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「斗真、一生のお願い!! これ付き合って!」
中学時代からの親友、夏弥がスマホの画面を見せてくる。
大学1年の夏休み。夏弥が人文系、オレが体育系と全く別々の大学に進んだものの、2人とも地元だから未だお互いの部屋に行き来している。
『限定3組なのに抽選に当たったの、凄くない!?』
昨日の夜、いきなりハイテンションなメッセージが届いた。
それは、こいつが高校生の頃から大好きなライトノベル『クリーチャーズマリッジ』シリーズをイメージしたコンセプトルームへの無料招待だった。
コンセプトルーム、といってもそれは『カラオケ』ではない。
ラブホの部屋なのだ。
カップル限定らしく、2人とも18歳以上であれば性別は問わないらしい。
作品への愛が深すぎて、恋人もいないのに『ついうっかり』応募してしまったそうだ。
「恋人のフリなんて、頼めるのお前だけなんだよ~!!」
こいつもオレもフリーだ。
特に引き受けても問題はないのだが……。
通称『クリ嫁』と呼ばれているこのシリーズは、女騎士やら聖女やらがゴブリンやオーク、触手などに陵辱されるという内容だ。
最後に必ずヒロインが化け物の嫁にされて終わるらしい。
正直オレは、そういうジャンルが苦手だった。
オレとこいつの共通の親友である結人は、このシリーズを高3の夏休みに12冊も押し付けられていた。
『受験生にとって大事な時期に、なんてものを渡してるんだ…』とオレは思ったのだが、結人は『けっこう面白かったよ』と、夏休みだけで読破していた。成績が優秀なのに、『家から一番近い』という理由で普通レベルの大学を受験した変わり者だ。先生が『もっと上を目指せるのにもったいない』と泣いていた。
「オレが『受け』でいいからさ~!!」
『受け』とは男同士のセックスで『受け入れる側』のことらしい。『攻め』がちんぽを入れる方で、『受け』の尻の穴に突っ込むのだとか。
BLというジャンルに出てくる言葉だそうだ。
こいつのライトノベルへの許容範囲が広すぎる。
散々話を聞かされているせいで、オレまで詳しくなってしまいそうだ。
部屋を『使用』した感想をアンケートで答えることが条件らしく、『ちゃんと行為をしなければならない』そうだ。モニターのようなものなのだろう。
「部屋のレンタルだけなら自力で行けるけど、『キャスト』まで頼むとオレのバイト代じゃ絶対に無理なんだよ~」
通常は部屋のみをレンタルするところ、玩具(大人向け)のプレゼントと、作中に登場する化け物の特殊メイクをされた役者が5人も付くそうだ。人件費を考えると、確かに自費ではかなりの高額になりそうだ。
そもそも、部屋の予約からなかなか取れないのではないだろうか。
化け物が出てくるシーンの再現なんて…。
オレは子どもの頃からお化け屋敷が苦手だから耐えられるか心配だ…。
だが、こいつの『一生のお願い』は初めてのことだ。よほど行きたいのだろう。
しかも『頼めるのはお前だけ』と言われてしまうと、できる限り叶えてやりたくなる。
ラブホの部屋を『使用』して夏弥が『受け』ということは、オレは彼を抱くのだろうか。
こいつはオタク臭を消せばアイドルになれそうな見た目をしている。今まで性の対象として考えたこともなかったが、友人としては好きだし、『できるかできないか』と問われれば、たぶん『できる』。
オレは不安な気持ちに悩みながらも、親友の懇願に負けて結局OKしてしまったのだった。
夏弥は『斗真が気持ちよくなれるように、お尻を拡張しておくから期待してて』と帰って行った。
引き受けたからには夏弥にも気持ちよくなってもらいたい…。
オレもネットで予習することにした。
中学時代からの親友、夏弥がスマホの画面を見せてくる。
大学1年の夏休み。夏弥が人文系、オレが体育系と全く別々の大学に進んだものの、2人とも地元だから未だお互いの部屋に行き来している。
『限定3組なのに抽選に当たったの、凄くない!?』
昨日の夜、いきなりハイテンションなメッセージが届いた。
それは、こいつが高校生の頃から大好きなライトノベル『クリーチャーズマリッジ』シリーズをイメージしたコンセプトルームへの無料招待だった。
コンセプトルーム、といってもそれは『カラオケ』ではない。
ラブホの部屋なのだ。
カップル限定らしく、2人とも18歳以上であれば性別は問わないらしい。
作品への愛が深すぎて、恋人もいないのに『ついうっかり』応募してしまったそうだ。
「恋人のフリなんて、頼めるのお前だけなんだよ~!!」
こいつもオレもフリーだ。
特に引き受けても問題はないのだが……。
通称『クリ嫁』と呼ばれているこのシリーズは、女騎士やら聖女やらがゴブリンやオーク、触手などに陵辱されるという内容だ。
最後に必ずヒロインが化け物の嫁にされて終わるらしい。
正直オレは、そういうジャンルが苦手だった。
オレとこいつの共通の親友である結人は、このシリーズを高3の夏休みに12冊も押し付けられていた。
『受験生にとって大事な時期に、なんてものを渡してるんだ…』とオレは思ったのだが、結人は『けっこう面白かったよ』と、夏休みだけで読破していた。成績が優秀なのに、『家から一番近い』という理由で普通レベルの大学を受験した変わり者だ。先生が『もっと上を目指せるのにもったいない』と泣いていた。
「オレが『受け』でいいからさ~!!」
『受け』とは男同士のセックスで『受け入れる側』のことらしい。『攻め』がちんぽを入れる方で、『受け』の尻の穴に突っ込むのだとか。
BLというジャンルに出てくる言葉だそうだ。
こいつのライトノベルへの許容範囲が広すぎる。
散々話を聞かされているせいで、オレまで詳しくなってしまいそうだ。
部屋を『使用』した感想をアンケートで答えることが条件らしく、『ちゃんと行為をしなければならない』そうだ。モニターのようなものなのだろう。
「部屋のレンタルだけなら自力で行けるけど、『キャスト』まで頼むとオレのバイト代じゃ絶対に無理なんだよ~」
通常は部屋のみをレンタルするところ、玩具(大人向け)のプレゼントと、作中に登場する化け物の特殊メイクをされた役者が5人も付くそうだ。人件費を考えると、確かに自費ではかなりの高額になりそうだ。
そもそも、部屋の予約からなかなか取れないのではないだろうか。
化け物が出てくるシーンの再現なんて…。
オレは子どもの頃からお化け屋敷が苦手だから耐えられるか心配だ…。
だが、こいつの『一生のお願い』は初めてのことだ。よほど行きたいのだろう。
しかも『頼めるのはお前だけ』と言われてしまうと、できる限り叶えてやりたくなる。
ラブホの部屋を『使用』して夏弥が『受け』ということは、オレは彼を抱くのだろうか。
こいつはオタク臭を消せばアイドルになれそうな見た目をしている。今まで性の対象として考えたこともなかったが、友人としては好きだし、『できるかできないか』と問われれば、たぶん『できる』。
オレは不安な気持ちに悩みながらも、親友の懇願に負けて結局OKしてしまったのだった。
夏弥は『斗真が気持ちよくなれるように、お尻を拡張しておくから期待してて』と帰って行った。
引き受けたからには夏弥にも気持ちよくなってもらいたい…。
オレもネットで予習することにした。
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