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本編 1
5 探偵
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探偵といっても、オレの役割は『浮気調査』や『ペット探し』などではなかった。
オレの仕事は所謂『別れさせ屋』と呼ばれるものだ。
例えば、『妻とその浮気相手を別れさせたい』という依頼。オレはその妻に近づき、浮気相手よりオレに夢中にさせる。完全に落ちたところでオレは姿を消す。
例えば、ストーカーに遭っている女性がいたとする。オレはそのストーカーに近づき、友人や恋人になる。関係が深まると、ストーカーにとって優先順位はオレの方が上になる。
すると、ターゲットは徐々にその女性から関心を失っていくのだ。
ターゲットがSNSに投稿している内容、フォローしている相手を見れば、『いつも食べているもの』『見ている映画』『欲しがっているもの』などがわかる。
その情報をきっかけにして相手と自然に知り合い、仲が深まってきたところで一度距離をとるのだ。
『また会いたい』と相手に思わせればほとんど成功したようなもの。
ターゲットのことを考え、時間をかけ、相手に執着される。かかるコストの割に、かなりリスクが高い仕事だ。
正直、店で働いていた方が趣味と実益を兼ねていた。
普通のバイトではひと月働かないと稼げないほどの大金を、一晩で稼げるのも魅力的だった。
だがそれ以上に、『あの店』でしか得られないものがある。
たくさんの観客の前で服を脱ぎ、全てをさらけだした姿でオーナーに縛ってもらう。
彼の『作品』になり、人間でなくなったオレは、大勢の男達に身体を舐められ、撫でられ、玩具で遊ばれ、苛まれ、貫かれ、揺さぶられ、狂いそうなほどの快感を与えられる。
彼らはオレの『欲しがっているもの』をたくさん与えてくれるのだ。
だが、姉『新島 美夜』の名前を出されたオレは、元刑事・佐久間の誘いを断れなかった。
姉はオレが中学3年の時に、朝、学校に行こうと自宅を出たところで、待ち伏せていたストーカーの男に腹を刺された。そのせいで外に出るのが怖くなり、引きこもりになってしまったのだ。
「精神鑑定って何なんだろうな? 7年前に君のお姉さんを襲った男が……また『無罪』になったよ」
男の言葉にオレの心臓のあたりがドクリと鳴った。
「あの男がガキの頃からずっと母親から虐待を受けていたことは知っている。だが、ヤツには『責任能力がある』。医者がどう診断しようと、ヤツの行動をずっと追っかけてたオレにはわかる」
姉を襲った犯人は逮捕された後、精神鑑定の結果『無罪』となっていた。
ヤツはまた別の女性を襲ったらしい。
「『刑事』が捕まえたら、また同じことの繰り返しだ。……オレは『探偵』として依頼人を最後まで守る。『あの男』のようなヤツらは必ず捕まえて……」
『同じ目に遭わせる』
佐久間の言葉は本気のようだった。
「…もちろん穏便に済むならそれに越したことはない。そこで、君の出番というわけだ」
『別れさせ屋』のいいところは、客からオレに関心を移すことで客の安全が守られることだろう。
ストーカーは、警察に訴えれば、一度は『離れられる』。
だが、離れている時間を『愛の深さを試すための試練』だと思い込んだり、逆恨みしたりすることで余計にヤツらの執着は深まってしまう。
接近禁止命令を下されようと、ヤツらには関係のないことだ。姉を襲ったストーカー野郎のように、『手に入らないくらいならいっそ殺そう』ということになりかねない。
「佐久間さんも……、あぁ、あんたには無理か…」
男はオレの目には『インテリヤクザ』のようにしか見えなかった。
スーツこそ地味だが、背が高く、隙がなく、目が鋭すぎる。
「オレは『力仕事専門』だ」
相手を力ずくで捻じ伏せる担当らしい。
見た目でビビって逃げるような小物相手にも、その見た目は役立つそうだ。
「君は性別問わず好まれそうな見た目をしている。まぁ、良い人間、良くない人間のどちらにも好まれそうだが……」
まぁ、何かあれば相手を捕まえてくれるらしいし、性犯罪者に『同じ目に遭わせる』というのは大賛成だ。
オレは佐久間の誘いに乗ることにした。
オレの仕事は所謂『別れさせ屋』と呼ばれるものだ。
例えば、『妻とその浮気相手を別れさせたい』という依頼。オレはその妻に近づき、浮気相手よりオレに夢中にさせる。完全に落ちたところでオレは姿を消す。
例えば、ストーカーに遭っている女性がいたとする。オレはそのストーカーに近づき、友人や恋人になる。関係が深まると、ストーカーにとって優先順位はオレの方が上になる。
すると、ターゲットは徐々にその女性から関心を失っていくのだ。
ターゲットがSNSに投稿している内容、フォローしている相手を見れば、『いつも食べているもの』『見ている映画』『欲しがっているもの』などがわかる。
その情報をきっかけにして相手と自然に知り合い、仲が深まってきたところで一度距離をとるのだ。
『また会いたい』と相手に思わせればほとんど成功したようなもの。
ターゲットのことを考え、時間をかけ、相手に執着される。かかるコストの割に、かなりリスクが高い仕事だ。
正直、店で働いていた方が趣味と実益を兼ねていた。
普通のバイトではひと月働かないと稼げないほどの大金を、一晩で稼げるのも魅力的だった。
だがそれ以上に、『あの店』でしか得られないものがある。
たくさんの観客の前で服を脱ぎ、全てをさらけだした姿でオーナーに縛ってもらう。
彼の『作品』になり、人間でなくなったオレは、大勢の男達に身体を舐められ、撫でられ、玩具で遊ばれ、苛まれ、貫かれ、揺さぶられ、狂いそうなほどの快感を与えられる。
彼らはオレの『欲しがっているもの』をたくさん与えてくれるのだ。
だが、姉『新島 美夜』の名前を出されたオレは、元刑事・佐久間の誘いを断れなかった。
姉はオレが中学3年の時に、朝、学校に行こうと自宅を出たところで、待ち伏せていたストーカーの男に腹を刺された。そのせいで外に出るのが怖くなり、引きこもりになってしまったのだ。
「精神鑑定って何なんだろうな? 7年前に君のお姉さんを襲った男が……また『無罪』になったよ」
男の言葉にオレの心臓のあたりがドクリと鳴った。
「あの男がガキの頃からずっと母親から虐待を受けていたことは知っている。だが、ヤツには『責任能力がある』。医者がどう診断しようと、ヤツの行動をずっと追っかけてたオレにはわかる」
姉を襲った犯人は逮捕された後、精神鑑定の結果『無罪』となっていた。
ヤツはまた別の女性を襲ったらしい。
「『刑事』が捕まえたら、また同じことの繰り返しだ。……オレは『探偵』として依頼人を最後まで守る。『あの男』のようなヤツらは必ず捕まえて……」
『同じ目に遭わせる』
佐久間の言葉は本気のようだった。
「…もちろん穏便に済むならそれに越したことはない。そこで、君の出番というわけだ」
『別れさせ屋』のいいところは、客からオレに関心を移すことで客の安全が守られることだろう。
ストーカーは、警察に訴えれば、一度は『離れられる』。
だが、離れている時間を『愛の深さを試すための試練』だと思い込んだり、逆恨みしたりすることで余計にヤツらの執着は深まってしまう。
接近禁止命令を下されようと、ヤツらには関係のないことだ。姉を襲ったストーカー野郎のように、『手に入らないくらいならいっそ殺そう』ということになりかねない。
「佐久間さんも……、あぁ、あんたには無理か…」
男はオレの目には『インテリヤクザ』のようにしか見えなかった。
スーツこそ地味だが、背が高く、隙がなく、目が鋭すぎる。
「オレは『力仕事専門』だ」
相手を力ずくで捻じ伏せる担当らしい。
見た目でビビって逃げるような小物相手にも、その見た目は役立つそうだ。
「君は性別問わず好まれそうな見た目をしている。まぁ、良い人間、良くない人間のどちらにも好まれそうだが……」
まぁ、何かあれば相手を捕まえてくれるらしいし、性犯罪者に『同じ目に遭わせる』というのは大賛成だ。
オレは佐久間の誘いに乗ることにした。
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