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2.研究室でご対面
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「アブねー、アブねー。まさか二人一緒に来るとは思わなかった」
焦る金髪少年に、落ち着いた声が返ってきた。
「ゲートを広げといて良かっただろう?」
「ま、ね。アンジュ! ゲート閉じたか?」
「ええ」
「よし、二人を起こそう」
クリオネとリマキナは強く揺さぶられた。
「おい! 生きてるんだろう? さっさと起きろよ! 時間がもったいないぜ!」
眉をしかめながら、クリオネ、リマキナが目を開く。
二人の目には知らない天井が映り、やがて自分が堅いベッドに寝かされていることがわかった。
「……ここは?」
ゆっくりと身体を起こしながらクリオネはつぶやいた。
そのつぶやきにリマキナが勢い良く起きあがる。
「アニキっ」
二人の前には、さっきすれ違った金髪少年がいた。
「おはよう! 俺はジーニィ。ここは俺の研究室だよ。大丈夫かい?」
「オレは」
「知ってる。クリオネ・リマキナ、海の妖精だ。だてに研究はしてないぜ?」
「……何の研究を? 地球? それとも人?」
クリオネの質問に嬉しそうにジーニィが笑った。
「たしかに。ま、話しても長くなるから、体験してもらうよ。あそこにドアがあるだろ?」
ジーニィは、狭い部屋のすみにある小さなドアを指した。
「あのドアの向こうには会いたい人がいる。どうだい? 開けられるかい?」
くすくす笑うジーニィにクリオネは怪訝な表情になった。
「それが研究?」
「そうだ。どうする? 開ける勇気があるかな?」
チェシャ猫のように笑うジーニィにクリオネがむっとする。
「もちろ」
「ボクが開ける!」
リマキナがベッドから飛び降りた。
「いいぜ、どっちでも」
リマキナは迷いなくドアに向かう。
(会いたい人……アニキはきっと、絶対、ユーリを願う。でも、ボクは、ボクが会いたいのは!)
リマキナはぐいっとノブを回した。
--ねぇ、双子だったなんて、私、倍嬉しいわ。
--そうだね。名前はどうする? 決めてるんだろう?
--ええ。クリオネとリマキナ。
いつか二人が名前に興味を持ってくれるといいんだけど。
--持つよ。そして地球にも。
ドアの向こう側には2人いた。
ベッドに横たわる女のそばに優しく付き添う男。
(会話は聞こえるし2人の雰囲気もわかるのに!)
「なんで? なんではっきり見えないの?」
リマキナが見ようとすればするほど、2人の輪郭はかすみ、ぼやけていく。
「ボクには……会ってくれないの?」
リマキナの頬を涙が伝う。その肩をクリオネがそっと抱いた。
「ごめん。失敗だ」
すまなそうなジーニィの声と同時に、ぼやけた2人はかき消えた。
リマキナの前には、閉じたままのドアが現れる。
「まさかこんな古い記憶を見せられるとはね。まだそこまで研究が進んでないんだ」
「……もしかして『記憶の場所』についての研究?」
「正解クリオネ。君も同じような考察を書いてただろ? この前の提出物、読んだよ」
「え? あれはバリアについての」
「そうだ。これはそれの応用みたいなものだ。望むカタチを映す」
「すごい! 実際にできるんだ! 理論だけなら可能だと確信してたけど、実現するなんて! すごいよジーニィ。これは君一人で研究を?」
「いいや。さすがに俺一人じゃ無理だ。協力者がいるのさ」
にやり、とジーニィが笑う。
「アンジュ?」
リマキナの問いに、ジーニィは意外そうな顔をした。
「そうだな。アンジュもそうだけど、もっとすごい協力者だよ」
「それって、もしかすると、もしかして……!」
クリオネの声がうわずる。
「その協力者はこのドアの向こうにいる。俺の予想では、さっき、この姿が現れる……だったんだけどね」
顔を見合わせるクリオネとリマキナ。
「アニキっ」
「ああ」
「ドアを開けてくれ、クリオネ。大丈夫。ちゃんと本物がいるから」
「う……ん」
(このドアの向こうにユーリが、ユークリッド博士がいるんだ!)
早く開けたいのに手がなかなか動かない、そんなもどかしさの中、クリオネはゆっくりとノブを回した。ドアが開く。
「はじめまして、かな? クリオネ、リマキナ。僕はユーリ。ユークリッドです」
今いる部屋より広い研究室にいたのは、長髪のアジア人、少したれ目で優しげな青年だった。
「ユーリ!?」
「あなたが!?」
あははっ、と、後ろからジーニィの笑い声が響く。
「ほら、やっぱり驚かれた。ユーリ、あんたの容貌は普通すぎるんだよ」
「ひどいな、ジーニィ。これが僕の取り柄なのに。あー、でも期待を裏切ってしまったかな? クリオネ?」
「…………」
「アニキ?」
クリオネは呆然とユーリを見つめたまま固まっていた。
(この人が本物のユーリ! 優しそうな顔、落ち着いた声、長い黒髪。この人が新しい歴史を作ると言われる博士なんだ!)
「オレ! オレ、感動です! ユークリッド博士に会えるなんて! あなたに名前を呼んでもらえただけで、それだけで、もう、オレ……!!」
「そんなに喜んでもらえると、僕も会いに来たかいがあるってものだよ。ありがとう」
あのユーリに『ありがとう』って言われた! クリオネはぽーっとなった。
「会いにって? ボクらに会いに? わざわざ?」
リマキナにユーリはうなずいた。
「そうだよ。ジーニィに今日来る科学者に会ってくれって頼まれたからね」
「科学者?」
「って誰?」
まったくもう、とジーニィはクリオネとリマキナを見つめた。
「君たち! 君たちはバリアの研究をしている。それは俺たちの研究テーマと重なっている。だから一緒に研究したかったのさ」
「それは嬉しいけど。なんでオレたちが今日くるってわかったんだ?」
「簡単なことさ。リヒト先生に頼んだんだ」
「リヒト先生と知り合いなの?」
サウスとノースなのに、という顔の二人に、ユーリが説明する。
「クリオネ、リマキナ。『Y博士』って聞いたことがあるだろう? ジーニィとアンジュは彼の子供なんだよ。僕は昔からY博士に世話になっているんだけど、そのY博士とリヒト先生は昔からの友達なんだって。ノース、サウス関係なく、その世代の人たちはほとんど顔見知りらしい」
Y博士の世代は、第三次世界大戦を生き抜いた生き残りのことで、その時親を失ったのがユーリの世代、生き残りの子供がジーニィやクリオネの世代だ。
「ふーん。でも、オレたちがすぐ来るとはわからなかったはずだけど」
「クリオネく~ん。君のユーリ好きは前から知ってたんだよ。『アース』のパーティメンバー選びに名前検索してただろ?」
「って、まさか」
ジーニィはにやっと笑った。
「さて、ここで問題です! 俺は『アース』ではいったい誰だったでしょう?」
「誰って……『アース』では名前や性別は変更できない。うちのパーティにはいないんだから、知るわけないよ」
関係ないじゃん、とばかりのクリオネに、ジーニィがウィンクして両腕をバッテンした。
「ブ――。は・ず・れ。俺は『ユーリ』」
「えええ!?」
ジーニィを見つめながらリマキナも声を上げる。
「ジーニィがユーリ? じゃ、アニマはアンジュ?」
「ブブ――!」
「まさか……?」
クリオネがおそるおそるユーリを見上げる。
「僕です」
恥ずかしそうに答えたのは、ユーリその人だった。
「なんで……。なんであなたほどの人が、あんな女の子に?」
「女の子ってわがままも通るし、甘えられるでしょ? 一度なってみたかったんだよね」
「で、でも、『アース』での自分は、すべて現実の自分と同じパラメータになるはずなのに」
「抜け道があるんだよ。それは僕とジーニィでちょちょいと、ね」
目配せするユーリとジーニィに絶句するクリオネとリマキナ。
「…………」
(アニマがユーリだったっていうのもショックだけど、違法なことを悪びれなく話すユーリって)
「ダメよユーリ。クリオネががっかりしてるわ。もっと博士っぽく話さなくっちゃ」
三人が入ったドアとは別のドアから金髪少女が入ってきた。
「そうだったね、アンジュ。ごめんね、クリオネ。僕はここへ来ると安心してしまうんだ。それで、ちょっと、こう、地が出るっていうか」
(ちょっと?)
心の中でつっこむリマキナ。
「いいんです、そんなの!! あなたがユーリってだけで、オレはすごく幸せですから。ヂだろうがゲリだろうが、ぜんぜんかまいません!」
ユーリは不思議な笑みを浮かべた。
「僕にも普通に話してほしいな。ここにいる人はみんな大事な仲間だからね。歳とか、肩書きとか、気にしないでいい」
光栄です、とクリオネとリマキナはうなずいた。
「でも一人足りないんだよね。ジーニィ、マリアは?」
「もうすぐ来るよ。アンジュ?」
アンジュは手にした小さなモニターを見た。
「今、『光』に降りているところ。あと5分ってところね」
「ふうん。仕事に手間取ったのかな? マリアにしちゃめずらしいね」
「今のうちにパスを渡しましょうよ」
「そうだな。クリオネ、リマキナ、ここはどこだと思う?」
ジーニィの問いに、クリオネリマキナは部屋を見まわす。
窓がない研究室、壁や天井はしっかりしてそうだ。
「壁の中?」
「地下?」
「まぁ正解。昔の赤道の下にいるんだ」
「サウスとノースの境目ってこと?」
「そう。あの壁の地下にいるんだ。俺の父さんの世代が作ったらしい。地球をぐるっと一周研究施設があって、ここはその一部」
楽しそうに説明するジーニィをユーリが引き継ぐ。
「僕はサウス所属の人間だけど、研究には両方の知識がいる。普通に行き来しようとすると、僕でも毎回パスの申請が必要でめんど……大変なんだよ。それでここの一部を借りてる。ここに入るには特別なパスが必要なんだけど、一回登録すると後は手続きがいらない。ここから直接ノース・サウスどちらにも行けるんだ」
「さっきはゲートを開けておいたのさ。ユーリが2人用にしとけって言ってたから良かったけど、本来1人用だから、同時に入るのは危険なんだ。まだそこまで技術が追いついてない」
「そう言えば、『光』に乗ってるのと同じような感じがしたな」
クリオネの言葉にジーニィが口笛をならした。
「さすがだろ? ユーリ」
「ああ、ちょっと驚いた」
なにが? と、見つめるクリオネに、ジーニイとユーリは答える。
「『光』とゲートは同じ作りだってことさ」
「クリオネは『光』ってどういうモノだと思う?」
「ええっと……光のように速い乗り物?」
科学者の顔で質問を続けるユーリ。
「じゃ、ゲートは?」
「……わからない」
「素直だな~」
感心したようにジーニィがつぶやくと、ユーリが苦笑した。
「誰かさんとは大違いだ。種明かしするとね、どちらも瞬間移動装置なんだよ」
「ええ?」
「どちらも?」
予想通りの反応に、満足げにユーリは説明する。
「『光』はね、そうとはわからないように演出してるんだ。光るコンソール、やわらかい椅子。これらは地球人に対する配慮だよ。地球人は瞬間移動装置にはどうも抵抗があるみたいだからね」
「…………」
黙るクリオネとリマキナにジーニィが補足する。
「『光』も1人用だろ? まだ技術が追いついてないのさ。へたすると混ざる可能性がある」
「それって、オールドムーヴィ『フライ』みたく?」
怖そうに言うクリオネにユーリは笑う。
「そうそう。地球人はどうもそういう風に連想しちゃうんだよね」
「ユーリは宇宙人なの?」
「えらくストレートにきたね、リマキナ」
「だって言い方が」
(宇宙人だったらこんなにそばにいても大丈夫なの? 危険なんじゃ)
戦争を一瞬で平定した宇宙人の存在は、絶対的な力の持ち主として地球人に畏れられているのだ。
「残念ながら僕は地球人だよ。ただ、長い間宇宙人と暮らしていたんだ。僕は彼らが宇宙人とは知らなかったんだけどね」
「さらわれたの?」
「そうそう。宇宙船に連れて行かれてね、そこで足に金属片を」
「ユーリ!」
アンジュの怒った声に、クリオネとリマキナは今の話が嘘だとわかった。
「無駄なお話はそのあたりにして。パスを入力しましょ?」
「はいはいお姫様」
「クリオネ、リマキナ、耳管を」
2人はジーニィに近づく。ジーニィは大きなマシンにつながっているコードをアダマスにさした。
「なんで君はアダマスを耳管って言うの?」
「『アダマス』なんて呼ぶのムカツクだろ?」
にっと笑うジーニィ。
「まぁ、しないと思うけど、アダマスを交換したりしないようにね。保証できないから」
ユーリの説明にクリオネとリマキナは嫌そうな顔になった。
アダマスは耳に直接繋がっているので、耳を切り落とさない限り外すこともできない。
「そうそう。いくらそっくりだからって性別が違うんだし」
赤くなりながらリナキナがジーニィに聞く。
「知ってたの?」
「データとしてはもちろん知ってたさ。見てもすぐわかったけどね」
顔を見合わせるクリオネとリマキナ。
その様子は、服が同じこともあって、鏡を見ているようにそっくりだった。
「俺とアンジュはどうだ?」
「二人がどうし」
「……あ!」
頬を寄せ合うジーニィとアンジュも、まったく同じ顔だった。
「もしかして、雑誌アーンジュに出てるもう一人の天使って」
「俺だよーん」
「ウソだ――!」
絶叫するクリオネ。
「かわいいだろ? どっちがどっちかわからないくらい」
「…………」
雑誌と同じエンジェルスマイルに絶句するクリオネ。
呆然とするリマキナにアンジュが尋ねる。
「私たちが双子なの気づかなかった?」
「気づかなかった」
「俺は毎日自分とそっくりなアンジュを見てるからね。リマキナが女の子だってす~ぐ気づいたよ」
「はぁ。まいりました」
パスを入力し終えコードをアダマスから抜いた時、ドアが開いた。
「お待たせしちゃったかしら?」
現れたのは、栗色の波打つ髪をゆらすユーリくらいの女性だった。
「マリア」
アンジュが駆け寄り、なにか囁く。それにうなずくマリア。
「遅れてごめんなさい」
「彼女が最後の仲間、マリアだよ」
「はじめまして。よろしくね、クリオネ、リマキナ」
大きな瞳を細くしてにっこり笑う。
「……はじめまして」
「……よろしく」
ぼうっとマリアに見入るクリオネとリマキナ。
「なあに?」
「えっ」
「いえ……」
クリオネとリマキナは赤くなって囁き合う。
(ちょ、ちょっとアニキ。すごい美人だね)
(うん。アンジュといい……ノースって美人ばっか?)
落ち着いた雰囲気のマリアに、やっぱ大人の女ってこんなのが理想だよな、とリマキナは思う。
「あの……マリアさん」
「あら、マリアでけっこうよ、クリオネ」
「じゃ、マリア」
「なあに?」
「あなたはなにをしてるの? やっぱりユーリやジーニィと同じ研究を?」
うーん、と少し考えてマリア。
「正確には『違う』わね。私は別の仕事をしているの。それの手助けを科学者さん達に頼んでるのよ」
「仕事って?」
「その制服、情報部よね? じゃあ知ってるかしら? 『なんでも屋』の噂」
「ネットに存在するなんでも屋のこと?」
「仕事量多くて、噂の証言もばらばらで、団体か、個人かもわからない。わかっているのは『ブラウン・マリア』という名前だけの……って!」
「まさか!?」
「うふふ。私がその『ブラウン・マリア』なの」
「本当に存在してたんだ……」
「でも、情報によると、『ブラウン・マリア』は女性だったり、男性だったり、人種もばらばらだったはず。あなたは『ブラウン・マリア』という団体の一員なんですか?」
思わずリマキナは情報収集モードに入っていた。
「うふふ」
マリアは双子の視線に余裕の笑みを返す。
そこにジーニィが入った。
「まぁ、それはおいおいわかっていくさ。2人とも、またここに来てくれるだろ?」
「もちろんだよ」
「毎日でも来たいくらい」
「あはは。これで新メンバーも増えたことだし……どうする? お祝いでもする?」
みんなの顔を見るジーニィ。ユーリが口を開いた。
「マリア。君が遅れたのは何か理由があるんじゃないのかい?」
「そうよ! 急に仕事が入ったの。さっそくで悪いんだけどジーニィ、『人形』を一体作ってちょうだい」
「どんなの?」
「ここにくわしく書いてあるわ」
マリアは大きな鞄からファイルを取り出すとジーニィに渡した。
「どれどれ。あ、これ、地味なカップルの片割れ?」
「そうなの。彼氏の方からの依頼で、『もっと自分に合った彼女を紹介して欲しい』って」
「なにそれ?」
とがった声になったリマキナにクリオネも続く。
「どういうこと?」
「たぶん、つきあいが長すぎるんじゃないかな? このカップル、僕も知ってるんだけど、そろそろ7年目だったような」
上からファイルを見ながらユーリ。
「あら有名なのね。ジーニィには彼女そっくりの人形を、アンジュにはその中身をお願いするわ」
「まーかせて」
「わかったわ」
簡単に引き受けるジーニィとアンジュに、クリオネトリマキナは信じられない! と声を上げる。
「そっくりな人形作ってどうするの?」
「そんな男に作ることないよ!」
そんな2人にジーニィはふふんと鼻で笑った。
「まぁ見てなって」
焦る金髪少年に、落ち着いた声が返ってきた。
「ゲートを広げといて良かっただろう?」
「ま、ね。アンジュ! ゲート閉じたか?」
「ええ」
「よし、二人を起こそう」
クリオネとリマキナは強く揺さぶられた。
「おい! 生きてるんだろう? さっさと起きろよ! 時間がもったいないぜ!」
眉をしかめながら、クリオネ、リマキナが目を開く。
二人の目には知らない天井が映り、やがて自分が堅いベッドに寝かされていることがわかった。
「……ここは?」
ゆっくりと身体を起こしながらクリオネはつぶやいた。
そのつぶやきにリマキナが勢い良く起きあがる。
「アニキっ」
二人の前には、さっきすれ違った金髪少年がいた。
「おはよう! 俺はジーニィ。ここは俺の研究室だよ。大丈夫かい?」
「オレは」
「知ってる。クリオネ・リマキナ、海の妖精だ。だてに研究はしてないぜ?」
「……何の研究を? 地球? それとも人?」
クリオネの質問に嬉しそうにジーニィが笑った。
「たしかに。ま、話しても長くなるから、体験してもらうよ。あそこにドアがあるだろ?」
ジーニィは、狭い部屋のすみにある小さなドアを指した。
「あのドアの向こうには会いたい人がいる。どうだい? 開けられるかい?」
くすくす笑うジーニィにクリオネは怪訝な表情になった。
「それが研究?」
「そうだ。どうする? 開ける勇気があるかな?」
チェシャ猫のように笑うジーニィにクリオネがむっとする。
「もちろ」
「ボクが開ける!」
リマキナがベッドから飛び降りた。
「いいぜ、どっちでも」
リマキナは迷いなくドアに向かう。
(会いたい人……アニキはきっと、絶対、ユーリを願う。でも、ボクは、ボクが会いたいのは!)
リマキナはぐいっとノブを回した。
--ねぇ、双子だったなんて、私、倍嬉しいわ。
--そうだね。名前はどうする? 決めてるんだろう?
--ええ。クリオネとリマキナ。
いつか二人が名前に興味を持ってくれるといいんだけど。
--持つよ。そして地球にも。
ドアの向こう側には2人いた。
ベッドに横たわる女のそばに優しく付き添う男。
(会話は聞こえるし2人の雰囲気もわかるのに!)
「なんで? なんではっきり見えないの?」
リマキナが見ようとすればするほど、2人の輪郭はかすみ、ぼやけていく。
「ボクには……会ってくれないの?」
リマキナの頬を涙が伝う。その肩をクリオネがそっと抱いた。
「ごめん。失敗だ」
すまなそうなジーニィの声と同時に、ぼやけた2人はかき消えた。
リマキナの前には、閉じたままのドアが現れる。
「まさかこんな古い記憶を見せられるとはね。まだそこまで研究が進んでないんだ」
「……もしかして『記憶の場所』についての研究?」
「正解クリオネ。君も同じような考察を書いてただろ? この前の提出物、読んだよ」
「え? あれはバリアについての」
「そうだ。これはそれの応用みたいなものだ。望むカタチを映す」
「すごい! 実際にできるんだ! 理論だけなら可能だと確信してたけど、実現するなんて! すごいよジーニィ。これは君一人で研究を?」
「いいや。さすがに俺一人じゃ無理だ。協力者がいるのさ」
にやり、とジーニィが笑う。
「アンジュ?」
リマキナの問いに、ジーニィは意外そうな顔をした。
「そうだな。アンジュもそうだけど、もっとすごい協力者だよ」
「それって、もしかすると、もしかして……!」
クリオネの声がうわずる。
「その協力者はこのドアの向こうにいる。俺の予想では、さっき、この姿が現れる……だったんだけどね」
顔を見合わせるクリオネとリマキナ。
「アニキっ」
「ああ」
「ドアを開けてくれ、クリオネ。大丈夫。ちゃんと本物がいるから」
「う……ん」
(このドアの向こうにユーリが、ユークリッド博士がいるんだ!)
早く開けたいのに手がなかなか動かない、そんなもどかしさの中、クリオネはゆっくりとノブを回した。ドアが開く。
「はじめまして、かな? クリオネ、リマキナ。僕はユーリ。ユークリッドです」
今いる部屋より広い研究室にいたのは、長髪のアジア人、少したれ目で優しげな青年だった。
「ユーリ!?」
「あなたが!?」
あははっ、と、後ろからジーニィの笑い声が響く。
「ほら、やっぱり驚かれた。ユーリ、あんたの容貌は普通すぎるんだよ」
「ひどいな、ジーニィ。これが僕の取り柄なのに。あー、でも期待を裏切ってしまったかな? クリオネ?」
「…………」
「アニキ?」
クリオネは呆然とユーリを見つめたまま固まっていた。
(この人が本物のユーリ! 優しそうな顔、落ち着いた声、長い黒髪。この人が新しい歴史を作ると言われる博士なんだ!)
「オレ! オレ、感動です! ユークリッド博士に会えるなんて! あなたに名前を呼んでもらえただけで、それだけで、もう、オレ……!!」
「そんなに喜んでもらえると、僕も会いに来たかいがあるってものだよ。ありがとう」
あのユーリに『ありがとう』って言われた! クリオネはぽーっとなった。
「会いにって? ボクらに会いに? わざわざ?」
リマキナにユーリはうなずいた。
「そうだよ。ジーニィに今日来る科学者に会ってくれって頼まれたからね」
「科学者?」
「って誰?」
まったくもう、とジーニィはクリオネとリマキナを見つめた。
「君たち! 君たちはバリアの研究をしている。それは俺たちの研究テーマと重なっている。だから一緒に研究したかったのさ」
「それは嬉しいけど。なんでオレたちが今日くるってわかったんだ?」
「簡単なことさ。リヒト先生に頼んだんだ」
「リヒト先生と知り合いなの?」
サウスとノースなのに、という顔の二人に、ユーリが説明する。
「クリオネ、リマキナ。『Y博士』って聞いたことがあるだろう? ジーニィとアンジュは彼の子供なんだよ。僕は昔からY博士に世話になっているんだけど、そのY博士とリヒト先生は昔からの友達なんだって。ノース、サウス関係なく、その世代の人たちはほとんど顔見知りらしい」
Y博士の世代は、第三次世界大戦を生き抜いた生き残りのことで、その時親を失ったのがユーリの世代、生き残りの子供がジーニィやクリオネの世代だ。
「ふーん。でも、オレたちがすぐ来るとはわからなかったはずだけど」
「クリオネく~ん。君のユーリ好きは前から知ってたんだよ。『アース』のパーティメンバー選びに名前検索してただろ?」
「って、まさか」
ジーニィはにやっと笑った。
「さて、ここで問題です! 俺は『アース』ではいったい誰だったでしょう?」
「誰って……『アース』では名前や性別は変更できない。うちのパーティにはいないんだから、知るわけないよ」
関係ないじゃん、とばかりのクリオネに、ジーニィがウィンクして両腕をバッテンした。
「ブ――。は・ず・れ。俺は『ユーリ』」
「えええ!?」
ジーニィを見つめながらリマキナも声を上げる。
「ジーニィがユーリ? じゃ、アニマはアンジュ?」
「ブブ――!」
「まさか……?」
クリオネがおそるおそるユーリを見上げる。
「僕です」
恥ずかしそうに答えたのは、ユーリその人だった。
「なんで……。なんであなたほどの人が、あんな女の子に?」
「女の子ってわがままも通るし、甘えられるでしょ? 一度なってみたかったんだよね」
「で、でも、『アース』での自分は、すべて現実の自分と同じパラメータになるはずなのに」
「抜け道があるんだよ。それは僕とジーニィでちょちょいと、ね」
目配せするユーリとジーニィに絶句するクリオネとリマキナ。
「…………」
(アニマがユーリだったっていうのもショックだけど、違法なことを悪びれなく話すユーリって)
「ダメよユーリ。クリオネががっかりしてるわ。もっと博士っぽく話さなくっちゃ」
三人が入ったドアとは別のドアから金髪少女が入ってきた。
「そうだったね、アンジュ。ごめんね、クリオネ。僕はここへ来ると安心してしまうんだ。それで、ちょっと、こう、地が出るっていうか」
(ちょっと?)
心の中でつっこむリマキナ。
「いいんです、そんなの!! あなたがユーリってだけで、オレはすごく幸せですから。ヂだろうがゲリだろうが、ぜんぜんかまいません!」
ユーリは不思議な笑みを浮かべた。
「僕にも普通に話してほしいな。ここにいる人はみんな大事な仲間だからね。歳とか、肩書きとか、気にしないでいい」
光栄です、とクリオネとリマキナはうなずいた。
「でも一人足りないんだよね。ジーニィ、マリアは?」
「もうすぐ来るよ。アンジュ?」
アンジュは手にした小さなモニターを見た。
「今、『光』に降りているところ。あと5分ってところね」
「ふうん。仕事に手間取ったのかな? マリアにしちゃめずらしいね」
「今のうちにパスを渡しましょうよ」
「そうだな。クリオネ、リマキナ、ここはどこだと思う?」
ジーニィの問いに、クリオネリマキナは部屋を見まわす。
窓がない研究室、壁や天井はしっかりしてそうだ。
「壁の中?」
「地下?」
「まぁ正解。昔の赤道の下にいるんだ」
「サウスとノースの境目ってこと?」
「そう。あの壁の地下にいるんだ。俺の父さんの世代が作ったらしい。地球をぐるっと一周研究施設があって、ここはその一部」
楽しそうに説明するジーニィをユーリが引き継ぐ。
「僕はサウス所属の人間だけど、研究には両方の知識がいる。普通に行き来しようとすると、僕でも毎回パスの申請が必要でめんど……大変なんだよ。それでここの一部を借りてる。ここに入るには特別なパスが必要なんだけど、一回登録すると後は手続きがいらない。ここから直接ノース・サウスどちらにも行けるんだ」
「さっきはゲートを開けておいたのさ。ユーリが2人用にしとけって言ってたから良かったけど、本来1人用だから、同時に入るのは危険なんだ。まだそこまで技術が追いついてない」
「そう言えば、『光』に乗ってるのと同じような感じがしたな」
クリオネの言葉にジーニィが口笛をならした。
「さすがだろ? ユーリ」
「ああ、ちょっと驚いた」
なにが? と、見つめるクリオネに、ジーニイとユーリは答える。
「『光』とゲートは同じ作りだってことさ」
「クリオネは『光』ってどういうモノだと思う?」
「ええっと……光のように速い乗り物?」
科学者の顔で質問を続けるユーリ。
「じゃ、ゲートは?」
「……わからない」
「素直だな~」
感心したようにジーニィがつぶやくと、ユーリが苦笑した。
「誰かさんとは大違いだ。種明かしするとね、どちらも瞬間移動装置なんだよ」
「ええ?」
「どちらも?」
予想通りの反応に、満足げにユーリは説明する。
「『光』はね、そうとはわからないように演出してるんだ。光るコンソール、やわらかい椅子。これらは地球人に対する配慮だよ。地球人は瞬間移動装置にはどうも抵抗があるみたいだからね」
「…………」
黙るクリオネとリマキナにジーニィが補足する。
「『光』も1人用だろ? まだ技術が追いついてないのさ。へたすると混ざる可能性がある」
「それって、オールドムーヴィ『フライ』みたく?」
怖そうに言うクリオネにユーリは笑う。
「そうそう。地球人はどうもそういう風に連想しちゃうんだよね」
「ユーリは宇宙人なの?」
「えらくストレートにきたね、リマキナ」
「だって言い方が」
(宇宙人だったらこんなにそばにいても大丈夫なの? 危険なんじゃ)
戦争を一瞬で平定した宇宙人の存在は、絶対的な力の持ち主として地球人に畏れられているのだ。
「残念ながら僕は地球人だよ。ただ、長い間宇宙人と暮らしていたんだ。僕は彼らが宇宙人とは知らなかったんだけどね」
「さらわれたの?」
「そうそう。宇宙船に連れて行かれてね、そこで足に金属片を」
「ユーリ!」
アンジュの怒った声に、クリオネとリマキナは今の話が嘘だとわかった。
「無駄なお話はそのあたりにして。パスを入力しましょ?」
「はいはいお姫様」
「クリオネ、リマキナ、耳管を」
2人はジーニィに近づく。ジーニィは大きなマシンにつながっているコードをアダマスにさした。
「なんで君はアダマスを耳管って言うの?」
「『アダマス』なんて呼ぶのムカツクだろ?」
にっと笑うジーニィ。
「まぁ、しないと思うけど、アダマスを交換したりしないようにね。保証できないから」
ユーリの説明にクリオネとリマキナは嫌そうな顔になった。
アダマスは耳に直接繋がっているので、耳を切り落とさない限り外すこともできない。
「そうそう。いくらそっくりだからって性別が違うんだし」
赤くなりながらリナキナがジーニィに聞く。
「知ってたの?」
「データとしてはもちろん知ってたさ。見てもすぐわかったけどね」
顔を見合わせるクリオネとリマキナ。
その様子は、服が同じこともあって、鏡を見ているようにそっくりだった。
「俺とアンジュはどうだ?」
「二人がどうし」
「……あ!」
頬を寄せ合うジーニィとアンジュも、まったく同じ顔だった。
「もしかして、雑誌アーンジュに出てるもう一人の天使って」
「俺だよーん」
「ウソだ――!」
絶叫するクリオネ。
「かわいいだろ? どっちがどっちかわからないくらい」
「…………」
雑誌と同じエンジェルスマイルに絶句するクリオネ。
呆然とするリマキナにアンジュが尋ねる。
「私たちが双子なの気づかなかった?」
「気づかなかった」
「俺は毎日自分とそっくりなアンジュを見てるからね。リマキナが女の子だってす~ぐ気づいたよ」
「はぁ。まいりました」
パスを入力し終えコードをアダマスから抜いた時、ドアが開いた。
「お待たせしちゃったかしら?」
現れたのは、栗色の波打つ髪をゆらすユーリくらいの女性だった。
「マリア」
アンジュが駆け寄り、なにか囁く。それにうなずくマリア。
「遅れてごめんなさい」
「彼女が最後の仲間、マリアだよ」
「はじめまして。よろしくね、クリオネ、リマキナ」
大きな瞳を細くしてにっこり笑う。
「……はじめまして」
「……よろしく」
ぼうっとマリアに見入るクリオネとリマキナ。
「なあに?」
「えっ」
「いえ……」
クリオネとリマキナは赤くなって囁き合う。
(ちょ、ちょっとアニキ。すごい美人だね)
(うん。アンジュといい……ノースって美人ばっか?)
落ち着いた雰囲気のマリアに、やっぱ大人の女ってこんなのが理想だよな、とリマキナは思う。
「あの……マリアさん」
「あら、マリアでけっこうよ、クリオネ」
「じゃ、マリア」
「なあに?」
「あなたはなにをしてるの? やっぱりユーリやジーニィと同じ研究を?」
うーん、と少し考えてマリア。
「正確には『違う』わね。私は別の仕事をしているの。それの手助けを科学者さん達に頼んでるのよ」
「仕事って?」
「その制服、情報部よね? じゃあ知ってるかしら? 『なんでも屋』の噂」
「ネットに存在するなんでも屋のこと?」
「仕事量多くて、噂の証言もばらばらで、団体か、個人かもわからない。わかっているのは『ブラウン・マリア』という名前だけの……って!」
「まさか!?」
「うふふ。私がその『ブラウン・マリア』なの」
「本当に存在してたんだ……」
「でも、情報によると、『ブラウン・マリア』は女性だったり、男性だったり、人種もばらばらだったはず。あなたは『ブラウン・マリア』という団体の一員なんですか?」
思わずリマキナは情報収集モードに入っていた。
「うふふ」
マリアは双子の視線に余裕の笑みを返す。
そこにジーニィが入った。
「まぁ、それはおいおいわかっていくさ。2人とも、またここに来てくれるだろ?」
「もちろんだよ」
「毎日でも来たいくらい」
「あはは。これで新メンバーも増えたことだし……どうする? お祝いでもする?」
みんなの顔を見るジーニィ。ユーリが口を開いた。
「マリア。君が遅れたのは何か理由があるんじゃないのかい?」
「そうよ! 急に仕事が入ったの。さっそくで悪いんだけどジーニィ、『人形』を一体作ってちょうだい」
「どんなの?」
「ここにくわしく書いてあるわ」
マリアは大きな鞄からファイルを取り出すとジーニィに渡した。
「どれどれ。あ、これ、地味なカップルの片割れ?」
「そうなの。彼氏の方からの依頼で、『もっと自分に合った彼女を紹介して欲しい』って」
「なにそれ?」
とがった声になったリマキナにクリオネも続く。
「どういうこと?」
「たぶん、つきあいが長すぎるんじゃないかな? このカップル、僕も知ってるんだけど、そろそろ7年目だったような」
上からファイルを見ながらユーリ。
「あら有名なのね。ジーニィには彼女そっくりの人形を、アンジュにはその中身をお願いするわ」
「まーかせて」
「わかったわ」
簡単に引き受けるジーニィとアンジュに、クリオネトリマキナは信じられない! と声を上げる。
「そっくりな人形作ってどうするの?」
「そんな男に作ることないよ!」
そんな2人にジーニィはふふんと鼻で笑った。
「まぁ見てなって」
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