俺のスキルが無だった件

しょうわな人

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閑話 至高の君の件

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 これは出戻り姫であるミーナ姫がヤーカーラ国王に嫁ぐ三年前の話です。

 当時ミーナ姫は十七歳でした。国王は既に邪神に乗っ取られていましたが、そんな事は関係無いミーナ姫は好き勝手に日々を過ごしておりました。
 今日もお供も連れずに庶民の服を着て町に出掛けてます。

 そんなミーナ姫が好きなのはバーム商会の中で時間を過ごす事てす。バーム商会は食料品や日用品、家具や服まで売っている地球で言うならば、デパートの様な場所になります。
 その中で欲しい物を物色して歩くのがミーナ姫の日課となっておりました。
 今日も今日とてバーム商会にやって来た姫は先ずは日用品のコーナーへと来て品物を物色し始めます。
 先ずは庶民が良く使うタオルや洗濯石鹸。実際に何に使うのかプライドの高いミーナ姫は店員に聞いたりしないので分からないのですが、見て想像するだけでニマニマしている、周りから見ると変な子です。
 そうして、高いモノは購入しないですが、オヤツ代わりの干し肉を買ったりして満足したら城へと帰るミーナ姫です。

 その日はいつもと違い、バーム商会を出たミーナ姫をつける三人の男がいました。そして、ミーナ姫の前を歩く一人の青年も居ました。
 前を歩く青年の名前はナッツンと言います。こちらの世界に召喚されてもうすぐ一年になります。ナッツンはこの日、城で行われる事務方の採用試験を受けに向かっていました。ミーナ姫も城に帰るので当然同じ方向に歩いて行きます。
 ミーナ姫の後をつける三人はナッツンを見て早く違う道に入りやがれと考えていました。
 ナッツンはナッツンで自分の後ろから来る四人の事を警戒しておりました。この時ナッツンのレベルはエルとエイダスによって一般人よりは強い状態になっていました。

 中々道を変えないナッツン。(それは当たり前なのだが。)それに業を煮やしたのか、三人の男達はミーナ姫に近付いていき、後ろ、左右を囲みました。

「あら、何ですの? 私に何か用事でもあるのかしら?」

 ミーナ姫は今まで何も無かった事から今回の出来事も軽く考えております。一方ナッツンは職業怪盗の勘が働き、不穏な空気を感じ取っていました。
 気がついてない振りをして暫く進み、角を曲がってから後ろに回り込み、様子を伺います。

 三人の男はナッツンが気づかずに先に行ったと考えて、ミーナ姫を本格的に襲おうとし始めました。

「お嬢ちゃん、この道はこの時間帯だと誰も通らないんだ。物騒だから俺達が護衛してやるよ」

 リーダーだろう男がそうミーナ姫に話し掛けてその手を掴もうとしました。しかし、ミーナ姫はその手を払いのけて言いました。

「結構ですわ! こ自分の顔を良くご覧なさい。私を襲おうと下心満載のだらしない顔をしておりますわ」

「何だと、この野郎! こっちが親切で言ってやってるのに何て態度だ! おい! 捕まえてアジトに連れ込んでヒーヒー言わすぞ。捕まえろ!」

「「はい、兄貴!」」

 ミーナ姫は少しだけ武術の心得がありました。それが悪かったのでしょう。抵抗するために構えて、捕まえにきた男の一人を殴りました。
 が、人を初めて殴ったミーナ姫はその固さに驚き、かつ手首を痛めてしまいました。右手首をおさえて後ずさるミーナ姫に、殴られた男が迫りその頬を平手打ちしました。

「きゃあ!」

 打たれた頬をおさえて倒れ混むミーナ姫。

 そこまで確認してナッツンは素早く動き倒れたミーナ姫と男達の間に割り込みました。

「っ! 何だ、手前テメーは!?」

「女性をナンパするだけなら見逃すつもりでしたが、襲うために平手打ちまでしてしまっては言い訳は出来ません。私はそういう女性の尊厳を無視する男が大嫌いでしてね。邪魔させてもらいますよ。後ろの方、大丈夫ですか? 立てますか?」

 そう言われたミーナ姫は自分の危機に颯爽と現れた青年の背中を見詰めているだけです。
 ナッツンは叩かれたショックで動けないんだろうと考えて、先に男達をどうにかする事にしました。

「今、この場から逃げようなどとは考えないで下さいね。ちゃんと役人のところまでご案内しますから」

「たった一人で威勢が良いじゃねえか! おい、やっちまうぞ!」

「「はい、兄貴!」」

 子分一がナッツンに殴りかかりますが、ナッツンはその拳を捌いて懐に入り込み、鳩尾に一突き入れてから顎先を霞めるようにもう一発入れた。
 クニャリと糸の切れた人形のように倒れる子分一。

「この野郎!」

 子分二が真正面から蹴りを出して来ましたが、ナッツンはあっさりその蹴り足を掴み上にあげました。ひっくり返った男の顎先を脳を揺さぶるように蹴り、気絶させます。
 子分一、二があっさりやられて戦意喪失気味のリーダーでしたが、そこで虚勢を張ってナッツンに言いました。

「きょ、今日のところはこの辺で勘弁しといてやる! 次に会ったら容赦しねぇから覚悟しろよ!」

 そう言って後ろを向いて逃げようとしたリーダーの目の前には何故かナッツンがいました。
 ギョッとした顔でナッツンを見つめるリーダー。

「私は言いましたよね? 逃がさないと」

 しかし悪知恵だけは働くリーダーは今なら後ろの女まで誰も居ない。あの女を人質にすれば逃げられると判断して、回れ右しました。そこで更にギョッとなり、腰を抜かして座り込んでしまいます。

「な、な、な、何でだ? さっきまで後ろにいたのに、何でもう俺の前に居るんだ!」

 腰を抜かしたリーダーに

「さあ? 何故でしょうねぇ」

 そう言ってリーダーの頭を蹴って気絶させたナッツンはミーナ姫を見て言った。

「もう大丈夫ですよ。後は私がこの人達を役人に突き出しておきますから早く家にお帰りなさい」

 優しくそう言うナッツンを見てミーナ姫の心の中では、

『至高のきみ! この方こそ私の至高のきみだわ! 私はいつかこの方と契りを結ぶのよ!』

 と渦巻いてましたが、口から出た言葉はツンな言葉でした。

「あら、帰るまでにまた同じような事があったらどうしますの? 貴方は私を護衛するのに相応しいようですわ。私が良いと言うまで護衛しなさい」

 顔は上気し、瞳は潤んで熱くナッツンを見つめながらもそんな言葉を言うミーナ姫。
 ナッツンはそれを見て、ツンな態度だが自分に好意を持っているし、一人で帰るのに不安も感じているのだろうと勘づきました。
 そこで男達はほっておいて、先ずはこの女性を無事に家まで送り届ける事にしました。

 家が城だと知り、ミーナ姫だと知ったナッツンは先程のツンな態度にも納得したのでした。

『いつかまた会うのですわ! それまで私の貞操を必ず守って見せますわ!!』

 ミーナ姫はそう心に誓った、至高のきみとの出会いのお話でした。
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