痛みと快楽

くろねこや

文字の大きさ
上 下
2 / 132
本編 1

2 ある男の視点(前編)

しおりを挟む
『SMクラブ Opusオーパス

昭和の匂いがする店内は、細かい彫刻を施された小さめの木製テーブルとレトロなソファ、ガラスのランプが美しい。

店の中央には直径4.5メートルくらいの円形ステージがあり、それを囲むように階段状になった客席が並ぶ。どの席からでもショーを観ながら酒を楽しめるようになっているのだ。

店名の『Opus』とはラテン語で『作品』を表すらしい。

ステージの上には、『作品』と呼ばれるドMを縛って吊るすためのはりと滑車があるが、今回は使わないようだ。



ネットで予約し、1時間単位で座席チケットを購入して入場する。

縛り方によって『作品』の制作にかかる時間が異なるため、日によってショーの回数と1回あたりのキャストの人数が変わるらしい。入店時間によってはショーの途中からになってしまうため、4時間分、なかにはオープンからクローズまで8時間分のチケットを買う常連客もいるそうだ。

その値段は前列にいくほど高くなる。

ーーーオーナーに『好きな席を』と招待されたが、店の全体を見たかったオレは、最後列の席を選んだ。



今日は全6回のステージが行われる日らしい。

オーナーはオレのために『初心者向けのソフトなやつにする』と言っていた。

これから始まるのは5回目のショーだ。
『目的の人物』が出演すると聞いて、この時間を選んだ。


スポットライトに照らされた黒いステージ。
そこには2人の若い男が裸で麻縄によって拘束されている。

自分で自身の股を開くように掴まされた左手と左脚、右手と右脚がそれぞれ縄で縛られており、ふくらはぎと腿も一纏めにされているせいで脚が閉じられないようにされている。

隣の席に座る男によると、『蟹縛り』と呼ばれる縛り方らしい。M字型に仰向けで開脚させられている状態だ。

オレが初めて訪れた客だと分かっているのだろう。聞いてもいないのに、詳しく解説してくれる。邪魔にならない音量で喋っているのでそのまま聞くことにする。

縛り方はオーナーの気分次第。
日によって変わるので、毎日通う常連もいるそうだ。

この店のオーナーによる『作品』は美しいと評判らしい。

その『制作過程』もこの店の見どころらしいのだが、オレが入店した時には既に仕上がっていた。

オレは無感動にそれを眺めていたが、隣の男にとっては、2人の男が対称に配置され、黒いステージと白い肌のコントラストに、肌に食い込む縄のバランスが見事だと感じるらしい。
写真や動画の撮影は不可だが、スケッチは許されているので、最前列でスケッチブックに鉛筆を走らせている客がいる。

縛られた力加減も絶妙らしく、紅潮した男達の顔は苦悶くもんに歪みながらも快感に溶けている。

開脚させられているせいで性器から尻の穴までが丸見えだ。
観客からの視線もスパイスになっているのだろう。したたる汗がライトに光り輝いている。

ステージの様子はテーブルのタブレットに映し出される。カメラを選択できるので、男達の喘ぐ表情、乳首、性器、アナルなど、好きな部位を拡大して見ることができた。


これから始まるショーの2人には、それぞれ『作品9』、『作品10』と名前が付けられている。
客は『作品』と喋ってはいけない。出させていいのは吐息と喘ぎ声だけだ。



店内の照明がさらに暗くなり、ステージがより強調される。怪しげな音楽が流れ始めると、店内の興奮が高まるのを感じた。
ショーの始まりだ。

座席チケットの他に、金・銀・銅色のチケットが売られており、客はいつでもタブレットから購入できる。
価格が違う3種類のチケットによって出来ることが異なり、購入するための条件は『作品』へ快感を与えること。

この店は『SM』をよく知らない人間がよくイメージするような、縛られて動けない人間を鞭で打ったり蝋燭を垂らしたりして『ただ一方的に痛めつければいい』というものではない。
オーナーが近くで見ていて、『作品』に暴力的な苦痛を与えたと判断されると出入り禁止になる。
ただし、その苦痛を快楽に変えられればOKらしい。『作品』と『常連客』の信頼感があれば、ディープな行為も可能だろう。

オーナーのこだわりでキスと口淫をさせることは禁止だ。

銅色チケットの購入者は『作品』のどこにでも触れることができる。
例えば乳首をつねったり、舐めたり、アナルを舐め溶かしたり、ペニスに吸い付いても『作品』は悦ぶ。足の指をふやけるほど舐めた客もいるらしい。
思わず『作品』にキスした者はオーナーによって出禁になるため、耳や頬を舐めながら生唾を飲み、堪える客もいるそうだ。

銀色は玩具おもちゃを使って『作品』で遊べる。
鞭で苛めてもいい。
ローターを性器に貼ってもナカに挿れてもいい。
バイブやディルドを抜き挿しして擬似セックスを楽しむのもいいし、挿れたまま放置してもいい。
貞操具で射精制限をして焦らしてもいい。
店内にあるものならなんでも使える。
玩具や挿入したい異物の持ち込みは事前にオーナーから許可を得ればOK。
以前、『作品』の肛門を花壺に見立てて、ナカに水を大量に注ぎ、花や木を生けた強者もいたらしい。尿道にも一輪挿したと聞きタマがヒュンとすくんだが、Mの男にとってはご褒美になるのだろうか?

金色は『作品』のアナルへ、ペニスの挿入が可能だ。
基本はコンドームの装着が条件。
ただし事前に性病の陰性結果を証明できるものを持参すれば許可証代わりの光るブレスレットが渡され、生での挿入・中出しが許される。
キャストが女性の場合も同じくアナルへの挿入が可能だ。もちろん女性器へ生でペニスを挿入することは厳禁。ゴムを装着するか、銀色チケットでの玩具や異物の挿入は許されているらしい。

この回の『作品』は2人とも金色チケットまで使用できるようだ。


隣の男は見たことがないそうだが、噂では金色の上に『ブラックチケット』と呼ばれるものがあるそうだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ヤンデレだらけの短編集

BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。 全8話。1日1話更新(20時)。 □ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡 □ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生 □アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫 □ラベンダー:希死念慮不良とおバカ □デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。 かなり昔に書いたもので、最近の作品と書き方やテーマが違うと思いますが、楽しんでいただければ嬉しいです。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

催眠アプリ(???)

あずき
BL
俺の性癖を詰め込んだバカみたいな小説です() 暖かい目で見てね☆(((殴殴殴

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

普通の男の子がヤンデレや変態に愛されるだけの短編集、はじめました。

山田ハメ太郎
BL
タイトル通りです。 お話ごとに章分けしており、ひとつの章が大体1万文字以下のショート詰め合わせです。 サクッと読めますので、お好きなお話からどうぞ。

処理中です...