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領地発展
050話 仕入先
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連行されて行くネリーナさんを見送るナイヤ義兄さん。
「まあ、ネリが喜ぶから有難うございますと言っておきますよ、ハイナイト伯爵」
と、あまり嬉しそうじゃない…… ああ、見た目も熟女がお好きなんですね、ナイヤ義兄さん。僕は少し同情の眼差しになりながらも、コクコクと頷いた。
そんなやり取りが終わりハール様が大事な事を話し始めた。
「ナイヤ殿…… お主はテルマイヤー侯爵家を継ぐ気はないんじゃな?」
「閣下、私はもう何年も平民として過ごしてきました。今さら堅苦しく、制限の多い貴族に戻れる筈もありません。今の私は只のナイトーで満足した暮らしを手に入れてます」
キッパリとそう断るナイヤ義兄さん。でもそうしたらフェルの実家が無くなっちゃうんだよね…… 僕としては何とか残して上げたいとは思ってるんだけどなぁ。
「ウム、お主の気持ちは分かった。ならば陛下にはそう伝えておこう。それでは、トーヤよ。後でフェルと話をしたいが、良いかの?」
フェルと? まあ何の話か分からないけどハール様なら悪い話じゃないだろうから、僕は素直に頷いたんだよ。
「トーヤも勿論同席してくれよ。ナイヤ殿もな」
「はい、分かりました。閣下」
そして、ネリーナさんを連れて戻る前に僕はナイヤ義兄さんに気になってた事を紙に書いて質問したんだ。
【ナイヤ義兄さん、今回の懐中電灯やヘッドライトはどうやって仕入れられたんですか?】
ってね。
「ハイナイト伯爵閣下、私は平民ですので義兄ではありますが、丁寧語はお止め下さい」
何て言ってくるから少しだけ怒った顔を作って、僕はナイヤ義兄さんにこう書いたよ。
【僕にとっては爵位なんかよりも、フェルの兄上の方が大切なんです。寧ろ、義兄さんの方こそ、その口調を止めて下さい。僕は必ず目上の方には丁寧語で語りかけます。尊敬できない方にはその限りではないですが……】
その文章を読んでナイヤ義兄さんは諦めてくれたようだよ。
「分かった、トーヤくん。但し、身内だけの時だけだよ。何も知らない貴族の方が見たら生意気な平民めって、私が処罰を受けてしまうからね」
こう言って口調を変えてくれたよ。
「さてと、仕入先についてだけど商人にとっては大切な情報だから、おいそれと明かす訳にはいかないんだ。それは理解してくれるかな? ただ、コレだけは言っておこうかな。東の島国で出会った商人から仕入れているんだ。あかせる情報はコレだけになるけど、許して欲しい」
それもそうか、商人にとっては仕入先も秘密にするのは当たり前だよね。僕は身内だからといって甘えてしまったようだ。僕はゴメンナサイの意を込めて頭を下げたよ。
「ナイヤ殿、物は相談だがロッテンマイヤー公爵家の御用達店の名は欲しくないかの?」
僕との話が一段落ついたと見てハール様がナイヤ義兄さんにそう聞いてきた。
「大変魅力的なお話ですが、普通の商品をお求めでは無さそうですね……」
慎重にそう答えるナイヤ義兄さん。その返事にニヤリと笑い、ハール様が言う。
「いやなに、普通の商品じゃよ。勿論、たまに情報を売ってくれたら尚良いがの」
その言葉にナイヤ義兄さんもニヤリと笑い、
「お求めの情報を手にしていない時は正直にそう言いますけど、それで宜しければ契約させて頂けると幸いです」
そうハール様に言ったんだ。
「売られた情報はワシが好きに使っても良いのかな?」
「勿論、お売りした商品はご購入頂いたお客様のものですから」
アレよアレよと話は進んで、出来る執事さんの手により契約書が用意されて締結された。そして、
「早速一つ売って欲しいんじゃが…… 島国の商人の情報は売って貰えるかの? なに、直接その商人と取引したりは絶対にせんからの。名前やどこら辺に居るかだけで良い」
ハール様がナイヤ義兄さんにいきなりそう聞いたんだ。ハール様のその言葉に僕はビックリしたよ。僕が知りたい情報だったからね。ナイヤ義兄さんが苦笑しながら言った。
「その情報は高いですよ、閣下。金貨20枚でお売りしますが?」
金貨20枚(20,000,000円)!! 高い、高いよナイヤ義兄さん。僕がその金額にビックリしていたら、ハール様がアッサリと
「よし、買った。早速教えてくれ」
そう言って執事さんに金貨の用意をさせたんだ。
「そうですね、名はトモジと言います。何やら懐かしい国名だからと言って、ナニワサカイ王国に行くと最後に会った時は言っておりました。今頃はナニワサカイ王国に居ると思いますよ」
金貨を受け取ったナイヤ義兄さんがアッサリと答えた。そうか、僕もこういう風に言えば良かったんだ。また一つ賢くなったや。情報も商品なんだからね。
けれども、トモジという名とナニワサカイ王国に懐かしさを感じているらしいから、ひょっとして僕と同じ転生者なのかな? トモジという名が僕には少し引っかかるんだけど…… 確かに知っているんだけど、顔が浮かんでこないんだよね……
喉仏に魚の骨が刺さった感じがするけど、まあその内に思い出せるかもと気を取り直した僕はハール様とナイヤ義兄さんに静かに頭を下げたよ。2人とも僕がココにいるのに情報の売買をしてくれたからね。
そして…… 満を持してネリーナさんが現れたよ。隣に居るターナ義姉さんの顔が紅潮しているよ。ターナ義姉さんも更に若々しくなってるし。ネリーナさんに至っては20代前半で通用するね、確実に。
「あ、あの、アナタ…… どうかしら?」
少し不安そうにナイヤ義兄さんにそう聞くネリーナさん。ナイヤ義兄さんはネリーナさんを見つめて固まっている。
「あ、あの、やっぱり気持ち悪いわよね…… こんな若作りをして……」
泣きそうな声でそう言うネリーナさんを見てハッとしたナイヤ義兄さんが叫んだ。
「違うぞっ!! ネリが余りに美しくなって見惚れてしまっていたんだ。私からの求婚に応じてくれた頃のネリだ!! 振られるのを覚悟して求婚した私を優しく微笑んで受け入れてくれたネリがココに居る!! どうして気持ち悪いなんて思うものかっ!? 素晴らしい、ネリ。愛してるよ!!」
そう言ってネリーナさんをキツく抱きしめたんだよ。ネリーナさんは嬉し泣きをしている。そして、ターナ義姉さんもリゲルさんに抱きしめられていた。
「ああ、ターナ、また更に若々しく美しくなって! もう帰ろう! 今すぐ帰ろうっ!! 早く8人目を!!」
リゲルさん…… いや、何も言うまい。お互いに幸せそうなんだから外野がとやかく言うのは野暮だからね。でも、ハール様はそうじゃなかったみたいで、またリゲルさんの頭を叩いて正気に戻していたよ。
「まだ重要な話が済んでおらんわっ!!」
って言ってね……
「まあ、ネリが喜ぶから有難うございますと言っておきますよ、ハイナイト伯爵」
と、あまり嬉しそうじゃない…… ああ、見た目も熟女がお好きなんですね、ナイヤ義兄さん。僕は少し同情の眼差しになりながらも、コクコクと頷いた。
そんなやり取りが終わりハール様が大事な事を話し始めた。
「ナイヤ殿…… お主はテルマイヤー侯爵家を継ぐ気はないんじゃな?」
「閣下、私はもう何年も平民として過ごしてきました。今さら堅苦しく、制限の多い貴族に戻れる筈もありません。今の私は只のナイトーで満足した暮らしを手に入れてます」
キッパリとそう断るナイヤ義兄さん。でもそうしたらフェルの実家が無くなっちゃうんだよね…… 僕としては何とか残して上げたいとは思ってるんだけどなぁ。
「ウム、お主の気持ちは分かった。ならば陛下にはそう伝えておこう。それでは、トーヤよ。後でフェルと話をしたいが、良いかの?」
フェルと? まあ何の話か分からないけどハール様なら悪い話じゃないだろうから、僕は素直に頷いたんだよ。
「トーヤも勿論同席してくれよ。ナイヤ殿もな」
「はい、分かりました。閣下」
そして、ネリーナさんを連れて戻る前に僕はナイヤ義兄さんに気になってた事を紙に書いて質問したんだ。
【ナイヤ義兄さん、今回の懐中電灯やヘッドライトはどうやって仕入れられたんですか?】
ってね。
「ハイナイト伯爵閣下、私は平民ですので義兄ではありますが、丁寧語はお止め下さい」
何て言ってくるから少しだけ怒った顔を作って、僕はナイヤ義兄さんにこう書いたよ。
【僕にとっては爵位なんかよりも、フェルの兄上の方が大切なんです。寧ろ、義兄さんの方こそ、その口調を止めて下さい。僕は必ず目上の方には丁寧語で語りかけます。尊敬できない方にはその限りではないですが……】
その文章を読んでナイヤ義兄さんは諦めてくれたようだよ。
「分かった、トーヤくん。但し、身内だけの時だけだよ。何も知らない貴族の方が見たら生意気な平民めって、私が処罰を受けてしまうからね」
こう言って口調を変えてくれたよ。
「さてと、仕入先についてだけど商人にとっては大切な情報だから、おいそれと明かす訳にはいかないんだ。それは理解してくれるかな? ただ、コレだけは言っておこうかな。東の島国で出会った商人から仕入れているんだ。あかせる情報はコレだけになるけど、許して欲しい」
それもそうか、商人にとっては仕入先も秘密にするのは当たり前だよね。僕は身内だからといって甘えてしまったようだ。僕はゴメンナサイの意を込めて頭を下げたよ。
「ナイヤ殿、物は相談だがロッテンマイヤー公爵家の御用達店の名は欲しくないかの?」
僕との話が一段落ついたと見てハール様がナイヤ義兄さんにそう聞いてきた。
「大変魅力的なお話ですが、普通の商品をお求めでは無さそうですね……」
慎重にそう答えるナイヤ義兄さん。その返事にニヤリと笑い、ハール様が言う。
「いやなに、普通の商品じゃよ。勿論、たまに情報を売ってくれたら尚良いがの」
その言葉にナイヤ義兄さんもニヤリと笑い、
「お求めの情報を手にしていない時は正直にそう言いますけど、それで宜しければ契約させて頂けると幸いです」
そうハール様に言ったんだ。
「売られた情報はワシが好きに使っても良いのかな?」
「勿論、お売りした商品はご購入頂いたお客様のものですから」
アレよアレよと話は進んで、出来る執事さんの手により契約書が用意されて締結された。そして、
「早速一つ売って欲しいんじゃが…… 島国の商人の情報は売って貰えるかの? なに、直接その商人と取引したりは絶対にせんからの。名前やどこら辺に居るかだけで良い」
ハール様がナイヤ義兄さんにいきなりそう聞いたんだ。ハール様のその言葉に僕はビックリしたよ。僕が知りたい情報だったからね。ナイヤ義兄さんが苦笑しながら言った。
「その情報は高いですよ、閣下。金貨20枚でお売りしますが?」
金貨20枚(20,000,000円)!! 高い、高いよナイヤ義兄さん。僕がその金額にビックリしていたら、ハール様がアッサリと
「よし、買った。早速教えてくれ」
そう言って執事さんに金貨の用意をさせたんだ。
「そうですね、名はトモジと言います。何やら懐かしい国名だからと言って、ナニワサカイ王国に行くと最後に会った時は言っておりました。今頃はナニワサカイ王国に居ると思いますよ」
金貨を受け取ったナイヤ義兄さんがアッサリと答えた。そうか、僕もこういう風に言えば良かったんだ。また一つ賢くなったや。情報も商品なんだからね。
けれども、トモジという名とナニワサカイ王国に懐かしさを感じているらしいから、ひょっとして僕と同じ転生者なのかな? トモジという名が僕には少し引っかかるんだけど…… 確かに知っているんだけど、顔が浮かんでこないんだよね……
喉仏に魚の骨が刺さった感じがするけど、まあその内に思い出せるかもと気を取り直した僕はハール様とナイヤ義兄さんに静かに頭を下げたよ。2人とも僕がココにいるのに情報の売買をしてくれたからね。
そして…… 満を持してネリーナさんが現れたよ。隣に居るターナ義姉さんの顔が紅潮しているよ。ターナ義姉さんも更に若々しくなってるし。ネリーナさんに至っては20代前半で通用するね、確実に。
「あ、あの、アナタ…… どうかしら?」
少し不安そうにナイヤ義兄さんにそう聞くネリーナさん。ナイヤ義兄さんはネリーナさんを見つめて固まっている。
「あ、あの、やっぱり気持ち悪いわよね…… こんな若作りをして……」
泣きそうな声でそう言うネリーナさんを見てハッとしたナイヤ義兄さんが叫んだ。
「違うぞっ!! ネリが余りに美しくなって見惚れてしまっていたんだ。私からの求婚に応じてくれた頃のネリだ!! 振られるのを覚悟して求婚した私を優しく微笑んで受け入れてくれたネリがココに居る!! どうして気持ち悪いなんて思うものかっ!? 素晴らしい、ネリ。愛してるよ!!」
そう言ってネリーナさんをキツく抱きしめたんだよ。ネリーナさんは嬉し泣きをしている。そして、ターナ義姉さんもリゲルさんに抱きしめられていた。
「ああ、ターナ、また更に若々しく美しくなって! もう帰ろう! 今すぐ帰ろうっ!! 早く8人目を!!」
リゲルさん…… いや、何も言うまい。お互いに幸せそうなんだから外野がとやかく言うのは野暮だからね。でも、ハール様はそうじゃなかったみたいで、またリゲルさんの頭を叩いて正気に戻していたよ。
「まだ重要な話が済んでおらんわっ!!」
って言ってね……
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