跳舞猫日録

踊る猫

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2023/01/21 BGM: くるり - World's End Supernova

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いつも書いていることだけれど、学生時代はずっと悪夢のような日々を過ごしていた。学校では友だちなんて誰一人できず、それどころかずっと変人扱いされて暮らしていたので、私も諦めて独りぼっちで本を読むか音楽を聞くかして死んだように生きていたのだった。尾崎豊が歌うプロテスト・ソングでは教室の中のアウトローが管理教育に盾付き自由を渇望する。もちろんそれは大事な視点だと思う。だが、私はむしろ管理されている側の生徒たち自身が生み出す同調圧力自体に息苦しいものを感じていた。管理される生徒たち自体が新たな管理を生み出す。「弱い者たちが夕暮れ/さらに弱い者をたたく」(ブルーハーツ)。

尾崎豊的な「自分たちは管理されている!」と学校の欺瞞を告発する態度は、下手をすれば「管理されている自分たち、圧し潰されそうになっている自分たちは『それゆえに』正しい」とならないだろうか、と思う。主観的に見て弾圧されていると判断することで自分たちの活動を先鋭化させ、自らを正しいと確信する姿勢が盲目的になる……Twitterでもそうした盲信をよく見かける。単に私がアマノジャクだからと言うことで片がつく話だとも思うが、十代の頃からそんな盲信が気になってしまって尾崎豊にはハマれなかったことを思い出す。彼の声や詩才は文句のつけようのないカリスマ的なものだと思うがゆえに、そこが気になってしまったのだった。

そんなことが気になって生きていた私は発達障害の影響ゆえの受動性もあり、あるいはずっと「お前の考え方は間違っている」「お前は異常だ」「お前のような生き方や考え方では大人になっては通用しない」と言い続けられて育ってきたこともあって(クラスメイトや教師からずっと「成績だけよくても何にもならない」と言われてきたのだった)、自分の考え方に自信を持ち、なおかつその自信ゆえに他人からの批判に寛容になるというパラドキシカルな態度を体得するまでにずいぶん時間がかかった。いや、私は幼いので未だに自分の間違いを指摘されると傷つきもするし期限を損ねもする。それは認めなければならない。だが、それでも過去よりはマシになったとは思う。

「みにくいアヒルの子」という童話を思い出す。アヒルの社会においてずっと「みにくい」と言い続けられてきたアヒルが、実は白鳥だったという話だ(あの話のキモは、白鳥は生まれながらにして白鳥だったのであったということ、つまり「ありのままでいい」ということだと思う)。私も、定型発達者ばかりのど田舎の社会でずっと「みにくい」と言われて生きてきたので、自分に生きる資格や権利などないのだと思い、一生精神異常者として生きるしかないのだとも思い込んだこともあった……今、英語を使って築いた社会の中で(インターネット上のさまざまなコミュニティで)私は愛されていると確かに感じる。それを思うとつくづく「変」とは何だろう、「異常」あるいは「発達障害」とは何だろうと思ってしまう。それは突き詰めて言えば、「ぼくがぼくであること」が悪いことなのか、ということでもあるのだと思う。
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