2 / 56
誕生編
第2話
しおりを挟む
輝術の才能がないと判断されてから一年。
あれからというもの父様は私を虐めてくる。やはり輝術の使える優秀な子供が欲しかったのだろう。
だが、申し訳ないとか思わない。だって嫌いだし。
仕方がないじゃないか。
輝術を発動させる前段階、術式に輝力を流すこともできない。何でそんなこともできないんだって殴られるけどこれが本当に難しい。
母様に相談しても、そんな簡単なことが出来ないの~?何て小首を傾げてきやがった。あの時は後ろで握り拳を作ってしまった。悪意が無かったから許したけど。
そして、それ以上に問題なのが術式を作ることだ。
術式を作るに輝術で引き起こす現象がどのように引き起こされるのかの論理を立てなければならないのだが、私はその論理がどうしても苦手なのだっ!
炎を出す。水を操る。え、何それどうすんの……いや、何となくは分かる。木と木を擦り合わせて炎が出ることも知っているし、水は上から下に引っ張られるということも知っている。
だけど、それを数値に表せ、理論で説明しろ、術式にしろと言われても訳が分からない!
ちなみに父様と母様だけじゃなく、森人は頭の中で術式を作って大規模な輝術を起こすことだって出来るらしい。樹木を動かしたり、雷を降らせたり、竜巻を起こしたりする輝術をだ。一度作った術式は何度も使えるとは言え、それを頭の中だけでやってるって……化け物か。
そんな訳で私の輝術師としての将来は閉ざされたのであった。完。
「ってなれば良かったんだけどなぁ」
家の庭でそんなことを呟きつつ、目の前にいる人物に視線を向ける。
そこには渋いおじさんがいた。
「さぁー、連れて来たわぉー。この人はこの里一番の武術の使い手なのー。輝術を使えなくても大丈夫大丈夫ー。戦い方はー輝術だけじゃないんだものー」
隣にはいつも通り間延びした声で喋る母様。
渋すぎるおじさんと太陽の下で日向ぼっこをしていても似合いそうな雰囲気の母様。アンバランスな二人が並んでいるせいで違和感が凄い。どうやって知り合ったんだろうか。
「あの、母様……その人は誰ですか?」
「あれー? さっきの言葉じゃ分からなかったー?」
「いえ、どういう人なのかは分かりましたし、何でいるのかも何となく予想は出来ましたけど……」
予想は出来る。だけどそれをちょっと信じたくないだけだ。
何か背中からゴゴゴゴゴッ‼って雰囲気が出てるし、怖そうだし、やたらゴツイし。こんな人とこの後交流しなきゃいけないの? というか森人って脂肪も筋肉も付きにくい種族じゃなかったっけ?
「うーん、そうねー。まずはこの人だけどー私のお友達なのー。それでー輝術も使えるけど武術を使いたいって一度里を出た変わり者なのよー。森人は輝術の他に弓術を嗜む人はいるけどー剣や槍で戦う人はいないからねー。輝術が使えないのならー万が一の時のために覚えておいた方が良いと思ってねー。連れて来たのー」
「そう、ですか」
予想通りだった。
というか森人には剣とか槍で戦う人いないのか。確かに輝術は万能だけど、それで良いのか。
あ、おじさんが前に出て来た。
「今から貴様がどれほどか見る」
「…………」
え、どういうこと?何でそんなに拳を固く握りしめてるの?
ひやり、と背中に冷たい水でも掛けられたかのような寒気が走った時には遅かった。
輝力で強化された拳が腹に突き刺さる。
骨が砕け、胃の中のものが逆流する。
いきなりのことに反応何て出来なかった。
地面を転がり、家の壁に激突することでようやく止まった。
「この程度で動けなくなるのか」
意識が薄れていく中、そんな言葉が聞こえる。
この瞬間、嫌いな奴第二位に渋いおじさんがランクインした。
あれからというもの父様は私を虐めてくる。やはり輝術の使える優秀な子供が欲しかったのだろう。
だが、申し訳ないとか思わない。だって嫌いだし。
仕方がないじゃないか。
輝術を発動させる前段階、術式に輝力を流すこともできない。何でそんなこともできないんだって殴られるけどこれが本当に難しい。
母様に相談しても、そんな簡単なことが出来ないの~?何て小首を傾げてきやがった。あの時は後ろで握り拳を作ってしまった。悪意が無かったから許したけど。
そして、それ以上に問題なのが術式を作ることだ。
術式を作るに輝術で引き起こす現象がどのように引き起こされるのかの論理を立てなければならないのだが、私はその論理がどうしても苦手なのだっ!
炎を出す。水を操る。え、何それどうすんの……いや、何となくは分かる。木と木を擦り合わせて炎が出ることも知っているし、水は上から下に引っ張られるということも知っている。
だけど、それを数値に表せ、理論で説明しろ、術式にしろと言われても訳が分からない!
ちなみに父様と母様だけじゃなく、森人は頭の中で術式を作って大規模な輝術を起こすことだって出来るらしい。樹木を動かしたり、雷を降らせたり、竜巻を起こしたりする輝術をだ。一度作った術式は何度も使えるとは言え、それを頭の中だけでやってるって……化け物か。
そんな訳で私の輝術師としての将来は閉ざされたのであった。完。
「ってなれば良かったんだけどなぁ」
家の庭でそんなことを呟きつつ、目の前にいる人物に視線を向ける。
そこには渋いおじさんがいた。
「さぁー、連れて来たわぉー。この人はこの里一番の武術の使い手なのー。輝術を使えなくても大丈夫大丈夫ー。戦い方はー輝術だけじゃないんだものー」
隣にはいつも通り間延びした声で喋る母様。
渋すぎるおじさんと太陽の下で日向ぼっこをしていても似合いそうな雰囲気の母様。アンバランスな二人が並んでいるせいで違和感が凄い。どうやって知り合ったんだろうか。
「あの、母様……その人は誰ですか?」
「あれー? さっきの言葉じゃ分からなかったー?」
「いえ、どういう人なのかは分かりましたし、何でいるのかも何となく予想は出来ましたけど……」
予想は出来る。だけどそれをちょっと信じたくないだけだ。
何か背中からゴゴゴゴゴッ‼って雰囲気が出てるし、怖そうだし、やたらゴツイし。こんな人とこの後交流しなきゃいけないの? というか森人って脂肪も筋肉も付きにくい種族じゃなかったっけ?
「うーん、そうねー。まずはこの人だけどー私のお友達なのー。それでー輝術も使えるけど武術を使いたいって一度里を出た変わり者なのよー。森人は輝術の他に弓術を嗜む人はいるけどー剣や槍で戦う人はいないからねー。輝術が使えないのならー万が一の時のために覚えておいた方が良いと思ってねー。連れて来たのー」
「そう、ですか」
予想通りだった。
というか森人には剣とか槍で戦う人いないのか。確かに輝術は万能だけど、それで良いのか。
あ、おじさんが前に出て来た。
「今から貴様がどれほどか見る」
「…………」
え、どういうこと?何でそんなに拳を固く握りしめてるの?
ひやり、と背中に冷たい水でも掛けられたかのような寒気が走った時には遅かった。
輝力で強化された拳が腹に突き刺さる。
骨が砕け、胃の中のものが逆流する。
いきなりのことに反応何て出来なかった。
地面を転がり、家の壁に激突することでようやく止まった。
「この程度で動けなくなるのか」
意識が薄れていく中、そんな言葉が聞こえる。
この瞬間、嫌いな奴第二位に渋いおじさんがランクインした。
10
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。
せいめ
恋愛
メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。
頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。
ご都合主義です。誤字脱字お許しください。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
私の代わりが見つかったから契約破棄ですか……その代わりの人……私の勘が正しければ……結界詐欺師ですよ
Ryo-k
ファンタジー
「リリーナ! 貴様との契約を破棄する!」
結界魔術師リリーナにそう仰るのは、ライオネル・ウォルツ侯爵。
「彼女は結界魔術師1級を所持している。だから貴様はもう不要だ」
とシュナ・ファールと名乗る別の女性を部屋に呼んで宣言する。
リリーナは結界魔術師2級を所持している。
ライオネルの言葉が本当なら確かにすごいことだ。
……本当なら……ね。
※完結まで執筆済み
30年待たされた異世界転移
明之 想
ファンタジー
気づけば異世界にいた10歳のぼく。
「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」
こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。
右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。
でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。
あの日見た夢の続きを信じて。
ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!
くじけそうになっても努力を続け。
そうして、30年が経過。
ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。
しかも、20歳も若返った姿で。
異世界と日本の2つの世界で、
20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。
あ、出ていって差し上げましょうか?許可してくださるなら喜んで出ていきますわ!
リーゼロッタ
ファンタジー
生まれてすぐ、国からの命令で神殿へ取られ十二年間。
聖女として真面目に働いてきたけれど、ある日婚約者でありこの国の王子は爆弾発言をする。
「お前は本当の聖女ではなかった!笑わないお前など、聖女足り得ない!本来の聖女は、このマルセリナだ。」
裏方の聖女としてそこから三年間働いたけれど、また王子はこう言う。
「この度の大火、それから天変地異は、お前がマルセリナの祈りを邪魔したせいだ!出ていけ!二度と帰ってくるな!」
あ、そうですか?許可が降りましたわ!やった!
、、、ただし責任は取っていただきますわよ?
◆◇◆◇◆◇
誤字・脱字等のご指摘・感想・お気に入り・しおり等をくださると、作者が喜びます。
100話以内で終わらせる予定ですが、分かりません。あくまで予定です。
更新は、夕方から夜、もしくは朝七時ごろが多いと思います。割と忙しいので。
また、更新は亀ではなくカタツムリレベルのトロさですので、ご承知おきください。
更新停止なども長期の期間に渡ってあることもありますが、お許しください。
「クズスキルの偽者は必要無い!」と公爵家を追放されたので、かけがえのない仲間と共に最高の国を作ります
古河夜空
ファンタジー
「お前をルートベルク公爵家から追放する――」それはあまりにも突然の出来事だった。
一五歳の誕生日を明日に控えたレオンは、公爵家を追放されてしまう。魔を制する者“神託の御子”と期待されていた、ルートベルク公爵の息子レオンだったが、『継承』という役立たずのスキルしか得ることができず、神託の御子としての片鱗を示すことが出来なかったため追放されてしまう。
一人、逃げる様に王都を出て行くレオンだが、公爵家の汚点たる彼を亡き者にしようとする、ルートベルク公爵の魔の手が迫っていた。「絶対に生き延びてやる……ッ!」レオンは己の力を全て使い、知恵を絞り、公爵の魔の手から逃れんがために走る。生き延びるため、公爵達を見返すため、自分を信じてくれる者のため。
どれだけ窮地に立たされようとも、秘めた想いを曲げない少年の周りには、人、エルフ、ドワーフ、そして魔族、種族の垣根を越えたかけがえの無い仲間達が集い―― これは、追放された少年が最高の国を作りあげる物語。
※他サイト様でも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる