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領地発展
058話 観光名所はナニワ
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職人街がサカイならば、今カーズ義兄さんに連れて来られた場所はナニワだね。さすが2つの名を冠する国だと思ったよ。
今僕たちが来ているのは【頭噸堀】にある【ホビー・クラーブ】というレストランなんだ。
いや…… とうとんぼりとか、道楽かにとか…… トモジ爺ちゃんと2人で顔を見合わせたのは言うまでもないよね。しかも、店の看板で動いてる【かに】は、飼い慣らされた生きた魔物の【イビル・キャンサー】なんだって!
毎日昼から夜まで動くだけでお腹いっぱいに大好物のボッラという魚を食べられるからっていう理由らしいんだけど……
セティナ姉さんにそう教えて貰った時はジーッと【イビル・キャンサー】を見て目が合ってしまったよ。
目が合った途端にサービスなのかユックリと動かしていた脚を早く動かし始めたのにはビックリしたけどね。
そこで夕食を食べ終えた僕たちは近くの劇場に案内されたんだけど、もう喜劇のオンパレードで笑いが止まらなかったよ。出待ちしてる芸人さんのファンの方を見ながら僕たちはその日の観光を終えて王宮に戻ったんだ。
「どないやった? キノクーニャ屋は?」
戻った僕たちに王妃殿下のアカネ様が尋ねてきた。ラウールさんが答える。
「はい、主のブンさんも、お孫さんのブンゴさんも素晴らしい方で、僕たち2人の望みも叶いそうです。有難うございます、アカネ様」
僕もラウールさんの横でウンウンと頷いたよ。
「そら良かったわぁ。あそこでアカンかったらどないしよって思ってたんよ。職人たちも手配してくれたやろ?」
「はい、現在はブンゴさんが職人さんたちと話合いをして、私の領地に来る方、ハイナイト伯爵の領地に来る方を決めて貰ってます。決まり次第、連絡があるそうです」
その答えにアカネ様は頷いて、今度はフェルとサハーラさんに聞く。
「食事処はどないやった? カーズのことやからどうせ【ホビー・クラーブ】か【マンダリン喫茶】のどっちかやったろうけど?」
「はい、アカネ様。今日は【ホビー・クラーブ】に連れて行って貰いました。どのお料理も食べた事がなくてとても美味しかったです」
とサハーラさんが答え、フェルも
「看板の飼い慣らされた魔物にはビックリしました!」
と嬉しそうに答えていた。
「ハァー、カーズ、こんな可愛い淑女2人を案内するんやから、明日は【ペッツアローネ】にお連れしいや…… まあ、【ホビー・クラーブ】もこの国を代表するレストランではあるけど…… もうちょっとお洒落な所もあるんやでっていう所も見て貰うんやで!」
「ウフフ、わかっておりますわ、アカネ様。明日は私が案内しますから、ご安心下さい」
とセティナ姉さんが答えるとアカネ様もそらええわと安心したようだよ。
そして各自別れて部屋に戻るという時になってトモジ爺ちゃんに目を向けたアカネ様……
気づいていたのにココまで無視出来るのがロイヤルファミリーという事なのか……
「で、そちらのダンディーさんはどちらサンなんやろか? ワタシの知合いじゃないようだけど?」
僕はアカネ様にお渡し出来る様にジーク兄さんに紙を差し出したんだ。ジーク兄さんは内容を確認してからアカネ様に手渡す。
【コチラのトモジはこれからハイナイト家の領地で商会を構えて頂く商人です。この度、話合いの末に急遽決まったので、お知らせする事が出来ずに申し訳ありません。トモジの身元はキノクーニャ屋の主が保証しております。どうか私と同部屋で構いませんので、王宮に居る事をご了承下さい。よろしくお願い申し上げます】
「なんや、そうやったんやね。勿論、ブンザーエモンが保証して、トーヤくんが信頼してるなら王宮に居てもろうてもかまへんよ。それよりも何を商ってるん? ブンザーエモンの御用商人ってひょっとしておたくかいな?」
そこでジーク兄さんがトモジさんに言う。
「直答で良い。王妃殿下の問に答えよ」
おお、何か宰相閣下みたいだ! って、ジーク兄さんは宰相閣下だったよ……
「お許しを頂いたのでお答えしましょうかの。ブンとは同郷の幼馴染でしてな。御用商人ではございませぬが、ワシの売る物を買うてくれております。基本的には道工具を商いしております。口が悪いのはご勘弁を、何分いなか育ちの世間知らずでしてな。どうかよろしくお願いします」
トモジさんの答えを聞いてアカネ様が言ったんだ。
「なんや、やっぱりトモジが売ってたんやな。あの不思議な工具を。それをトーヤくんに取られるんはうちの国としては痛いなぁ…… なあ、トーヤくん?」
ムムッ! これは想定外だったよ…… トモジ爺ちゃんのスキルを聞いておけば良かったかな? けれども僕の困り顔に助け舟を出してくれたのは、ジーク兄さんとカーズ義兄さんだった。
「畏れながら申し上げます、王妃殿下。我が弟より贈られた腕輪はかなりの価値あるものだと愚考致します」
とジーク兄さんが言うとカーズ義兄さんが続いて、
「それに、国王陛下の悪癖を阻止する腕輪の件もございますが? そして、我が国で職にあぶれている職人を多く領地に雇ってくれておりますし、また材木も莫大な本数を購入してもらっております…… むしろ、借りばかりが増えている状態ですよ、王妃殿下」
とアカネ様を責めるように言ったんだ。
「もう、なんやの! 2人とも! それぐらい分かってるわっ! ちょっとしたイジワルを言うただけやん! そないに責めんでもエエやろ! それに、トーヤくんの事やから必要な時に必要な道工具を用立ててくれるんも承知してるし…… ゴメンナサイ」
アカネ様が頭を下げたよっ!!
僕はビックリしてオロオロして、ジーク兄さんとカーズ義兄さんを見たけど、2人とも笑って大丈夫だって言うんだ。
「最近は王妃殿下をお諌めする機会が無かったのでな、陛下の方が酷すぎて…… だが、今回は良い機会だったよ。有難う、トーヤ」
ジーク兄さんの言葉にブツブツと愚痴を言ってるアカネ様。僕はそんなアカネ様にサラサラと紙に書いて気持ちを伝えたよ。
【アカネ様! 兄上や姉上を大切にしてくれるアカネ様のご要望ならば、僕が出来ることならば必ず対応しますから、これからも兄上や姉上をよろしくお願いします】
読んだアカネ様が感動してこう言ったんだ。
「ホンマにエエ子やわ~。うちの国に移住せえへん? あ!? ヤバいっ!! 今なんかサラちゃんの般若顔が脳裏を過ぎったわ! やっぱり今の無しでお願いや、トーヤくん」
そして、僕たちは部屋に戻ったんだ。トモジ爺ちゃんには僕の斜め前の部屋を用意してくれたよ。
今僕たちが来ているのは【頭噸堀】にある【ホビー・クラーブ】というレストランなんだ。
いや…… とうとんぼりとか、道楽かにとか…… トモジ爺ちゃんと2人で顔を見合わせたのは言うまでもないよね。しかも、店の看板で動いてる【かに】は、飼い慣らされた生きた魔物の【イビル・キャンサー】なんだって!
毎日昼から夜まで動くだけでお腹いっぱいに大好物のボッラという魚を食べられるからっていう理由らしいんだけど……
セティナ姉さんにそう教えて貰った時はジーッと【イビル・キャンサー】を見て目が合ってしまったよ。
目が合った途端にサービスなのかユックリと動かしていた脚を早く動かし始めたのにはビックリしたけどね。
そこで夕食を食べ終えた僕たちは近くの劇場に案内されたんだけど、もう喜劇のオンパレードで笑いが止まらなかったよ。出待ちしてる芸人さんのファンの方を見ながら僕たちはその日の観光を終えて王宮に戻ったんだ。
「どないやった? キノクーニャ屋は?」
戻った僕たちに王妃殿下のアカネ様が尋ねてきた。ラウールさんが答える。
「はい、主のブンさんも、お孫さんのブンゴさんも素晴らしい方で、僕たち2人の望みも叶いそうです。有難うございます、アカネ様」
僕もラウールさんの横でウンウンと頷いたよ。
「そら良かったわぁ。あそこでアカンかったらどないしよって思ってたんよ。職人たちも手配してくれたやろ?」
「はい、現在はブンゴさんが職人さんたちと話合いをして、私の領地に来る方、ハイナイト伯爵の領地に来る方を決めて貰ってます。決まり次第、連絡があるそうです」
その答えにアカネ様は頷いて、今度はフェルとサハーラさんに聞く。
「食事処はどないやった? カーズのことやからどうせ【ホビー・クラーブ】か【マンダリン喫茶】のどっちかやったろうけど?」
「はい、アカネ様。今日は【ホビー・クラーブ】に連れて行って貰いました。どのお料理も食べた事がなくてとても美味しかったです」
とサハーラさんが答え、フェルも
「看板の飼い慣らされた魔物にはビックリしました!」
と嬉しそうに答えていた。
「ハァー、カーズ、こんな可愛い淑女2人を案内するんやから、明日は【ペッツアローネ】にお連れしいや…… まあ、【ホビー・クラーブ】もこの国を代表するレストランではあるけど…… もうちょっとお洒落な所もあるんやでっていう所も見て貰うんやで!」
「ウフフ、わかっておりますわ、アカネ様。明日は私が案内しますから、ご安心下さい」
とセティナ姉さんが答えるとアカネ様もそらええわと安心したようだよ。
そして各自別れて部屋に戻るという時になってトモジ爺ちゃんに目を向けたアカネ様……
気づいていたのにココまで無視出来るのがロイヤルファミリーという事なのか……
「で、そちらのダンディーさんはどちらサンなんやろか? ワタシの知合いじゃないようだけど?」
僕はアカネ様にお渡し出来る様にジーク兄さんに紙を差し出したんだ。ジーク兄さんは内容を確認してからアカネ様に手渡す。
【コチラのトモジはこれからハイナイト家の領地で商会を構えて頂く商人です。この度、話合いの末に急遽決まったので、お知らせする事が出来ずに申し訳ありません。トモジの身元はキノクーニャ屋の主が保証しております。どうか私と同部屋で構いませんので、王宮に居る事をご了承下さい。よろしくお願い申し上げます】
「なんや、そうやったんやね。勿論、ブンザーエモンが保証して、トーヤくんが信頼してるなら王宮に居てもろうてもかまへんよ。それよりも何を商ってるん? ブンザーエモンの御用商人ってひょっとしておたくかいな?」
そこでジーク兄さんがトモジさんに言う。
「直答で良い。王妃殿下の問に答えよ」
おお、何か宰相閣下みたいだ! って、ジーク兄さんは宰相閣下だったよ……
「お許しを頂いたのでお答えしましょうかの。ブンとは同郷の幼馴染でしてな。御用商人ではございませぬが、ワシの売る物を買うてくれております。基本的には道工具を商いしております。口が悪いのはご勘弁を、何分いなか育ちの世間知らずでしてな。どうかよろしくお願いします」
トモジさんの答えを聞いてアカネ様が言ったんだ。
「なんや、やっぱりトモジが売ってたんやな。あの不思議な工具を。それをトーヤくんに取られるんはうちの国としては痛いなぁ…… なあ、トーヤくん?」
ムムッ! これは想定外だったよ…… トモジ爺ちゃんのスキルを聞いておけば良かったかな? けれども僕の困り顔に助け舟を出してくれたのは、ジーク兄さんとカーズ義兄さんだった。
「畏れながら申し上げます、王妃殿下。我が弟より贈られた腕輪はかなりの価値あるものだと愚考致します」
とジーク兄さんが言うとカーズ義兄さんが続いて、
「それに、国王陛下の悪癖を阻止する腕輪の件もございますが? そして、我が国で職にあぶれている職人を多く領地に雇ってくれておりますし、また材木も莫大な本数を購入してもらっております…… むしろ、借りばかりが増えている状態ですよ、王妃殿下」
とアカネ様を責めるように言ったんだ。
「もう、なんやの! 2人とも! それぐらい分かってるわっ! ちょっとしたイジワルを言うただけやん! そないに責めんでもエエやろ! それに、トーヤくんの事やから必要な時に必要な道工具を用立ててくれるんも承知してるし…… ゴメンナサイ」
アカネ様が頭を下げたよっ!!
僕はビックリしてオロオロして、ジーク兄さんとカーズ義兄さんを見たけど、2人とも笑って大丈夫だって言うんだ。
「最近は王妃殿下をお諌めする機会が無かったのでな、陛下の方が酷すぎて…… だが、今回は良い機会だったよ。有難う、トーヤ」
ジーク兄さんの言葉にブツブツと愚痴を言ってるアカネ様。僕はそんなアカネ様にサラサラと紙に書いて気持ちを伝えたよ。
【アカネ様! 兄上や姉上を大切にしてくれるアカネ様のご要望ならば、僕が出来ることならば必ず対応しますから、これからも兄上や姉上をよろしくお願いします】
読んだアカネ様が感動してこう言ったんだ。
「ホンマにエエ子やわ~。うちの国に移住せえへん? あ!? ヤバいっ!! 今なんかサラちゃんの般若顔が脳裏を過ぎったわ! やっぱり今の無しでお願いや、トーヤくん」
そして、僕たちは部屋に戻ったんだ。トモジ爺ちゃんには僕の斜め前の部屋を用意してくれたよ。
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