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ヤキモチ、本当の気持ち 〜アルト視点(後編)
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僕の手を引いて小屋へ戻ったヴェダは、握りしめていた僕の手に頬をすり寄せた。
え、かわいすぎ…。って、
「ダメだよ。僕の手は今、汚いから」
手袋をしていたとはいえ、さんざん弓の練習をしていたのだ。汗だってかいてるし。
慌てた僕の心を表したように、腰から下げている短弓がカシャンと音を立てた。
引こうとした手を引き戻され、もう片方の手も取られて両手をキュッと握られる。
「アルトの手は2つしかないでしょう?」
「うん…?」
どうして不安そうな声なんだろう。
「ひとつはグードゥヤで、もうひとつは僕の。リゲルに取られたら、僕の場所がなくなっちゃう…」
リゲル? どうしたの、ヴェダ。
「僕がヴェダの手を離すなんて、そんなことあり得ないよ」
「そんなことあるよ。…もうアルトはリゲルの…みんなのお世話しないで。夜の相手も全部僕がするから」
「え…?」
ヴェダ?
「アルトはお薬作れるし、ギーウスとアルクルが『狩りに連れて行きたい』って言うくらい必要とされてるでしょう?」
こんなに悲しい顔のヴェダを初めて見た。
「僕に出来るお仕事はみんなのお世話をすることだけだもん。だから…」
森で迷って1人になった子どものように悲しい顔、言葉。
うるりと濡れた宝石の瞳。
泣かないで。
ヴェダのこんな顔を見たら僕は。
胸が鋭利な錐で突かれたように痛むんだ。
今すぐ抱きしめたい。
でも、ギュッと握られた熱い両手を解くことなんて出来なかった。
「それはダメだよ。僕もみんなのお世話をする。ヴェダだけにさせられない。させたくない」
以前のように休みなく逞しい男たちに毎日抱かれ続けたら、君の身体がいつか壊れてしまう。
「嫌だ。アルトは僕のだから、みんなに渡したくない!」
ヴェダが僕を『独占したい』って思ってくれてる?
「ヴェダだけをみんなに抱かせるなんて耐えられない。君は僕に助けを求めてくれたでしょう?」
『僕、1人で全員の相手をするの、身体がツラいよ。アルト…助けて?』って。
溢れていく雫を舌で舐めとる。
「あ、」
ぽかんとした顔。涙が止まったみたい。
「君が他のみんなに抱かれているのは『お仕事』だから?」
「うん。狩りに出られない僕にでも出来ることはそれだけだから。でも、アルトは恋人だから違うよ。僕はアルトのものでしょ?」
『君は君自身のものだよ』。
一瞬そんな言葉が頭に浮かんだけれど、ヴェダが聴きたい言葉はそんな“綺麗事”ではないのだろう。
「そうだね。ヴェダは僕のものだよ。僕もヴェダのものでしょう?」
「うん。アルトは僕のもの」
まるでその言葉を味わっているかのようにゆっくり呟くと、ヴェダは僕の指に口付けた。
「…でもそれなら、アルトは僕を独り占めしたくないの?」
以前リゲルに、ヴェダやグードゥヤを『“自分だけのものにしたい”って本当に思わないのか?』って訊かれて、改めて考えてみた。
『己の利より、常に民の幸福を考えて行動しなさい』
“貴族”らしい長兄の言葉に縛られて僕はずっと生きてきた。
あの家から独り立ちした今、僕が出す答えは…。
「僕だって、ヴェダのこと“僕だけのものにしたい”って思ってるよ」
「本当に?」
目を合わせて頷くと、ヴェダの顔がふにゃりと蕩けた。
「そっか。アルトもそう思ってくれてたんだぁ…」
僕の言葉だけで、こんなに嬉しそうな安心した表情を見せてくれるなんて。
「でも、ヴェダの仕事が大切なことだって僕は知ってる」
「…うん。僕の仕事はみんなのサポートをすることだからね」
「それなら、せめて僕はその仕事を手伝いたい。ヴェダの仕事を減らして、2人でイチャイチャする時間を大事にしたいんだ」
「イチャイチャ?」
言葉の響きが面白かったのか、ふふっと笑うその顔に見惚れる。
「そう。イチャイチャ。身体の負担が半分になれば、僕との時間を楽しむ余裕ができるでしょう?」
「うん。アルトが半分こしてくれてから、身体が楽になったよ。以前の僕はお料理とお洗濯する時以外、ずっとベッドの上だったから」
光に溶けて消えてしまいそうな君は妖精みたいに儚くて綺麗だった。
「文字を教わって本を読むことが出来るようになったし、外に出て太陽の光を浴びて、手を繋いでお散歩も出来るようになったよ」
でも、今は違う。
「アルトと一緒にいる時間が大好き」
「僕もヴェダと一緒に本を読んだり、外を歩いたりするの大好きだよ」
しっかり大地を踏み締めて、確かに『ここにいる』と安心できる生命力を持った君。
力強く握り返される温かな手に、僕の『好き』って気持ちは増えていくばかりなんだよ。
「アルトにお薬の作り方を教えてもらう余裕も出来たし、2人で作るからお料理に手をかける時間も出来たよ」
「うん。ヴェダと一緒に薬や料理を作ると、つい手間や時間がかかるものほど作りたくなっちゃうんだ。一緒の時間が嬉しいからだね」
本当は狩りに出るよりこの小屋で君と一緒に過ごしていたい。でも、僕以外のみんなともこの小屋で話をして君の世界を広げてほしいとも思ってる。
「…ヴェダ。忘れないでほしいんだ。さっき君は『僕に出来る仕事はみんなのお世話だけ』って言っていたけど、それは違うよ。『だけ』じゃない。それこそが僕たちを支えてくれる最も重要なことなんだ」
君が僕たち全員を支えてるんだ。
安心して狩りに出られるのは、君が僕たちの身体と心を支えてくれてるから。
君が小屋を守ってくれているから。
「革手袋を作ってくれてありがとう。柔らかいのに丈夫で使いやすいよ」
短弓と一緒に腰から下げた手袋を視線で示す。
「…これはグードゥヤと一緒だったから出来たんだよ」
「グードゥヤと一緒に作ってくれたのが嬉しいんだ。2人で刺してくれた刺繍の花を見ると、勇気をもらえる」
「勇気?」
「うん。昨日も無事に帰ってこられたのは、この手袋のおかげなんだ」
空気を揺るがすような恐ろしい唸り声。弓を握る手が勝手に震えた。
巨大熊に向かう時、怯えて強張りそうになる身体は手袋の刺繍…2つの赤い花を見たら柔らかく緩んだ。
『ヴェダの待つ小屋に帰るんだ』って思ったら、走ってくる熊から目を逸らさずに立っていられた。
「それにヴェダは1人でも薬を作ることが出来るようになったし、僕たちの矢だって作ってくれてるでしょう?」
そうなんだ。傷薬や鎮痛薬、熱冷ましなど、僕がいなくてもヴェダが1人で作れる薬が増えてきた。
しかも最近はグードゥヤに教わりながら、矢を作ってくれている。昨日みたいな巨大熊が急に現れても、慌てて矢を作る必要がなくなった。
「ヴェダのおかげで矢を思い切り使えるから助かっているんだよ。薬も作ってくれるから、僕が補充しなくても薬棚は安心だし」
「…そう?」
ヴェダは自分が『役に立っているか』、『仕事が出来ているか』不安なのだと思う。
僕がそうだから分かる。
『役に立たないと居場所がなくなってしまう』
そんな不安にいつも襲われるから。
「ヴェダは僕にとって、『いなくなったら生きていけない』って思うほど大事な人だよ」
「…アルトは、僕がいないとダメ?」
「うん。ヴェダがいないとダメだ」
「…嬉しい。僕も、アルトがいないとダメ」
「それはすごく嬉しい」
幸せそうに微笑んだヴェダの唇が僕の唇に触れてくれる。
僕もそれに返す。
愛しい人の柔らかな手の甲にも口付け、握り合っていた手をゆっくり解くと、両腕を開いて胸を合わせ抱き合う。互いの鼓動を感じながら熱を交わす。
身体を離したくないけど、君の顔が見たくてそっと抱擁していた腕を緩める。
「今夜は熊肉でハンバーグにしようか」
僕の言葉にヴェダの瞳が輝いた。
「ハンバーグ? 嬉しい! 僕、アルトが作ってくれるハンバーグ大好き!」
ギーウスが魚を釣って帰るかもしれないけど、両方あってもみんな食べられるだろう。
「良かった。僕はヴェダが作ってくれるスープと焼いてくれるパンが大好きだよ」
あぁ。やっぱり君には笑っていてほしい。
この顔を見るだけで、こんなにも胸が満たされるんだ。
「明日はパンにハンバーグを挟んで外へ出かけない? 綺麗な花畑を見つけたんだ」
木漏れ日が差し込む白い花の群生。
ちょうど明日は満開になるだろう。
ヴェダと一緒に見たいなって思ったんだ。
「うん! アルトと一緒に見たい!」
この可愛くて綺麗な人が“アルトは僕のだから、みんなに渡したくない”なんて言ってくれた。
泣いてしまうほど胸が苦しくて辛い感情なのに、君がその気持ちを僕に向けてくれたことが嬉しくて仕方ない。
幸せなんだ。
僕がヴェダの手を離すなんてあり得ない。
君とグードゥヤは僕にとって“特別な存在”なんだ。
一方で、僕はここにいるみんなのことも好きだし大事だと思ってる。
…それでも君を悲しませるくらいなら、そんな気持ちは君に見せないようにしよう。
僕はおかしいのかな。
君を“独占したい”って思ったのは本当。
僕の中に君を受け入れて、
君が僕を受け入れてくれて、
2人きりで抱き合う時間は至福。
でもね。それと同時に、
ヴェダがみんなに抱かれて気持ちよくなってる姿を見るのも好きなんだ。
僕のじゃ届かない奥まで侵されて、ガクガク震えながら僕の唇を求めてくれる君も、
喉の奥までガポガポされて、苦しいのに善くて涙を溜めた目で僕の姿を探す君も、
限界まで昂められた快感でどうしようもなくなって、助けを求めるように僕の名前を呼んでくれる君の声も好き。
綺麗な君に、僕のこんな歪んだ気持ちを知られたら、嫌われてしまうかな。
身体はまだ怠い筈なのに、弾むような足取りでハンバーグを楽しみに微笑む君は、昏い僕の心にふわりと光をくれるんだ。
大好きだよ。
ヴェダ。
え、かわいすぎ…。って、
「ダメだよ。僕の手は今、汚いから」
手袋をしていたとはいえ、さんざん弓の練習をしていたのだ。汗だってかいてるし。
慌てた僕の心を表したように、腰から下げている短弓がカシャンと音を立てた。
引こうとした手を引き戻され、もう片方の手も取られて両手をキュッと握られる。
「アルトの手は2つしかないでしょう?」
「うん…?」
どうして不安そうな声なんだろう。
「ひとつはグードゥヤで、もうひとつは僕の。リゲルに取られたら、僕の場所がなくなっちゃう…」
リゲル? どうしたの、ヴェダ。
「僕がヴェダの手を離すなんて、そんなことあり得ないよ」
「そんなことあるよ。…もうアルトはリゲルの…みんなのお世話しないで。夜の相手も全部僕がするから」
「え…?」
ヴェダ?
「アルトはお薬作れるし、ギーウスとアルクルが『狩りに連れて行きたい』って言うくらい必要とされてるでしょう?」
こんなに悲しい顔のヴェダを初めて見た。
「僕に出来るお仕事はみんなのお世話をすることだけだもん。だから…」
森で迷って1人になった子どものように悲しい顔、言葉。
うるりと濡れた宝石の瞳。
泣かないで。
ヴェダのこんな顔を見たら僕は。
胸が鋭利な錐で突かれたように痛むんだ。
今すぐ抱きしめたい。
でも、ギュッと握られた熱い両手を解くことなんて出来なかった。
「それはダメだよ。僕もみんなのお世話をする。ヴェダだけにさせられない。させたくない」
以前のように休みなく逞しい男たちに毎日抱かれ続けたら、君の身体がいつか壊れてしまう。
「嫌だ。アルトは僕のだから、みんなに渡したくない!」
ヴェダが僕を『独占したい』って思ってくれてる?
「ヴェダだけをみんなに抱かせるなんて耐えられない。君は僕に助けを求めてくれたでしょう?」
『僕、1人で全員の相手をするの、身体がツラいよ。アルト…助けて?』って。
溢れていく雫を舌で舐めとる。
「あ、」
ぽかんとした顔。涙が止まったみたい。
「君が他のみんなに抱かれているのは『お仕事』だから?」
「うん。狩りに出られない僕にでも出来ることはそれだけだから。でも、アルトは恋人だから違うよ。僕はアルトのものでしょ?」
『君は君自身のものだよ』。
一瞬そんな言葉が頭に浮かんだけれど、ヴェダが聴きたい言葉はそんな“綺麗事”ではないのだろう。
「そうだね。ヴェダは僕のものだよ。僕もヴェダのものでしょう?」
「うん。アルトは僕のもの」
まるでその言葉を味わっているかのようにゆっくり呟くと、ヴェダは僕の指に口付けた。
「…でもそれなら、アルトは僕を独り占めしたくないの?」
以前リゲルに、ヴェダやグードゥヤを『“自分だけのものにしたい”って本当に思わないのか?』って訊かれて、改めて考えてみた。
『己の利より、常に民の幸福を考えて行動しなさい』
“貴族”らしい長兄の言葉に縛られて僕はずっと生きてきた。
あの家から独り立ちした今、僕が出す答えは…。
「僕だって、ヴェダのこと“僕だけのものにしたい”って思ってるよ」
「本当に?」
目を合わせて頷くと、ヴェダの顔がふにゃりと蕩けた。
「そっか。アルトもそう思ってくれてたんだぁ…」
僕の言葉だけで、こんなに嬉しそうな安心した表情を見せてくれるなんて。
「でも、ヴェダの仕事が大切なことだって僕は知ってる」
「…うん。僕の仕事はみんなのサポートをすることだからね」
「それなら、せめて僕はその仕事を手伝いたい。ヴェダの仕事を減らして、2人でイチャイチャする時間を大事にしたいんだ」
「イチャイチャ?」
言葉の響きが面白かったのか、ふふっと笑うその顔に見惚れる。
「そう。イチャイチャ。身体の負担が半分になれば、僕との時間を楽しむ余裕ができるでしょう?」
「うん。アルトが半分こしてくれてから、身体が楽になったよ。以前の僕はお料理とお洗濯する時以外、ずっとベッドの上だったから」
光に溶けて消えてしまいそうな君は妖精みたいに儚くて綺麗だった。
「文字を教わって本を読むことが出来るようになったし、外に出て太陽の光を浴びて、手を繋いでお散歩も出来るようになったよ」
でも、今は違う。
「アルトと一緒にいる時間が大好き」
「僕もヴェダと一緒に本を読んだり、外を歩いたりするの大好きだよ」
しっかり大地を踏み締めて、確かに『ここにいる』と安心できる生命力を持った君。
力強く握り返される温かな手に、僕の『好き』って気持ちは増えていくばかりなんだよ。
「アルトにお薬の作り方を教えてもらう余裕も出来たし、2人で作るからお料理に手をかける時間も出来たよ」
「うん。ヴェダと一緒に薬や料理を作ると、つい手間や時間がかかるものほど作りたくなっちゃうんだ。一緒の時間が嬉しいからだね」
本当は狩りに出るよりこの小屋で君と一緒に過ごしていたい。でも、僕以外のみんなともこの小屋で話をして君の世界を広げてほしいとも思ってる。
「…ヴェダ。忘れないでほしいんだ。さっき君は『僕に出来る仕事はみんなのお世話だけ』って言っていたけど、それは違うよ。『だけ』じゃない。それこそが僕たちを支えてくれる最も重要なことなんだ」
君が僕たち全員を支えてるんだ。
安心して狩りに出られるのは、君が僕たちの身体と心を支えてくれてるから。
君が小屋を守ってくれているから。
「革手袋を作ってくれてありがとう。柔らかいのに丈夫で使いやすいよ」
短弓と一緒に腰から下げた手袋を視線で示す。
「…これはグードゥヤと一緒だったから出来たんだよ」
「グードゥヤと一緒に作ってくれたのが嬉しいんだ。2人で刺してくれた刺繍の花を見ると、勇気をもらえる」
「勇気?」
「うん。昨日も無事に帰ってこられたのは、この手袋のおかげなんだ」
空気を揺るがすような恐ろしい唸り声。弓を握る手が勝手に震えた。
巨大熊に向かう時、怯えて強張りそうになる身体は手袋の刺繍…2つの赤い花を見たら柔らかく緩んだ。
『ヴェダの待つ小屋に帰るんだ』って思ったら、走ってくる熊から目を逸らさずに立っていられた。
「それにヴェダは1人でも薬を作ることが出来るようになったし、僕たちの矢だって作ってくれてるでしょう?」
そうなんだ。傷薬や鎮痛薬、熱冷ましなど、僕がいなくてもヴェダが1人で作れる薬が増えてきた。
しかも最近はグードゥヤに教わりながら、矢を作ってくれている。昨日みたいな巨大熊が急に現れても、慌てて矢を作る必要がなくなった。
「ヴェダのおかげで矢を思い切り使えるから助かっているんだよ。薬も作ってくれるから、僕が補充しなくても薬棚は安心だし」
「…そう?」
ヴェダは自分が『役に立っているか』、『仕事が出来ているか』不安なのだと思う。
僕がそうだから分かる。
『役に立たないと居場所がなくなってしまう』
そんな不安にいつも襲われるから。
「ヴェダは僕にとって、『いなくなったら生きていけない』って思うほど大事な人だよ」
「…アルトは、僕がいないとダメ?」
「うん。ヴェダがいないとダメだ」
「…嬉しい。僕も、アルトがいないとダメ」
「それはすごく嬉しい」
幸せそうに微笑んだヴェダの唇が僕の唇に触れてくれる。
僕もそれに返す。
愛しい人の柔らかな手の甲にも口付け、握り合っていた手をゆっくり解くと、両腕を開いて胸を合わせ抱き合う。互いの鼓動を感じながら熱を交わす。
身体を離したくないけど、君の顔が見たくてそっと抱擁していた腕を緩める。
「今夜は熊肉でハンバーグにしようか」
僕の言葉にヴェダの瞳が輝いた。
「ハンバーグ? 嬉しい! 僕、アルトが作ってくれるハンバーグ大好き!」
ギーウスが魚を釣って帰るかもしれないけど、両方あってもみんな食べられるだろう。
「良かった。僕はヴェダが作ってくれるスープと焼いてくれるパンが大好きだよ」
あぁ。やっぱり君には笑っていてほしい。
この顔を見るだけで、こんなにも胸が満たされるんだ。
「明日はパンにハンバーグを挟んで外へ出かけない? 綺麗な花畑を見つけたんだ」
木漏れ日が差し込む白い花の群生。
ちょうど明日は満開になるだろう。
ヴェダと一緒に見たいなって思ったんだ。
「うん! アルトと一緒に見たい!」
この可愛くて綺麗な人が“アルトは僕のだから、みんなに渡したくない”なんて言ってくれた。
泣いてしまうほど胸が苦しくて辛い感情なのに、君がその気持ちを僕に向けてくれたことが嬉しくて仕方ない。
幸せなんだ。
僕がヴェダの手を離すなんてあり得ない。
君とグードゥヤは僕にとって“特別な存在”なんだ。
一方で、僕はここにいるみんなのことも好きだし大事だと思ってる。
…それでも君を悲しませるくらいなら、そんな気持ちは君に見せないようにしよう。
僕はおかしいのかな。
君を“独占したい”って思ったのは本当。
僕の中に君を受け入れて、
君が僕を受け入れてくれて、
2人きりで抱き合う時間は至福。
でもね。それと同時に、
ヴェダがみんなに抱かれて気持ちよくなってる姿を見るのも好きなんだ。
僕のじゃ届かない奥まで侵されて、ガクガク震えながら僕の唇を求めてくれる君も、
喉の奥までガポガポされて、苦しいのに善くて涙を溜めた目で僕の姿を探す君も、
限界まで昂められた快感でどうしようもなくなって、助けを求めるように僕の名前を呼んでくれる君の声も好き。
綺麗な君に、僕のこんな歪んだ気持ちを知られたら、嫌われてしまうかな。
身体はまだ怠い筈なのに、弾むような足取りでハンバーグを楽しみに微笑む君は、昏い僕の心にふわりと光をくれるんだ。
大好きだよ。
ヴェダ。
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