1 / 80
前編
目覚めたら、誰?
しおりを挟む
「おめでとうございます。奥様はご懐妊されています」
起きたら白髪の知らないおじいちゃんにそう言われた。
……え、誰?
「ほ、本当か……?!嘘を言っているんじゃないだろうな?!」
優しそうなおじいちゃんに詰め寄ったのは、おとぎ話から抜け出てきた王子様そのまんまな金髪碧眼のイケメン。ワイシャツにシンプルなベストを着ている。
……え、こっちも誰?
「何故嘘をつく理由があるのですか?素直に喜んではいかがですかな?」
おじいちゃんが眉を寄せて、険しい顔付きでイケメンを見る。イケメンはその剣幕にたじろいだ様だったが、やや困惑した顔つきで私とおじいちゃんを見比べて断言した。
「だが!彼女と子供が出来るような心当たりは一度しかないんだぞ!!」
指名された私は、ベッドに横になったまま恐る恐る手を挙げる。
「あの~、すみません。ちょっと、いいですか?」
「なんだ?」
眉間に皺を寄せて威圧的に見てくるイケメン。顔が良いと迫力あるなあ、とどうでもいい事を考えながら、私はずっと思っていた疑問を口にした。
「あの、お二人共、どちら様ですかね?」
「……は?」
「奥様?」
ーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーー
白髪のおじいちゃんはお医者さんらしい。
名前はジギスムントさん。かっこいいけど、噛みそうな名前だ。
顔はしわくちゃだけれど、鼻筋は通っていて、若い頃はさぞかしイケメンだったんだろうなあって予想できる。
それでおとぎ話の王子様のような金髪碧眼のイケメンは、ローデリヒさん。
にこやかにしていたら絶対モテそうなのに、ずっと険しい顔つきで腕組みをしている。そんな姿も様になっているのだけれど。
何回かジギスムントさんとやり取りした結果、難しい顔で結論を出した。
「……記憶が、混濁されている可能性があります」
いや、全くそんな事ないんだけど……。
達川有紗(たつかわありさ)という自分の名前も、新川(にいかわ)女子高校二年生という身分もしっかり覚えている。
……ただ、私は全国チェーンのファストフード店で友達とお喋りしていた所を最後に、記憶がブッツリ途切れてしまっているんだ。
今時の女子高生らしく、隣のクラスの王子様系女子がかっこいいだの、誰と他校の人が付き合ってるだの、そんな恋愛話をしていた。残念ながら、私に浮いた話は一つもないんだけど。
そこまではハッキリ思い出せるのに、この状況もジギスムントさんとローデリヒさんの記憶は全くない。
むしろ本当に会ったことある?って感じ。だって、二人共西洋系の顔立ちだし、外国の人との関わりなんて今まで一切なかったんだもの。
内心ジギスムントさんの言葉を否定してみるけど、正直ここがどこだかもよく分かっていない。
そして、衝撃な事が一つ。
何故か達川有紗から、アリサ・セシリア・キルシュライトという名前に変わっていた。
……え、私いつの間に外国人って感じの名前にしたの?
黙って見ていたローデリヒさんが口を開いた。
「演技という可能性はないのか?」
「奥様は階段から落ちた際、頭を強く打っておられるのですよね?」
「そうだ。私の目の前で右の側頭部と上体から床に落下していた。侍女のゼルマも目撃している」
「でしたら、一時的に記憶が混濁されている可能性は充分にあります。処方出来る薬はありませんし、経過観察になるかと」
ローデリヒさんは顎に手をあてて考え込む。
考え込んでいたけれど、結論が出なかったのか深々と溜め息をついた。
「……そうか。だが、私は演技という可能性を捨てたわけではない。アリサ自身の受け答えがしっかりしているからな。ジギスムント、しっかり見極めろ」
「はい」
おじいちゃん先生に偉そうに言ったローデリヒさんは、今度は私を視界に映した。冷たい雰囲気を持つ彼に見られて、自然と背筋が伸びる。
「貴女も自分一人の身体ではないからな。気を付けろ」
なんか私にもすごく偉そうに言ってきたのだけれど、気圧されて頷いた。
キリッとキメて、ローデリヒさんは堂々と部屋から出て行った。すごいな、イケメンだから様になっている。
そして、ずっと私は疑問に思ってたんだけど……。
「ジギスムントさん。ここ、どこですか?」
この中世から近世のヨーロッパの貴族の宮殿みたいに豪華な部屋、一体どこなんだろうか?
「ここはローデリヒ様の所有するお屋敷ですぞ。キルシュライト王国首都キルシュのほぼ中央部に立地しております」
「へえ、キルシュライト王国。……全然知らないや。地理ちゃんと勉強しとけば良かったかも」
「はははは。キルシュライト王国は大陸でも五つ指に入る程の大国ですぞ。やはり少し記憶が混濁されている可能性がありますな」
…………おかしい。おかしくない?
さすがに大国五カ国位は覚えている。というか、その大国の基準ってなに?面積?人口?
記憶が混濁していると結論付けられちゃったんだけど、これってもしかして何を言っても記憶が云々って話になってしまうの?
「……っていうか、ここローデリヒさんのお家だったんですね」
家具とかがシックに纏めているのに、壁に掛かった絵画の額縁が金色だったり、そこまで華美でないシャンデリアがあったり、今寝てるベッドなんか天蓋付きだし……、これ、素人目から見ても分かる。絶対内装にお金かかってる。
ローデリヒさん、絶対金持ちだ……。イケメンなのにお金持ちって、多少愛想なくてもモテるわ……。
壁に掛かった絵画の価値は全く分からないけど。
「ローデリヒ様のお屋敷であると共に、奥様ーーアリサ様のお屋敷でもありますよ」
「え、私の?!なんで?!」
「それは勿論、ローデリヒ様とアリサ様はご夫婦でいらっしゃいますからな」
一瞬、部屋に沈黙が訪れた。
……え?夫婦?
……あの王子様っぽいイケメンと?
私、めちゃくちゃ平均的な日本人顔なんだけど、隣並んだら顔面偏差値違い過ぎない?
「……えっ、夫婦?」
「そうですよ」
にこにこと穏やかな笑みを浮かべるジギスムントさん。
どう見ても冗談を言っているような雰囲気ではない。……雰囲気ではないんだけど、私、いつの間に結婚してたの?
というか、夫婦なのに子供が出来る心当たり1回しかないって……。ローデリヒさんの態度を見ても、どうやら夫婦仲はそんなに良くないみたいだし。
でも離婚してないってことは、これって所謂仮面夫婦ってやつなのでは……?
「奥様が階段から転落されたのも、おそらく妊娠によるめまいかもしれませんね。悪い病気でもないので、記憶の方も経過観察になります」
「は、はあ……。あの本当に私、妊娠してるんですか?」
「ええ。お腹にハッキリと紋章が出ていますから」
「紋章?」
ワンピースタイプの寝巻きを着ていたので、襟元からお腹の方を覗いてみた。胸が邪魔して見えなかった。
昨日までまな板だったのに、巨乳になっている。
ちょっとテンションあがった。違う、問題はそこじゃない。
「妊娠すると約1ヶ月から2ヵ月くらいに下腹に紋章が浮かび上がってくるのです。紋章は母親側の家紋なんですよ」
「……へぇー。なんかすっごいファンタジー……」
「一般的ですよ」
え、紋章出てくるとか聞いたことない。
とりあえず、ジギスムントさん的には妊娠は確実らしい。
「とりあえずゼルマを呼びましょうか。女性同士の方が話しやすいこともありますからな」
よっこいしょ、と声を出し、何やら重そうなトランクケースを持ったジギスムントさんは扉を開けて出て行く。
その扉も細かい模様が彫られているらしくて、見るからに高そう。
目が覚めたら、結婚してて、しかも妊婦になってたって展開が急すぎる。
私、一応結婚できる歳だけど、まだ高校生。まだまだ恋愛すらしてないし、結婚だって実感が湧かない。
ファーストキスすらまだなはずなのに、いきなり妊娠。
ねえ、こんなの無理だよ。
子供産むって、出来るわけないじゃん。
起きたら白髪の知らないおじいちゃんにそう言われた。
……え、誰?
「ほ、本当か……?!嘘を言っているんじゃないだろうな?!」
優しそうなおじいちゃんに詰め寄ったのは、おとぎ話から抜け出てきた王子様そのまんまな金髪碧眼のイケメン。ワイシャツにシンプルなベストを着ている。
……え、こっちも誰?
「何故嘘をつく理由があるのですか?素直に喜んではいかがですかな?」
おじいちゃんが眉を寄せて、険しい顔付きでイケメンを見る。イケメンはその剣幕にたじろいだ様だったが、やや困惑した顔つきで私とおじいちゃんを見比べて断言した。
「だが!彼女と子供が出来るような心当たりは一度しかないんだぞ!!」
指名された私は、ベッドに横になったまま恐る恐る手を挙げる。
「あの~、すみません。ちょっと、いいですか?」
「なんだ?」
眉間に皺を寄せて威圧的に見てくるイケメン。顔が良いと迫力あるなあ、とどうでもいい事を考えながら、私はずっと思っていた疑問を口にした。
「あの、お二人共、どちら様ですかね?」
「……は?」
「奥様?」
ーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーー
白髪のおじいちゃんはお医者さんらしい。
名前はジギスムントさん。かっこいいけど、噛みそうな名前だ。
顔はしわくちゃだけれど、鼻筋は通っていて、若い頃はさぞかしイケメンだったんだろうなあって予想できる。
それでおとぎ話の王子様のような金髪碧眼のイケメンは、ローデリヒさん。
にこやかにしていたら絶対モテそうなのに、ずっと険しい顔つきで腕組みをしている。そんな姿も様になっているのだけれど。
何回かジギスムントさんとやり取りした結果、難しい顔で結論を出した。
「……記憶が、混濁されている可能性があります」
いや、全くそんな事ないんだけど……。
達川有紗(たつかわありさ)という自分の名前も、新川(にいかわ)女子高校二年生という身分もしっかり覚えている。
……ただ、私は全国チェーンのファストフード店で友達とお喋りしていた所を最後に、記憶がブッツリ途切れてしまっているんだ。
今時の女子高生らしく、隣のクラスの王子様系女子がかっこいいだの、誰と他校の人が付き合ってるだの、そんな恋愛話をしていた。残念ながら、私に浮いた話は一つもないんだけど。
そこまではハッキリ思い出せるのに、この状況もジギスムントさんとローデリヒさんの記憶は全くない。
むしろ本当に会ったことある?って感じ。だって、二人共西洋系の顔立ちだし、外国の人との関わりなんて今まで一切なかったんだもの。
内心ジギスムントさんの言葉を否定してみるけど、正直ここがどこだかもよく分かっていない。
そして、衝撃な事が一つ。
何故か達川有紗から、アリサ・セシリア・キルシュライトという名前に変わっていた。
……え、私いつの間に外国人って感じの名前にしたの?
黙って見ていたローデリヒさんが口を開いた。
「演技という可能性はないのか?」
「奥様は階段から落ちた際、頭を強く打っておられるのですよね?」
「そうだ。私の目の前で右の側頭部と上体から床に落下していた。侍女のゼルマも目撃している」
「でしたら、一時的に記憶が混濁されている可能性は充分にあります。処方出来る薬はありませんし、経過観察になるかと」
ローデリヒさんは顎に手をあてて考え込む。
考え込んでいたけれど、結論が出なかったのか深々と溜め息をついた。
「……そうか。だが、私は演技という可能性を捨てたわけではない。アリサ自身の受け答えがしっかりしているからな。ジギスムント、しっかり見極めろ」
「はい」
おじいちゃん先生に偉そうに言ったローデリヒさんは、今度は私を視界に映した。冷たい雰囲気を持つ彼に見られて、自然と背筋が伸びる。
「貴女も自分一人の身体ではないからな。気を付けろ」
なんか私にもすごく偉そうに言ってきたのだけれど、気圧されて頷いた。
キリッとキメて、ローデリヒさんは堂々と部屋から出て行った。すごいな、イケメンだから様になっている。
そして、ずっと私は疑問に思ってたんだけど……。
「ジギスムントさん。ここ、どこですか?」
この中世から近世のヨーロッパの貴族の宮殿みたいに豪華な部屋、一体どこなんだろうか?
「ここはローデリヒ様の所有するお屋敷ですぞ。キルシュライト王国首都キルシュのほぼ中央部に立地しております」
「へえ、キルシュライト王国。……全然知らないや。地理ちゃんと勉強しとけば良かったかも」
「はははは。キルシュライト王国は大陸でも五つ指に入る程の大国ですぞ。やはり少し記憶が混濁されている可能性がありますな」
…………おかしい。おかしくない?
さすがに大国五カ国位は覚えている。というか、その大国の基準ってなに?面積?人口?
記憶が混濁していると結論付けられちゃったんだけど、これってもしかして何を言っても記憶が云々って話になってしまうの?
「……っていうか、ここローデリヒさんのお家だったんですね」
家具とかがシックに纏めているのに、壁に掛かった絵画の額縁が金色だったり、そこまで華美でないシャンデリアがあったり、今寝てるベッドなんか天蓋付きだし……、これ、素人目から見ても分かる。絶対内装にお金かかってる。
ローデリヒさん、絶対金持ちだ……。イケメンなのにお金持ちって、多少愛想なくてもモテるわ……。
壁に掛かった絵画の価値は全く分からないけど。
「ローデリヒ様のお屋敷であると共に、奥様ーーアリサ様のお屋敷でもありますよ」
「え、私の?!なんで?!」
「それは勿論、ローデリヒ様とアリサ様はご夫婦でいらっしゃいますからな」
一瞬、部屋に沈黙が訪れた。
……え?夫婦?
……あの王子様っぽいイケメンと?
私、めちゃくちゃ平均的な日本人顔なんだけど、隣並んだら顔面偏差値違い過ぎない?
「……えっ、夫婦?」
「そうですよ」
にこにこと穏やかな笑みを浮かべるジギスムントさん。
どう見ても冗談を言っているような雰囲気ではない。……雰囲気ではないんだけど、私、いつの間に結婚してたの?
というか、夫婦なのに子供が出来る心当たり1回しかないって……。ローデリヒさんの態度を見ても、どうやら夫婦仲はそんなに良くないみたいだし。
でも離婚してないってことは、これって所謂仮面夫婦ってやつなのでは……?
「奥様が階段から転落されたのも、おそらく妊娠によるめまいかもしれませんね。悪い病気でもないので、記憶の方も経過観察になります」
「は、はあ……。あの本当に私、妊娠してるんですか?」
「ええ。お腹にハッキリと紋章が出ていますから」
「紋章?」
ワンピースタイプの寝巻きを着ていたので、襟元からお腹の方を覗いてみた。胸が邪魔して見えなかった。
昨日までまな板だったのに、巨乳になっている。
ちょっとテンションあがった。違う、問題はそこじゃない。
「妊娠すると約1ヶ月から2ヵ月くらいに下腹に紋章が浮かび上がってくるのです。紋章は母親側の家紋なんですよ」
「……へぇー。なんかすっごいファンタジー……」
「一般的ですよ」
え、紋章出てくるとか聞いたことない。
とりあえず、ジギスムントさん的には妊娠は確実らしい。
「とりあえずゼルマを呼びましょうか。女性同士の方が話しやすいこともありますからな」
よっこいしょ、と声を出し、何やら重そうなトランクケースを持ったジギスムントさんは扉を開けて出て行く。
その扉も細かい模様が彫られているらしくて、見るからに高そう。
目が覚めたら、結婚してて、しかも妊婦になってたって展開が急すぎる。
私、一応結婚できる歳だけど、まだ高校生。まだまだ恋愛すらしてないし、結婚だって実感が湧かない。
ファーストキスすらまだなはずなのに、いきなり妊娠。
ねえ、こんなの無理だよ。
子供産むって、出来るわけないじゃん。
87
お気に入りに追加
3,801
あなたにおすすめの小説
結婚しても別居して私は楽しくくらしたいので、どうぞ好きな女性を作ってください
シンさん
ファンタジー
サナス伯爵の娘、ニーナは隣国のアルデーテ王国の王太子との婚約が決まる。
国に行ったはいいけど、王都から程遠い別邸に放置され、1度も会いに来る事はない。
溺愛する女性がいるとの噂も!
それって最高!好きでもない男の子供をつくらなくていいかもしれないし。
それに私は、最初から別居して楽しく暮らしたかったんだから!
そんな別居願望たっぷりの伯爵令嬢と王子の恋愛ストーリー
最後まで書きあがっていますので、随時更新します。
表紙はエブリスタでBeeさんに描いて頂きました!綺麗なイラストが沢山ございます。リンク貼らせていただきました。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。

「君を愛するつもりはない」と言ったら、泣いて喜ばれた
菱田もな
恋愛
完璧令嬢と名高い公爵家の一人娘シャーロットとの婚約が決まった第二皇子オズワルド。しかし、これは政略結婚で、婚約にもシャーロット自身にも全く興味がない。初めての顔合わせの場で「悪いが、君を愛するつもりはない」とはっきり告げたオズワルドに、シャーロットはなぜか歓喜の涙を浮かべて…?
※他サイトでも掲載中しております。

【完結】王太子殿下が幼馴染を溺愛するので、あえて応援することにしました。
かとるり
恋愛
王太子のオースティンが愛するのは婚約者のティファニーではなく、幼馴染のリアンだった。
ティファニーは何度も傷つき、一つの結論に達する。
二人が結ばれるよう、あえて応援する、と。
どうも、死んだはずの悪役令嬢です。
西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。
皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。
アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。
「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」
こっそり呟いた瞬間、
《願いを聞き届けてあげるよ!》
何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。
「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」
義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。
今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで…
ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。
はたしてアシュレイは元に戻れるのか?
剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。
ざまあが書きたかった。それだけです。
拝啓、愛しの侯爵様~行き遅れ令嬢ですが、運命の人は案外近くにいたようです~
藤原ライラ
ファンタジー
心を奪われた手紙の先には、運命の人が待っていた――
子爵令嬢のキャロラインは、両親を早くに亡くし、年の離れた弟の面倒を見ているうちにすっかり婚期を逃しつつあった。夜会でも誰からも相手にされない彼女は、新しい出会いを求めて文通を始めることに。届いた美しい字で洗練された内容の手紙に、相手はきっとうんと年上の素敵なおじ様のはずだとキャロラインは予想する。
彼とのやり取りにときめく毎日だがそれに難癖をつける者がいた。幼馴染で侯爵家の嫡男、クリストファーである。
「理想の相手なんかに巡り合えるわけないだろう。現実を見た方がいい」
四つ年下の彼はいつも辛辣で彼女には冷たい。
そんな時キャロラインは、夜会で想像した文通相手とそっくりな人物に出会ってしまう……。
文通相手の正体は一体誰なのか。そしてキャロラインの恋の行方は!?
じれじれ両片思いです。
※他サイトでも掲載しています。
イラスト:ひろ様(https://xfolio.jp/portfolio/hiro_foxtail)
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる