤さんを陥れた。絶対に許さない。
監督もコーチが言ったことを鵜呑みにした。
僕の言葉を聴いてくれたこともない。
先生に迷惑がかかっちゃうかな?
もう僕のことなんて覚えていないだろうけど。
後輩達にも、迷惑をかけてしまうな。
でも、僕が犯されているのを見ても見ないフリした奴いたよね?
空気を読んで、一緒に笑ってた奴いたよね?
唆されて僕を犯した奴もいる。
1年も、僕の噂を聞いてバカにしたよね?
なら、いいよな?
最近、コイツは『彼女ができた。結婚するかも』と言っていた。相手は大人しそうな可愛い女性。こんな男と結婚したら、間違いなくDVを受けるだろう。
『結婚しても、“彼女とは出来ないプレイ”でたっぷり遊んでやるからな』
僕を膝の上で揺さぶりながら、チームメイトと笑っている。いつもの風景だから、誰も、何も言わない。
外面はいいからね。
選手としても人気が高く、テレビへの出演も目立ってきた。
次は日本代表の合宿にも呼ばれる可能性が高いと聞いた。
あぁ、今だ。と思った。
僕がコイツのいるチームに加入したことで、『好意を持って自分を追いかけて来た』と思ったみたいだ。男は僕に気を許すようになっていた。
夜の繁華街で酒に酔わせて、出血量を増やしてやろう。
なるべく大事にするんだ。
通行人に、僕が犯されているところと、僕がコイツを刺すところを見てもらえば、間違いなく大きなニュースになる。
世間は、勝手にこの男を『殺して』くれるだろう。
まぁ、僕もタダでは済まないだろうけど。
両親には申し訳ないな。
プロになって、あんなに喜んでくれたのに。
裏通りなのは残念だけど、やっぱりコイツは僕を犯し始めた。
「っ…」
後ろから引き抜かれた『卑猥な形のナイフ』を握りしめ、汚い壁に縋るように耐える。
…まるで僕みたいに、汚れてひび割れている。
誰か通らないかな。
まぁ、目撃者がいなくても、今夜決行する。
そう思っていたら。
背後でガチャン、と重い扉が開いた。
店のスタッフが、ゴミを捨てに出て来たみたいだ。
その時、僕に腰を打ち付けていた男の動きが止まった。
「……工藤?」
僕からズルリと引き抜くと、
男は、その男性に近づいていく。
「……間宮…か?」
その人は、僕が会いたくて、謝りたくて仕方なかった、工藤さんだった。
「やらない。離せ…!」
酔った男は、工藤さんにも僕を犯させようとしている。
「いいのかよ。店員が暴力事件を起こしたら、この店に迷惑がかかるんじゃないか?」
『またオレを殴るのか?』と押し退けようとした工藤さんの動きを止める言葉を投げつけた。
男は工藤さんのズボンを脱がせようとする。
彼が弱々しく抵抗すると、腹や背中を蹴り、彼から奪ったネクタイで後ろ手に縛ってしまった。
「ウソだろ?まじかよ工藤…」
ついに下半身を剥かれ、地面に倒れた工藤さんを見て、男は狂ったように笑った。
「ははははは!お前、オンナノコになってんじゃん!ホモなだけじゃなくて、オカマだったの?」
酷い言葉を放つ男に、『交通事故で性器を失った』と、工藤さんは答えた。
ウソ…。
神様はこの人から一体どれだけ奪うんだ。
上着を脱いで、チームのジャージ姿になると、男は工藤さんに見せつけるように僕を犯し始めた。
プロの選手になったこと。
男としての機能。
彼が失ったものを、わざと誇示するように。
僕の中の憎しみが、限界を超えた。
身体が震え出す。
「じゃあ、こういうことも、もう出来ないのか?残念だなぁ。『奈津』に酷いことをしたからバチが当たったのかもな?」
工藤さんがゴミを捨てようとしていたダストボックスに座り、下から僕は突き上げられている。
「高校・大学バスケ界のエース様だったお前がなぁ。まさかこんなところで『オンナノコ』になってるとはねぇ」
酔った頭で得意げに、工藤さんを傷つける言葉をベラベラ話し始めた男は気づかない。
僕の『変化』に。
それと、工藤さんが出てきた店の裏口が少しだけ開き、誰かがこちらを見ていることに。
スマホをこちらに向け始めたから、たぶん動画を撮っているみたいだ。
スタッフが暴行を受けた証拠に、犯人の顔を撮影しているのかも。
しかも防犯カメラがある。
神様はいたんだなぁ。
まぁ、例えネットに晒す目的で撮影してるのだとしても、もういいや。
ここは薄暗いから、動画には工藤さんの顔も、たぶん僕の顔も写ってない。
大声で捲し立てるこの男の顔は、隣にあるラブホの看板の光に照らされてしっかり写っているだろう。
工藤さんが性器を失ったのなら、この男からも奪ってやればよかったな。
尻の中に鞘から出したナイフを下向きで仕込んでおけばよかった。
ちんぽに刺さって面白いことになっただろう。
僕の耳にはもう、この男の不快な声は入ってこなかった。
ここでやろうと思っていたけど、工藤さんが働くお店に迷惑がかかってしまう。
決めた。
なるべく人が多いところで、この男の太腿を刺すのだ。
この男が二度とバスケをできないように。
走れないように。
僕は男に下から突き上げられながら、上着に隠したナイフを手のひらで確かめる。
これで『最後だ』と思ったら、
自然と口から甘い声が漏れ出した。
僕が、お前から、奪ってやるよ。
あの男に負けないくらい速く走れるようになった。
抑圧され、萎縮していた後輩達も解放され、僕達は実力で全国優勝を果たした。
あの男と同じチームに入団が内定すると、コーチは得意げに僕のことを触れ回った。
『オレが育てた教え子が2年連続でプロになる』のだと。
確かにお前の指導は的確だった。
でも、僕にバスケの基礎を教え、育ててくれたのは先生だ。僕の初恋の人。
お前じゃない。
僕がこれからすることは、コイツへの復讐でもある。僕を騙し、工藤さんを陥れた。絶対に許さない。
監督もコーチが言ったことを鵜呑みにした。
僕の言葉を聴いてくれたこともない。
先生に迷惑がかかっちゃうかな?
もう僕のことなんて覚えていないだろうけど。
後輩達にも、迷惑をかけてしまうな。
でも、僕が犯されているのを見ても見ないフリした奴いたよね?
空気を読んで、一緒に笑ってた奴いたよね?
唆されて僕を犯した奴もいる。
1年も、僕の噂を聞いてバカにしたよね?
なら、いいよな?
最近、コイツは『彼女ができた。結婚するかも』と言っていた。相手は大人しそうな可愛い女性。こんな男と結婚したら、間違いなくDVを受けるだろう。
『結婚しても、“彼女とは出来ないプレイ”でたっぷり遊んでやるからな』
僕を膝の上で揺さぶりながら、チームメイトと笑っている。いつもの風景だから、誰も、何も言わない。
外面はいいからね。
選手としても人気が高く、テレビへの出演も目立ってきた。
次は日本代表の合宿にも呼ばれる可能性が高いと聞いた。
あぁ、今だ。と思った。
僕がコイツのいるチームに加入したことで、『好意を持って自分を追いかけて来た』と思ったみたいだ。男は僕に気を許すようになっていた。
夜の繁華街で酒に酔わせて、出血量を増やしてやろう。
なるべく大事にするんだ。
通行人に、僕が犯されているところと、僕がコイツを刺すところを見てもらえば、間違いなく大きなニュースになる。
世間は、勝手にこの男を『殺して』くれるだろう。
まぁ、僕もタダでは済まないだろうけど。
両親には申し訳ないな。
プロになって、あんなに喜んでくれたのに。
裏通りなのは残念だけど、やっぱりコイツは僕を犯し始めた。
「っ…」
後ろから引き抜かれた『卑猥な形のナイフ』を握りしめ、汚い壁に縋るように耐える。
…まるで僕みたいに、汚れてひび割れている。
誰か通らないかな。
まぁ、目撃者がいなくても、今夜決行する。
そう思っていたら。
背後でガチャン、と重い扉が開いた。
店のスタッフが、ゴミを捨てに出て来たみたいだ。
その時、僕に腰を打ち付けていた男の動きが止まった。
「……工藤?」
僕からズルリと引き抜くと、
男は、その男性に近づいていく。
「……間宮…か?」
その人は、僕が会いたくて、謝りたくて仕方なかった、工藤さんだった。
「やらない。離せ…!」
酔った男は、工藤さんにも僕を犯させようとしている。
「いいのかよ。店員が暴力事件を起こしたら、この店に迷惑がかかるんじゃないか?」
『またオレを殴るのか?』と押し退けようとした工藤さんの動きを止める言葉を投げつけた。
男は工藤さんのズボンを脱がせようとする。
彼が弱々しく抵抗すると、腹や背中を蹴り、彼から奪ったネクタイで後ろ手に縛ってしまった。
「ウソだろ?まじかよ工藤…」
ついに下半身を剥かれ、地面に倒れた工藤さんを見て、男は狂ったように笑った。
「ははははは!お前、オンナノコになってんじゃん!ホモなだけじゃなくて、オカマだったの?」
酷い言葉を放つ男に、『交通事故で性器を失った』と、工藤さんは答えた。
ウソ…。
神様はこの人から一体どれだけ奪うんだ。
上着を脱いで、チームのジャージ姿になると、男は工藤さんに見せつけるように僕を犯し始めた。
プロの選手になったこと。
男としての機能。
彼が失ったものを、わざと誇示するように。
僕の中の憎しみが、限界を超えた。
身体が震え出す。
「じゃあ、こういうことも、もう出来ないのか?残念だなぁ。『奈津』に酷いことをしたからバチが当たったのかもな?」
工藤さんがゴミを捨てようとしていたダストボックスに座り、下から僕は突き上げられている。
「高校・大学バスケ界のエース様だったお前がなぁ。まさかこんなところで『オンナノコ』になってるとはねぇ」
酔った頭で得意げに、工藤さんを傷つける言葉をベラベラ話し始めた男は気づかない。
僕の『変化』に。
それと、工藤さんが出てきた店の裏口が少しだけ開き、誰かがこちらを見ていることに。
スマホをこちらに向け始めたから、たぶん動画を撮っているみたいだ。
スタッフが暴行を受けた証拠に、犯人の顔を撮影しているのかも。
しかも防犯カメラがある。
神様はいたんだなぁ。
まぁ、例えネットに晒す目的で撮影してるのだとしても、もういいや。
ここは薄暗いから、動画には工藤さんの顔も、たぶん僕の顔も写ってない。
大声で捲し立てるこの男の顔は、隣にあるラブホの看板の光に照らされてしっかり写っているだろう。
工藤さんが性器を失ったのなら、この男からも奪ってやればよかったな。
尻の中に鞘から出したナイフを下向きで仕込んでおけばよかった。
ちんぽに刺さって面白いことになっただろう。
僕の耳にはもう、この男の不快な声は入ってこなかった。
ここでやろうと思っていたけど、工藤さんが働くお店に迷惑がかかってしまう。
決めた。
なるべく人が多いところで、この男の太腿を刺すのだ。
この男が二度とバスケをできないように。
走れないように。
僕は男に下から突き上げられながら、上着に隠したナイフを手のひらで確かめる。
これで『最後だ』と思ったら、
自然と口から甘い声が漏れ出した。
僕が、お前から、奪ってやるよ。
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