寡黙な男はモテるのだ!……多分

しょうわな人

文字の大きさ
上 下
9 / 90
転生

009話 新居

しおりを挟む
 あれからフェルちゃんもウチの馬車に乗ってもらい、テルマイヤー侯爵家に行ってテルマイヤー侯爵に書類を見せたらアッサリと了承された。どうもウチでの僕の扱いと同じでフェルちゃんを認知だけして後は放置している感じだった。
 だからそのままレミさんを呼びに行き、フェルちゃんと一緒に馬車に乗って貰い僕の物になった新しい屋敷に向かう。

 屋敷に着くと門番がちゃんと居た事に先ず驚いた。門番は6名いてどうやら亡き母の護衛騎士をしていた人で、母亡き後にいつか僕を守れるようにと歯を食いしばって公爵家に仕えてくれていたそうだ。思わず泣いて(声は出さずに)一人一人に抱きついたよ。6人とも僕と同じく泣きながらコレからは何があろうともお守り致しますと言ってくれた。
 更に屋敷の玄関に着くとハレを筆頭にメイド達が入り口前に勢揃いしていた。その数、何と10名。ハレとその娘であるセラス。そして親衛隊なる隊員の5名で7名の筈だけど……?
 ハレが僕に向かって説明してくれた。

「トーヤ様、本来ならば私と娘を含めた親衛隊7名がこのお屋敷にお勤めさせていただく筈でしたが、コチラの3名が泣きながら私達に訴えてまいったのでございます。この3名は公爵家のご嫡男であらせられますテルマー様付のメイドでしたが、このままでは貞操の危機でございました。この3名は下級貴族の令嬢で迫られると断る事が出来ません。ですのでコチラのセバス様にご相談したところ、旦那様に直談判してくださいましてこのお屋敷に勤める事となりました。3名ともトーヤ様に心より感謝しております。どうかよろしくお願い致します」

 そう聞いてハレの横を見ると確かにセバスが居る? アレ? セバスは馬車の御者をしてくれてるよね? さっき、馬車を馬車停めに持って行って来ますって僕に言ったよね? 

 僕の不思議顔が面白かったのだろう。こっちのセバスは笑いながら僕に挨拶してきた。

「ハハハ、初めてお目にかかります、トーヤ様。兄から聞いているとは思いますが、私が双子の弟で、そうですね…… 仮にロッテンとでも名乗っておきます。以降、お見知りおきを……」

 いや、無理。こんなにソックリだと見分けがつかないよ。そう僕が思っていたら、リラが話してきた。

「トーヤ~、大丈夫だよ。魔力を視てたらセバスさんと違うのが分かると思うよ」

 言われて視てみたら本当だ!? セバスとは魔力が違うのが分かった。リラの【頭脳明晰】は本当に凄いなぁ。僕はリラにニコニコと頷いてみせた。

 そんな僕とリラの様子を見てフェルちゃんが言った。

「あの…… やっぱり私がトーヤ様の婚約者なんておこがましいのではないですか……?」

 それを聞いてリラが吹き出した。

「プッ、アハハ、フェルちゃん~。ちゃんと言ったと思うけど、私はトーヤのお姉ちゃんだから心配しないでね」

 うん、分かってたけど、ハッキリとリラにそう言われるとちょっと落ち込んでしまう僕がいる。けれどもそれはしょうがないよね。リラがその気が無いならば、僕はどうしようもないんだし。
 そう思い僕もフェルちゃんにニコニコと頷いてリラの言葉通りだという意思表示をした。
 それを見てホッとした顔をするフェルちゃんとレミさん。そしてハレがレミさんに言った。

「貴女はフェル様の侍女ですね。コチラのセラスをフェル様付に致しますので、どうかご指導のほどよろしくお願いします」

 そう言って自分の娘であるセラスさんを指し示す。言われたレミさんは慌てて挨拶をする。

「名乗り遅れて申し訳ありません。フェル様付の侍女でレミと申します。私の方が色々とお教えいただく事になるかと思います。どうかよろしくお願い致します」

「フェル様、レミさん、この屋敷のメイド長ハレの娘でセラスと申します。このお屋敷では色々と侯爵家での作法とは違う事もあるかと思いますが、どうかこれからよろしくお願い申し上げます」

 うん、そろそろ家の中に入りたいなぁ…… 僕がそう思っていたら家の玄関が開いてガルンさんとラメルさんが顔を出した。

「トーヤ様、おかえりなさい」
「トーヤ様、この度は主人やリラ共々、私達をお雇い頂きまして本当に有難うございます」

 先の言葉がガルンさんで、後の言葉がラメルさんだ。良かった、ちゃんと二人ともコッチに来ていたよ。リラも安堵している。そして、ラメルさんを見てレミさんが声をあげた。

「ラメル様っ!!」

 レミさんがあげた声の方をラメルさんが見て、同じように驚いた声をあげた。

「まあーっ! レミ! 貴女も無事だったのね、良かった……」

「レミ、この方がアナタが言っていたラメル様なのね」

 フェルちゃんがレミさんにそう言うと、

「はい、フェル様。コチラの方が前獣人王のご息女であるラメル様です」

 その言葉が僕に聞こえた。エッ!? ラメルさんって王族なの…… 僕は王族のアレオッパイを頂いて育ったの?
 僕の思考が一瞬停止した。

「レミ、いえレミさん。私はもう王族じゃないから敬語で話すのは止めてね」

「ハ、ハイ。でも落ち着きましたら是非お話を……」

「勿論よ、コレからはトーヤ様の庇護のもとに一緒のお屋敷で生活するのだから」

 ニッコリと微笑んでそう言うラメルさん。そして、何故か苦い顔のガルンさん。そのガルンさんを見てレミさんが言った。

「兄さん、兄さんも後でお話がありますから。コレから時間は余裕がありそうですし、タップリと聞かせて下さいねっ!!」

 おうっ! ガルンさんの妹さんだったとは。世間は狭いなぁ、なんて前世では良く聞いた言葉を僕は思い出していたんだ。 

 そこにセバスが戻ってきた。

「何だ何だ? ハレが居ながら何でまだお屋敷前に立っているんだ? 早く中にトーヤ様とフェル様に入っていただかないか」

 その言葉にみんながハッとして、申し訳ありませんといいながらも、屋敷の中に入るよう促してくれた。ハア、色々とあったけど皆が僕やフェルちゃんを支えようとしてくれているから、この屋敷では快適に過ごせそうだよ。 
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

2回目の人生は異世界で

黒ハット
ファンタジー
増田信也は初めてのデートの待ち合わせ場所に行く途中ペットの子犬を抱いて横断歩道を信号が青で渡っていた時に大型トラックが暴走して来てトラックに跳ね飛ばされて内臓が破裂して即死したはずだが、気が付くとそこは見知らぬ異世界の遺跡の中で、何故かペットの柴犬と異世界に生き返った。2日目の人生は異世界で生きる事になった

だいたい全部、聖女のせい。

荒瀬ヤヒロ
恋愛
「どうして、こんなことに……」 異世界よりやってきた聖女と出会い、王太子は変わってしまった。 いや、王太子の側近の令息達まで、変わってしまったのだ。 すでに彼らには、婚約者である令嬢達の声も届かない。 これはとある王国に降り立った聖女との出会いで見る影もなく変わってしまった男達に苦しめられる少女達の、嘆きの物語。

婚約破棄からの断罪カウンター

F.conoe
ファンタジー
冤罪押しつけられたから、それなら、と実現してあげた悪役令嬢。 理論ではなく力押しのカウンター攻撃 効果は抜群か…? (すでに違う婚約破棄ものも投稿していますが、はじめてなんとか書き上げた婚約破棄ものです)

原産地が同じでも結果が違ったお話

よもぎ
ファンタジー
とある国の貴族が通うための学園で、女生徒一人と男子生徒十数人がとある罪により捕縛されることとなった。女生徒は何の罪かも分からず牢で悶々と過ごしていたが、そこにさる貴族家の夫人が訪ねてきて……。 視点が途中で切り替わります。基本的に一人称視点で話が進みます。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

いい子ちゃんなんて嫌いだわ

F.conoe
ファンタジー
異世界召喚され、聖女として厚遇されたが 聖女じゃなかったと手のひら返しをされた。 おまけだと思われていたあの子が聖女だという。いい子で優しい聖女さま。 どうしてあなたは、もっと早く名乗らなかったの。 それが優しさだと思ったの?

処理中です...