上 下
13 / 90
異世界を楽しむ

013話 この世界で

しおりを挟む
 うるさいザラスが衛兵に連れだされたのを見ていたザラスについてきていた馬車3台は、何も言わずに公爵家へと帰っていった。
 でも、ガイムは屋敷に残っている。どうやら僕に何か用事があるらしいんだ。

 屋敷の中にガイムを招き入れて応接間まで進むとセバスがハレにお茶の用意を告げた。

 うーん? 僕は何も思い当たる事がないけどセバスは何か知っているのかな? そう思いながら僕はソファに向かい、身振りでガイムにも座るように伝えた。けれどもガイムはソファには座らずに、僕の前にある小さな机を退けて、僕の前で片膝をついて剣を鞘ごと両手に持って捧げる。そして、

「客分騎士ガイムこれより王命から外れトーヤ様に一生の忠誠をここに誓います! ご了承頂けますでしょうか!?」

 唐突に僕にそう言って来たんだ。

 エエエーッ!! な、何を言ってるのかな? この騎士様は? それに客分騎士って何? なんの事なんだろう? 僕は頭の疑問を晴らすべく、見極眼を使用してガイムを見た。


名前:トウシロー・ガイム(侍)
年齢:二十八歳
種族:人種
位階レベル:35
性別:男
性格:主君命
称号:客分騎士・一騎当千
体力:565
気力:781
技力:610
魔力:100
魂力:1,925
技能:神鬼活生流(創始者)・竜刹刀(創始者)・羅刹攻(創始者)・騎士魔法(2)
加護:タケミナカタ・タケミカヅチの加護
   【軍神】【刀神】


 イヤッ! 無理無理無理無理っ!! 何なのこの人!! こんな凄い人が僕に一生忠誠を誓うって、どうなってるの?
 僕の驚愕と無理って顔を見たセバスが僕に言った。

「ガイム様は恐らく今世で最強と言われる騎士様です。トーヤ様ならばお仕えするに値するとガイム様は思われたのでしょう。私としても、ガイム様がトーヤ様を鍛えそして護って頂けるのなら何の憂いも無くなります…… トーヤ様、ご決断をっ!!」

 いや、口では真面目にそう言ってるけど、絶対に面白がってるよね、セバス。だって目が笑ってるんだもん。いや、これは前世でもそうだったけど何でこんな優秀な人が僕に仕えたがるのかな?

「私は普段はガイムと名乗っておりますが、名はトウシローと申します。この国の王にも明かしてないこの名にかけてトーヤ様を鍛え、トーヤ様を含めて大切な方々をお護りすると誓いますのでどうか私を護衛騎士にっ!!」

 それは非常に嬉しいし、頼もしいんだけど僕の何がそんなに良いのか教えて欲しいなぁ……
 僕は取り敢えずこのままでは話が進まないと思い捧げられた剣を受取り、刃部分を持って柄をガイムに差し出した。剣を捧げたまま頭を下げられていたら話も出来ないからね。けれど、それがダメだったと気付いたのはガイムの言葉によってだった。

「おおっ!! 自らを護り、護衛騎士としての勤めを果たせとお許し下さるのですねっ!! 有難うございます! トーヤ様! 一生お仕え致します!!」

 エッ! いや違うよ。僕は話を聞きたいから剣を返しただけなんだよ…… オロオロしている僕を見て、セバスが目だけで笑いながら肩を震わせている。ひょっとして、ああいう風に剣を受け取って返したら了承した事になるって事? こ、困った、そんなつもりじゃ無かったのに……
 そんな僕の様子を見ながらセバスが満面の笑みでガイムに言った。

「さあさあ、ガイム様。机を元に戻して取り敢えずお座り頂けますか? コレからは同僚としてよろしくお願い致しますね。それよりももしよろしければトーヤ様がお仕えするに値すると思われた要因を教えて頂けますか?」

 セバスの言葉にガイムも慌てて立ち上がり、律儀に机を戻してから喋りだした。

「セバス殿、これから同僚だと言うのならば私の事はトウシローと呼んで頂きたい。この屋敷に居られるトーヤ様にお仕えする皆にそう伝えて欲しい。そして私がトーヤ様をお仕えするべきご主君だと思ったのはその優しさにある。更に5歳という年齢にも関わらず、又、お言葉を口に出来ないというハンデをお持ちなのに自らを律し体も心も鍛えられた精神の強さに惚れたからだ。この国の王にも見られなかったこのつよさに私の侍としての心が震えたのだよっ!!」

 うん、恥ずかしいです…… そんな屋敷中に聞こえる大声で言わないで下さい…… その大声によって屋敷の中の皆がココに集まってきてるから、恥ずかしさは倍増どころか、5倍増になってます……
 僕の真っ赤になった顔を見て、親衛隊メイドが「ハア~、尊い……」とか言ってるのも聞こえてきます。

 僕はガイム改めトウシローに言った。

「陛下の許可?」

 僕の片言の疑問を聞いたトウシローは、

「おお! お言葉を!! 有難うございます。お答えします。私はこの国では客分扱いとなっております。ログセルガー公爵の護衛騎士をしていたのも王命ではありますが、暇なら護衛でもしてみる? と国王に言われたからです。仕えるべきご主君に出会えた時には自由にして構わないともその時に契約しておりますので、何の問題もございません」

「それなら良い…… 本当は刀?」

 またも僕の短い片言の問いかけに言いたい事を理解して返事をするトウシロー。

「何とっ!! 何故それを…… ハッ、私が言ったさむらいの一言でそれを見抜かれましたか!? 何とご聡明な事か!? ハイ、トーヤ様の仰る通り、私は刀が有れば本来の力を発揮できます。が、この国での入手は困難なようですので諦めております……」

 ゴメンナサイ、見極眼で見たからなんです。僕はそう心で謝りながらも、残念そうに言うトウシローに【道具箱】の中から大小だいしょう二本の刀を取り出して手渡した。驚愕しながらも反射的に受け取るトウシロー。

「なっ!? 一体どこから…… いや、何も問いますまい。トーヤ様にお仕えするのですから、主君が明かさない事を詮索しないのも家来の勤め…… それで、この大小を下賜して頂けるのですね…… な、何という名君であらせられるのか…… グッ、このトウシロー、益々トーヤ様に惚れましたぞっ!!」

 うん、やっぱりイケメンでも男にモテても嬉しくないなぁ。僕はどうやら健全な男の子のようだよ。でもこの世界でも前世の優秀な部下たちの様に、僕の片言の言葉の意味を正確に捉えてくれる人が居るんだね。セバスにしろ、このトウシローにしろ、とても優秀な人たちが僕に仕えてくれるなんて……

 こうして僕に心強い味方が一人増えたんだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

【完結】伝説の悪役令嬢らしいので本編には出ないことにしました~執着も溺愛も婚約破棄も全部お断りします!~

イトカワジンカイ
恋愛
「目には目をおおおお!歯には歯をおおおお!」   どごおおおぉっ!! 5歳の時、イリア・トリステンは虐められていた少年をかばい、いじめっ子をぶっ飛ばした結果、少年からとある書物を渡され(以下、悪役令嬢テンプレなので略) ということで、自分は伝説の悪役令嬢であり、攻略対象の王太子と婚約すると断罪→死刑となることを知ったイリアは、「なら本編にでなやきゃいいじゃん!」的思考で、王家と関わらないことを決意する。 …だが何故か突然王家から婚約の決定通知がきてしまい、イリアは侯爵家からとんずらして辺境の魔術師ディボに押しかけて弟子になることにした。 それから12年…チートの魔力を持つイリアはその魔法と、トリステン家に伝わる気功を駆使して診療所を開き、平穏に暮らしていた。そこに王家からの使いが来て「不治の病に倒れた王太子の病気を治せ」との命令が下る。 泣く泣く王都へ戻ることになったイリアと旅に出たのは、幼馴染で兄弟子のカインと、王の使いで来たアイザック、女騎士のミレーヌ、そして以前イリアを助けてくれた騎士のリオ… 旅の途中では色々なトラブルに見舞われるがイリアはそれを拳で解決していく。一方で何故かリオから熱烈な求愛を受けて困惑するイリアだったが、果たしてリオの思惑とは? 更には何故か第一王子から執着され、なぜか溺愛され、さらには婚約破棄まで!? ジェットコースター人生のイリアは持ち前のチート魔力と前世での知識を用いてこの苦境から立ち直り、自分を断罪した人間に逆襲できるのか? 困難を力でねじ伏せるパワフル悪役令嬢の物語! ※地学の知識を織り交ぜますが若干正確ではなかったりもしますが多めに見てください… ※ゆるゆる設定ですがファンタジーということでご了承ください… ※小説家になろう様でも掲載しております ※イラストは湶リク様に描いていただきました

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

【完結】捨てられ正妃は思い出す。

なか
恋愛
「お前に食指が動くことはない、後はしみったれた余生でも過ごしてくれ」    そんな言葉を最後に婚約者のランドルフ・ファルムンド王子はデイジー・ルドウィンを捨ててしまう。  人生の全てをかけて愛してくれていた彼女をあっさりと。  正妃教育のため幼き頃より人生を捧げて生きていた彼女に味方はおらず、学園ではいじめられ、再び愛した男性にも「遊びだった」と同じように捨てられてしまう。  人生に楽しみも、生きる気力も失った彼女は自分の意志で…自死を選んだ。  再び意識を取り戻すと見知った光景と聞き覚えのある言葉の数々。  デイジーは確信をした、これは二度目の人生なのだと。  確信したと同時に再びあの酷い日々を過ごす事になる事に絶望した、そんなデイジーを変えたのは他でもなく、前世での彼女自身の願いであった。 ––次の人生は後悔もない、幸福な日々を––  他でもない、自分自身の願いを叶えるために彼女は二度目の人生を立ち上がる。  前のような弱気な生き方を捨てて、怒りに滾って奮い立つ彼女はこのくそったれな人生を生きていく事を決めた。  彼女に起きた心境の変化、それによって起こる小さな波紋はやがて波となり…この王国でさえ変える大きな波となる。  

処理中です...