寡黙な男はモテるのだ!……多分

しょうわな人

文字の大きさ
上 下
53 / 90
領地発展

047話 フォグマイヤー伯爵

しおりを挟む
 ナニワサカイ王国に向かう事は決まっているけど、今は王族同士で色々な事を話し合い決めているらしいから、まだ動けないって、ウチの屋敷に逗留しているセティナ姉さんとカオリ義姉ねえさんに聞いたんだ。1週間以上はかかると思うって、王宮から戻ってきたジーク兄さんとカーズ義兄にいさんが言うから、僕はその間に何とかテルマイヤー侯爵家問題に決着がつくように一所懸命に動いてたんだよ。


 そんなこんなで動いてたんだけど、遂に僕とフェルが2人で一緒にハール様のお屋敷に行く日がやって来たよ。

「トーヤ、このドレスでいいかしら?」

 今日のフェルは後光がさしてるよ! いつにも増して可愛いんだ。僕は大きく首を縦に振って同意したよ。

「ウフフ、有難うトーヤ」

 そんな僕とフェルのやり取りを親衛隊の特攻隊長のナーガがウットリした顔で見つめている。
 更にリラが、

「ほぇー、フェル今日はいつも以上にキレイだね」

 って言うと、リラ付の侍女のレラもウンウンと頷いている。リラは今日もシンくんと一緒に魔獣の間引きに行くそうだよ。最近はその後にトウシローの指導を受けてるそうだ。僕も早くゴタゴタを片付けて鍛えなくちゃ。自主トレは夜中にやってるんだけど、やっぱり誰かに見てもらう方が上達は早いと思うからね。

 そんな事を思いながら、フェルと2人でハール様のお屋敷にお出かけしたんだ。ナイヤさん、今は偽名のナイトーさんって言っておこうかな? そのナイトーさんが来る前にターナ義姉ねえさんがフェルに会うために早めに来てくれるそうだから僕たちも早めに向かった。

「フェル! 本当にフェルなのね! まあ、なんて美しく成長したの! よくお顔を見せてちょうだい。それに、そのドレス、とっても似合っていて素敵よ!」

 フェルに会うなりそう言ってフェルに抱きついてきた、少しだけふくよかな、でもとてもキレイな方がターナ義姉ねえさんで間違いないだろうね。フェルも笑顔ながら目に涙が滲んでいるし。

「お姉様、お会いしたかった! やっとお会いする事ができました!」

 僕たちより16歳上だから今は28歳だよね。でも、少しだけお肌が荒れているように見えるし、手も水仕事をしてる侍女と同じようにあかぎれを起こしているみたいだ。コレは出来る義弟おとうとだと見てもらえるチャンスだっ!! 僕はターナ義姉ねえさんにいい所を見せようと張り切ったんだ。 

 実際は道具箱から出してるんだけど、カバンから出す振りをしてフェルとの再会に喜んでいるターナ義姉ねえさんに温泉由来のハンドクリームとフェイスクリームを目線で訴えてお渡ししたんだ。

「アラ、ゴメンナサイね。貴方がハール様からお聞きしたフェルの婚約者のトーヤくんね。【くん】呼びしても怒らないかしら? そう、大丈夫なのね、有難う。それで、今私に手渡してくれたコレは何かしら?」

 それに答えたのは勿論、フェルだよ。

「お姉様、コチラの白い方がトーヤの領地で販売しているハンドクリームです。コチラのレモン色の方がフェイスクリームになります。よろしかったら塗り方などご説明いたしますわ。きっとお姉様もお喜びになると思います」

「まあ、今話題の温泉のある領地で販売されてるものなのね! フェル、お願いよ。是非とも教えてちょうだい」

 と2人の世界に入ったようなので僕はハール様と恐らくはターナ義姉ねえさんのご主人のフォグマイヤー伯爵に頭を下げて挨拶をした。何せ挨拶をする間もなくフェルに抱きついてきたから……

「ハハハ、ターナのあんな嬉しそうな顔が見れて私も嬉しいよ。トーヤ・ハイナイト伯爵、はじめまして。私はリゲル・フォグマイヤーです。陛下より伯爵位を賜ってます。今後とも仲良くしてくださいね。ハハハ」

 なんて腰の低い方なんだろう!! 僕はビックリしてしまったよ。リゲルさんは遥かに年下の僕に物凄く丁寧に挨拶をしてくれたよ。困ったな、先に書いてきた挨拶文だと偉そうに見えちゃうかも…… でも今はそれしか無いからしょうがないよね。僕は諦めて挨拶文をリゲルさんに差し出したんだ。

【はじめまして、フォグマイヤー伯爵。トーヤ・ハイナイトと申します。陛下より伯爵位を賜っております。婚約者フェルの姉、ターナ義姉ねえ様のご主人であるフォグマイヤー様とは良いお付合いをお願いしたいと思います。どうか、未熟な私のご指導をよろしくお願い致します】

 僕は差し出した挨拶文を読み終えただろうタイミングでリゲルさんに頭を下げたんだけど、リゲルさんから驚きの声が聞こえて慌てて頭を上げたんだ。

「驚いた!! 本当にハイナイト伯爵は12歳ですか? 私はこのような丁寧な挨拶文を見たのは初めてですよ! ああ、驚かせてしまって申し訳ありません。いや、驚いたのは私か…… ハハハ」

 言葉は丁寧だけど人柄は気さくな方のようで良かったよ。

「ワッハッハッ、どうじゃ、リゲル。ワシの自慢の孫は? 良くできた孫じゃろう」

「いえいえ、ハール様のお孫でしたらこうは行きますまい。おっと、コレは失言でしたね、ハハハ」

「ぐぬぅ、幼い頃は可愛かったがお主は大人になって可愛げが無くなったわ! まあ、良い。それよりも中に入ろうではないか、いつまでも玄関先でもあるまい。ターナもフェルも既に入ったようじゃしな」

 アレ? 本当だ! いつの間に! まさか隠密スキルを2人とも持っているのかな?
 僕もリゲルさんもハール様に促されて屋敷の中に入ったんだ。そして……

「コレは神のクリームよーっ!! アナタ、見て、見てちょうだい!! あんなにひどかったあかぎれも、顔に最近出てきていた小ジワも、何もかも無くなったのっ!! どう、どうかしら?」

 最後の方は少し不安そうにリゲルさんに聞くターナ義姉ねえさんに、リゲルさんは黙ったまま近づいて、ガバッと抱きしめて言った。

「ターナ! ゴメンよ。僕が君の手料理しか食べられないから君の手をあんなにも荒れさせていたのに! それに、苦労をかけていたからその美しい顔に小ジワなんて出させてしまって!! でも、僕はいつでも君を愛している! 本当だよ! そして、今の君は女神様よりも美しいよっ!! 惚れ直したよ! こうしちゃ居られない! 早速だけど屋敷に戻って8人目の子を……」

 途中までは感動ものだったよ、リゲルさん…… 最後まで言えずにハール様に頭をはたかれたのはしょうがないと僕は思います。しかし、ターナ義姉ねえさんも頬を赤く染めながらも瞳が潤んで妙な色気が出てますよ…… 

 フェル、そんな2人を羨ましそうに見てはダメだよ。僕たち2人にはまだ早すぎるからねっ!! 
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

気づいたら美少女ゲーの悪役令息に転生していたのでサブヒロインを救うのに人生を賭けることにした

高坂ナツキ
ファンタジー
衝撃を受けた途端、俺は美少女ゲームの中ボス悪役令息に転生していた!? これは、自分が制作にかかわっていた美少女ゲームの中ボス悪役令息に転生した主人公が、報われないサブヒロインを救うために人生を賭ける話。 日常あり、恋愛あり、ダンジョンあり、戦闘あり、料理ありの何でもありの話となっています。

30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。

ひさまま
ファンタジー
 前世で搾取されまくりだった私。  魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。  とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。  これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。  取り敢えず、明日は退職届けを出そう。  目指せ、快適異世界生活。  ぽちぽち更新します。  作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。  脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

素材採取家の異世界旅行記

木乃子増緒
ファンタジー
28歳会社員、ある日突然死にました。謎の青年にとある惑星へと転生させられ、溢れんばかりの能力を便利に使って地味に旅をするお話です。主人公最強だけど最強だと気づいていない。 可愛い女子がやたら出てくるお話ではありません。ハーレムしません。恋愛要素一切ありません。 個性的な仲間と共に素材採取をしながら旅を続ける青年の異世界暮らし。たまーに戦っています。 このお話はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。 裏話やネタバレはついったーにて。たまにぼやいております。 この度アルファポリスより書籍化致しました。 書籍化部分はレンタルしております。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

処理中です...