never coming morning

高山小石

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エピローグ

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 西暦2056年、『地球保護システム』の管理を自分の血を引く者に引き継ぐように伝え、ユーリは息を引き取った。
 ユーリはできる限りジーニィを待ち続けていたが、自分が生きている間にアムブロシアは戻ってこないだろうと予測し、いつか戻ってきてくれるであろうアムブロシアとの約束を守れるようにと、ユーリは自分の中にあるイエティに仕掛けをほどこし、イエティを繋ぐことにしたのだ。

 マリアは『ブラウン・マリア』というシステムのカタチで、人間の良き隣人としてあり続けた。

 『アース』、『ブラウン・マリア』、『ユークリッドの翼』、想いと技術の結晶が地球人を守り続ける。

 ユーリが死んだことでテロ行為が終わるかもしれないという予想を外し、クリオネの行動は止まらなかった。クリオネは、殺人娯楽ゲーム『フェイク』と自らと多くの人形を使い、あらゆる立場の人間を破滅に追い込んでいった。

 ジーニィの両親から頼まれたこともあり、アムブロシアはできる限りクリオネの行動を止めるようにしていた。クリオネの人形と遭遇すると、人形を破壊することで目的を果たせるのだが、図らずもクリオネ本人と居合わせることが何度かあった。
 アムブロシアの脳裏に、複雑な模様を描いた色が浮かぶ。
 浮かんでしまうと、アムブロシアは意味がわからないながらも、クリオネ人形を壊すようにクリオネ本人に接することができなくなる。
 それはクリオネ本人も同じようで、アムブロシアとクリオネ本人は、いつも静かにその場を離れた。

 そうして数百年が過ぎていったーー。
 
 
 地上にいた人間が死に絶えたことを関知して、地下に隠されていた巨大な宇宙船が目を覚ました。
 
 宇宙船内の一部は、かつて地上にあった『館』とまったく同じ姿をしていた。
 いつかくる地球人種の滅亡に備えて、『館』は地球人種の種を保存する役割を担っていた。
 『館』から『白い者』に連れ去られ消えていった娘たちは、新たな世界の『母親』としての役割があるので、まだスリープから目覚めていない。
 ただ一人、ミスズと呼ばれていた少女だけが意識を取り戻していた。
 自分が目覚める時は地球人種が滅びた時だと聞いていたミスズは、いったい今があれから何年後なのかと考え、答えを知って驚いた。ミスズにとっては、ほんの少し眠っていた感覚しかなかったからだ。
「本当に誰もいないのかしら?」
 ミスズは広く深く地球上に意識を向けた。かつて見た壊れてしまった状態と似ているが、その時よりも地球本体の被害は少ないようだ。どうやら地球を守るシステムが無人になった今も作動しているらしい。
 システムに興味を持ったミスズは、壊れた都市にぽつんとある大きな塔へと向かった。
 塔自体はかなり痛んでいたものの正常に作動している。
 中枢部には大きな円筒があり、円筒の周囲に、溶けた金属のようなものがあった。よくよく見てみると、1種類ではなく、混ざっているようだ。
「まぁ。こんなところにいたのね」
 ミスズはかつての仲間にそっと手を伸ばし、液体金属状だった姿を金属塊に変化させると、手を触れずに持ち上げた。
「これからは一緒に地球人種を見守りましょう」
 ミスズの脳裏に美しいドット絵が広がると同時に、円筒の中に、かつて一緒にいた少女と、ミスズは実際に見たことはないが懐かしい人物たちの姿が浮かび上がった。



......End


最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。
蛇足かもしれませんが、前日談的な話をあと数話アップしていきます。
主人公たちは出てこないので、読まなくても大丈夫です。
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