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2023/01/08 BGM: Perfume - チョコレイト・ディスコ
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今日は休みだった。朝、レディオヘッド『OK Computer』を聴きながらミヒャエル・エンデ『モモ』を読む。実を言うと『モモ』はこれが初読だったのだが、すこぶる深い作品だと思った。架空の都市に現れたモモという少女と「時間貯蓄銀行」を名乗る「灰色の男たち」との戦いを通して、現代の高度資本主義やコスト・パフォーマンスを追求する社会から抜け落ちてしまうものを指摘している。空想と戯れることの大事さ、私たちに潤沢に与えられていてそれゆえに見直しづらい時間というものを今一度見つめ直す態度。死生観についても触れられており、こうした文学に触れてこなかった自分の人生を情けなくも思ってしまった。まあ、世の中そんなものである。
毎週木曜日の夜は宍粟市国際交流協会や市役所の方と一緒にZOOMでミーティングをしているのだけれど、次の木曜日は私が発表をする当番になっていたのでこの『モモ』について話せればと思い、さっそく資料を作る。その段階で自分自身の人生の「コスパ」「タイパ」「ムダ」についても考える。早稲田に行ったことも自分にとっては「ムダ」だったかもしれない、と言うと反感/顰蹙を買うだろうか。だがあの大学時代の4年間、あれほど自由だった時間を自分は使いこなせず、タラタラと鬱をこじらせて過ごしていたのが実態だった。謙虚にアルバイトをして社会と触れるかあるいはもっと本を読んで学んでいたらよかったかな、と思う。4年間、腰を据えてフランス語を学んでいれば……「タラレバ」に浸ってもなんにもならないのだけれど。
「タイパ」の必然性を感じ、映画を倍速で観たりオチをあらかじめ知っている状態で観たいがためにドラマを最終話から観たりしているのはX世代と呼ばれる人たちらしい。だが、調べていてふと「伝統的な修業はムダ」「効率化を図れば寿司職人だって簡単に養成できる」という意見(by堀江貴文)に触れると、「タイパ」はむしろ日本人全体の問題のようにも思った。その反動(?)として田舎暮らしの不便な生活を(サステナビリティを重視しつつ)選ぶスローライフという活き方もあるとかで、私自身はさしずめスローリーディングを学ばなければならないかな、と実にせっかちでシッチャカメッチャカな読書傾向を振り返って思ってしまう。それができないがゆえの発達障害なのだけれど……。
夜、読みかけていた『言語はこうして生まれる』を読み終える。今年も始まって間がないがさっそく年間ベスト級の良書に触れられた、と満足に思った。私たちはルール/文法に厳格に則って言葉を使っていると思ってしまいがちだが、実はコミュニケーションはその都度ジェスチャーゲームや即興が生み出す「その場しのぎ」の偶然性によって成り立っている、とこの本は指摘する。私は門外漢なのでこの理屈の正誤はわからず、ただわかりやすいロジックの運びに「ほ~」と嘆息するしかなかった。だが、この偶然性を重視した理屈は例えばウィトゲンシュタインの「言語ゲーム」という概念、ウィトゲンシュタイン自身が嘆息したコミュニケーションの神秘と馴染むのではないかとも思ったのだが、これも私のバグだらけの脳が生み出した妄想にすぎないのだろうか?
毎週木曜日の夜は宍粟市国際交流協会や市役所の方と一緒にZOOMでミーティングをしているのだけれど、次の木曜日は私が発表をする当番になっていたのでこの『モモ』について話せればと思い、さっそく資料を作る。その段階で自分自身の人生の「コスパ」「タイパ」「ムダ」についても考える。早稲田に行ったことも自分にとっては「ムダ」だったかもしれない、と言うと反感/顰蹙を買うだろうか。だがあの大学時代の4年間、あれほど自由だった時間を自分は使いこなせず、タラタラと鬱をこじらせて過ごしていたのが実態だった。謙虚にアルバイトをして社会と触れるかあるいはもっと本を読んで学んでいたらよかったかな、と思う。4年間、腰を据えてフランス語を学んでいれば……「タラレバ」に浸ってもなんにもならないのだけれど。
「タイパ」の必然性を感じ、映画を倍速で観たりオチをあらかじめ知っている状態で観たいがためにドラマを最終話から観たりしているのはX世代と呼ばれる人たちらしい。だが、調べていてふと「伝統的な修業はムダ」「効率化を図れば寿司職人だって簡単に養成できる」という意見(by堀江貴文)に触れると、「タイパ」はむしろ日本人全体の問題のようにも思った。その反動(?)として田舎暮らしの不便な生活を(サステナビリティを重視しつつ)選ぶスローライフという活き方もあるとかで、私自身はさしずめスローリーディングを学ばなければならないかな、と実にせっかちでシッチャカメッチャカな読書傾向を振り返って思ってしまう。それができないがゆえの発達障害なのだけれど……。
夜、読みかけていた『言語はこうして生まれる』を読み終える。今年も始まって間がないがさっそく年間ベスト級の良書に触れられた、と満足に思った。私たちはルール/文法に厳格に則って言葉を使っていると思ってしまいがちだが、実はコミュニケーションはその都度ジェスチャーゲームや即興が生み出す「その場しのぎ」の偶然性によって成り立っている、とこの本は指摘する。私は門外漢なのでこの理屈の正誤はわからず、ただわかりやすいロジックの運びに「ほ~」と嘆息するしかなかった。だが、この偶然性を重視した理屈は例えばウィトゲンシュタインの「言語ゲーム」という概念、ウィトゲンシュタイン自身が嘆息したコミュニケーションの神秘と馴染むのではないかとも思ったのだが、これも私のバグだらけの脳が生み出した妄想にすぎないのだろうか?
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