寡黙な男はモテるのだ!……多分

しょうわな人

文字の大きさ
上 下
18 / 90
異世界を楽しむ

016話 入学式

しおりを挟む
 遂にやって来た入学式の日。僕とフェルちゃんそれとリラは馬車に乗って庶民街に入った。そして先ずはリラの学園に到着した。

「エヘヘ~、それじゃ、お姉ちゃんは行ってくるねぇ」

 にこやかにそう言いながら一人でリラは学園に向かった。一人で大丈夫かな? でも、リラは頭もいいし可愛いから大丈夫だと信じよう。

「トーヤ様、リラちゃんは大丈夫でしょうか?」

 リラの心配をしているフェルちゃんに僕は安心するように笑顔でコクコクと頷いた。

「そうですね! リラちゃんなら大丈夫ですよね!」

 そう、ちなみにリラは僕達三人の中では一番強いんだ。同級生どころか学園の最上級生でも勝てる人はまず居ないって、トウシローからもお墨付きを貰ってるからね。きっと大丈夫だよ。

 僕とフェルちゃんは二人とも次は自分たちの通う学校に着くから緊張してきてしまった。

「な、何か緊張しますね、トーヤ様」

 自分自身も緊張していたけど僕はフェルちゃんを守らないといけない。だからニッコリ笑顔でそして目線で僕がいるよと伝えたんだ。フェルちゃんは僕の顔を見て、

「トーヤ様、なんと神々しい笑顔ですか……」

 とウットリしていたかと思うと、

「ハッ! リラちゃんに言われた通り最初が肝心ですね。ちゃんと学校の皆様には私がトーヤ様の婚約者だと告げなくては! 気合が入りましたわ!」

 と急に気合が入った顔をしている。どちらの顔も本当に可愛いなぁと思いながら、僕もフェルちゃんに変な虫オトコが近寄らない様に注意しなくちゃと気合を入れた。

 リラの入る冒険者養成学園も僕とフェルちゃんが入るツージ調理専門学校も、庶民の学び舎ではあるけれども全く貴族が通ってないかと言えばそうでもないらしいんだ。主にだけど下級貴族(子・男・騎)の三男や三女以降の子息女や、偶に上級貴族(公・侯・伯)の子息女も通ってたりするらしい。まあ上級貴族は殆ど居ないらしいけどね。でも下級貴族の子息女で、三男以降の子息はいずれ成人した時に職につかなくてはならないから、冒険者養成学園に通う人が多いそうだよ。
 庶民の学び舎だから貴族っていうだけで偉そうにする人が多いみたいだけどね…… ああ、そう考えるとリラが心配だなぁ。

 ツージ調理専門学校に来るのは三女以降の息女が多いらしい。ソレは【意中の殿方の胃袋を捕まえる為!!】らしいんだけど、やっぱり貴族っていうだけで偉そうにしてる人が多いそうだよ。
 幸いにして僕もフェルちゃんも公・侯家の者だから、絡まれても立場的に何とか出来ると思うんだ。僕はそんな事を思いながら学校に着くまでフェルちゃんの独り言を聞いていた。

「そうですわね…… 下級貴族の息女も今年は多く入学してくるとセバスさんが仰ってましたわ…… その者たちがトーヤ様に近づかない様に、いち早く牽制しなければなりませんわ! 悪い虫がトーヤ様に近付くなんて許されませんもの!」

 フェルちゃん、忘れてるかも知れないけど僕は忌み子認定される黒目黒髪なんだから貴族の息女は僕に見向きもしないと思うよ。

 フェルちゃんは僕には聞こえてないと思って独り言を言ってるんだろうけど、こんな狭い空間の中だと良く聞こえるんだよ。でも僕はフェルちゃんが僕を思ってそう言ってくれてるのは本当に嬉しいんだけどね。

 馬車が学校に着いたみたいだ。扉が開いてセバスが僕達に言った。

「さあ、お二人とも。今日からここがお二人の学び舎でございます。今日は入学式のあとにクラス分けが発表されまして、明日からの予定などの連絡があると思われます。午前中には終わるので、私どもはコチラの馬車亭でお待ちしておりますので、終わりましたら馬車亭まで来て頂けますか」

 ぼくとフェルちゃんはその言葉にコクリと頷いて、馬車から降りて新入生らしい人たちが歩いて行く先についていく。暫く進むと大きな建物が見えた。パンフレットにあった大講堂という建物だろう。その入り口で先生と思われる人が大きな声で新入生に向かって喋っていた。

「ハーイ! 新入生の皆さんはコチラの入口から入って、前から順番に座って下さいねー。席は必ず順番に座るようにお願いしますねー! 皆もう8歳なんだから、先生の言うことが分かりますよねー!」

 どうやら入った順に席に座ればいいらしい。僕とフェルちゃんは手を繋いで一緒に大講堂の中に入った。ざっと見て前にある席は100席ぐらいかな?
 皆がちゃんと順番に座っている。僕達も流れに逆らわずに、隣同士で順番に座った。前から2列目に座っていると大きな声が響いた。

「オイっ! 俺はナタリウム男爵家の4男だっ、その席が気にいったからお前は退けっ!!」

 ハァ~、まるでザラスのような物言いを久しぶりに聞いた僕はその声の方を見てみたんだ。すると少し小太りの男の子がフェルちゃんの真後ろの席の子に退けって言ってるのが分かったんだ。その小太りクンがどうやらナタリウム男爵家の4男らしいけど、後ろを振り向いた僕と目があった小太りクンは、

「いや、やっぱりお前はいい。オイ、そこの奴、お前だっ! お前が俺と席を変われ!」

 って僕に言ってきたんだ。ちょうど僕と一緒に後ろを振り向いたフェルちゃんの顔が見えたからだろうね。けれども僕は静かに首を横に振って小太りクンの言うことを拒否したよ。

「なっ!? お前は俺がナタリウム男爵家の者だと知っても拒否するつもりか!? たかが庶民風情のクセにっ!!」

 うん、僕は一応庶民じゃないんだよ、小太りクン。なんなら家は君のところより爵位は上になるよ。いつハブられるか分からないとはいえね……
 今日は皆に威圧感を与えないように、そこまで貴族って分かる服装はしてこなかったから小太りクンには分からないんだろうな。

 僕がそう思っていたら先生の一人がやって来て小太りクンに言った。

「何を騒いでいるのかな? 君はカルイ・ナタリウム君だね。席は貴族だろうと関係なく順番に前から詰めて座るようにと言われた筈だよ。早く座りなさい」

「フンッ、そんな庶民のルールに俺が従ういわれはないな! オイ、お前! 早く席を変われっ!」

 まだ言ってる小太りクンに先生が爆弾を落とした。

「カルイ君、君が席を変われと言ってるのは、コチラのログセルガー公爵家のトーヤ君に対してかな? 正式に公爵家から君の家に抗議が行っても私は知らないよ」

 ソレを聞いた小太りクンが、ワナワナと震えた。僕に向かって嫌そうに謝罪した後に今度はあろう事かフェルちゃんに言ったんだ。

「な、そ、それは知らなかったから…… 申し訳ありませんでした…… ならばその横の女! そうだお前だ! 庶民のお前に俺の横に座る権利をやろう! 有難く思えっ!!」

 けれどもソレを聞いたフェルちゃんが鼻で笑って小太りクンに言った。

「フフフ、申し訳ございませんが、お断りさせて頂きますわ。私はテルマイヤー侯爵家の四女で、コチラのトーヤ様の婚約者ですの。アナタの隣に座る栄誉は私には必要がありませんわ」

 ソレを聞いた小太りクンは顔面を蒼白にして、謝罪する。

「も、申し訳ありませんでした……」

「フフフ、よろしくてよ。それよりも立ったままだと何時までも入学式が始まりませんわ、貴方は一番後ろ端にお座りになればよろしいかと思いますわ」

 何故か機嫌がいいフェルちゃんがそう言うと大人しく一番後ろ端に向う小太りクン。何で機嫌がいいんだろうと不思議だった僕は、入学式が終わって教室に向う途中で目で聞いてみたら、 

「だってトーヤ様の婚約者だって皆に分かるように言える機会が出来ましたから……」

 少し恥ずかしそうにそう言うフェルちゃんは本当に可愛いかったよ。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

知識スキルで異世界らいふ

チョッキリ
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

処理中です...