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本編 1
6 相棒
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佐久間の誘いに乗り、『別れさせ屋』を始めて約1年。
オレは、今回も依頼人の女性からストーカー男を引き離すことに成功した。
……のだが、今度はオレがそのストーカー男から付き纏われるようになっていた。
これまで何度も同じことがあった。
だが、オレが身を隠す、または佐久間に『説得』されれば諦めてくれた。
しかしその男は何故かオレがどこにいても居場所を特定してくる。
おかしなアプリを入れられたかとスマホを初期化しても機種変しても、知らないうちに仕掛けられていた盗聴器やGPSを破壊しても、いつの間にか隣にいて愛を囁いてくる。
気持ち悪い手紙を送ってくるとか、襲いかかられるとか、そういった被害はない。
ただ、『好意を伝えられるだけ』。
事務所を知られているから、帰りに尾行されればすぐ家など特定できてしまうのだろうが、いつ、どこにいたかを細かく分単位で把握されているとさすがに気持ち悪い。
男の容姿が整いすぎていて、作り物じみているのがさらに不気味さを増す。実は人間ではなく、悪魔なのではないかと本気で疑ってしまうほどに。
しかもどこで調べるのか、必ずオレの好物を差し入れてくる。その日ちょうど食べたいと思っている物を外すことなく買ってくるのだ。始めは警戒していたのだが、安全だと分かってからは、つい食べてしまう。ーー美味いなコレ。
『好きだ』、『綺麗だ』、『可愛い』、『付き合って』、『愛してる』。
男相手にどうかしてると思うが、決してネガティブなことは言われない。
見た目は良い男に、毎日餌付けされる。
少しずつ絆されてしまいそうだ。
探偵事務所の所長となった元刑事・佐久間は、この男の調査能力を評価した。
なんと、所長はこの男も事務所にスカウトしたのだ。
オレの『相棒』として。
コイツが凄いのは、所長が食べたいものも、ちゃんと買ってくるところだ。
まさか所長も餌付けされてしまったのか?と思っていたら、オレが知らないところで『採用試験』をしていたらしく、合格だったそうだ。
年齢はオレの一歳違いだった。
年上ではなく、年下。
迫力があるせいか、5歳くらい年上だと思っていた…。
堂々とオレの隣にいられるようになったことで、『不気味なストーカー男』こと海堂 慎一郎は『不気味だが頼れる相棒』に変わった。
いや、昼間から口説いてキスを迫ってくる『迷惑な相棒』だ。名前通り少しは慎みやがれ。
『オレを裏切らない』という点においては、この男以上に心強い相手はいなかった。
いや…オレを困らせて嬉しそうに微笑むのを見たことがあるから、安心はできない。
所長の佐久間は『ボス』、海堂は『シン』、オレは奈津だから『ナツ』とニックネームで呼び合うことになった。
……いや、オレのは本名だな。
ーーーオレはまだ『あの店』にも籍を置いている。
時々、オーナーに縛ってもらいたくなるとシフトを入れてもらうのだ。
店の仲間たちは突然のシフト変更にも嫌な顔ひとつせず、身勝手なオレを受け入れてくれている。当日の出演回数が1回減ってしまうというのに。
しかも何故か分からないが、仲間たちはステージの裏でオレを抱きしめ、頭を撫でてくれる。彼らの腕に包まれていると落ち着いて穏やかな気持ちになれた。
オーナーが当日SNSで知らせるだけで、いつものお客様たちが、こんなオレのために集まってくれるのも涙が出そうに嬉しかった。
オレは、今回も依頼人の女性からストーカー男を引き離すことに成功した。
……のだが、今度はオレがそのストーカー男から付き纏われるようになっていた。
これまで何度も同じことがあった。
だが、オレが身を隠す、または佐久間に『説得』されれば諦めてくれた。
しかしその男は何故かオレがどこにいても居場所を特定してくる。
おかしなアプリを入れられたかとスマホを初期化しても機種変しても、知らないうちに仕掛けられていた盗聴器やGPSを破壊しても、いつの間にか隣にいて愛を囁いてくる。
気持ち悪い手紙を送ってくるとか、襲いかかられるとか、そういった被害はない。
ただ、『好意を伝えられるだけ』。
事務所を知られているから、帰りに尾行されればすぐ家など特定できてしまうのだろうが、いつ、どこにいたかを細かく分単位で把握されているとさすがに気持ち悪い。
男の容姿が整いすぎていて、作り物じみているのがさらに不気味さを増す。実は人間ではなく、悪魔なのではないかと本気で疑ってしまうほどに。
しかもどこで調べるのか、必ずオレの好物を差し入れてくる。その日ちょうど食べたいと思っている物を外すことなく買ってくるのだ。始めは警戒していたのだが、安全だと分かってからは、つい食べてしまう。ーー美味いなコレ。
『好きだ』、『綺麗だ』、『可愛い』、『付き合って』、『愛してる』。
男相手にどうかしてると思うが、決してネガティブなことは言われない。
見た目は良い男に、毎日餌付けされる。
少しずつ絆されてしまいそうだ。
探偵事務所の所長となった元刑事・佐久間は、この男の調査能力を評価した。
なんと、所長はこの男も事務所にスカウトしたのだ。
オレの『相棒』として。
コイツが凄いのは、所長が食べたいものも、ちゃんと買ってくるところだ。
まさか所長も餌付けされてしまったのか?と思っていたら、オレが知らないところで『採用試験』をしていたらしく、合格だったそうだ。
年齢はオレの一歳違いだった。
年上ではなく、年下。
迫力があるせいか、5歳くらい年上だと思っていた…。
堂々とオレの隣にいられるようになったことで、『不気味なストーカー男』こと海堂 慎一郎は『不気味だが頼れる相棒』に変わった。
いや、昼間から口説いてキスを迫ってくる『迷惑な相棒』だ。名前通り少しは慎みやがれ。
『オレを裏切らない』という点においては、この男以上に心強い相手はいなかった。
いや…オレを困らせて嬉しそうに微笑むのを見たことがあるから、安心はできない。
所長の佐久間は『ボス』、海堂は『シン』、オレは奈津だから『ナツ』とニックネームで呼び合うことになった。
……いや、オレのは本名だな。
ーーーオレはまだ『あの店』にも籍を置いている。
時々、オーナーに縛ってもらいたくなるとシフトを入れてもらうのだ。
店の仲間たちは突然のシフト変更にも嫌な顔ひとつせず、身勝手なオレを受け入れてくれている。当日の出演回数が1回減ってしまうというのに。
しかも何故か分からないが、仲間たちはステージの裏でオレを抱きしめ、頭を撫でてくれる。彼らの腕に包まれていると落ち着いて穏やかな気持ちになれた。
オーナーが当日SNSで知らせるだけで、いつものお客様たちが、こんなオレのために集まってくれるのも涙が出そうに嬉しかった。
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