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登場人物紹介
吹雪の国
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「殿下、ご無事ですか?」
幼い時分より、この人には敵った試しがない。
「ああ、大事ないよ。ありがとう。ミサルト君」
いつも私よりも先に殿下の傍に駆け寄って
いつも私の立ち位置を取ってしまう。
越権だと訴えても、国王陛下もお爺様もこの隣国の死神のいいなりだ。
「アカネリ、怪我はないかい?」
「大丈夫だよウッドラウル!」
慌てて返事をした瞬間、己の失態に気付き頭を下げる。
任務中にも関わらず、殿下を名前で呼んでしまった。
しかし、ウッドラウル殿下は気に留めないと優しく笑いかけて頭を撫でてくれる。
その大きな掌が暖かくて、つい目を閉じてしまう。
これは私だけの特別。
「あー!!ずるいですよ!アカネリ!!」
思わず耳を塞ぎたくなるほどの抗議の声を上げる少女が、ふわふわのコートを弾ませてこちらへ走ってくる。
「リリア…」
ウッドラウルとアカネリの間に割り込むように入ってきた少女は、崖よりも絶壁な胸を反らせ、二人を引き離す壁を作るかのように立ちはだかった。
「このリリアーネット・トゥレットがいる限り!ウッドラウル様に簡単に近づけると思わないで下さいませ!!」
巻き気味の髪を揺らして、リリアが仁王立ちで宣言したところで殿下が彼女を制止する。
「リリア、ここは町の中ではないのだから、大きな声を出すと魔物が寄ってくるかもしれない。気を付けておくれ」
「キャッ!ごめんなさぁ~い」
本当にわかっているのだろうか、などと心配するまでもない。
リリアは代々スノーファリア王家に仕える、教師の娘だ。
左のトゥレット家は知力を司り、右のセルアット家は王家の盾となり剣となる。
スノーファリアの双璧と呼ばれるトゥレット家のリリアは、町の外で木こりをするという、代々家に伝わる方法で武者修行をさせられているのだ。
幼い頃より修行に勤しんできた自分と同じく、自覚がないわけがない。
「おふざけはもう宜しいですか?生憎と俺は、幼馴染のピクニックに付き合わされているわけではないのですが?」
殿下の御前にも関わらず、この人は顔すらこちらに向けずに声だけで先を促すなんて不敬極まりない。
その上、私だけなら兎も角(腹立つことに変わりはないが)ウッドラウルやリリアの事まで遊び気分でふざけているような物言いにカチンときた。
流石に我慢ならなかったので一発殴ってやろうかとも思ったが
「アカネリ」
リリアがそっとアカネリに注意する。殿下の手前、隣国の軍人に下手なことはできない。
しかも国王陛下のお墨付きをもらっている人物になら尚更だ。
悔しいが、殿下が無礼を咎めようとしないのだから、ここで自分が口を出す行為こそ越権だろう。
幼い時分より、この人には敵った試しがない。
「ああ、大事ないよ。ありがとう。ミサルト君」
いつも私よりも先に殿下の傍に駆け寄って
いつも私の立ち位置を取ってしまう。
越権だと訴えても、国王陛下もお爺様もこの隣国の死神のいいなりだ。
「アカネリ、怪我はないかい?」
「大丈夫だよウッドラウル!」
慌てて返事をした瞬間、己の失態に気付き頭を下げる。
任務中にも関わらず、殿下を名前で呼んでしまった。
しかし、ウッドラウル殿下は気に留めないと優しく笑いかけて頭を撫でてくれる。
その大きな掌が暖かくて、つい目を閉じてしまう。
これは私だけの特別。
「あー!!ずるいですよ!アカネリ!!」
思わず耳を塞ぎたくなるほどの抗議の声を上げる少女が、ふわふわのコートを弾ませてこちらへ走ってくる。
「リリア…」
ウッドラウルとアカネリの間に割り込むように入ってきた少女は、崖よりも絶壁な胸を反らせ、二人を引き離す壁を作るかのように立ちはだかった。
「このリリアーネット・トゥレットがいる限り!ウッドラウル様に簡単に近づけると思わないで下さいませ!!」
巻き気味の髪を揺らして、リリアが仁王立ちで宣言したところで殿下が彼女を制止する。
「リリア、ここは町の中ではないのだから、大きな声を出すと魔物が寄ってくるかもしれない。気を付けておくれ」
「キャッ!ごめんなさぁ~い」
本当にわかっているのだろうか、などと心配するまでもない。
リリアは代々スノーファリア王家に仕える、教師の娘だ。
左のトゥレット家は知力を司り、右のセルアット家は王家の盾となり剣となる。
スノーファリアの双璧と呼ばれるトゥレット家のリリアは、町の外で木こりをするという、代々家に伝わる方法で武者修行をさせられているのだ。
幼い頃より修行に勤しんできた自分と同じく、自覚がないわけがない。
「おふざけはもう宜しいですか?生憎と俺は、幼馴染のピクニックに付き合わされているわけではないのですが?」
殿下の御前にも関わらず、この人は顔すらこちらに向けずに声だけで先を促すなんて不敬極まりない。
その上、私だけなら兎も角(腹立つことに変わりはないが)ウッドラウルやリリアの事まで遊び気分でふざけているような物言いにカチンときた。
流石に我慢ならなかったので一発殴ってやろうかとも思ったが
「アカネリ」
リリアがそっとアカネリに注意する。殿下の手前、隣国の軍人に下手なことはできない。
しかも国王陛下のお墨付きをもらっている人物になら尚更だ。
悔しいが、殿下が無礼を咎めようとしないのだから、ここで自分が口を出す行為こそ越権だろう。
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