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幕間 2
実験
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「やだなぁ、兄さん。わざとじゃないってば」
…わざとだけど。
『騒音』がすごい僕の実験室。
地下にあるとはいえ、LEDの白色光でこの部屋は明るい。
兄さんは相変わらず完璧な容姿だ。
艶やかな黒髪。
美しい顔。
背が高く、手足は長い。
一見細身に見えるのに、僕を簡単に抱き上げ、『検体』を軽々と抑えつけて運ぶ筋力を持っている。
『完璧な美』
悪魔がいたら、きっとこんな姿だろう。
そんな非科学的な存在、信じてはいなかったけど、兄さんを見ていると『ここにいる』と錯覚しそうになる。
その姿を鑑賞するために、わざとこの部屋の明度を上げていると言っても過言ではない。
いつも何を考えているかわからないこの人の『怒り』が伝わってくる。
この表情が見たかったんだよ。
僕たち兄弟にさえ、人形のような兄さん。
普通の人は気づかないだろうけど、僕にはその変化がわかる。
「スタンガンごときで、お前が作った発信機が壊れるはずないでしょう」
わぁ、信頼がうれしいなぁ。
僕の制作物を、そんなに信じてくれているなんて。
「構って欲しいならそう言いなさい」
そこまでバレてるのか。
「ごめんなさい。そんなに大事な相手に使うものだと思ってなかったんだよ」
わー、嘘だってバレてる。
睨まれてるのがわかるぞ。
兄さんがおかしくなったのは中3の頃。
当時の僕はまだ小学生だったから、兄さんを不気味で怖い存在だと敬遠していた。
僕が知る限り、初めてお祖父様に『お願い事』をしていた。それは、『誰か』を守るための願いだったらしい。
『無自覚だろうけどあれは初恋だな』って、一番上の兄さんが言ってたっけ。
この前下腹部を刺されて入院したのも、その相手のためだったと聞いた。
この兄も人間だったのだとホッとしたような、ガッカリしたような。
そういえば、その人の好みに合うように、性器を何度も改造したと聞いた。兄さんのそういう所は好きだな。
元々キレイな形だったから『もったいない』と思っていたけど、今の形を触らせてもらったら確かに『気持ちよさそう』だった。
いつか試してみたい。
「今、スタンガンの耐久実験をしてるところだから。この検体が耐え切れば、5人目だよ」
『検体』というのは、この部屋で『騒音』の原因となっている男のことだ。
天井から両手を一纏めに拘束してぶら下げてある。床からの枷と長さ40センチの鉄パイプで、肩幅に開かせた脚も動かすことは出来ないはずだが、暴れようとするたびにガシャガシャうるさい。
目隠しと特殊な耳栓で、視覚と聴覚を完全に奪ってあるからパニックを起こしているのだろう。
尿道からのカテーテルは、ビニールバッグにつながっているから安心だ。
腹の中には僕が作ったバイブレーション機能付きのGPS発信機を挿れてある。
テストとして1時間に一回、僕と兄さんのスマホに位置情報を送り続けている。
定期的にスタンガンを腹に当てて、試験機が破損しないか実験しているところだ。
「5万から100万ボルトの電圧まで、5段階で各20回ずつ。本当はもっと回数が欲しいところだけど、『検体』が死んだら困るからねぇ。とりあえず明日は24時間バイブレーション耐久実験を行う予定だよ」
快楽と痛みを1日おきに与える予定だ。
痛みばかりでは『検体』の反応がつまらなくなる。
この世には『どうしようもない人間』が存在する。それは例えば、治る見込みのない『性犯罪者』であったり、失うものがない所謂『無敵の人』であったりする。
彼ら本人が『死刑』を望んで他人の人権を損ったのだから、『この扱い』に文句はないはずだ。
そういった人材を有効活用しなきゃ勿体無いもんね。
そろそろ『検体』を休ませないとダメだな。
獣のように叫んだり、唸ったりするけど、人間の言葉を話さなくなってきたから、脳にも影響が出てきたのかもしれない。
鼻から差したチューブに流動食を使う。
あぁ、つい忘れちゃうな。
喉に通したチューブが邪魔で喋れないのか。
ゆっくり流し込むから、時間がかかりそうだ。
「僕の部屋で構ってくれるなら、もっとバイブレーション機能を充実させるよ?」
兄さんが興味を持ったのがわかる。
「…上に行こう」
あぁ。本当に人間らしくなったなぁ。
階段を昇る僕が寝不足でふらついたら、身体を支えてくれた。
大好きな兄さん。
あなたを変えた、『大事な人』に会ってみたいな。
…わざとだけど。
『騒音』がすごい僕の実験室。
地下にあるとはいえ、LEDの白色光でこの部屋は明るい。
兄さんは相変わらず完璧な容姿だ。
艶やかな黒髪。
美しい顔。
背が高く、手足は長い。
一見細身に見えるのに、僕を簡単に抱き上げ、『検体』を軽々と抑えつけて運ぶ筋力を持っている。
『完璧な美』
悪魔がいたら、きっとこんな姿だろう。
そんな非科学的な存在、信じてはいなかったけど、兄さんを見ていると『ここにいる』と錯覚しそうになる。
その姿を鑑賞するために、わざとこの部屋の明度を上げていると言っても過言ではない。
いつも何を考えているかわからないこの人の『怒り』が伝わってくる。
この表情が見たかったんだよ。
僕たち兄弟にさえ、人形のような兄さん。
普通の人は気づかないだろうけど、僕にはその変化がわかる。
「スタンガンごときで、お前が作った発信機が壊れるはずないでしょう」
わぁ、信頼がうれしいなぁ。
僕の制作物を、そんなに信じてくれているなんて。
「構って欲しいならそう言いなさい」
そこまでバレてるのか。
「ごめんなさい。そんなに大事な相手に使うものだと思ってなかったんだよ」
わー、嘘だってバレてる。
睨まれてるのがわかるぞ。
兄さんがおかしくなったのは中3の頃。
当時の僕はまだ小学生だったから、兄さんを不気味で怖い存在だと敬遠していた。
僕が知る限り、初めてお祖父様に『お願い事』をしていた。それは、『誰か』を守るための願いだったらしい。
『無自覚だろうけどあれは初恋だな』って、一番上の兄さんが言ってたっけ。
この前下腹部を刺されて入院したのも、その相手のためだったと聞いた。
この兄も人間だったのだとホッとしたような、ガッカリしたような。
そういえば、その人の好みに合うように、性器を何度も改造したと聞いた。兄さんのそういう所は好きだな。
元々キレイな形だったから『もったいない』と思っていたけど、今の形を触らせてもらったら確かに『気持ちよさそう』だった。
いつか試してみたい。
「今、スタンガンの耐久実験をしてるところだから。この検体が耐え切れば、5人目だよ」
『検体』というのは、この部屋で『騒音』の原因となっている男のことだ。
天井から両手を一纏めに拘束してぶら下げてある。床からの枷と長さ40センチの鉄パイプで、肩幅に開かせた脚も動かすことは出来ないはずだが、暴れようとするたびにガシャガシャうるさい。
目隠しと特殊な耳栓で、視覚と聴覚を完全に奪ってあるからパニックを起こしているのだろう。
尿道からのカテーテルは、ビニールバッグにつながっているから安心だ。
腹の中には僕が作ったバイブレーション機能付きのGPS発信機を挿れてある。
テストとして1時間に一回、僕と兄さんのスマホに位置情報を送り続けている。
定期的にスタンガンを腹に当てて、試験機が破損しないか実験しているところだ。
「5万から100万ボルトの電圧まで、5段階で各20回ずつ。本当はもっと回数が欲しいところだけど、『検体』が死んだら困るからねぇ。とりあえず明日は24時間バイブレーション耐久実験を行う予定だよ」
快楽と痛みを1日おきに与える予定だ。
痛みばかりでは『検体』の反応がつまらなくなる。
この世には『どうしようもない人間』が存在する。それは例えば、治る見込みのない『性犯罪者』であったり、失うものがない所謂『無敵の人』であったりする。
彼ら本人が『死刑』を望んで他人の人権を損ったのだから、『この扱い』に文句はないはずだ。
そういった人材を有効活用しなきゃ勿体無いもんね。
そろそろ『検体』を休ませないとダメだな。
獣のように叫んだり、唸ったりするけど、人間の言葉を話さなくなってきたから、脳にも影響が出てきたのかもしれない。
鼻から差したチューブに流動食を使う。
あぁ、つい忘れちゃうな。
喉に通したチューブが邪魔で喋れないのか。
ゆっくり流し込むから、時間がかかりそうだ。
「僕の部屋で構ってくれるなら、もっとバイブレーション機能を充実させるよ?」
兄さんが興味を持ったのがわかる。
「…上に行こう」
あぁ。本当に人間らしくなったなぁ。
階段を昇る僕が寝不足でふらついたら、身体を支えてくれた。
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