跳舞猫日録

踊る猫

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2023/01/31 BGM: GRASS VALLEY - IDENTITY CRISIS

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村上春樹の新刊が4月13日にリリースされると聞いた(ソースは新潮社の特設サイトから)。私は高校生の頃にひょんなことから『1973年のピンボール』を読み、それが縁で『ノルウェイの森』『ダンス・ダンス・ダンス』といった彼の作品世界にハマっていったのだった。彼のことが好きだと公言することがカッコ悪いとされる風潮があったし、今でもあるのかもしれない。私も彼の書くものを無批判で受け容れるほどアマちゃんではない。だが、それを踏まえてもなお村上春樹と一緒に成長してきた人間であると自負しているし、今なお目が離せない作家であるとも信じている。新作も読むつもりである。また「不思議なことが起きて女性がどこかへ消えて、なんだかんだで最後は大団円で終わる」みたいな話なのかなあ……と読む前から期待は募っているのだった。

スシローで起こったとある客の犯した不祥事について考えている。私も回転寿司屋でバイトをしていたことがあるので、そうしたサービス産業がどれほどクオリティの高いサービスを提供せんとしているかは知っているつもりである。少なくとも組織の中の良識的な人間の意識はそうだろう。しかし現場ではバイトテロなどに代表される出来事が起こってしまい、人から「食の安全」を奪い去ってしまっている。もちろん憤りはあるのだけれど、と同時に私たちの社会が改めて「社会を円滑に回したい」という私たち自身の善意というか敬意によって支えられているのだなということを思う。そして、そうした善意や敬意をあらかじめ踏まえるべき了解事項として理解していない人がこうした悪戯心を起こすのではないか……と、なんちゃって社会学をぶってしまった。

サイトで読んだニュースで、こうした出来事は承認欲求が原因となって起こるものだと分析されていた(ソースを失念してしまった)。ならば私だって威張ったことは言えないのだった。過去の私はソーシャルメディアにおいて有名になること、「バズる」ことを目指して極論・暴論を書き殴りシェアしまくったからだ。となるとそうしたソーシャルメディアが増幅する私の自意識について、つまり自分自身が市井の一個人であるということに甘んじることができなくなる意識について考えさせられる。そうした誇大妄想を抱えた人はいつの世にもいただろう。だが、そうした誇大妄想を叶えるためにあったかもしれない社会運動や芸術、何らかの主義(チャック・パラニューク『ファイト・クラブ』に登場する組織のような)が今は失効しているのか、それとも別の形を採りつつあるのか。

夜、英会話教室に行く。そこで親しくさせてもらっている方ともリアルで久々にお会いでき、楽しい時間を過ごす。今日は「Would you rather...」という構文を使い「熱い料理と冷たい料理、どちらが好きか」「ドラマと映画、どちらが好きか」というようなことをワイワイ話し合った。アメリカの冬の過ごし方についても学ぶことができ、有意義な時間だったと思う。先生も勢い語る言葉に熱が入り、私自身リスニングの力を鍛えることの重要性を甚く感じてしまった。私もたまにはボイスチャットなどで「語る」「聞く」ことを試してみようか……そして会がはねた後先生に「『食い逃げ』って英語で何て言うんですか」と訊いてしまう一幕があった。先生によると「diningdash」が相応しいとのこと。また1つ勉強になった。今度は「『バイトテロ』って英語で何て言うんですか」と訊いてみたいと思っている。
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