俺のスキルが無だった件

しょうわな人

文字の大きさ
上 下
34 / 92

男たちが行くの件

しおりを挟む
 男性陣の方もそれなりに順調に進んでいた。ユウヤはスライムを斬りまくり、ケンジさんと、テリャーさんはそれ以外を倒していた。
 テリャーさんはレベルが二つ上がったので、チーズーさんと入れ替わり、何とユウヤも上がったので(スライム特典はここでも有効だったようだ)、バーグさんに入って貰う。
 そうしていたら、エイダスも上がったのでマクド君に入ってもらった。

 地下三階の最奥に着いた時には、チーズーさん、バーグさん、マクド君は既に一つレベルを上げていた。
 そして、地下四階に降りる階段の前に見たことがないオロチがいた。ケンジさんが叫ぶ。

「蠱毒オロチだ! 奴はヤバい! 俺以外は下がれ!」

 そう言うとケンジさんは体の周りを白光で包んだ。俺は無謬を使い蠱毒オロチを見た。

【蠱毒オロチ】
 自分を中心に半径五メートルの範囲を常に毒で包んでいる。毒の効果は絶大で、効果範囲に入った人は五秒で死に至る。

 そこまで見てケンジさんを見ると五秒たっても蠱毒オロチに攻撃している。どうやらあの身体を包む白光で毒から身を守っているようだ。
 俺は試しに無毒を蠱毒オロチに使用してみた。死んだオロチから毒を取り出した事はあるが、生きたオロチからは初めて試すのでどうなるか分からなかったが、毒を無事に取り出せた。
 そして、毒を俺に取られた蠱毒オロチはそのまま漆黒だった体を真っ白にして絶命してしまった。
 アレ? 何でだ······ 
 俺のレベルが上がったようだ。それも感覚で三つは上がったと分かる。
 一方のケンジさんは突然死したオロチの前で呆然としていたが、振り向いて俺をみて言った。

「トウジがやったのか?」

 俺は素直に答えた。

「はい、スキルを使って蠱毒オロチの体内の毒を取り出したんですが、それで死んでしまったようです」 

 俺の返事に笑い出すケンジさん。

「ワハハハハー、それはヒドイ! こいつは血中に毒がある。それが体内を流れているから、恐らく血液ごと取り出したんだろうな。しかし、凄いスキルだな、トウジ。俺もスキルの使用時間内に倒せるか不安だったから助かったぞ」

 そう言ってケンジさんは俺にサムズアップしてきた。俺は倒した蠱毒オロチを無限箱に入れてから皆に言った。

「俺のレベル上げはもう目標を超えてますから、後は皆のレベル上げに集中しましょう。それじゃあ、地下四階に行きましょう」

 そうして俺達は階段を降りた。

 地下四階はアンデッド系の魔物が幅を利かせていた。肩で風斬るスケルトン。
 いや、冗談ですけど······ ケンジさんとエイダスによると、このスケルトンは上位種の竜牙ウォリアーで、体のどこかにある核を壊さない限り、骨をバラバラにしても復活するらしい。
 さて、これの相手は剣では難しいと思うがと考えマクド君を見ると、手にした武器は何とハンマーだった。
 いや、ちょっと待って······ さっきまで剣を手にしていたよね······

 ハンマーを振り回して骨ごと核をぶち壊していくマクド君の無双が始まっている。

 真相はナッツンが教えてくれた。マクド君の職業は戦鬼闘士【高級職】らしく、ありとあらゆる武器防具をそつなく使用出来るそうだ。それにプラスして、マクド君は次元箱というスキルを持っていて、その箱の中に片手剣、両手剣、刀、槍、弓、ハンマーなどなど数々の武器を入れてあるそうだ。
 対処する相手によって素早く武器を変えて戦うのがマクド君のスタイルらしい。
 
 なす術なく倒されていく竜牙ウォリアー達。凡そ二百体のうち、百三十体を倒したマクド君は喜びの声を上げた。

「やった! レベルが上がったぞ!」

 それに合わせてチーズーさんとバーグさんは

「「おめでとうございます!」」

 とハモって言う。ケンジさんはまだ上がらないようだが、この階で間違いなく上がるだろうと思う。

 竜牙ウォリアーを一掃して、更に奥に進む俺達の前に現れたのは、死霊ナイトだった。

 そこでケンジさんが、剣に光を纏わせて振るう。それだけで消えていく死霊ナイト。
 チーズーさんとバーグさんはそれぞれの武器に炎を纏わせて攻撃しているが、ケンジさんのように一振でとはいかないようだ。
 マクド君は······ アレは恐らく王家に伝わる聖剣なんだろうな。当たってないのに剣を振った先の死霊ナイトが消えていってる······ まあ、何も言うまい。

 死霊ナイトを倒しきった時にチーズーさんのレベルが上がったそうなので、ナッツンに変わってもらった。

「キヒヒヒ、職業怪盗の技をお見せしますね」

 その笑いはもう止めたのかと思っていたぞ、ナッツン。ナッツンの武器は投げナイフだった。しかも自動で手元に戻ってきている。どうやらナイフが聖銀性らしく、死霊ナイトにも有効なようだ。
 格好エエ。

 更に奥に進むと吸血マミーがいた。当たり前に知ってるように言っているが、全てエイダスに聞いたり、エイダスが知らないのは無謬で確認している。だって、この世界に来てアンデッド系の魔物は初お目見えだから······

 そう言えば、この地下四階は腐臭がヒドイので無臭を使用している。うん、俺のスキルは格好良くはないが、役立つモノばかりだ。自画自賛をしていたら、ケンジさんが叫んだ。

「やっと、上がったぞ! エイダス、変われ」

 そう言って下がったケンジさんに変わり、エイダスが入る。うんうん、中々の連携じゃないか。
 そんな時にケンジさんから声をかけられた。

「トウジ、マクド王子はどうだ?」

 聞かれた俺は素直に答えた。

「武器防具全般をそつなく使用するのは凄いですね。ただ、使用している武器や防具の性能に頼りすぎている気もしますね」

「トウジもそう思うか。俺もそう思う。恐らく剣術は真面目に取り組んでいたんだろうな。型通りだが動きは堅実で悪くはない。が、応用が出来てないように見える」

 そう言ってケンジさんはマクド君を見ている。今は聖剣だろう武器で吸血マミーをシュパッズバッと斬っているマクド君。そこで叫んだ。

「よし! またレベルが上がった! ユウヤ、変わるか?」

「いえ、王子がそのままでどうぞ。今はレベルをもっと上げて下さい」
 
 ん? ユウヤはもう良いのか?俺はそう思いユウヤに尋ねた。

「ユウヤ、確かに二つ上がったけどもう良いのか? まだ上げても大丈夫だぞ」

 ユウヤの答えは、意外なものだった。

「先生、実はスキルが新たに出てきまして、【歴代の教え】というスキルでして、どうも無回流の歴代の師匠達の動きや理念が分かるんです」

 えっ、! 何ソレ! 俺もそのスキル欲しいーー!しかし、大人な俺はそれを顔に出さずにユウヤに言った。

「そうか、それは素晴らしいスキルじゃないか。益々精進出来るじゃないか、ユウヤ」

「はい、先生。それで、今も歴代の教えを脳内で展開しているんですが、まだ二代目の師匠なのでこれからドンドン吸収させてもらおうかと思って」

「一体、何代目まであるんだ? 分かったら教えてくれ」

「はい、分かりました」

 俺は羨ましさを堪えてユウヤに笑いかけた。ユウヤも笑顔で返事をする。ケンジさんはそんな俺達を見ながら、剣術流派は良いよな~と呟いていた。そう言えばケンジさんは拳術流派だったのに、この世界での職業が剣術系になったんだよな······
 まあ、そこはしょうがないと諦めて貰おう。

 そして、吸血マミーを倒しきった時にチーズーさんが、言った。

「全員が目標を達成しましたがどうしますか?地下四階を殲滅してから出ますか?」

「そうだな。元々この魔境の洞窟の魔物の氾濫を抑えるのが目的ではあったし。折角ここまできているなら、地下四階は殲滅しておきたいな」 

 ケンジさんがそう言うので、俺達は総力戦で地下四階を殲滅する事にして、チーズーさんに案内されながら先を進んでいった。 

 最奥まで行く時間はチーズーさんによれば三十分程の距離らしいので、魔物を倒しながらでも一時間位だろうと考えて進む俺達。

 実際には五十分程で地下五階へと向かう階段までたどり着いた。そこにケンジさんが魔道具を設置した。

「これで次はここから始められるからな」

 どうやら、入口からこの場所まで転移出来る魔道具のようだ。よし、これで次はここまで歩かなくてすむ。

 しかし、帰りは歩いて戻らなくてはならなかった。入口に設置するのをケンジさんが忘れていた為に······

 大事な事は忘れないでくださ~い······

 俺達は疲れた体を鞭打って、もときた道を戻るのだった。


しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

不登校が久しぶりに登校したらクラス転移に巻き込まれました。

ちょす氏
ファンタジー
あ~めんどくせぇ〜⋯⋯⋯⋯。 不登校生徒である神門創一17歳。高校生である彼だが、ずっと学校へ行くことは決してなかった。 しかし今日、彼は鞄を肩に引っ掛けて今──長い廊下の一つの扉である教室の扉の前に立っている。 「はぁ⋯⋯ん?」 溜息を吐きながら扉を開けたその先は、何やら黄金色に輝いていた。 「どういう事なんだ?」 すると気付けば真っ白な謎の空間へと移動していた。 「神門創一さん──私は神様のアルテミスと申します」 'え?神様?マジで?' 「本来呼ばれるはずでは無かったですが、貴方は教室の半分近く体を入れていて巻き込まれてしまいました」 ⋯⋯え? つまり──てことは俺、そんなくだらない事で死んだのか?流石にキツくないか? 「そんな貴方に──私の星であるレイアースに転移させますね!」 ⋯⋯まじかよ。 これは巻き込まれてしまった高校17歳の男がのんびり(嘘)と過ごす話です。 語彙力や文章力が足りていない人が書いている作品の為優しい目で読んでいただけると有り難いです。 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~

夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。 しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。 とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。 エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。 スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。 *小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み

これダメなクラス召喚だわ!物を掌握するチートスキルで自由気ままな異世界旅

聖斗煉
ファンタジー
クラス全体で異世界に呼び出された高校生の主人公が魔王軍と戦うように懇願される。しかし、主人公にはしょっぱい能力しか与えられなかった。ところがである。実は能力は騙されて弱いものと思い込まされていた。ダンジョンに閉じ込められて死にかけたときに、本当は物を掌握するスキルだったことを知るーー。

外れスキル『収納』がSSS級スキル『亜空間』に成長しました~剣撃も魔法もモンスターも収納できます~

春小麦
ファンタジー
——『収納』という、ただバッグに物をたくさん入れられるだけの外れスキル。 冒険者になることを夢見ていたカイル・ファルグレッドは落胆し、冒険者になることを諦めた。 しかし、ある日ゴブリンに襲われたカイルは、無意識に自身の『収納』スキルを覚醒させる。 パンチや蹴りの衝撃、剣撃や魔法、はたまたドラゴンなど、この世のありとあらゆるものを【アイテムボックス】へ『収納』することができるようになる。 そこから郵便屋を辞めて冒険者へと転向し、もはや外れスキルどころかブッ壊れスキルとなった『収納(亜空間)』を駆使して、仲間と共に最強冒険者を目指していく。

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

タブレット片手に異世界転移!〜元社畜、ダウンロード→インストールでチート強化しつつ温泉巡り始めます〜

夢・風魔
ファンタジー
一か月の平均残業時間130時間。残業代ゼロ。そんなブラック企業で働いていた葉月悠斗は、巨漢上司が眩暈を起こし倒れた所に居たため圧死した。 不真面目な天使のせいでデスルーラを繰り返すハメになった彼は、輪廻の女神によって1001回目にようやくまともな異世界転移を果たす。 その際、便利アイテムとしてタブレットを貰った。検索機能、収納機能を持ったタブレットで『ダウンロード』『インストール』で徐々に強化されていく悠斗。 彼を「勇者殿」と呼び慕うどうみても美少女な男装エルフと共に、彼は社畜時代に夢見た「温泉巡り」を異世界ですることにした。 異世界の温泉事情もあり、温泉地でいろいろな事件に巻き込まれつつも、彼は社畜時代には無かったポジティブ思考で事件を解決していく!? *小説家になろうでも公開しております。

処理中です...