俺のスキルが無だった件

しょうわな人

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番外編始まる

第三話 兄上が来た件

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 コンクセアとスキルの研鑽を始めて二週間が過ぎました。それによって僕のスキル歩の徒士侍かちざむらい歩流ふりゅうはLvが上がったんです。


名前:ユウジ
 性別:男
 年齢:十
 職業:【無職】神級職
 レベル:1
 生命力:60 魔法力:80
 体力:45  魔力:90  器用:55  敏捷:60
 攻撃力:100,040(魔斬刀+100,000)
 防御力:120,030(竜牙の鎧(強化版)+120,000)
 スキル:【
徒士侍かちざむらい(Lv.3)
 一歩ずつ前に進む事を決められた歩兵。刀、小太刀、槍、鎧通し、弓矢の武器に精通する。
 無手術にも秀でる。(New)
  
歩流ふりゅう(Lv.5)
 徒士侍の使用する戦闘術。
 四歩前に出るとト金になる。


 どうですか? コンクセアに言われて主に歩流に重きをおいて研鑽を重ねた結果なんですが、何と歩がト金に変わるんだそうです。まるで将棋のようですよね。

 残念ながらコンクセアが相手ですから僕自身のレベルは上がってないのですが、それでもかなり良い動きが出来るようになりました。

「ユウジ様、今日はこれぐらいにしておきましょう。歩流のLvも上がって、レベル1とは思えない素晴らしい動きが出来てますよ」

 コンクセアもそう言って褒めてくれます。

 あっ!? 気づかれましたか? 武器と防具はコンクセアから手渡された物なんですけど…… 攻撃力と防御力の半端ない数値に最初は僕もビックリしたんです。でもコンクセアいわくこの武器と防具は僕が使うのが相応しいとの事なんです。

 正直にいって身の丈に合ってないとは思ってるのですが、魔斬刀は手にしっくりきてますし、竜牙の鎧も体にピッタリなんです。攻撃力と防御力だけで言うなら今の僕は現代のS級の冒険者よりも上だと言う話です。

 まあそんな感じで二週間が過ぎ、翌朝の研鑽を始めようという時に誰も来ないと思っていた離れに兄上がやって来たのです……

「おい、クズ弟よ! 優しいお兄様がきてやったぞ! 何だぁ? その御大層な装備は? お前には似合わないな! 優しいお兄様である俺様に相応しい装備じゃねぇか! ちょうど良い、俺様が貰っておいてやるよ!」

 などとのたまう兄上ですがそれを聞いたコンクセアが反論しました。

「失礼ですがディーン様には扱いきれない装備です。ユウジ様だからこそこの装備を扱えておりますが…… それに、ディーン様は魔術師でございましょう? 刀や鎧が必要だとは思えませんが? 『このブクブクと醜く太ったオーク野郎が、何を抜かしてやがるんですか。今すぐなます斬りにして魔境の森に捨ててやろうかしら……』」

 何故かコンクセアが怒ってるような気がします。が、兄上もまたコンクセアの言葉に激昂しました。

「何だとっ! 貴様、たかがメイドのクセに俺様にそんな口を聞いてもいいと思ってるのか!? 俺様はこのカミシロ公爵家の跡継ぎ様なんだぞ! お前なんか直ぐにクビに出来るんだぞ!」

 だけどもそんな兄上の言葉にコンクセアは更に反論しました。

「お言葉ですが、私の雇い主はメアリ様です。現公爵家のご当主様やディーン様には私の雇用について口を挟む事はできませんので悪しからずご了承くださいませ『この白いミニオークは本当に馬鹿ですね……』」

 慇懃無礼って言うのかな? コンクセアの口調はまさにそんな感じでした。

「馬鹿か、お前は! メアリなんていう女はもう直ぐ死ぬんだよ! そうだ、見目だけは良いから俺様の奴隷メイドにしてやろう! あんな事やこんな事を俺様が命令するから大人しく従えよ! そうしたらクズ弟に仕えるよりは幸せな生活を送れるぞ!!」

 そんな事を言い出した兄上に僕も我慢ができなくなって言い返してしまいました。

「兄上! いくら兄上でも母上がもう直ぐ死ぬだなんて言われて黙っていられません! 今すぐここを出ていって下さい! じゃないと僕も兄上に斬りかかります!!」

 僕のその言葉に兄上は大笑いします。

「ギャーッハッハッハッー、笑わしやがるな、クズ弟!! お前如きがこの初代カミクロ家のマコト以来の天才と言われるこの俺様に斬りかかるだとっ!! 馬鹿も休み休み言えっ!! けれども面白い! 表に出やがれ、愚かな弟に格の違いを教えてやるとしよう」

 そう言って兄上が表に出ろと言ってきたので我慢出来なかった僕はそのまま表に出ました。その時にコンクセアが、

「ユウジ様、私的にはヤッてしまっても良いと思ってますが、それだとメアリ様に危害が及ぶ可能性がございますので、心を折る程度で止めておいて下さいね」

 って僕に言ってきました。コンクセアは僕が負けるとは思ってないようです。それに力を得た僕はコンクセアに頷いて兄上に向って言いました。

「兄上、コレは模擬戦です。降参するなら早めにお願いしますね」

「おい、愚弟よ! お前はまだ魔物も魔獣も倒した事が無いからレベルは1だろうが! 俺様は既にレベル15だぞ! そんな俺様がお前に降参? するか、馬鹿がっ!! そんな減らず口をきいた事をあの世で後悔しやがれ!! 深淵に灯る地獄の業火よ、来たりて我が道を塞ぐ敵を焼き尽くせ! 【轟々え……】ギャーッ!? ひ、卑怯だぞ! 愚弟! 詠唱途中に攻撃してくるとは!!」

 僕にも分かりました。この兄上は馬鹿なんだと。魔物や魔獣が詠唱を待ってくれると言うのでしょうか? 普段の魔物や魔獣狩りには護衛騎士が同行して、魔物や魔獣を足止めきているのでしょう。その間に詠唱を終わらせ魔法を放っていた兄上は、いつもと同じ様に詠唱が終わるまで攻撃は来ないと思っていたのだと思います。

「兄上…… 馬鹿ですね……」

 僕の一言で左腕を浅く斬られた兄上は更に激昂したようです。そして、

「ウオーッ! この天才魔術師たる俺様を馬鹿にしやがったなぁーっ!! 万死に値するぞ! 愚弟!! 今度こそお前は終わりだ!! カミクロ家初代マコトの得意魔法でお前を葬ってやる!! 闇き祠に在りし永久凍土よ! って待て待て! まだ詠唱が終わってないだろうがっ! 攻撃してくんなっ! って痛い、痛いっ!? 斬るなっ! クソッ、斬るなっーっ!! ギャーッ、痛いっ! 斬るなっ! いや、斬らないで下さい、痛いっ! お願いします、もう許して下さい! 謝ります! ギャーッ! 俺様が悪かったです、許して下さいー……」

 僕は何かを言ってる兄上を無視して、致命傷にならないようにありとあらゆる場所を斬っていきました。途中から懇願されていたようですが、僕には聞こえてませんでした。
 そんな僕を背後から抱きしめてコンクセアが止めてくれたのです。

「ユウジ様、もう良いでしょう。この馬鹿もさすがに格の違いが分かったかと思います。この馬鹿は私が本邸に放り込んでおきますね。ついでにメアリ様のご様子も確認して参ります」

 そう言うとコンクセアはまるでゴミをつまむかのように兄上の足をつまみ、そのままズルズルと引きずりながら本邸に向って行きました。

 僕は暫く放心状態だったのですが、自分の力を少しだけ自覚する事ができました。僕は確実に強くなっている事を実感したのです。

 その点についてはあの馬鹿な兄上に感謝してもいいと思ったのですが、やっぱり母上について言った言葉が許せなかったのでその感謝は取り消しておきました。 
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