跳舞猫日録

踊る猫

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2023/02/07 BGM: Frank Sinatra - Fly Me To The Moon

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突如、酒に呑まれていた頃のことを思い出していた。「こんなことをしている間にも」と、ずっと自分自身の中で焦りがあったと思う。ネットでつながらせてもらったある小説家の方が少しずつキャリアを盤石なものにして、そして夢を叶えて日々をポジティブに生きておられるのを知って嫉妬を覚えたのをありありと思い出せる。しかし自分自身の生活は何も代わり映えのするものではなく、したがって酒に溺れるしかなかった……「こんなことをしている間にも、あの人は一歩一歩前に進んでいる」と人と比べてずいぶん自分自身を傷つけたっけ。焦ることなんてなかったし、人と比べることもなかったのだ。今は誰と比べる気持ちもなく、私の人生を生きられている。でも、それは断酒会や他のミーティングでの人間関係が自分を支えて下さっているからだ。

嫉妬か……Twitterに明け暮れて日々誰かをディスって、そうすることでいっぱしの批評家気取りで生きていたことを思い出す。「批評家の言うことなどに耳を傾けてはいけない。 これまでに批評家の銅像など建てられたためしはないのだから」と言ったのは誰だったか(私は敬愛するヴァルター・ベンヤミンの銅像が建ったら見に行ってみたいと思うのだが)。それも結局は私の中の「なぜ私は認められないのだ!」という嫉妬から来るものだったのだろうなと今では反省している。だからこの日記ではなるべくフェアに人の書いたもの、人が作ったものと接したいと思っている。私は「辛口レビュー」というものを信用しない。本当に読ませ、唸らせる「辛口レビュー」なんて天賦の才能がなければ不可能だと思う。少なくとも私にはそんな「天賦の才能」は皆無だ。

昼、弁当を食べたあと読書をする気にもなれなかったのでジェームズ・ブラウンのライヴ盤を聴きながらぼんやりしていた。また春が来るのだなあ、と思う。春は実を言うと苦手な季節である。寒さが緩み、暖かくなると気持ちが落ち着かなくなりソワソワしてしまう。「季節性感情障害」と医師は診断するかもしれない。ザ・キュアーを聴きながら梶井基次郎を読んだり、フェルナンド・ペソアを読んだりするなどして厄介な季節をやりすごすしかない。くれぐれも過食や飲酒、衝動買いに走ることは慎みたいと思う。いや、自分は過去にそういうことに走ってさまざまな問題を起こした「前科」があるので未来永劫そんなことをしないという確約ができないのが悲しいのだった。特に春になると「花見で一杯」「春ビール」という気持ちになりやすいので……。

夜、英会話教室に行く。そこで挨拶の仕方を学び、さまざまなゲームを楽しむ。ALTの先生2人は日中の授業でかなり体力を使っておられると思ったのだけれど、ジェスチャーとよく通る声を駆使してこちらにわかりやすい表現で英語を教えて下さる。さすがだなあ、と感服する。私もゲームに参加し「2つの真実と1つの嘘」を話し過去に大学で政治を勉強していたと嘘をつく(正解は英文学なのです)。雑談で「鮟肝(あんきも)」を英語でどう言うべきかわからず、スマホに頼ってばかりというのも恥ずかしいので「いや、日本でよく食されている魚の肝というかレバーなんだけれど」としどろもどろで説明したりする。こうして話す場が設けられることのありがたみを感じ、1日が終わったのだった。その後フランク・シナトラを聴きながらくつろぐ。それが人生。
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