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番外編始まる
第一話 クズスキルと言われた件
しおりを挟む 僕の名前はユウジと言います。ゴルバード王国のカミシロ公爵家の三男です。
今日、僕は無の男神様の神社へとやって来てます。母上が一緒にきてくださってます。
最近になって咳き込む事の多い母上が無理をしてついて来て下さったのは、十歳になった僕に無の男神様からスキルが授けられるからなのです。
「ユウジ、緊張しているの? 大丈夫よ。貴方はこれまでたくさん努力をしてきたんだから。オノミ様もきっとスキルを授けて下さるわ」
母上はそう言って緊張している僕を応援してくれます。
「はい、母上!」
僕も精一杯の元気な声で母上にこたえました。そして、神主様がやって来ました。
「ようこそ、オノミ様の神社へ。そちらが今回のスキル授受の儀を受けるユウジですな。それでは一人でワシについておいで」
神主様にそう言われて僕は母上に行ってまいりますと言って、その後についていったんだ。
「さて、ここでよろしいかの……『全くカミシロ公爵家の者は寄進を大してせぬようになりおってから態度だけは偉そうにしおるからな…… この子のスキルも二つ以上あるじゃろうが一つしか言わんでおいてやる。ヒヒヒ、一昨々年のこの子の兄の時には三つあったスキルを二つしか言わんかったからな。まともに寄進さえしておればこのような事をワシもせぬのじゃが……』」
僕は神主様に言われてその場で正座しました。そこにサカキという木に神水をつけてそれを振りながら神主様がオノミ様にお祈りします。
「おおー!! 見えた、見えたぞ!! ユウジ! お主のスキルは歩じゃ!! ほではないぞ、ふじゃからな!」
良かった、ちゃんとスキルを授けられたみたいです。でも、歩という事は初代様のトウジ様が広められた将棋というゲームの駒の事でしょうか?
僕は疑問に思い神主様に聞いてみました。
「あの、神主様。歩とはどのようなスキルなんでしょうか?」
けれども神主様からの返答は……
「うむ、将棋ゲームの最弱の駒である歩がついたスキルじゃ、クズスキルじゃな」
でした…… そ、そんな…… 僕は悲しくなりそのまま失礼しますと言って神主様の前から下がりました。俯いていたので神主様が嫌らしい笑みを浮かべていた事には気づかずに。
僕は待ってくださっていた母上に授けられたスキルについて話をしました。けれどもそれを聞いた母上は、
「まあ、素晴らしいスキルを授かったわね、ユウジ。屋敷に戻ったらオノミ様に感謝のお祈りを捧げましょう」
そう言って落ち込んでる僕を励まして下さいました。そしてさあ戻りましょうと僕の手を握って下さり、心配しなくても大丈夫よとも言って下さいました。
けれども屋敷に戻って父上にご報告すると、父上からは
「何だとっ!! そんな訳の分からんクズスキルを授かったのかっ!! ええい、貴様はこれからあの離れに移れ! この本邸に住むことは許さん! 全く、由緒正しいカミシロ公爵家に恥をかかせおってからに!!」
そんな事を言われてしまいました。母上は父上に抗議して下さったけれども、父上の決定は絶対です。僕は一人で離れに住むことになりました。
でも母上からメイドが一名つけられました。
「ユウジ、ごめんなさい…… 守ってあげられなくて。でも、ユウジこれだけは覚えていてね。母は貴方を愛しているという事を。そして、スキルについてだけど歩という者がいなければ王将は直ぐに詰んでしまうの。だから貴方のスキルもきっと素晴らしいモノの筈よ。今は分からなくても自分なりに研鑽してみなさい。カミシロ公爵家の初代様がご自分のスキルを研鑽されたように……」
そう言って母上は僕を励まして下さった。僕付きになったメイドはコンクセアという名のメイドで、古くから母上付きのメイドをしてたそうです。でも、古くからっていうけど見た感じ十八歳ぐらいにしか見えないんですけど……
「フフフ、ユウジ様。一つお教えしておきますね。女性の年齢を探るのはご法度なんですよ」
笑いながらも目が笑ってなかったので、僕は素直に頷いてその話題を口にするのはやめました。そして、コンクセアは僕の知らない事を教えてくれました。
カミシロ公爵家の当主は母上である事。父上は実は婿養子で、本来は何の実権も持っていない事。けれども母上が体調を崩してしまったので王家には代理人として申し出てそれが通ってしまっている事を教えてくれたのです。
知らなかったです。てっきり父上が初代様から二百年続くカミシロ公爵家の当主だと思っていたのに実は母上の方が当主だったなんて…… ちなみに僕の上二人の兄と二人の姉は母上とは違う女性が産んだそうです。若い頃の父上は浮気をしていてその人との間に産まれたんだそうです。
父上いわく、初代様も二人の妻を持っていたのだからとか…… それを言うなら婿養子の父上ではなく母上の方では? とは思いましたけどね。
そんなこんなでコンクセアと二人の生活が離れ屋敷で始まったのでした。
今日、僕は無の男神様の神社へとやって来てます。母上が一緒にきてくださってます。
最近になって咳き込む事の多い母上が無理をしてついて来て下さったのは、十歳になった僕に無の男神様からスキルが授けられるからなのです。
「ユウジ、緊張しているの? 大丈夫よ。貴方はこれまでたくさん努力をしてきたんだから。オノミ様もきっとスキルを授けて下さるわ」
母上はそう言って緊張している僕を応援してくれます。
「はい、母上!」
僕も精一杯の元気な声で母上にこたえました。そして、神主様がやって来ました。
「ようこそ、オノミ様の神社へ。そちらが今回のスキル授受の儀を受けるユウジですな。それでは一人でワシについておいで」
神主様にそう言われて僕は母上に行ってまいりますと言って、その後についていったんだ。
「さて、ここでよろしいかの……『全くカミシロ公爵家の者は寄進を大してせぬようになりおってから態度だけは偉そうにしおるからな…… この子のスキルも二つ以上あるじゃろうが一つしか言わんでおいてやる。ヒヒヒ、一昨々年のこの子の兄の時には三つあったスキルを二つしか言わんかったからな。まともに寄進さえしておればこのような事をワシもせぬのじゃが……』」
僕は神主様に言われてその場で正座しました。そこにサカキという木に神水をつけてそれを振りながら神主様がオノミ様にお祈りします。
「おおー!! 見えた、見えたぞ!! ユウジ! お主のスキルは歩じゃ!! ほではないぞ、ふじゃからな!」
良かった、ちゃんとスキルを授けられたみたいです。でも、歩という事は初代様のトウジ様が広められた将棋というゲームの駒の事でしょうか?
僕は疑問に思い神主様に聞いてみました。
「あの、神主様。歩とはどのようなスキルなんでしょうか?」
けれども神主様からの返答は……
「うむ、将棋ゲームの最弱の駒である歩がついたスキルじゃ、クズスキルじゃな」
でした…… そ、そんな…… 僕は悲しくなりそのまま失礼しますと言って神主様の前から下がりました。俯いていたので神主様が嫌らしい笑みを浮かべていた事には気づかずに。
僕は待ってくださっていた母上に授けられたスキルについて話をしました。けれどもそれを聞いた母上は、
「まあ、素晴らしいスキルを授かったわね、ユウジ。屋敷に戻ったらオノミ様に感謝のお祈りを捧げましょう」
そう言って落ち込んでる僕を励まして下さいました。そしてさあ戻りましょうと僕の手を握って下さり、心配しなくても大丈夫よとも言って下さいました。
けれども屋敷に戻って父上にご報告すると、父上からは
「何だとっ!! そんな訳の分からんクズスキルを授かったのかっ!! ええい、貴様はこれからあの離れに移れ! この本邸に住むことは許さん! 全く、由緒正しいカミシロ公爵家に恥をかかせおってからに!!」
そんな事を言われてしまいました。母上は父上に抗議して下さったけれども、父上の決定は絶対です。僕は一人で離れに住むことになりました。
でも母上からメイドが一名つけられました。
「ユウジ、ごめんなさい…… 守ってあげられなくて。でも、ユウジこれだけは覚えていてね。母は貴方を愛しているという事を。そして、スキルについてだけど歩という者がいなければ王将は直ぐに詰んでしまうの。だから貴方のスキルもきっと素晴らしいモノの筈よ。今は分からなくても自分なりに研鑽してみなさい。カミシロ公爵家の初代様がご自分のスキルを研鑽されたように……」
そう言って母上は僕を励まして下さった。僕付きになったメイドはコンクセアという名のメイドで、古くから母上付きのメイドをしてたそうです。でも、古くからっていうけど見た感じ十八歳ぐらいにしか見えないんですけど……
「フフフ、ユウジ様。一つお教えしておきますね。女性の年齢を探るのはご法度なんですよ」
笑いながらも目が笑ってなかったので、僕は素直に頷いてその話題を口にするのはやめました。そして、コンクセアは僕の知らない事を教えてくれました。
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