俺のスキルが無だった件

しょうわな人

文字の大きさ
上 下
21 / 92

復活は秘密の件

しおりを挟む
 フィオナ(セレナ)が頭を押さえて呻くユウキ(ユウヤ)を見て俺に言った。

「なんて事をするんですかー!」

 いやー、ついね。ユウキが俺の教えを忘れて油断して石化なんかされてたから。そんなに怒ると美人な顔が台無しですよ~、王女様。俺が心の中でそう思っていたら、

「アハハハ、フィオナ大丈夫だよ~。他愛ない師弟の戯れだから······ しかし、痛いです! 闘史師範! もう少し加減してくれても良いじゃないですか! 可愛い弟弟子にこんな処で会えたって言うのに!」

 ユウキがそう言う。そこで俺は、俺に向かって文句を言うユウキをニヤリと睨み、言ってやった。

「ほー、敵にヤられて固まって、俺に助けられた割には偉そうだな、ユウキ。そんなに強くなったんなら、稽古をつけて貰おうかな?」

 俺の言葉に顔を青ざめて謝罪するユウキ。

「いや、ウソ、嘘です。師範! 僕はとても師範に感謝してます! 本当ですよ!」

 平身低頭のユウキを見て唖然となる三人。そんな三人を眺めながらユウキに尋ねた。

「しかし、ユウキいやユウヤか? ユウヤが良いか。お前が後れをとるなんて、そんなに強かったのか? 石化ドラゴンは?」

「いや~、師範。聞いて下さいよ~。無回流の奥伝、『絶斬』で鱗一枚しか斬れなかったんですよ~。硬いヤツでした~。左手は食い千切られるし。しょうがないから裏奥伝『回流斬』で、首を切り落とした迄は良かったんですけど、今際いまわの際に放たれた呪いを交わす余裕がなくて······ このざまです」

「ふん、残心を忘れていたんだろう! お前は稽古の時もそうだったからな······ でも、まあ会えて良かったよ、ユウヤ」

 俺がそう言うと、ユウヤも涙を流して言う。

「僕も会えて良かったです~······」

 そこでナッツンから指摘が入る。

「しかし、欠損復元ですか? トウジさんは一体他にどんなスキルをお持ちなんですか······ まあ、詮索はしませんが。そして、セレナ王女殿下はじめまして。現在この国でこの姿ではないですが、変装をして宰相をしております、ナッツンと申します。お見知りおきを。しかし困りました······ いや、復活されたのは非常に喜ばしい事なのですが······ 大々的に発表したら、国王達がまた良からぬ気持ちになりそうで······」

 フィオナ(セレナ)が返事をした。

「私は今は冒険者ユウヤの妻、フィオナです。王族の立場ではありません。だから、王女殿下は止めてくださいね。よろしくお願いします。宰相閣下」

 フィオナの挨拶が終わるのを待って、俺はサヤに言った。

「サヤ、土魔法で二体石像を作れるかな?」

「トウジ、それは可能だけど······ 劣化速度が違うからバレちゃうわよ」

「状態維持がかかってるから大丈夫なんじゃないのか?」

 俺がそう疑問を口にすると、フィオナが返答してくれた。
 
「状態維持の結界は永遠ではなく、劣化を極端に遅らせるだけなんです。ですから、いずれは私達も朽果てる筈でした。石化ドラゴンの呪いが強力だった為に、劣化速度も遅かったのが幸いでしたが、土魔法で作られた石像は例え状態維持がかかっていても、半年で崩れてしまいます」

 ナルホドなぁ~······。 まあ、それでも今すぐ大騒ぎになるよりは良いだろうと提案して、疑似石像をサヤに作って貰った。その上でナッツンに言う。

「ナッツン、変装でユウヤとフィオナさんを俺とサヤに出来るか? そしたら、色々便利なんだが。それと、通信石に余分があるなら二人にも渡してくれ」

 幸いにも俺とユウヤ、サヤとフィオナは身長がほぼ同じ(俺は175cm、サヤは158cm)で、フィオナの方がサヤより出る所は出ている(ッ! 殺気が!)が、ナッツンの変装なら何とか出来るだろう。何せナッツンが女性のエルさんになってたんだから。

「キヒヒヒ、勿論全て大丈夫ですよ。考えましたね、トウジさん」

 そう言うと、二人に変装を発動するナッツン。そして、俺とサヤに瓜二つになった二人に通信石を渡して使い方を説明する。
 俺は二人に言った。

「二人が建てた家は、俺とサヤが購入して住んでいる。二人はそのまま家に行って身体を休めてくれ。俺とサヤは新婚だから、家から出なくてもそんなに怪しまれない筈だ。但し、裏の宿屋のヤーン君とレイちゃんは遊びにくるかも知れないから、そこだけ注意してくれ。食事用の食材は買ってあるから好きに使ってくれ。詳しくは落ち着いて話せる様になったら説明するから」

 そう言うと、俺に慣れているユウヤは、

「わっかりましたー! 師範、待ってます!しかし、師範が結婚されたとは! それもこんな若い美少女と! 犯罪ですね! それに師範好みの出過ぎない胸をお持ちなんて! まあ、僕はフィオナにメロメロですが、フィオナに出会ってなかったらヨロシクしたかったですね! っ、! 今のは冗談ですよう····… 笑顔で刀を抜かないで下さいよ~······ フィオナも詠唱を止めてくれよ~······ 僕はフィオナ一筋だよ~、ホントだよ~。ねっねっ、二人とも、他愛ない冗談ぐらい笑って流しましょうよ~······」

 見かねたサヤが俺達を止めてくれた。本当にコイツは······ 地球に居た時と何も変わってない。突然居なくなって、先生はどれだけ気落ちしていたか······ まあ、それは俺にも言えるんだが······ 
 黙っている俺をまだ怒っていると思ってか、恐る恐る俺に聞いてくるユウヤ。

「あの~、師範。待つってれくらい待てば良いんでしょうか?」

 俺は少し考えて、三日間かなとナッツンを見た。

「キヒヒヒ、そうですな。凡そ三日でカタがつくと私も思います」

 そう答えたナッツンを見て、ユウヤが

「あの、間違ってたらゴメンなさい。貴方はマジシャンのピーナッツ・ペーストさんではないですか?」

 と聞いた。そう聞かれたナッツンは目を見開いて驚いている。

「まさか、三流マジシャンの私をご存知の方が居るとは!?」

 すると、ユウヤは

「やっぱり、そうなんですね! 僕は貴方がデパートのオモチャ売り場の入口でマジックを披露されているのを見てましたから!」

 と興奮していた。うーん、悪いが俺は知らないぞ。そんな美味しそうな名前のマジシャンは。

「キヒヒヒ、それは有り難うございます。私もそんな方に出会えて非常に嬉しいです」

 さてさて、色々と話し合いたい所だが、暫くは辛抱して、先ずはあの愚者五人からナッツンを守る仕事だな。

 それから、俺達は別れて移動を開始した。ユウヤとフィオナは我が家へ、俺とサヤはナッツンと一緒に王城へと向かう。
 ナッツンが、途中で聞いてきた。

「さて、お二人にはご迷惑をおかけしますがどうやって城に入られます?」

「ナッツン、城に到着する前に少し距離を取ろう。そこで、俺とサヤはスキルで姿を隠す。ナッツンはそのまま気にせずに、いつも通りに城に入ってくれ。俺達もその時にナッツンには見えないだろうが、一緒に入るから。入ってから通信石で連絡するよ」

 俺がそう言うとナッツンは驚いた顔で、

「マジシャン顔負けですね······」

 そう言った。

 城の数百メートル手前で俺とサヤは足を止めて、路地裏に入る。誰も居ないのをサヤに確認してもらい、スキル無色、無音、無臭、無視を併用がけしてナッツンの後を追った。

 ナッツンに追い付いたが、まだ声はかけない。専用門から中に入るナッツンと一緒にシレッと俺達も入った。自室に向かうナッツンについていくと、早速現れましたよ。

 ショウジだったかな? まあ良いか。ナッツンも足を止めたので、俺が右でサヤが左に立って警戒した。ショウジはナッツンに話し掛けてきた。

「宰相さんよ~、何時になったら俺達に商売女娼婦以外を斡旋してくれるんだい? 約束はちゃんと守ってもらわないとなぁ。いくら温厚な俺達でもいい加減、キレるぜ!」

 威圧を含んだショウジの物言いもどこ吹く風で返答するナッツン。

「キヒヒヒ、ショウジさん。約束と言うなら先のベアー退治が成功したら、でしたよね? あなた方は見事に敗走しましたから、約束を反故にされたのは、私ではなくそちらになりますよ」

 ナッツンに正論を言われてキレるショウジ。
 

 うーん、正論言われるとキレるなんて、カルシウム不足だな。煮干しと牛乳が必要だな。
 そう考えながらショウジの隣に移動する俺。

「どうやら、痛い目をみないと分からないようだな、宰相さんよ!」

 そう言ったショウジだが、隣に移動して爪先が引っ掛かる様に出した俺の足に見事にかかり、スッ転んだ。受ける~~~。サヤも笑顔だ。
 ウンウン、サヤの笑顔の為なら俺は悪戯を頑張るよ。

「おやおや、どうしました? ショウジさん?そこには段差も何も無いですが······」

 ナッツンがおどけて言うと顔を真っ赤にしてショウジが叫ぶ。

「うるせぇーっ! ちょっと滑っただけだっ! もう、お前は許さねぇからなっ!」

 そう言って立ち上がろうとしたショウジの頭頂にちょうど当たる様に俺は肘を構えた。
 これ、無意識で物に当たると想像以上に痛いんだよね~(経験者談)

 ゴッチーーンと擬音が聞こえてきそうな勢いで、俺の肘に頭をぶつけたショウジ。

「ぐあっ! 何だってんだっ! クソ痛ぇーー!」

 頭をおさえて踞る。そこにナッツンが語りかけた。

「ショウジさん、一つお教えしておきましょう。この国の宰相には神の守護がついております。私を傷つけようとしても、神の守護により、全て防がれてしまいます。そして、その防ぎかたも私への攻撃を止めなければ、段々と過剰になって行きます。どうされますか? まだ攻撃されますか?」

 そう言うナッツンを不気味そうに見ながら、口だけは偉そうにショウジは言った。

「けっ、神の守護だぁ。そんなハッタリが俺達に通用すると思うなよ。今度は五人全員でアイサツに来てやるからな。首を洗って待っておけ」

 俺達って······ 今いるのは君一人ですが?そう思いながら立ち去ろうとしたショウジにダメ押しで俺はラリアットをかました。
 あっ、ついまともに喉へ入れちゃった。テヘッ。ゲホゲホ言いながらも、慌てて走って逃げ出したショウジを見て腹を抱えて笑うナッツン。

「いや~、素晴らしいですな。神の守護コレで話を押し通しましょう」

 俺達が聞いている事を前提に喋るナッツンはおもむろに歩きだして、自室に行き扉の中に入り暫く(俺達が中に入るのを)待って扉を閉めた。
 俺は部屋に無音をかけて、通信石でナッツンに話し掛けた。

 今後の方針を話し合う為に。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

不登校が久しぶりに登校したらクラス転移に巻き込まれました。

ちょす氏
ファンタジー
あ~めんどくせぇ〜⋯⋯⋯⋯。 不登校生徒である神門創一17歳。高校生である彼だが、ずっと学校へ行くことは決してなかった。 しかし今日、彼は鞄を肩に引っ掛けて今──長い廊下の一つの扉である教室の扉の前に立っている。 「はぁ⋯⋯ん?」 溜息を吐きながら扉を開けたその先は、何やら黄金色に輝いていた。 「どういう事なんだ?」 すると気付けば真っ白な謎の空間へと移動していた。 「神門創一さん──私は神様のアルテミスと申します」 'え?神様?マジで?' 「本来呼ばれるはずでは無かったですが、貴方は教室の半分近く体を入れていて巻き込まれてしまいました」 ⋯⋯え? つまり──てことは俺、そんなくだらない事で死んだのか?流石にキツくないか? 「そんな貴方に──私の星であるレイアースに転移させますね!」 ⋯⋯まじかよ。 これは巻き込まれてしまった高校17歳の男がのんびり(嘘)と過ごす話です。 語彙力や文章力が足りていない人が書いている作品の為優しい目で読んでいただけると有り難いです。 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

異世界キャンパー~無敵テントで気ままなキャンプ飯スローライフ?

夢・風魔
ファンタジー
仕事の疲れを癒すためにソロキャンを始めた神楽拓海。 気づけばキャンプグッズ一式と一緒に、見知らぬ森の中へ。 落ち着くためにキャンプ飯を作っていると、そこへ四人の老人が現れた。 彼らはこの世界の神。 キャンプ飯と、見知らぬ老人にも親切にするタクミを気に入った神々は、彼に加護を授ける。 ここに──伝説のドラゴンをもぶん殴れるテントを手に、伝説のドラゴンの牙すら通さない最強の肉体を得たキャンパーが誕生する。 「せっかく異世界に来たんなら、仕事のことも忘れて世界中をキャンプしまくろう!」

タブレット片手に異世界転移!〜元社畜、ダウンロード→インストールでチート強化しつつ温泉巡り始めます〜

夢・風魔
ファンタジー
一か月の平均残業時間130時間。残業代ゼロ。そんなブラック企業で働いていた葉月悠斗は、巨漢上司が眩暈を起こし倒れた所に居たため圧死した。 不真面目な天使のせいでデスルーラを繰り返すハメになった彼は、輪廻の女神によって1001回目にようやくまともな異世界転移を果たす。 その際、便利アイテムとしてタブレットを貰った。検索機能、収納機能を持ったタブレットで『ダウンロード』『インストール』で徐々に強化されていく悠斗。 彼を「勇者殿」と呼び慕うどうみても美少女な男装エルフと共に、彼は社畜時代に夢見た「温泉巡り」を異世界ですることにした。 異世界の温泉事情もあり、温泉地でいろいろな事件に巻き込まれつつも、彼は社畜時代には無かったポジティブ思考で事件を解決していく!? *小説家になろうでも公開しております。

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~

夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。 しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。 とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。 エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。 スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。 *小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み

俺の召喚獣だけレベルアップする

摂政
ファンタジー
【第10章、始動!!】ダンジョンが現れた、現代社会のお話 主人公の冴島渉は、友人の誘いに乗って、冒険者登録を行った しかし、彼が神から与えられたのは、一生レベルアップしない召喚獣を用いて戦う【召喚士】という力だった それでも、渉は召喚獣を使って、見事、ダンジョンのボスを撃破する そして、彼が得たのは----召喚獣をレベルアップさせる能力だった この世界で唯一、召喚獣をレベルアップさせられる渉 神から与えられた制約で、人間とパーティーを組めない彼は、誰にも知られることがないまま、どんどん強くなっていく…… ※召喚獣や魔物などについて、『おーぷん2ちゃんねる:にゅー速VIP』にて『おーぷん民でまじめにファンタジー世界を作ろう』で作られた世界観……というか、モンスターを一部使用して書きました!! 内容を纏めたwikiもありますので、お暇な時に一読していただければ更に楽しめるかもしれません? https://www65.atwiki.jp/opfan/pages/1.html

これダメなクラス召喚だわ!物を掌握するチートスキルで自由気ままな異世界旅

聖斗煉
ファンタジー
クラス全体で異世界に呼び出された高校生の主人公が魔王軍と戦うように懇願される。しかし、主人公にはしょっぱい能力しか与えられなかった。ところがである。実は能力は騙されて弱いものと思い込まされていた。ダンジョンに閉じ込められて死にかけたときに、本当は物を掌握するスキルだったことを知るーー。

異世界転移ボーナス『EXPが1になる』で楽々レベルアップ!~フィールドダンジョン生成スキルで冒険もスローライフも謳歌しようと思います~

夢・風魔
ファンタジー
大学へと登校中に事故に巻き込まれて溺死したタクミは輪廻転生を司る神より「EXPが1になる」という、ハズレボーナスを貰って異世界に転移した。 が、このボーナス。実は「獲得経験値が1になる」のと同時に、「次のLVupに必要な経験値も1になる」という代物だった。 それを知ったタクミは激弱モンスターでレベルを上げ、あっさりダンジョンを突破。地上に出たが、そこは小さな小さな小島だった。 漂流していた美少女魔族のルーシェを救出し、彼女を連れてダンジョン攻略に乗り出す。そしてボスモンスターを倒して得たのは「フィールドダンジョン生成」スキルだった。 生成ダンジョンでスローライフ。既存ダンジョンで異世界冒険。 タクミが第二の人生を謳歌する、そんな物語。 *カクヨム先行公開

処理中です...