俺のスキルが無だった件

しょうわな人

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村で歓迎される件

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 俺達はハクシン親子の馬車に乗せて貰っていた。そして、知った。馬車ってかなり揺れるのね······ 俺は馭者席にハクシンと並んで座っていたが、中にいたサヤとマコトは途中休憩で青白い顔で馬車から出てきた。後少し休憩が遅かったらヤバかったそうだ······

 俺は馬車をじっくりと見てみた。すると、車軸の固定具の上に直接箱を乗せた形だったので、それは揺れる筈だよなと思った。そこで、俺はここで少し時間をもらい、ハクシンに馬車を改造させてくれと申し出た。元々手先は器用であった俺は色んなモノを改造するのが好きだった。中には壊したままのモノもあるが·····
 揺れに慣れているヨーレイ君には今のままでも問題ないですよと言われたが、俺の妻二人が快適に過ごす為に必要なんだ。分かってくれ、ヨーレイ君。

 俺は無限箱にある素材を使ってバネを四つ作った。バネ一つで耐荷重を百五十キロにして、剛性を持たせたが弾力性もある様に作った。バネをはめ込む丸棒突起付きの固定車軸も新たに作った。
 そして、人が乗る箱部分に補強材(バネをはめ込む丸棒突起付き)を作り、取り付けた。箱部分は無限箱に一旦入れて、新たに作った車軸に既存の車輪を取り付ける。そこにバネをはめ込んでからその上に無限箱から出した箱を乗せた。完成だ。かかった時間は一時間半。まあまあのデキだ。
 車輪は鉄製だが、バネの力で揺れをそれなりに吸収する筈······ である。
 取りあえず完成したので、俺とハクシンはまた馭者席で、サヤ、マコト、ヨーレイ君には箱部分に乗ってもらい村に向けて出発した。そして、動き出して数秒でサヤとマコトの声が聞こえた。

「「これなら、マシだわ!」」

 ただ、その後に続いたヨーレイ君の声に俺は少しガックリきた。

「揺れがないと落ち着きませんね······」

 いや逆だからね、ヨーレイ君。揺れてると落ち着かないのが人なんだよ。俺が心でツッコミを入れてると、更にヨーレイ君が言う。

「こんなに揺れないなんて、今度から馬車で寝られないかもしれないなぁ······」

 うん、そうだね、慣れてるんだからしょうがないよな。でも人とは慣れる動物なんだ、ヨーレイ君。だから揺れなくても寝られるようにきっとなるさ!
 そんな事を思っていると村の防衛柵が見えてきた。木で出来た柵だが良く考えて作られている。これならD級の魔物や魔獣を跳ね返す事が出来るだろう。C級でも数が多くなければ大丈夫だと思う。門があってそこで見張りをしている村人がハクシンに向かって手を振っている。
 ハクシンも手を振り返していた。そして、到着したと同時に見張りの人がハクシンに言った。

「久しぶりだな、ハクシン。道中に問題は無かったか?」

「ラガス、それが大角ピッグに襲われたんだ。が、そこに偶然通りかかったトウジさん達に助けて貰った。今回はだから大角ピッグの肉があるぞ。解体は必要だが」

「おお! それは運が良かったな! あんたがトウジさんか? ハクシンを助けてくれて有り難う。ハクシンはこの村に無くてはならない行商だから、村としても感謝するよ。さあ、中に入ってくれ」

 そう言って門を開けてくれたラガスは続けて言った。

「ハクシン、村長の所に顔を出す前に解体場に行ってくれよ。早く解体した方が子供達が喜ぶから」

「ああ、分かってるよ。ラガス」

 そして、馬車ごと村に入った俺達の周りに村の子供達が寄ってきた。

「おじちゃん、今回は何を持ってきたの?」

 子供の一人がハクシンに聞く。

「マンサ、今回は食料品や服が中心だな。お菓子も少しだけあるぞ」

 ハクシンがそう返事をすると、その子はやったと言って居なくなった。どうやら家にハクシンが来たことを報告しに帰ったようだ。
 俺は子供の数が多いので疑問に思ってハクシンに聞いてみた。

「村の規模の割に子供が多いな。この村は好き者の集まりなのか?」

 俺が少し冗談めかしてそう聞くとハクシンは苦笑しながら答えてくれた。

「違いますよ、トウジさん。この村は近隣の村や町から孤児になった子供を引き取って、村長が中心になって育てているんです。ここで自分に合った技術や知識を学んでもらい、やがて町へと送り出します。私もこの村の出身の孤児の一人だったんです」

 冗談めかしてご免なさい。俺は少し反省した。そこでハクシンに提案した。

「売った大角ピッグだが、俺のスキルで簡単に解体出来るから貸してくれ。解体してやるよ」

「えっ! そんなスキルがあるんですか? 聞いた事がありませんが」

「まあ、珍しいとは思うが深くは聞かないでくれると助かるな」

「分かりました。それじゃあ、取りあえずこのまま村長の所に行きます。そこでヨーレイから受け取って解体をお願いします」

「ああ、任せてくれ」

 村長宅に着いた俺はヨーレイ君から大角ピッグを受け取り無限箱に入れる。そして、解体された肉や皮、骨を取り出してヨーレイ君に渡した。肉は一匹分プラスして渡してやった。ヨーレイ君はビックリしていた。

「凄い! 目の前から無くなったと思ったらキレイに解体されて出てきた!」

 目をキラキラさせて喜ぶヨーレイ君。うんうん、素直に驚いてくれる子供を見ると嬉しいな。俺がニマニマしながらヨーレイ君を見ているとマコトが、

「なるべく早く私達も子供が出来たら良いね」

 と言ってきた。サヤも頷いている。今夜も頑張っちゃいますか。子供はまだ作らないけど。夜に思いを馳せる俺の顔を見て二人から
 
「「助平!」」

 とツッコミが入った。ヨーレイ君は意味がわかったのか少し顔を赤くしている。二人とも、少年の教育に悪影響になるから、言葉を選びなさい。

 そうしていると村長らしい人とハクシンが一緒に出てきた。老年に差し掛かろうかという風貌だが、足腰はしっかりとしていて、俺に対して丁寧に頭を下げて礼を言ってきた。

「ハクシン親子の窮地を救って頂き有り難うございます。私はこの職練しょくれんの村で村長をしております、アガンと申します。ゴルバード王国の高名な冒険者、トウジさん、サヤさん、マコトさん、ようこそ王国カインの入口の村へ。何もない所ですが歓迎いたします」

 俺達三人は何故? という顔でアガンさんを見た。その不思議そうな俺達を見てアガンさんが種明かしをしてくれた。

「実は行商に来てくれるのはこのハクシンだけではなく、ゴルバード王国の大商会であるバーム商会の方も来て下さっているのです。バーム商会の方はつい先日来られた所でして、その方にゴルバード王国で起こった事をお聞きしました」

 納得した俺達はアガンさんに言った。

「高名かどうかは分からないけど、暫く厄介になると思う。そこで空き家なんかがあったら貸して欲しいんだ。勿論借り賃は支払うから。それと何か困り事があったら言ってくれ。俺達で対処出来そうならするし、ダメな時でもゴルバード王国の冒険者ギルドに連絡を入れて何らかの対処は出来ると思うから」

「おお、有り難うございます。空き家はございます。ちょうどウチの隣のこの家が空いておりますので自由に使って下さい。それと、困り事が一つありまして······」

 アガンさんが言い辛そうに言葉を濁したので、俺は先を言うように促した。

「何だ、何でも良いから言ってみてくれ」

「はい、この村は様々な職業を学べる場所として子供達に学んで貰っております。この中には希少な職業である薬師の仕事もあるのですが、最近になって薬草の群生地に魔物の群れがやって来たようなのです。魔物の名は食人ソーガと言いまして、背丈は大きいモノで二メートル。低くても一メートル七十あり力が強く名前の通り人を食べる魔物です。群れの規模は凡そ三十体のソーガが確認されております。しかし、この村に来てくれる冒険者が王国カインには居なくて、ゴルバード王国の冒険者ギルドに依頼を出そうと考えていた所でした」

 そう聞いた俺達三人は頷き合ってアガンさんに言った。

「それなら俺達三人で対処出来るから大丈夫だ。今の所はそいつらは村までは来てないのか?」

「はい、二体ほど近くまで来ていたソーガが居ましたが、村の防衛柵を見て何もせずに引き上げて言ったのが昨日の事です」

 それを聞いたマコトが俺に向かって言った。

「トウジ、この村の防衛柵は食人ソーガの十体位なら防げると思うけど、三十体がまとめて来たら持たないと思うの。ソーガは知恵もあるし、昨日見た二体が持ち帰った情報を元に今頃どう攻めるか考えていると思う。ただ、意見が中々まとまらないのも特徴で、攻めてくるまでにまだ三~四日は猶予があると思うわ」

 ふーん、そんな魔物も居るんだな。俺は初めて聞くその魔物に興味を持ったが、猶予があるなら対処するのは明日で良いかなと思い、アガンさんに言った。

「それじゃ、明日の朝にソーガの群れがいる場所を教えてもらえるか? 今日は勿論安全な様に妻のマコトにこの村全体に結界を張ってもらうから」

「おお、よろしくお願いします。それで、この村としてはお支払できる金額は角金貨三枚(三十万円相当)なのですが、それでよろしいでしょうか?」

 サヤが返事をした。

「倒したソーガの体にある魔石を半分くれるならそれで良いわ」

「半分と言わず全部でもよろしいですが······」

 戸惑った様に言うアガンさんにサヤは、

「ソーガの魔石があればこの村に魔物除けの結界石を作れるでしょう? 魔道具師も居るのよね。作り方はマコトが知っているから、知らなければ教えるわ。その結界石があればB級は無理だけど、殆どのC級の魔物や魔獣は村に近寄らなくなるわ」

 そう言って半分は受け取る様に言ったのだった。 
 
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