俺のスキルが無だった件

しょうわな人

文字の大きさ
上 下
8 / 92

女性陣が半端ない件

しおりを挟む
 北門から出た俺達は一キロ先にある森に向かった。

 ここには、地主オオカミや猛毒オロチがいるらしい。

 中級冒険者(D級~C級)がヤられる事もある猛毒オロチは、皮·肉·血·毒·牙が買取対象で、キレイに倒したら一体で大銀貨一枚(凡そ五万円)になる。
 その所為か、エルさんの気合いが凄かった。

 地主オオカミは、皮·肉·牙·骨が買取対象だが、一体で丸銀貨一枚(凡そ一万円)なので、テンションが上がらない(byエル)そうだ。

 そして、森に入って索敵していたエルさんが、お目当てを見つけた。
 俺は検証を兼ねて、三人を同体と見なして無音をかけてみていた。
 すると、一人一人にかけていた時と違い、互いに話が出来たので、複数で狩りに来た時にはこの使い方をする事になった。

「あそこに一体とあちらにもう一体いるわ! サヤちゃんはアッチをお願い! 私はこっちに行くわ! トウジさんはそこで見ていて下さい!」

 俺は頷くしか出来なかった。だって圧が凄いんだもん······
 
 サヤちゃんは言われた方に向かい、刀を一閃する。木の上で獲物を待っていた猛毒オロチの首が落ち、その下に既に刀を血を受ける樽に持ち替えたサヤちゃんが立っていた。

 首を指差して、俺に回収するように指示するサヤちゃん。俺はそのまま無形箱に首を入れた。

 一方、エルさんは首を皮一枚残して切り、サヤちゃんと同じように下で樽を持ち血を受けていた。

 俺はそんな二人を見て、半端ないなと思っていたら、エルさんから指示が飛ぶ。

「トウジさん、血の匂いで地主オオカミが来てます! 対処してください!」

 俺は慌てて周囲を見る。
 すると、木に隠れながらこちらに来る四足歩行の魔物を八体見つけた。

「分かりました」

 俺はエルさんに返事を返して刀を抜く。

 先手必勝の気持ちで、最初にエルさんに飛びかかろうとした地主オオカミの頸動脈を切り裂き、返す刀で、二体目と三体目の頸動脈を切り裂く。

 いきなり三体もヤられたのを見た残り五体は、サヤちゃんに的を移す。

 しかし、サヤちゃんは既に血を受け終えていて、しかもオロチも魔法鞄に収納済みだった為に、かかってきた三体を俺より早く仕留めた。

 B級というのは、こんなにも凄いのかと俺は感心した。残った二体はキャンキャンと哭きながら、森の奥へと逃げていった。

 その時に俺は視線を感じた。

 かなり高い場所からの視線だ。俺は顔を向けずに目と意識だけを視線の来る先に向ける。

 すると、気付かれたと悟ったのかエルさんやサヤちゃんが倒したオロチよりも、二回り大きな猛毒オロチが俺達を目掛けて襲ってきた。

 俺は視界の片隅でその動きを見ていたので、慌てずに刀を振った。
 狙いは違わずに、エルさんと同じように首皮を一枚残して切り裂き、溢れる血を慌てて無形箱から出した樽で受けた。

 俺が倒したオロチの気配に気付いてなかった、エルさんとサヤちゃんは驚き、二回り大きなオロチを見て、更に驚いた。

「「王毒オロチッ!!」」

 血を受け終わった俺に、エルさんが言う。

「ト、トウジさん。良く気付きましたね」

 続けてサヤちゃんが買取価格を教えてくれた。

「王毒オロチは猛毒オロチの上位種で、買取価格は大金貨一枚(凡そ百万円)が相場です」 

 そこでエルさんとサヤちゃんの闘志に火が着いたようだ。

「サヤちゃん、これはオスだから更に二倍大きいメスが近くにいる筈よ!」

「エルさん、最大限に索敵を強化します! 見つけて必ず狩りましょう!」

「「トウジさんは、露払いをお願い!!」」

 二人の気迫にハイとしか返事できない俺。けれどもそんな上位種を狩る準備を二人はしてるのかな? と少しだけ心配になったが、圧が凄いので黙っておく。
 そうして、二人の後をついていき、時折現れる地主オオカミを狩りながら、レベル上がったけど見る時間は無さそうだなと考えていた······

 そして見つけた洞窟。サヤちゃん曰く、これはオロチの巣穴らしい。そして、この奥にオスよりも値段が高いメスがいるそうだ。
 しかし、二人ともこんな事は想定してなかった為に、灯りの用意がないという。

 エルさんは初級魔法(火・水・風)で、サヤちゃんは中級魔法(風・土・闇)なので、光源がないと言う。
 そこで俺は二人に言った。

「あの、俺のスキルに光源があるから入って見ますか?」

 二人は俺を称賛してくる。

「素晴らしいわ! 人妻じゃなかったらトウジさんに抱かれても良かったぐらいっ!」

『いや、不倫はダメですよ。エルさん』

「トウジさん、私はソロで活動してるんですが、レベル上げが終わったら、パーティーを組みましょう!」
 
『いや、俺が冒険者登録をしたとして、F級始まりだし、そんな初級者がサヤちゃんとパーティーを組めば、やからに絡まれるから、遠慮します』

 俺は心の声が出ない様に最大限の注意を払い、二人に言った。

「ハハハ、二人とも有り難うございます。たまたま、昨日のレベルアップで新たに得たスキルだから、気にしなくても良いから」

 俺はそう言って、真っ先に巣穴の入口に向かい、起点を俺の頭上一メートル上の空間に定めて、無尽灯を発動した。範囲は半径五メートルに設定した。

 エルさんとサヤちゃんはそれを見て気合いを入れる。

「よーしっ! 行くわよ! サヤちゃんが先頭で、真ん中がトウジさん! 殿《しんがり》は私ね!」

「トウジさん、この灯りの範囲はこれが最大ですか?」

 サヤちゃんに聞かれたので、俺は俺を中心にして、あと三メートルなら範囲が広がると伝えた。

「分かりました。王毒オロチのメスを見つけたら声をかけますから最大にして下さい」

 とサヤちゃんが言う。俺は分かったと返事をして、サヤちゃんと三メートル離れて歩きだした。

 その俺の後を同じく三メートル離れて着いてくるエルさん。何故か背中に味方からの威圧を感じながら、俺は進んだ。

 道中にいたスライムを俺が狩る。その数は三十を超えてからは数えるのを止めた。
 俺がスライムをスパスパ斬るのを後ろから見ているエルさんが凝視しているのが分かるが、何だろう?何も言ってこないのでそのまま進むが。
 しかし、途中でまたレベルが上がった。これでレベル5になったなと思いながら、奥へ奥へと進む。

 巣穴に入って三十分が経った時に、サヤちゃんから質問された。

「トウジさん、随分長くスキルを使用したままですけど、生命力や魔法力は大丈夫ですか? かなり減ってませんか?」

 俺は素直に答えた。

「いや、サヤちゃん。実は俺のスキルはどちらも消費しないんだ。何故かは俺にも分からないから、聞かれても困るけど······」

 俺の返事を聞いたサヤちゃんはビックリする。

「えっ、! どちらも消費しないスキルなんて有るんですかっ!」

「実際にどちらも消費してないから、有るとしか俺は言えないんだけど······」

「トウジさんっ! 王毒オロチのメスを狩ったら、冒険者登録に行きましょう! そして、私とパーティーを組んで下さい。よろしくお願いしますっ!!」

 また、頼まれてしまった。

「ハハハ、まあ無事に終わったら考えてみるよ」

 俺の返事を聞いたサヤちゃんは、

「絶対ですよっ!」

 と力強く言った。

 しかし、その直後に前を向き俺とエルさんに声をかける。

「居ました! メスです!」

 それを聞いて俺は最大半径にした。
 
 が、俺自身が驚いた。
 
 昨日、確認した時は最大八メートルだった筈の灯りが、今はどう見ても半径十五、六メートルを照らしている。
 どうやら俺のレベルが上がると、最大値も上昇するスキルだったようだ。
 しかし、そのお陰でメスが確りと確認出来る。

 前に出てきたエルさんと、サヤちゃんが二人で王毒オロチのメスに迫る。

「行くわよ! サヤちゃん!」

「はい、エルさん!」

 迫って行く二人に首を伸ばし、噛みつこうとするメスのオロチ。その巨体からは信じられない位の速さだ。

 しかし、二人はそれを躱して攻撃する。

 が、二人の攻撃はその身に纏う鱗に弾かれた。
 それでも、さすがは高レベルの二人である。
 二人ともに首筋の同じ場所に何度も攻撃している。
 流石に鱗も耐えきれずに飛んで行く。

 そして、オロチの首筋にサヤちゃんの刀が入った瞬間に、オロチの口から霧が生まれた。

「ヤバい! 広範囲の毒霧よ! サヤちゃん、下がって!」

 言ってるエルさんも範囲内に居る為に、霧を吸ってしまう。二人の顔色が蒼黒く変わった。

 即座に俺はスキルを発動した。

 無毒。

 瞬時に二人の顔色が血色良くなる。

 そして、サヤちゃんの刀が首に入ったのが致命傷だった王毒オロチはそのまま息絶えた。

 すかさず俺は樽を持って血を受ける。
 戦闘に参加しなかったから、雑務は俺の仕事だと考えたからだ。

 しかし、戦闘を終えた二人はそんな俺に質問を浴びせた。

「ト、トウジさん、何かした?」

「王毒オロチの毒が消えたっ! 何で? トウジさん、分かる?」

「えっ、! エルさんは俺のスキル知ってますよね? 無毒を」

「えっ、! あれって、王毒オロチの毒も消せるのっ!?」

「えっ、! えっ、! 何ですか? そのスキル?」

「いや、だから俺のスキルで無毒っていうのがあって、毒を消せるから使ったんだけど······ ダメだったかな?」

 ブンブンと首を横に振る二人。
 そして、エルさんが教えてくれた。

 王毒オロチのメスの毒は、吸ってしまうと体力が高い者でも、凡そ二十秒で死に至るそうだ。
 そして、町で売られている毒消しは効かないので、吸ったら死を待つのみらしい。
 そんな毒を瞬時に消し去った俺のスキルは途轍もないモノだと二人に言われた。

 が、俺にしてみれば何度も正確無比に同じ場所を攻撃し続けた二人の方が凄いと思っていた。

 半端ねぇな、この二人は。

 そして、俺達は遅くなった昼食を食べて町に帰った。

 俺の倒した王毒オロチのオスのバーム商会での買取価格は、大金貨一枚と角金貨三枚(凡そ百三十万円)に。
 
 エルさんとサヤちゃんが倒したメスは何と、大金貨三枚と金貨一枚(凡そ三百五十万円)になった。
 それにプラスして、森の入口で倒した猛毒オロチが二体。それぞれ大銀貨一枚(凡そ五万円)で売れた。

 因みに、地主オオカミとスライムは今回は売ってない。

 エルさんと、サヤちゃんはメスの分を三等分しようと言うが、俺は一切戦闘には参加してないから、断固として断った。
 何とか二人を納得させて、一旦宿に戻る事にした。晩飯は、エルさん宅でいただくが汗を流したいからだ。

 因みに、サヤちゃんの泊まる宿も同じ『豚の箱』だったので、二人で宿まで一緒に戻った。

 数年振りにデート気分を味わえて、嬉しかった。
 
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

不登校が久しぶりに登校したらクラス転移に巻き込まれました。

ちょす氏
ファンタジー
あ~めんどくせぇ〜⋯⋯⋯⋯。 不登校生徒である神門創一17歳。高校生である彼だが、ずっと学校へ行くことは決してなかった。 しかし今日、彼は鞄を肩に引っ掛けて今──長い廊下の一つの扉である教室の扉の前に立っている。 「はぁ⋯⋯ん?」 溜息を吐きながら扉を開けたその先は、何やら黄金色に輝いていた。 「どういう事なんだ?」 すると気付けば真っ白な謎の空間へと移動していた。 「神門創一さん──私は神様のアルテミスと申します」 'え?神様?マジで?' 「本来呼ばれるはずでは無かったですが、貴方は教室の半分近く体を入れていて巻き込まれてしまいました」 ⋯⋯え? つまり──てことは俺、そんなくだらない事で死んだのか?流石にキツくないか? 「そんな貴方に──私の星であるレイアースに転移させますね!」 ⋯⋯まじかよ。 これは巻き込まれてしまった高校17歳の男がのんびり(嘘)と過ごす話です。 語彙力や文章力が足りていない人が書いている作品の為優しい目で読んでいただけると有り難いです。 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~

夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。 しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。 とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。 エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。 スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。 *小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み

これダメなクラス召喚だわ!物を掌握するチートスキルで自由気ままな異世界旅

聖斗煉
ファンタジー
クラス全体で異世界に呼び出された高校生の主人公が魔王軍と戦うように懇願される。しかし、主人公にはしょっぱい能力しか与えられなかった。ところがである。実は能力は騙されて弱いものと思い込まされていた。ダンジョンに閉じ込められて死にかけたときに、本当は物を掌握するスキルだったことを知るーー。

外れスキル『収納』がSSS級スキル『亜空間』に成長しました~剣撃も魔法もモンスターも収納できます~

春小麦
ファンタジー
——『収納』という、ただバッグに物をたくさん入れられるだけの外れスキル。 冒険者になることを夢見ていたカイル・ファルグレッドは落胆し、冒険者になることを諦めた。 しかし、ある日ゴブリンに襲われたカイルは、無意識に自身の『収納』スキルを覚醒させる。 パンチや蹴りの衝撃、剣撃や魔法、はたまたドラゴンなど、この世のありとあらゆるものを【アイテムボックス】へ『収納』することができるようになる。 そこから郵便屋を辞めて冒険者へと転向し、もはや外れスキルどころかブッ壊れスキルとなった『収納(亜空間)』を駆使して、仲間と共に最強冒険者を目指していく。

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

タブレット片手に異世界転移!〜元社畜、ダウンロード→インストールでチート強化しつつ温泉巡り始めます〜

夢・風魔
ファンタジー
一か月の平均残業時間130時間。残業代ゼロ。そんなブラック企業で働いていた葉月悠斗は、巨漢上司が眩暈を起こし倒れた所に居たため圧死した。 不真面目な天使のせいでデスルーラを繰り返すハメになった彼は、輪廻の女神によって1001回目にようやくまともな異世界転移を果たす。 その際、便利アイテムとしてタブレットを貰った。検索機能、収納機能を持ったタブレットで『ダウンロード』『インストール』で徐々に強化されていく悠斗。 彼を「勇者殿」と呼び慕うどうみても美少女な男装エルフと共に、彼は社畜時代に夢見た「温泉巡り」を異世界ですることにした。 異世界の温泉事情もあり、温泉地でいろいろな事件に巻き込まれつつも、彼は社畜時代には無かったポジティブ思考で事件を解決していく!? *小説家になろうでも公開しております。

処理中です...