跳舞猫日録

踊る猫

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2023/01/27 BGM: Polaris - 季節

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私は子どもの頃からポップ・ミュージックが好きでよく聴き込んできたのだけれど、高校生の頃その趣味をシェアできればと思って放送部に入ったことがある。だが、私の好みの音楽はぜんぜん理解されなかった。当時部員の間で流行っていたのはジョージ・マイケルやフィル・コリンズといった音楽で、私はそういった洋楽を知らずに育ってきたので好みが合うはずはない。それで、私の好みは受け容れてもらえなかったので私は放送部を辞めた。それからずっと私はクラスの片隅で死んだふりをして過ごす生活を送ることになった。前にも書いたかもしれないが、友達なんていらないと自分を閉ざしてしまいただ吉本ばななや村上春樹、島田雅彦などを読み耽って過ごしたのだった。ああ、途方もなくアホな高校生だった。

今日は遅番だったのだけれど、午前中いつものように読書をしようとしても手につかず結局永井均・内田かずひろ『子どものための哲学対話』をパラパラ読み返して過ごした。この本の中では「自分のことなんてわかってくれる人がいなくたっていい」というようなことが書かれていて、大学生の頃に初めて読んだ時感銘を受けたことを思い出す。自分は他人から理解されなくてもいいんだ、友だちなんていらない、異端のまま生きていこう……当時の私はこの箇所をそう解釈して、独りで孤独に生きることを選んだのだった。だが、今にして思えばそれは間違っているというか悲しい生き方であると思う。今の私は「やはり人には理解者が必要だ」と思う。私自身発達障害者として生きてきて、その過程で真の「自立」とは何だろうと考えるようになったからそう思うようになったのかもしれない。

今は永井均の文章をこう解釈する。つまり人から理解されること、すなわち人と関わって生きていくことはやはり重要なことである、と。そこで永井と食い違う。だが、その過程で人に魂を売り渡すような、迎合して自分自身の大事なものを譲ってしまうような生き方をすることは間違っている……というか、私にそういう生き方はできない。最終的に自分自身は異端であること、変人であることを思い知らされることもあるかもしれない。だが、その自分固有のかけがえのなさは貴重なものである。そして、本当の友情とはそうして誰にも譲れない個性というか自立した人格を備えた人との間によって築かれるものである、と。私自身そこを履き違えてしまい、ずいぶん人をやみくもに敵に回しつらい目に遭ったことを思い出す。今は私は友だちに恵まれている。おかしなものだ。私は異端のまま変わらずに大きくなっただけなのに。

夜、一水会の鈴木邦男氏の死を知る。私は高校生の頃に小林よしのり『ゴーマニズム宣言』にカブれたことがあって、その流れで鈴木邦男氏のことを知った。大学生の頃彼が『SPA!』に連載していたコラムを読み、そのバランス感覚と人柄に感銘を受け私自身が在学していた早稲田で見た風景をコラムとしてまとめて、鈴木氏のところに送りつけたことがある。今思い返せばそんな自分のイタい言動に改めて赤面してしまうが、鈴木氏からは懇切丁寧な返信をいただき再び感激したことを思い出す。私のそのコラムを鈴木氏が笑って読まれたならいいのだけれど、どうだったのだろう……私は一生どん臭い左翼として生きて死ぬのだろうが、鈴木氏のような果敢にして柔軟な姿勢を持ち続けたいと改めて思った。ここにその旨を記して氏の死を悼む。合掌。
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