跳舞猫日録

踊る猫

文字の大きさ
上 下
34 / 58

2023/01/26 BGM: 小沢健二 - 天使たちのシーン

しおりを挟む
実は恥ずかしいのだけれど、未だに私の中で生きることと死ぬことの間にある垣根は低いように思う。どういうことかというと、理由なんてないのだけれど時折退屈したり疲れたりした時に「ああ、しんどいなあ」「死にたいなあ」と思ってしまうということだ。もちろんそんなことは長続きしないのだけれど(自分のしぶとさは48年間付き合ってきた自分がよく知っているのだった)、酒に溺れていた時はこの垣根はもっと低くて、「生まれてきた時代が悪かった」「このまま酒で死にたい」「生まれ変わったら来世はもっと幸せになりたい」とまで思い詰めて過ごしていたのだった。そんなことを思い出してしまって改めて赤面してしまう。

大雪の余波は続く。昨日は結局断酒会はリモートで行われて、参加したばかりの方も来られて楽しいひと時となった。断酒会ではいつも体験談として自分の近況を語り、酒に呑まれていた時のことを語る。この日記を書いている時も少なからず感じることだけれど、書くことや語ることで自分の中にある自覚していなかった事柄、意識していなかったことというのが見えるように思う。そうした、「見知らぬ自分」を知ることもまた治療につながっているのかもしれない。そのためには「見知らぬ自分」がどんな自分であっても受け容れられるようこちらの姿勢をオープンにして、待つだけの勇気と寛容さが必要となるのだろうと思う。焦らず、日々を「1日断酒」で過ごす。「今日」1日を断酒して過ごす。。

昼休み、発達障害絡みのミーティングでつながらせてもらっている友だちが写真をシェアしてくれた。桜のつぼみの写真だ。私もよく行くイオンで撮ったものかなと思ったのだけれど、さすがに桜のつぼみまでは見ていなかったので唸らされた。こんな10年に1度来るかどうかという大寒波が来ても、桜はつぼみをつけて来るべき春を待ち続けているのだった。自然のそうしたサイクルの変わらなさ、ゆったりした動きを見ていると人間社会のせかせかした暮らしぶりというのは実に対照的だなあ、と思ってしまう。桜が咲いたらどうしようか、たまには本から離れて花見をしようかとも思う。桜の樹の下で、スマートフォンをマナーモードにしてぼんやり過ごす。とはいえ私はアホなので、そんな場所にもニーチェやウィトゲンシュタインとか持って行きそうだけれど……。

昼休みに佐野元春「ロックンロール・ナイト」を聞いて過ごし、この曲に歌われているような青春に憧れたことを思い出した。大人になったらどんな人生が待っているのだろうと十代の頃に胸に期待を膨らませ、少なくともいじめや無理解に苦しんでた今のような地獄の境遇からは逃れられるはずだと希望を持ち……結局生きてみれば酒に呑まれてさらに地獄を見た20代と30代だった。その頃、40代になったら自分が酒を止めることができて日記を書いているということも毛ほどもイメージできなかった。この分だと50代になったら私はまったく想像もつかないことをやっているかもしれない。もしかしたら農業を始めてたりして……というか、私は40で死ぬのだと思って生きてきたことを思い出した。だから今こうして命があるということそれ自体がかけがえのないことだなあ、と思ってしまう。このまま100歳になってもなおアナーキーなクソジジイ(伊集院光)として生きるのも人生なのだろう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

アップルジュース

佐野柊斗
現代文学
本気で欲しいと願ったものは、どんなものでも手に入ってしまう。夢も一緒。本気で叶えたいと思ったなら、その夢は実現してしまう。 僕がただひたすら、アップルジュースを追い求める作品です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

【Vtuberさん向け】1人用フリー台本置き場《ネタ系/5分以内》

小熊井つん
大衆娯楽
Vtuberさん向けフリー台本置き場です ◆使用報告等不要ですのでどなたでもご自由にどうぞ ◆コメントで利用報告していただけた場合は聞きに行きます! ◆クレジット表記は任意です ※クレジット表記しない場合はフリー台本であることを明記してください 【ご利用にあたっての注意事項】  ⭕️OK ・収益化済みのチャンネルまたは配信での使用 ※ファンボックスや有料会員限定配信等『金銭の支払いをしないと視聴できないコンテンツ』での使用は不可 ✖️禁止事項 ・二次配布 ・自作発言 ・大幅なセリフ改変 ・こちらの台本を使用したボイスデータの販売

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

『記憶の展望台』

小川敦人
現代文学
隆介と菜緒子は東京タワーの展望台に立ち、夜景を眺めながらそれぞれの人生を振り返る。隆介が小学生の頃、東京タワーを初めて訪れたときに見た灰色の空と工事の喧騒。その記憶は、現在の輝く都市の光景と対比される。時代と共に街は変わったが、タワーだけは変わらずそびえ立つ。二人は、人生の辛いことも嬉しいことも乗り越え、この瞬間を共有できる奇跡に感謝する。東京タワーの明かりが、彼らの新たな未来を優しく照らしていた。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

処理中です...