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転生
008話 セバスの計略
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僕は突然そんな事を言い出したセバスを見たよ。セバスは僕を見て頷く。まるで、
『はい、左様でございます。トーヤ様』
そう言われたみたいだけど、僕は認知はされてるけど離れ住まいだよね……
その不安を目線に込めて見たらセバスが以下の事を伝えてきたんだ。
「実はですな、トーヤ様にはお屋敷が与えられる事になりました。公爵家の五男であるトーヤ様がいつまでも離れ住まいでは事が明らかになった際に公爵家の面子が潰れましょうと旦那様とお話しまして、亡きレーラ様のご実家であったサイラース子爵家の屋敷をトーヤ様のお住いにすると決まりましたのでございます。サイラース子爵家はレーラ様がお亡くなりになった後に事業に失敗致しまして納税出来ず更には脱税も行っていた事が明らかになりまして、既に爵位を剥奪され今は何処で何をしておるやらという状態にございます。その屋敷を手にした旦那様は、今まで放置しておりましたので、これ幸いと話を致しましてご了承いただきました。ついでに、屋敷の権利もトーヤ様のものとなっておりますのでご安心を」
何それ? エッと、亡き母の実家ってそんなところだったの? って言うことは母もひょっとしたら……
僕の不安そうな顔を見てセバスが言葉を続けた。
「トーヤ様、レーラ様はご実家の事については何も加担しておりません。寧ろ、ご実家によって公爵家に行儀見習いとして送り込まれて、それにより公爵家から多額の金を受け取ったのが、サイラース子爵家でございます。レーラ様もまた、ご実家では疎まれ蔑まれていたそうです……」
そうなんだ…… 母上、疑ってしまってゴメンなさい。僕は天国の母に許しを請う。暫く黙祷してからセバスに言った。
「兄上、妨害?」
「フフフ、ご安心下さい。トーヤ様の兄上様たちは元子爵家のお屋敷に移るトーヤ様を、産まれに相応しいと納得しております。何故ならば公爵家の本邸に比べても敷地も狭く、屋敷も小さいからです。
それから屋敷の管理についてなのですが、トーヤ様はご存知ないかも知れませんが、本邸にいるメイドの中からトーヤ様の親衛隊が出来ております。その者達は信頼できますので。
親衛隊隊長はハレという者でして、副隊長を勤めるのがハレの娘のセラス。その二人を筆頭に親衛隊員は5名おりますので。その者達が新しいトーヤ様のお屋敷に来てくれます。そして、私と陰ながら私の弟もトーヤ様にお仕えする事が決まっておりますし、ガルン、ラメル、リラ親子も住み込みの庭師で連れて行きますので」
うん、何だか自分の知らない間に色々とセバスは進めてくれているんだね。でもどうして?
「どうして?」
僕の問いかけにセバスは
「申し訳ありません。今はまだ理由についてはお答え出来ないのです…… しかし、私は常にトーヤ様のお味方である事を信じていただけないでしょうか?」
そう言って僕の目を真剣に見た。
まあ、もしも騙されているなら騙されているでしょうがないし、僕はセバスのこの目を信じたい。だから、ニッコリ笑ってセバスに頷いたんだ。
ずっと黙ったままだったフェルちゃんが唐突に喋りだした僕とセバスに驚きながらも聞いてきたよ。
「あのトーヤ様と言えばログセルガー公爵様の…… もしかしてコチラの方が…… その婚約というか…… ううん、それよりも本当に私はレミと一緒に家を出る事が出来るのでしょうか?」
「勿論でございます。フェル様。コチラをご覧下さい」
そう言って懐から何かの契約書だろうか? 取り出してフェルちゃんに見せるセバス。僕も机の上に置かれたその書類を見てみたら、こう書かれていた。
▼▼
ログセルガー公爵家五男、トーヤ・ログセルガーと婚約する場合は、この書類に婚約を希望する本人がサインをすれば即座に婚約したものと認め、かつ同室で過ごすのでなければ同居を認めるものとする。
尚且つ、婚約を希望する者が未成年であってもこの誓約書に記された事項は有効である事をココに記しておく。
コレはログセルガー公爵として、当主である私、マイヤー・ログセルガーが神に誓った誓約書である。
また王族以外の公爵家よりも身分の低い者は即座にこの契約に従わなくてはならない。
▲▲
馬鹿が居た…… ココにとんでもない馬鹿が……
我が父ながら、僕は呆れて書類を見つめてしまった。恐らくこの文はセバスが考えた物で、読まずに父上がサインと家紋印を押したのだと思う。
けれども、確かにこれならばフェルちゃんがサインすれば直ぐに家を出る事が出来る。
フェルちゃんは書類を隅々まで2回読んでからセバスに顔を向けて言った。
「ペンをお借り出来ますか?」
サインしちゃうの? でもそのトーヤって僕なんだけど僕で良いのかな?……
って僕が心配していたら、フェルちゃんが僕を見て言った。
「トーヤ様、数々のご無礼をどうかお許し下さい。そして、これからよろしくお願い致します……」
「良いの?」
僕がそう聞くと
「リラちゃんがトーヤ様と仲良くされている事、セバスさんのトーヤ様に対する態度を見てトーヤ様ならレミも安心して過ごせると思いました」
そう言って花がほころぶかの様な笑顔を見せてくれたんだ。
その後にサインをサラサラと書いて書類とペンをセバスに渡すフェルちゃん。受け取ったセバスは懐にそれをしまい言った。
「さて、それではテルマイヤー侯爵家に向かいましょう。そこで侯爵様に先程の書類をお見せして、フェル様のお付の侍女と一緒にトーヤ様の新たなお住いに向かう事に致しましょう」
「さすが、セバスの兄貴だ。頼りになる!」
うん、この人絶対にただの神父さんじゃないよね。セバスの弟分? しかし、セバスは神父さんを手招きして耳元でゴニョゴニョ何かを言っている。真っ青な顔になってる神父さん。
「いえ、滅相もございません。セバスさんは流石でございます!!」
いや、今から言い直しても、もう遅いけどね…… 僕は落ち着いたらセバスを問い質そうと心に誓ったんだ。
『はい、左様でございます。トーヤ様』
そう言われたみたいだけど、僕は認知はされてるけど離れ住まいだよね……
その不安を目線に込めて見たらセバスが以下の事を伝えてきたんだ。
「実はですな、トーヤ様にはお屋敷が与えられる事になりました。公爵家の五男であるトーヤ様がいつまでも離れ住まいでは事が明らかになった際に公爵家の面子が潰れましょうと旦那様とお話しまして、亡きレーラ様のご実家であったサイラース子爵家の屋敷をトーヤ様のお住いにすると決まりましたのでございます。サイラース子爵家はレーラ様がお亡くなりになった後に事業に失敗致しまして納税出来ず更には脱税も行っていた事が明らかになりまして、既に爵位を剥奪され今は何処で何をしておるやらという状態にございます。その屋敷を手にした旦那様は、今まで放置しておりましたので、これ幸いと話を致しましてご了承いただきました。ついでに、屋敷の権利もトーヤ様のものとなっておりますのでご安心を」
何それ? エッと、亡き母の実家ってそんなところだったの? って言うことは母もひょっとしたら……
僕の不安そうな顔を見てセバスが言葉を続けた。
「トーヤ様、レーラ様はご実家の事については何も加担しておりません。寧ろ、ご実家によって公爵家に行儀見習いとして送り込まれて、それにより公爵家から多額の金を受け取ったのが、サイラース子爵家でございます。レーラ様もまた、ご実家では疎まれ蔑まれていたそうです……」
そうなんだ…… 母上、疑ってしまってゴメンなさい。僕は天国の母に許しを請う。暫く黙祷してからセバスに言った。
「兄上、妨害?」
「フフフ、ご安心下さい。トーヤ様の兄上様たちは元子爵家のお屋敷に移るトーヤ様を、産まれに相応しいと納得しております。何故ならば公爵家の本邸に比べても敷地も狭く、屋敷も小さいからです。
それから屋敷の管理についてなのですが、トーヤ様はご存知ないかも知れませんが、本邸にいるメイドの中からトーヤ様の親衛隊が出来ております。その者達は信頼できますので。
親衛隊隊長はハレという者でして、副隊長を勤めるのがハレの娘のセラス。その二人を筆頭に親衛隊員は5名おりますので。その者達が新しいトーヤ様のお屋敷に来てくれます。そして、私と陰ながら私の弟もトーヤ様にお仕えする事が決まっておりますし、ガルン、ラメル、リラ親子も住み込みの庭師で連れて行きますので」
うん、何だか自分の知らない間に色々とセバスは進めてくれているんだね。でもどうして?
「どうして?」
僕の問いかけにセバスは
「申し訳ありません。今はまだ理由についてはお答え出来ないのです…… しかし、私は常にトーヤ様のお味方である事を信じていただけないでしょうか?」
そう言って僕の目を真剣に見た。
まあ、もしも騙されているなら騙されているでしょうがないし、僕はセバスのこの目を信じたい。だから、ニッコリ笑ってセバスに頷いたんだ。
ずっと黙ったままだったフェルちゃんが唐突に喋りだした僕とセバスに驚きながらも聞いてきたよ。
「あのトーヤ様と言えばログセルガー公爵様の…… もしかしてコチラの方が…… その婚約というか…… ううん、それよりも本当に私はレミと一緒に家を出る事が出来るのでしょうか?」
「勿論でございます。フェル様。コチラをご覧下さい」
そう言って懐から何かの契約書だろうか? 取り出してフェルちゃんに見せるセバス。僕も机の上に置かれたその書類を見てみたら、こう書かれていた。
▼▼
ログセルガー公爵家五男、トーヤ・ログセルガーと婚約する場合は、この書類に婚約を希望する本人がサインをすれば即座に婚約したものと認め、かつ同室で過ごすのでなければ同居を認めるものとする。
尚且つ、婚約を希望する者が未成年であってもこの誓約書に記された事項は有効である事をココに記しておく。
コレはログセルガー公爵として、当主である私、マイヤー・ログセルガーが神に誓った誓約書である。
また王族以外の公爵家よりも身分の低い者は即座にこの契約に従わなくてはならない。
▲▲
馬鹿が居た…… ココにとんでもない馬鹿が……
我が父ながら、僕は呆れて書類を見つめてしまった。恐らくこの文はセバスが考えた物で、読まずに父上がサインと家紋印を押したのだと思う。
けれども、確かにこれならばフェルちゃんがサインすれば直ぐに家を出る事が出来る。
フェルちゃんは書類を隅々まで2回読んでからセバスに顔を向けて言った。
「ペンをお借り出来ますか?」
サインしちゃうの? でもそのトーヤって僕なんだけど僕で良いのかな?……
って僕が心配していたら、フェルちゃんが僕を見て言った。
「トーヤ様、数々のご無礼をどうかお許し下さい。そして、これからよろしくお願い致します……」
「良いの?」
僕がそう聞くと
「リラちゃんがトーヤ様と仲良くされている事、セバスさんのトーヤ様に対する態度を見てトーヤ様ならレミも安心して過ごせると思いました」
そう言って花がほころぶかの様な笑顔を見せてくれたんだ。
その後にサインをサラサラと書いて書類とペンをセバスに渡すフェルちゃん。受け取ったセバスは懐にそれをしまい言った。
「さて、それではテルマイヤー侯爵家に向かいましょう。そこで侯爵様に先程の書類をお見せして、フェル様のお付の侍女と一緒にトーヤ様の新たなお住いに向かう事に致しましょう」
「さすが、セバスの兄貴だ。頼りになる!」
うん、この人絶対にただの神父さんじゃないよね。セバスの弟分? しかし、セバスは神父さんを手招きして耳元でゴニョゴニョ何かを言っている。真っ青な顔になってる神父さん。
「いえ、滅相もございません。セバスさんは流石でございます!!」
いや、今から言い直しても、もう遅いけどね…… 僕は落ち着いたらセバスを問い質そうと心に誓ったんだ。
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