寡黙な男はモテるのだ!……多分

しょうわな人

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072話 隠密部隊

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 さてと…… フェルとのお話合いは取り敢えず意識から除外をしてと…… 今除外しても後から必ずやっては来るんだけど……

 先ずはトウリさんたちの住まいをどうするかだね。僕は屋敷に空き部屋があるのは分かっていたけど、4人が屋敷に住込みで働きたいか確認する事にしたんだ。

【4人とも屋敷に住込みでもいい? それとも敷地内に離れ家でも建てようか? どっちがいいかな?】

 何でこんな事を聞いたかというと、新婚さんがいるからだよ。前世の感覚からして新婚さんは2人だけの甘い生活を望む事が多いからね。
 そしてやっぱり僕の問いかけにヒヨリが率先して答えてくれたよ。

「ト、トーヤ様!! 贅沢だとはもちろん分かっているのですが、私は離れ家を建てていただければ……」

 最後はセンジやオリョウに睨まれて尻つぼみになったけど、やっぱりそうだよね。僕が頷いたのを見て嬉しそうにするヒヨリ。センジとオリョウはそれを見て文句を言うのを止めたよ。そしてセンジとオリョウは2人とも住込みで良いって言ったよ。

 僕は離れ家を建てるようにロッテンに頼んだよ。一流の職人さんたちにお願いするから早く建つからねとヒヨリには紙に書いて伝えた。嬉し涙をこぼしながら喜んでくれたよ。トウリは申し訳なさそうな顔をしていたけど、でもちょっと嬉しそうだったよ。

 そして、少し話合いをしたんだ。ヤパンの今の情勢をトウリやセンジに聞いてみたよ。

 ヤパンは現在、天皇家と将軍家がこれ迄に無いほど揉めに揉めているそうだよ。以下はトウリの口から聞いた話なんだけど。

「将軍家では天皇陛下をないがしろにして政務を執り行い、これまで僧侶に紫衣を与えるのは天皇家であったにも関わらずにそれさえも将軍家が行うという法度はっとを出して、対立が深まっております。キンキン地方より西の地域の諸大名は総じて天皇家についており、東側地域の諸大名が将軍家についておる状態です。ただ、私の生家であるダウテ家はどちらにつくと表明をしておりませぬ……」

 ん? なんでダウテ家は表明してないのかな?

 僕の不思議そうな顔を見てトウリが教えてくれたよ。

「トーヤ様、イーヨ県のダウテ家は分家なのです。親家は大藩で東側にあり、ダウテ・コトムネが治めております。イーヨ県は将軍家が天下を統一した際にダウテ家に分け与えられた領地でして、その時に親家から次男であったダウテ・サネチカが領主として派遣されました。親家はもちろん将軍家についておりますが、領地の場所的に天皇家に近い為に対外的には天皇家寄りの動きを見せてはおります…… が、このまま混乱期に入るとどう動くつもりなのかは我が親ながら読めておりません……」

 うーん、賢そうで人を見るのにもけてそうなトウリが読めないなんて、凄い親なんだね。僕がそう思っていたら、トウリから否定の言葉が聞こえたよ。

「トーヤ様、何やら私の親について勘違いをなされているようなので、ここで訂正しておきますね。私が読めないと言ったのは、我が親ながらその場その時に思いついたら即行動する馬鹿親なので読めないという意味だったのです。決して我が親が思慮深い考えを持っている訳ではありませんので……」

 あ、そうだったんだね…… 僕の深読みしすぎだったようだよ。でも、そうなると混乱期に関わらず、コッチにチョッカイを出してきそうだね。僕が思考してるとフェルがトウリに聞いたよ。

「トウリ、貴方の生家がナニワサカイ国や私達にまでチョッカイをかけてくると思う?」

「フェル様、恐らくは父が暴走しようとしても家老のナガミネが上手く大事にしないように言いくるめるとは思います。例えば父が手段を選ばずに村のもの達を連れ戻せと命令しても、ナガミネならば今の時期は無理だと言って草を放ちますとか理由を述べて先延ばしにするでしょう。けれどもそれもいつまで保つかは分かりません。それに実際に草は多く、ナニワサカイ国やサーベル王国にも入ってると思います」

「そう、そうなのね…… トーヤ、ハール様はご存知なのかしら? お知らせするべきかしらね? それと、私達も独自の諜報員を育てていくべきだと思うわ」

 うん、フェルの言う通りだね。全く良くてきた妻だよ。幸いにしてうちの家には優秀な人が多い。格好良く隠密部隊と名付けて諜報員を組織しても良いかな。それに、さすがフェルだよ。僕はハール様にお知らせするのは気がついて無かったよ。例えご存知だとしてもお知らせしておくべきだね。僕はフェルに頷いたんだ。

 それからトウリと打合せを済ませて僕とフェルは王都の屋敷に戻ったんだ。そして、ハール様にご連絡してお会いしたいと伝えると明日の午前中に時間を作って下さったよ。
 更に僕はグレイハウ伯爵のラウールさんの所に出かけた。僕の領地には入れなくても隣の領地であるグレイハウ伯爵領には恐らく潜入してるだろうから、その事を伝えるのと対処方法を一緒に考えようって話を伝えたんだ。

 その前にラウールさんのお屋敷にいる使用人を全員集めて貰って僕の神明眼しんみょうがんで確認してみたよ。そしたら総勢35名いた使用人の中に3名の草が居たんだ。ラウールさんもサハーラさんもビックリしてたよ。だって、ラウールさんが幼少の頃から仕えてくれていた使用人が1人居て、他の2人はその使用人の紹介で仕えるようになったらしいからね。
 その3名は僕に見破られたと分かった瞬間に自害しようとしたけど、僕が止めたんだ。

【お国(イーヨ県)に戻るのは自由だよ。僕たちは君たちに出ていって欲しいだけだからね。もちろん、お国に報告しない、そして今後、グレイハウ伯爵の為に働くという神誓約をするならこれまで通り、ここで働けるよ? どうするかは君たち次第だよ】

 そう書いて見せたら3人とも神誓約をしてくれたよ。一番古参の草は長年ラウールさんに仕えている内にその優しさに本当にこのまま何事もなくお仕えできたらとずっと思ってたらしいんだ。
 それに、任務に失敗した草は国(イーヨ県)に戻れば始末されてしまうらしいから、それならばいっそって思ったそうだよ。紹介で後から入ってきた2人も実はその草の息子夫婦らしく、母親は既に亡くなってしまってるから、国には未練が無いと言って神誓約をする事を承諾したんだ。どうも自分の父親が長い期間、草としてこの地に来らされているのが不満だったようだよ。これからはラウールさんの為に諜報員としての活動もしますって言ってたよ。
 そこで僕は慌ただしいとは思ったけど、ラウールさんとその3人を連れて僕の領地に飛んだんだ。
 トウリやヒヨリ、センジ、オリョウと出会った3人は喜び、協力しあう事になったんだ。詳細は後日、話し合う事になったよ。

 そうして僕はラウールさんも連れて王都の屋敷に戻り、今日は泊まって貰って明日の午前中に一緒にハール様に会う事にしたんだ。 
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