上 下
62 / 90
領地発展

056話 トモジ爺ちゃんの悩み

しおりを挟む
 お説教すること2時間……

 だと本当にイジメになっちゃうから、20分だけだよ。2人とも反省してくれてるからもう大丈夫だと思ったんだ。

「ワシは嬉しかったんじゃぁ…… 澄也とまた会えてのぅ…… それでついつい、再会祝いの気分になってしまってのぅ……」

「私は旧友のトモジが喜んでいるのを見てついつい…… まさか一気にあおるとは思わなかったので……」

 って2人とも言ってるから取り敢えずお説教は終わりにしたんだ。そして、ついでにだからカーズさんに話をする前に聞いてみたんだよ。

「友爺ちゃん、ううんトモジ爺ちゃん。カーズ義兄さんに聞いて欲しい話ってどんな話なの?」

 僕がそう聞くとトモジさんが話してくれた。

「うむ、実はのワシが産まれたのはここから更に東にある、日本によく似た島国のヤパンなのだが、国の仕組みが江戸時代での。天皇陛下がおられるが国を仕切っておるのは将軍様なんじゃ。各地は大名が治めておる。ワシは四津国よつくに島のイーヨにおったのじゃが、その地を治める大名にスキルがバレてしまってな…… 慌てて逃げ出したんじゃ。ここに居るブンを頼ったのは、ブンも元々はイーヨに住んでおったからの。その頃からの知合いであり友であったからの。ブンにはスキルの話もしておったからの。快く受入て貰ったんじゃが…… どうやら追手おってが出されたようでの…… 手を出されないようにするにはどうすれば良いかと頭を悩ませておったのじゃよ」

 うーん、コレは厄介な状況だね。僕にはある考えがあるんだけど、それだとブンさんだけが狙われるようになるしなぁ……

「トーヤ、トモジ様を領地にかくまう事を考えているんでしょう? けれどもブンさんに迷惑がかかると思っているのよね?」

 ってフェルが僕の考えている事を口に出して疑問形で聞いてきたよ。うん、そうなんだよ、フェル。僕はうんうんと頷く。すると、ブンさんが話しだしたんだ。

「さて、トーヤ様もトモジと同じ転生者のようですな。実は私もそうなのですよ。前世での名は紀伊國屋文左衛門きのくにやぶんざえもんと申します。おお、その顔はご存知のようですな。私は江戸時代からやって参りました。この世界でもやる事は変わりなく、材木問屋を営んでおりますが…… 私とトモジはコチラでは同じ年に産まれましてな。お互いに前世の記憶が戻ったのも5歳の時でした。
私もトモジもそれなりに役に立つスキルを授かりましたが、イーヨを治める大名のダウテ・ムネチカ様に先ずは私が目をつけられまして…… 20歳になった時に両親も亡くなりましたので、ナニワサカイ国に逃げてきたのでございます。幸いにしてこの国のルソン国王陛下とアカネ王妃殿下に良くしていただきましてな。この通り商いも上手くいっておる次第です。
問題はトモジでございまして…… トモジのスキルは近ごろまでバレておらぬかったのですが、ある商人と取引をしている場面を隠密に見つかってしまいましてな。ダウテ様に目をつけられてしまったのです。それで私を頼ってこの国までやって来たのですが、隠密もついてきてるようでしてな……」

 そこでブンさんが言葉を切ったので僕は勢い込んで前世での疑問を堪らなくなって尋ねてしまったんだ。

「ブンさん! ブンさんが若い頃に紀州から命がけでミカンを運んだって話があるんだけど、その話って本当なの?」

 僕の質問にブンさんは笑った。

「ホッホッホッ、トーヤ様もトモジと同じ事を聞きますな。トモジも前世の記憶が戻った時に一番にその質問をしてきましたぞ。さて、ご質問の答えですが、ご想像におまかせ致しますとお答えしておきましょう」

 はぐらかされたよ。前世では実話ではないって言われてたけど、僕は信憑性しんぴょうせいがあるって思ってたんだけどな。

「トーヤよ、ワシも教えて貰っておらんからの。まあ諦めるんじゃな。それでだ、頼ったブンに迷惑をかける訳にもいかんから困っておるんじゃ。この国の貴族様を通じて王族の方に手助けを頼もうかとも思っておったのじゃが…… 如何いかんせん、ナニワサカイ国とヤパンは海をへだてているとはいえ近い。160キロほどしか離れておらんからのう…… 転移魔法を使える者も多くおるしの。まあ、一度に転移出来る距離は30キロぐらいらしいが……」

 僕はフェルと顔を見合わせた。僕もフェルも同じ気持ちだと悟った僕はトモジ爺ちゃんに言ったんだ。

「トモジ爺ちゃん、良かったらサーベル王国の僕の領地に来ない? 僕の領地なら隠密も入れないよ」

「何と! それは本当か? トーヤよ」

「うん、僕の領地には不審者は絶対に入れないからね。門で身分証明書の確認をしてるんだけど、偽造されてるのはどんなに精巧な物でも見破る魔道具が置いてあるんだ。だから、大丈夫だよ」

 僕はそう言ったけど、トモジ爺ちゃんもブンさんも難しい顔をしている。

「トーヤよ、既に忘れておるかも知れんが前世におった忍びの者、つまり忍者の中には【草】と言って何年もその地で過ごし、いざ事を起こすまではその地の住民になりきる者がおったであろう? ヤパンの隠密も同じでな。その地の身分証明書をちゃんと取得しておるから、見破れんと思うぞ」

 トモジさんがそう説明してくれたけど、フェルが説明してくれたよ。

「トモジ様、トーヤの作った魔道具はその者の真の職業や生業なりわいあばきますので、その心配は無用ですわ」

「何ともはや、凄い魔道具じゃな…… トーヤはさてはワシよりも【ちーと】なスキルを持っておるようじゃな。フム…… トーヤに迷惑をかけるかも知れぬが、構わなければ厄介になろうかの。良いか? ブンよ」

 問われたブンさんも嬉しそうに言う。

「勿論じゃ、トモジよ。サーベル王国ならば国王陛下に頼めば何時でも連れて行ってくれるからの」

 そうして、僕たち4人での話合いは終わって、トモジさんはうちの領地に匿う事になったんだ。

「あ、そうだ! 言い忘れてたけど僕が流暢に喋れるのは内緒にしておいてね。知ってるのはフェルだけだから。基本的には前世と同じで口下手なままなんだ。5人以上の人前だと緊張しちゃって…… 他の人には内密にお願いします」

 僕がそう頼むと、トモジ爺ちゃんは懐かしそうに言った。

「前世のトーヤも幼い頃しか知らぬが、あまり喋らん子だったのう。まあワシにはよく喋りかけてくれたがの。また今世でもあまり喋っておらぬのか?」

「うん、そうなんだ。まあ、産まれた時にベラベラ喋ると危険だと判断して、喋らずにいたらみんなが僕はあまり喋れないって思ったんだけどね。緊張する癖もそのまま前世から引き継いじゃたのもあるけど。
でも、フェルには嘘は吐けないから打ち明けてあるんだ。もう暫くは他のみんなにも内緒にしておきたいから、お願い」

「ホッホッホッ、分かりましたぞ」
「ウム、分かったぞ。トーヤよ」

 2人の返事を聞いてから僕は魔法を解除した。そしたらちょうどラウールさんが目覚めたって知らせて貰えたから、4人揃ってラウールさんが休んでいる部屋に行ったんだ。

 トモジ爺ちゃんとブンさんが土下座して謝るも逆にラウールさんが

「あんなに美味しいお酒は初めてでした。今度は一気に煽るような勿体無い事はしないので、またご馳走して下さい!」

 何て言うもんだから、トモジ爺ちゃんが調子に乗りそうだったけど、僕とフェルが目で威圧したら大人しくなったよ。

 全くもう!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

愚かな父にサヨナラと《完結》

アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」 父の言葉は最後の一線を越えてしまった。 その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・ 悲劇の本当の始まりはもっと昔から。 言えることはただひとつ 私の幸せに貴方はいりません ✈他社にも同時公開

公爵家の半端者~悪役令嬢なんてやるよりも、隣国で冒険する方がいい~

石動なつめ
ファンタジー
半端者の公爵令嬢ベリル・ミスリルハンドは、王立学院の休日を利用して隣国のダンジョンに潜ったりと冒険者生活を満喫していた。 しかしある日、王様から『悪役令嬢役』を押し付けられる。何でも王妃様が最近悪役令嬢を主人公とした小説にはまっているのだとか。 冗談ではないと断りたいが権力には逆らえず、残念な演技力と棒読みで悪役令嬢役をこなしていく。 自分からは率先して何もする気はないベリルだったが、その『役』のせいでだんだんとおかしな状況になっていき……。 ※小説家になろうにも掲載しています。

彼を追いかける事に疲れたので、諦める事にしました

Karamimi
恋愛
貴族学院2年、伯爵令嬢のアンリには、大好きな人がいる。それは1学年上の侯爵令息、エディソン様だ。そんな彼に振り向いて欲しくて、必死に努力してきたけれど、一向に振り向いてくれない。 どれどころか、最近では迷惑そうにあしらわれる始末。さらに同じ侯爵令嬢、ネリア様との婚約も、近々結ぶとの噂も… これはもうダメね、ここらが潮時なのかもしれない… そんな思いから彼を諦める事を決意したのだが… 5万文字ちょっとの短めのお話で、テンポも早めです。 よろしくお願いしますm(__)m

うちの娘が悪役令嬢って、どういうことですか?

プラネットプラント
ファンタジー
全寮制の高等教育機関で行われている卒業式で、ある令嬢が糾弾されていた。そこに令嬢の父親が割り込んできて・・・。乙女ゲームの強制力に抗う令嬢の父親(前世、彼女いない歴=年齢のフリーター)と従者(身内には優しい鬼畜)と異母兄(当て馬/噛ませ犬な攻略対象)。2016.09.08 07:00に完結します。 小説家になろうでも公開している短編集です。

~クラス召喚~ 経験豊富な俺は1人で歩みます

無味無臭
ファンタジー
久しぶりに異世界転生を体験した。だけど周りはビギナーばかり。これでは俺が巻き込まれて死んでしまう。自称プロフェッショナルな俺はそれがイヤで他の奴と離れて生活を送る事にした。天使には魔王を討伐しろ言われたけど、それは面倒なので止めておきます。私はゆっくりのんびり異世界生活を送りたいのです。たまには自分の好きな人生をお願いします。

冷宮の人形姫

りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。 幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。 ※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。 ※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので) そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。

最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である

megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。

処理中です...