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領地発展
054話 材木問屋ブンさん
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それからアカネ様の話が少し続いた後にルソン陛下が話を始めた。主にフェルやサハーラさんに向けて……
「さて、では私からも皆に。ようこそ、我が国へ。部屋に不備などは無いかな? フェル嬢、サハーラ嬢」
女性にしか聞かない所がルソン陛下らしいね。聞かれたフェルもサハーラさんも如才なく答えた。
「はい、陛下。とても素晴らしいお部屋をご用意くださり有難うございます」
「浴槽が木で出来ているのを拝見いたしました。ラウールと2人、期待に胸を膨らませております」
2人の返答を聞いたルソン陛下は満足そうに頷き、何か不備があれば侍女に伝えて欲しいと仰った。そこでタイミングを見計らっていたであろう陛下が
「さて、それではジークよ…… この腕輪を外す時が来たと私は思うのだが……」
そう言ったんだけど、ジーク兄さんが
「いえ、まだその時ではありませんな、陛下。何故ならば王妃殿下からの指示が出ておりませんので」
と即座にかなりキッパリと陛下の望みを却下したんだ。更にはアカネ様も
「このドアホ! サーベル王国からのお客人が来られてる前やからって調子に乗ったらアカンでぇ! 鼻から指突っ込んで奥歯ガタガタ言わしたろかっ!」
とルソン陛下に言った後に、フィリップ殿下に
「いや、怖かったわ~」
なんて恥じらいながら言ってたんだ。まるで前世の喜劇を見るような一幕を見せてくれたんだよ。僕たちは笑ってしまったよ。ルソン陛下は泣きそうな顔をしてたけどね。
それからそのままアカネ様の私室で軽めの夕食を食べて僕たちは部屋に戻った。
ラウールさんと明日いく材木問屋さんの話で少し盛り上がったけど、それほど遅くない時間に寝る事にしたよ。
翌朝、朝食をロイヤルファミリーと共にした僕たちに、カーズ義兄さん夫妻が王都を案内してくれると伝えられたんだ。
「今日は僕が王都を案内するから、よろしくお願いしますね」
そして王宮から1台の馬車に乗って出発した僕たち。昨日は転移でやって来たから王宮から出た僕たちは馬車の窓から外を見て感嘆の声を上げたんだよ。
「うわー、木でこんな素敵な家が出来るんですね!?」
とフェルが言うと、サハーラさんも
「町並みに暖かさを感じます!」
と声を上げる。僕は前世でも散々見てきたんだけど、それでも懐かしさからニコニコ顔になってしまったよ。極め付きはラウールさんだったよ。
「我が屋敷も立て直すか!? いや、価格を教えてもらってからだな…… それにこの国の職人に来てもらう必要もあるし…… だがサハーラが喜ぶのなら……」
ブツブツと随分と大きな独り言を言ってるよ。サハーラさんは嬉しさと恥ずかしさの両方で頬を染めているね。
「ハハハ、そんなに驚いてくれるとはこの国を代表してお礼を言わせてもらうよ。でもね、この国も本当はもっと東の島国の真似をしてるだけなんだ。物凄く昔に島国での戦いに敗れた武将が着いてきた商人や職人、庶民と共にこの国を作ったっていう建国の伝説があるんだよ。東の島国の名は【ヤパン】っていうそうだけどね。まあ、1,000年も昔の話らしいから、眉唾なんだけどね」
カーズ義兄さんがそう教えてくれたよ。建国神話? 伝説? を他国の人間に眉唾だって言うのはまずいと思うよ、カーズ義兄さん。ほらやっぱりセティナ姉さんに注意された…… 平謝りしてるよ。
そんな中、とうとう僕とラウールさんが一番に行きたかった材木問屋に到着したんだ。
【ナニワサカイ一の材木問屋・キノクーニャ屋】
とても大きな看板が掲げられてたよ。カーズ義兄さんは気にせずに暖簾を潜って中に入る。恐る恐る着いていく僕たち。
「やあ、番頭さん。久しぶりだね。ブンさんは居るかな?」
カーズ義兄さんが番台に座るオジサンにそう声をかける。
「おや、カーズ様。本当にご無沙汰ですね。主でしたら奥におりますが、生憎と今は来客中なのです。が、他ならぬカーズ様でしたら主も怒らないと思いますので、ちょっと呼んで参ります。そちらで暫くお連れ様もご一緒に座ってお待ちいただけますか?」
「ああ、ゴメンよ。悪いね、来客中なのに。どうしてもブンさんと話をしたくてね」
「はい、畏まりました。では、暫くお待ちを。オイ、お茶をお持ちしなさい」
そう番頭さんは丁稚さんに声をかけてから、奥に入っていったんだ。言われた丁稚さんは慣れた手付きで湯呑みにお茶を入れて僕たちに持ってきてくれたよ。
僕以外、フェル、ラウールさん、サハーラさんは湯呑みを見て戸惑っている。ティーカップのように取っ手が無いからね。僕が先ず湯呑みをそのまま手に取って口に運ぶと、
「トーヤ、熱くないんですの?」
とフェルが聞いてきたから、僕はニッコリ笑って首を横に振ったんだ。湯呑みはティーカップと違って薄くないからね。手に持っても熱くないんだよ。
3人も僕を見て恐る恐る湯呑みを手に持つ。ほのかに暖かさを感じる程度だから、ホッとした顔をしているよ。それを見てセティナ姉さんが、
「私も初めて湯呑みを出された時は同じ反応だったわ」
って3人に言ってたよ。お茶を飲み終わる頃に番頭さんが戻ってきて、僕たちに
「申し訳ありません。主が奥にお通ししなさいと申しております。ご足労願えますか?」
と言うので、僕たちは頷いて奥に向かったんだ。土間を進むと上がり框があったから、僕はそこで靴を脱いだんだけど、カーズ義兄さんに、
「おっ! トーヤくんはこの国の事を良く知ってるね」
って言われたよ。つい、前世の記憶通りに行動しちゃったや。
番頭さんの案内で奥の座敷に入ったら、そこに2人の年配の男性が居たよ。
「ああ、カーズ様。お久しぶりでございますな。何やら急用があるようですな。お呼びたてして申し訳ありません。コチラの私の旧友もちと急用でございましてな…… まあ、この者のお話を序にカーズ様に聞いていただきたいのも有りまして、コチラに来ていただいたのです。スミマセンな。それで、お連れ様方はどうやらサーベル王国の方のようですが、御用はお連れ様方ですかな?」
こう聞いてきたのがブンさんなんだろうね。そして、ブンさんの目の前に居る人に僕は目を奪われたんだ。確かにこの人を知ってる筈なんだけど……
何処で会ったのかな? そして、その人も僕をジッと見ている……
その人がイキナリ僕に向かってこう言ったんだ。
「そこの坊主よ。違ってたら悪いが、磯貝んトコの澄也じゃねぇか?」
僕は吃驚仰天したよっ!!
「さて、では私からも皆に。ようこそ、我が国へ。部屋に不備などは無いかな? フェル嬢、サハーラ嬢」
女性にしか聞かない所がルソン陛下らしいね。聞かれたフェルもサハーラさんも如才なく答えた。
「はい、陛下。とても素晴らしいお部屋をご用意くださり有難うございます」
「浴槽が木で出来ているのを拝見いたしました。ラウールと2人、期待に胸を膨らませております」
2人の返答を聞いたルソン陛下は満足そうに頷き、何か不備があれば侍女に伝えて欲しいと仰った。そこでタイミングを見計らっていたであろう陛下が
「さて、それではジークよ…… この腕輪を外す時が来たと私は思うのだが……」
そう言ったんだけど、ジーク兄さんが
「いえ、まだその時ではありませんな、陛下。何故ならば王妃殿下からの指示が出ておりませんので」
と即座にかなりキッパリと陛下の望みを却下したんだ。更にはアカネ様も
「このドアホ! サーベル王国からのお客人が来られてる前やからって調子に乗ったらアカンでぇ! 鼻から指突っ込んで奥歯ガタガタ言わしたろかっ!」
とルソン陛下に言った後に、フィリップ殿下に
「いや、怖かったわ~」
なんて恥じらいながら言ってたんだ。まるで前世の喜劇を見るような一幕を見せてくれたんだよ。僕たちは笑ってしまったよ。ルソン陛下は泣きそうな顔をしてたけどね。
それからそのままアカネ様の私室で軽めの夕食を食べて僕たちは部屋に戻った。
ラウールさんと明日いく材木問屋さんの話で少し盛り上がったけど、それほど遅くない時間に寝る事にしたよ。
翌朝、朝食をロイヤルファミリーと共にした僕たちに、カーズ義兄さん夫妻が王都を案内してくれると伝えられたんだ。
「今日は僕が王都を案内するから、よろしくお願いしますね」
そして王宮から1台の馬車に乗って出発した僕たち。昨日は転移でやって来たから王宮から出た僕たちは馬車の窓から外を見て感嘆の声を上げたんだよ。
「うわー、木でこんな素敵な家が出来るんですね!?」
とフェルが言うと、サハーラさんも
「町並みに暖かさを感じます!」
と声を上げる。僕は前世でも散々見てきたんだけど、それでも懐かしさからニコニコ顔になってしまったよ。極め付きはラウールさんだったよ。
「我が屋敷も立て直すか!? いや、価格を教えてもらってからだな…… それにこの国の職人に来てもらう必要もあるし…… だがサハーラが喜ぶのなら……」
ブツブツと随分と大きな独り言を言ってるよ。サハーラさんは嬉しさと恥ずかしさの両方で頬を染めているね。
「ハハハ、そんなに驚いてくれるとはこの国を代表してお礼を言わせてもらうよ。でもね、この国も本当はもっと東の島国の真似をしてるだけなんだ。物凄く昔に島国での戦いに敗れた武将が着いてきた商人や職人、庶民と共にこの国を作ったっていう建国の伝説があるんだよ。東の島国の名は【ヤパン】っていうそうだけどね。まあ、1,000年も昔の話らしいから、眉唾なんだけどね」
カーズ義兄さんがそう教えてくれたよ。建国神話? 伝説? を他国の人間に眉唾だって言うのはまずいと思うよ、カーズ義兄さん。ほらやっぱりセティナ姉さんに注意された…… 平謝りしてるよ。
そんな中、とうとう僕とラウールさんが一番に行きたかった材木問屋に到着したんだ。
【ナニワサカイ一の材木問屋・キノクーニャ屋】
とても大きな看板が掲げられてたよ。カーズ義兄さんは気にせずに暖簾を潜って中に入る。恐る恐る着いていく僕たち。
「やあ、番頭さん。久しぶりだね。ブンさんは居るかな?」
カーズ義兄さんが番台に座るオジサンにそう声をかける。
「おや、カーズ様。本当にご無沙汰ですね。主でしたら奥におりますが、生憎と今は来客中なのです。が、他ならぬカーズ様でしたら主も怒らないと思いますので、ちょっと呼んで参ります。そちらで暫くお連れ様もご一緒に座ってお待ちいただけますか?」
「ああ、ゴメンよ。悪いね、来客中なのに。どうしてもブンさんと話をしたくてね」
「はい、畏まりました。では、暫くお待ちを。オイ、お茶をお持ちしなさい」
そう番頭さんは丁稚さんに声をかけてから、奥に入っていったんだ。言われた丁稚さんは慣れた手付きで湯呑みにお茶を入れて僕たちに持ってきてくれたよ。
僕以外、フェル、ラウールさん、サハーラさんは湯呑みを見て戸惑っている。ティーカップのように取っ手が無いからね。僕が先ず湯呑みをそのまま手に取って口に運ぶと、
「トーヤ、熱くないんですの?」
とフェルが聞いてきたから、僕はニッコリ笑って首を横に振ったんだ。湯呑みはティーカップと違って薄くないからね。手に持っても熱くないんだよ。
3人も僕を見て恐る恐る湯呑みを手に持つ。ほのかに暖かさを感じる程度だから、ホッとした顔をしているよ。それを見てセティナ姉さんが、
「私も初めて湯呑みを出された時は同じ反応だったわ」
って3人に言ってたよ。お茶を飲み終わる頃に番頭さんが戻ってきて、僕たちに
「申し訳ありません。主が奥にお通ししなさいと申しております。ご足労願えますか?」
と言うので、僕たちは頷いて奥に向かったんだ。土間を進むと上がり框があったから、僕はそこで靴を脱いだんだけど、カーズ義兄さんに、
「おっ! トーヤくんはこの国の事を良く知ってるね」
って言われたよ。つい、前世の記憶通りに行動しちゃったや。
番頭さんの案内で奥の座敷に入ったら、そこに2人の年配の男性が居たよ。
「ああ、カーズ様。お久しぶりでございますな。何やら急用があるようですな。お呼びたてして申し訳ありません。コチラの私の旧友もちと急用でございましてな…… まあ、この者のお話を序にカーズ様に聞いていただきたいのも有りまして、コチラに来ていただいたのです。スミマセンな。それで、お連れ様方はどうやらサーベル王国の方のようですが、御用はお連れ様方ですかな?」
こう聞いてきたのがブンさんなんだろうね。そして、ブンさんの目の前に居る人に僕は目を奪われたんだ。確かにこの人を知ってる筈なんだけど……
何処で会ったのかな? そして、その人も僕をジッと見ている……
その人がイキナリ僕に向かってこう言ったんだ。
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