痛みと快楽

くろねこや

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本編 2 後日譚

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「奈津。お願いがあります」

オーナーの自宅で縛ってもらった日のことだ。

今夜は目隠しをされている。
そのせいか、真剣な声の響きでさえ耳に甘い刺激を与えてくれる。

「は…い」

縛られて、玩具で高められた後ろはヒクヒクと痙攣けいれんしている。早く挿れてほしい。

「セックスが得意ではない子がいまして、奈津にその子の手解きをしてあげてほしいのです」

「てほ…どき? いい…ですよ」

舌が回らない。



少し経ってガチャ、とドアが開き、誰かがオーナーに連れられて部屋に入ってきた。


「まずはローションからです。やり方は教えましたね?」

返事の声がしないまま、パチンとボトルの蓋を開く音がした。

「ゆびを…いっぽんずつ…いれて…ください」

やはり返事はない。
不安に思っていると、ヌッと指が入ってきた。

ちゃんと1本だ。

「ぬきさし…して、なじんだら…ゆびをふやして」

ヌチュ、ヌチュ、と抜き差しされ、少しずつ指が増えていく。


「んっ…、も…、だいじょうぶ…です」


本当はオーナーに挿れてほしかったけど、ここまで『欲しい』状態にされたら、オーナーのお願いを断る理由はなかった。

「この子は事情があって、口を開くことを許していません。なので、奈津が感じていることを全て伝えてあげてほしいのです」

返事がない理由がわかった。

「わかり…ました。ゆび…ひらいて、あなを…ひろげて、ぬいた…しゅんかんに…そのままナカに…きて」

後ろの力を抜くと、指が出ていった瞬間、冷たく硬い感覚が入ってきた。

ディルドのようだ。

ズプププ、

ちんぽが来ると思っていたから、無機質なソレに驚きつつも、溶かされたナカは喜んでそれを受け入れていく。

「ん…」

「動いていいですか? 奈津」

オーナーの声が心地よくて、ついコクコクと頷いてしまう。

「うごいてほしい…です」

ヌルリヌルリと恐る恐るのゆっくりした抽挿。

「ん…、んっ…、」

「どこを突いて欲しいか言えますか?」

オーナーの声に思わず、

「おなかのほう、…コリコリしたところに、カリをあてながら…こすってほしい…です」

ゴリッ、

「あぁ!!」

オレの声に、ビクッとしたように引き抜かれてしまう。

「まって…。ぬかないで…」

指示通りに恐る恐る戻ってきてくれた。

「はじめは…ゆっくり。…そう」

ヌルー、ヌルー、

「ナカが…かたち…おぼえたから、…スピードをあげて…」

ヌチュ、ヌチュ、

「はげしく…して…。さっきのコリコリを…こすりながら…っ、そうっ、そこ。そこ…もっと…つよく…こすって」

ズチュ、ズチュ、ズチュ、ズチュ、

「あっ…、あん…、いぃ…、そこ…もっとついて…」

ゴチュ、ズチュ、ズチュ、

「おくっ、おくもっと! もっとついて!」

ゴチュ、ゴチュ、ゴチュッ、

「いぃ…! きもちぃ…! もっとください…!」

ゴチュッ、ゴチュッ、ゴチュッ、

「あっ…、あぁ…、あん、あっ、そこっ、ダメッ! あっ! あっ! ああぁ!!!」

オレが達すると、すぐに出ていってしまう。

「まって…。しばらく、なかに…いて。いちばん…ふかいところに、…そう、じょうずだよ…」

おずおずと戻ってきてくれた。


「気持ちいいですか? 奈津」

「はい。きもち…いいです」


その時だった。

オレの頬に、熱いものがポタ、ポタ、と落ちてきた。

「っ…、ふっ…、」

泣いている?

声を堪えて、苦しそうな息。


「オーナー。なわ…といてください」

「ええ。すぐに」

痺れた腕をグーパーしてなおす。

手を伸ばして、泣いている相手を手探りで引き寄せ、開いた両脚で、腰を引き寄せて、全身で包み込む。
腰にはベルトが巻かれているようだった。

「上手だったよ。気持ちよくしてくれて、ありがとう」

背中を撫でてあげる。
ナカのちんぽは作り物だから、何の反応もなかった。

だけど、

「ぅ…、っうぅ…、」

抱きしめた身体は熱くなっていて、震えて、大粒の涙が頬にポタポタ落ちてくる。

相手もオレを抱きしめてくれた。

今までよほどツラかったんだろう。

背中の筋肉がついて、腰も引き締まった人だ。

目隠しで見えないけど、涙に濡れた頬や鼻、唇に触れてみるとやっぱり男性だとわかる。
時折漏れ出る声も低い。



しばらく抱き合っていると、

「…さて、そろそろ部屋に戻りなさい」

オーナーの優しい声がした。


相手の男が、オレの頬と唇に触れる。

抱きしめた身体の力をゆるめると、身体が離れていき、結合がズルリと解ける。



「…ありがとう、奈津。…今まで本当に…ごめんなさい」

それは、知っている声だった。

出会ったばかりの頃を思い出す、優しい声。
桜が咲いた道。急に吹き抜けた風で飛んでしまった書類を、拾ってくれた人。

「…工藤先輩?」

相手はそれ以上何も言わない。
頭をくしゃりと撫でる大きな手。

『すきだよ』、と声が聞こえた気がした。






パタン。

ドアが閉まる音がして、足音が遠ざかっていった。


あの声は、…違う。





『今日からコイツをオレ達の『肉便器』にする』

怖くて、汚くて、嫌な声。

『エロ漫画みたいで面白いだろ?』とわらう、声。

あれ…は?

あの嫌な声は…。

 ……おかしい。
その男の名前だけモヤがかかったように思い出せない。マネージャーだからと、部員全員の名前を覚えさせられたはずなのに。






ずっと憎くて仕方なかった

あの男は、

工藤先輩じゃ、なかった。
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