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〜閻魔大王様の冒険の始まり〜
3和 地獄の閻魔様に仲間が増えました!
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意識を手放しているレナートを連れてギルドに着いてから預けた後に哭鵺の視界が揺れる。
「あー…………久しぶりだったからな」
目元を右手で隠しながら立ち止まり、首を横に振ってため息をつきながら深呼吸をする。
「哭鵺様、大丈夫ですか?」
心配そうにアルビフローラが問いかけると、大丈夫だと言って泊まる宿屋へと向かうことにした。
夜のせいもあって真っ黒な哭鵺が街に呑まれるような感覚がするアルビフローラは彼の腕を絡めるように掴まった。
そんな心配そうにする彼女の頭を撫でながら歩き、宿に着く。
「……話、聞いて、る……だ……」
「哭鵺様!?」
宿屋の店主に話をしようとする哭鵺は言葉途切れ、舌打ちをして倒れかける。
アルビフローラの169.5cmと哭鵺の184.5cmでその身長差は15cmもあるものの、彼の体重は驚くぐらい体重が軽く、急に意識がなくなってパニックになってしまったのもあってか支えるのでていいっぱいのアルビフローラだった。
驚いた店主も手伝おうと手を伸ばそうとした時に兜を被ったままで鎧も着ている騎士が哭鵺を軽々と横向きに抱き抱える。
「彼の部屋は?」
「こ、こちらです……」
騎士が冷静に言えば、店主は困惑しながらも案内してアルビフローラは申し訳なさそうにしていた。
部屋に着くと小さく寝息を立てて寝ている哭鵺をベッドに寝かせる。
「あ、あの!ありがとうございます!」
「お礼はいいよ。困っている人をそのままにしておけないだけだから」
お礼を言うアルビフローラに対して騎士の声は優しいが兜を外すことはしなかった騎士はその場を立ち去ろうと扉に手をかける。
「お名前だけでも!」
「また会うよ、きっとね」
振り向かず騎士は扉を開けて出ていった。
***
目を覚ました哭鵺は自分が倒れたことを思い出して起き上がるが、アルビフローラも先程の店主もおらず自分が倒れたであろう宿屋でもなく、真っ暗な場所で立ち上がっては首を傾げた。
「夢の中か……?」
「あったり~!」
哭鵺の隣に肩上の長めの少し癖のある青い髪、そして見覚えのある青い瞳の男とも女ともとれる人物が笑って指を鳴らせば、真っ暗な場所から明るくなってはカフェテリアのような空間になる。
「ほら、座って座って」
促されるままに座る様子の哭鵺を楽しそうに見ていた。
「で、俺に何の用だ。お前は……」
「オレはサキュバスみたいなもんだよ。割と特別性のあるタイプの」
「何が言いたい?」
「つまりは、君と契約したいんだ」
不機嫌そうな哭鵺に対して笑みを浮かべたまま青い人物は彼の目の前の席に座りながら答えると彼は深くため息をついて空中で何かを摘まむような動作をして彼が掴んだのはペンだった。
「んで、要求は?」
「意外だな。まぁ、オレはお前の身体を借りたい」
いつの間にか取り出した紙に書こうとする手を止め、怪訝そうな表情をした哭鵺に首を傾げる。
「耐えられるか?」
「それはどういうことだ?」
「いや、俺の身体ってこれでも1か月くらいは寝てないから……」
当たり前のような反応の哭鵺はあり得ないと言いたげの表情を浮かべる相手に対して不思議そうにしていた。
「普通死ぬだろ、それ」
「まぁ、俺はこれでも悪魔のハーフだし……えっと、お前の名前は?」
「マジで言ってんのかよお前……そうだな……サファイアって呼んでくれていいんだぜ?」
悪魔と聞いて驚きながらも名前を聞かれてから、にやりと笑いながらそう言えば哭鵺は少し考える仕草をしてから思い出したように彼は紙に書き始めた様子につまらなさそうにする。
「蒼玉な」
紙に自分の名前と蒼玉を書いていたが、手が止まる哭鵺を見てサファイアは不思議そうにした。
「どうしたんだ?」
「いや、試しに借りてみるか?」
平然とお試しで身体を貸そうとする彼に困惑の表情を浮かべながら悩み始める。
それもそうだろう。サファイア自身が言い出したこともあったが、人の身体を借りないと動けない状態なのだろう。
「そんな、平然と……普通は嫌がるもんじゃねぇの?」
「でもその間、俺は休めるんだろう?」
「休めるって休みたいのか?」
「いや?別に休まなくても死にはしないから起きて動いてるだけだが?」
今までも身体を借りることをこうやって会話をしていたのだろう。
レナートも嫌がっても無理矢理借りたこともあったのかサファイアは困惑をしながら嫌がる様子のない哭鵺に悪魔のハーフにしても流石に寝ないのはよろしくないと首を横に振る。
「それはさすがに寿命が縮むだろお前」
「寿命なんてあってないようなもんだろ。これでも俺は不老不死なんだよ」
だからってそこまでして寝ない理由になるのかと思うような哭鵺の言葉に対して引き気味になりつつサファイアはため息をついて身体を借りることはやめると言い出す。
そんなサファイアに何故自分の身体を借りることをやめるのかと不思議そうに首を傾げる彼を見て立ち上がって近づく。
「性別不明だからこそ、男にも女にもなれんの知ってるか?」
ふいにそんなことを言いながら近づくものだから何故唐突にそんなことを言い始めたのだろうと首を傾げる哭鵺の額にでこピンを食らわせた。
頭上に複数の疑問符を浮かべる彼に対してサファイアはそういう人だからこそ無茶をしやすいんだろうと思うと呆れて何も言えない。
「……純粋にお前の心配をし始めちゃったんだよな。なんでかはわからねぇけど」
けれど、サファイアは困惑してい自分の気持ちを素直に言えば哭鵺は苦笑いを浮かべた様子から他の人にも心配をかけていたのだろうと理解する。
「よく言われるよ、元の世界でも弟に毎回怒られるくらいにはな」
「弟いんのか……そういえば、この本に見覚えは?」
頷いてから双子であることも言えば、サファイアはため息をつきながら何かを考えるような仕草をし、思い出したように哭鵺の前に本を置くと彼の表情が変わる。
どうやらその本が何かを知っているようで何か言いたげにサファイアの方を見てこの本をどこで手に入れたのかを言いたげにしていた。
「拾ったんだよ、遺跡でな」
話によると遺跡、この世界で一番古い歴史を持っているらしいがその遺跡には強力な魔力が閉じ込められている水晶が存在していたが誰かが持ち去って今はないらしい。
水晶の置いてあった場所の前に本があったのを拾って読んでは見たが数字、漢字、ひらがなのでたらめな文字の羅列がずっと並んでいただけだったとのこと。
「これ、俺が元の世界にいた時に探していたものだ」
本を開いて内容を確認するように軽く捲っている様子からして大切な本なのだろう。
「何が書いてあるんだ?」
サファイアが聞くと哭鵺は首を横に振って、特には何もと答えられたがその表情はそんなことはないだろうと思うように深刻そうだった。
「そうかい」
「……あのさ、この本を見つけたら俺の所に必ず持ってきてくれねぇ?」
申し訳なさそうに哭鵺が息をのんでから聞いてくる様子に何かあるのだろうと察したようにサファイアはため息をつきながらどうしようか悩み始めた。
「俺のパーティーに入って俺の身体を好きにしても構わないから、持ってきてくれ……」
「……じゃあ、お前と結婚する」
「は?」
にっこり笑うサファイアに目を丸くする哭鵺は既婚者なのだから結婚なんてできるわけがないと首を横に振るが、魔物やモンスターと同等の扱いであるから浮気にならないだのと言っていたがそれだけは哭鵺は許せなかったらしく、結婚の話だけは首を横に振る。
「でも、お前の身体を好きにしていいんだろ?」
明らかに悪い顔をしながらにっこり笑うサファイアに対して哭鵺は目を逸らす様子からして自分が言ってはいけないことを言ってしまったのではないかと顔を青ざめていた。
「さすがに、不倫まがいというか不倫はよくねぇし……もとよりお前は人の身体を探してたんだろ?だったら――」
「だが、さっきオレはお前の身体を借りることをやめたんだから観念しろよ」
いつの間にか哭鵺の右手の薬指にカイヤナイトの指輪が付けられていて、左手の薬指じゃないだけマシかと安堵したと同時に先ほどまで離れていたはずのサファイアの距離が近く、何かの危機を感じて離れようとするがホールドされてしまい動けない。
何が起きているのか何をされているのか理解できないままの哭鵺の顎を人差し指で上げたサファイアの青い瞳に吸い寄せられるように2人の唇が重なった。
***
「っ!?」
慌てて起き上がると白いカーテンが揺れてまぶしいほどの太陽の光、優しく真っ黒な髪を撫でるような優しい風が部屋を通り抜ける。
夢から覚めたのだとわかると深く息を吐くようにため息をつくとノックをする音が聞こえ、扉の方に目を向けるとアルビフローラが入ってくる。
「哭鵺様、お目覚めになられましたか?」
「あ、あぁ……」
自分は今、どういう表情をしているのだろうなんて思っていたのだろう。
慌てるように右手で口元を隠した哭鵺に首を傾げてアルビフローラが心配そうに顔を覗き込んだ。
「まだ、体調すぐれませんか?顔が赤いですが……」
顔が赤いことを指摘されると視線を逸らしながら彼女と目を合わせないようにする。
「だ、大丈夫だ……ただ、夢見が……悪かっただけだ……」
「ふふっ、哭鵺様の可愛い一面が見られましたね。けれど、閻魔大王様なのですから嘘はよくないと思います」
嬉しそうにアルビフローラが言えばそれはそうなんだが、言いよどんで見た夢を思い出さないようにしようとする前に眼鏡を取ろうと棚の上に手を伸ばす。
眼鏡のそばには夢で見た本があり、哭鵺は手に取ると夢で見たのとまったく同じものだった。
「あれ?その本は昨日まではなかったのですが……」
「……もしかして、そんなに時間経ってないのか?」
「え?あ、はい。哭鵺様が倒れたのは昨日の出来事ですので……」
きょとんとしてアルビフローラが言うと哭鵺は夢だからそんなに時間はかからなかったのかと本を触りながら思っていた。
ため息をつきながら軽く本を立てて上に投げるように上げると本は消えていった。
「仲間が一人増えたぞ」
諦めたようにアルビフローラに言った彼の右手の薬指にあるカイヤナイトの指輪が太陽に照らされて小さく輝いた。
「あー…………久しぶりだったからな」
目元を右手で隠しながら立ち止まり、首を横に振ってため息をつきながら深呼吸をする。
「哭鵺様、大丈夫ですか?」
心配そうにアルビフローラが問いかけると、大丈夫だと言って泊まる宿屋へと向かうことにした。
夜のせいもあって真っ黒な哭鵺が街に呑まれるような感覚がするアルビフローラは彼の腕を絡めるように掴まった。
そんな心配そうにする彼女の頭を撫でながら歩き、宿に着く。
「……話、聞いて、る……だ……」
「哭鵺様!?」
宿屋の店主に話をしようとする哭鵺は言葉途切れ、舌打ちをして倒れかける。
アルビフローラの169.5cmと哭鵺の184.5cmでその身長差は15cmもあるものの、彼の体重は驚くぐらい体重が軽く、急に意識がなくなってパニックになってしまったのもあってか支えるのでていいっぱいのアルビフローラだった。
驚いた店主も手伝おうと手を伸ばそうとした時に兜を被ったままで鎧も着ている騎士が哭鵺を軽々と横向きに抱き抱える。
「彼の部屋は?」
「こ、こちらです……」
騎士が冷静に言えば、店主は困惑しながらも案内してアルビフローラは申し訳なさそうにしていた。
部屋に着くと小さく寝息を立てて寝ている哭鵺をベッドに寝かせる。
「あ、あの!ありがとうございます!」
「お礼はいいよ。困っている人をそのままにしておけないだけだから」
お礼を言うアルビフローラに対して騎士の声は優しいが兜を外すことはしなかった騎士はその場を立ち去ろうと扉に手をかける。
「お名前だけでも!」
「また会うよ、きっとね」
振り向かず騎士は扉を開けて出ていった。
***
目を覚ました哭鵺は自分が倒れたことを思い出して起き上がるが、アルビフローラも先程の店主もおらず自分が倒れたであろう宿屋でもなく、真っ暗な場所で立ち上がっては首を傾げた。
「夢の中か……?」
「あったり~!」
哭鵺の隣に肩上の長めの少し癖のある青い髪、そして見覚えのある青い瞳の男とも女ともとれる人物が笑って指を鳴らせば、真っ暗な場所から明るくなってはカフェテリアのような空間になる。
「ほら、座って座って」
促されるままに座る様子の哭鵺を楽しそうに見ていた。
「で、俺に何の用だ。お前は……」
「オレはサキュバスみたいなもんだよ。割と特別性のあるタイプの」
「何が言いたい?」
「つまりは、君と契約したいんだ」
不機嫌そうな哭鵺に対して笑みを浮かべたまま青い人物は彼の目の前の席に座りながら答えると彼は深くため息をついて空中で何かを摘まむような動作をして彼が掴んだのはペンだった。
「んで、要求は?」
「意外だな。まぁ、オレはお前の身体を借りたい」
いつの間にか取り出した紙に書こうとする手を止め、怪訝そうな表情をした哭鵺に首を傾げる。
「耐えられるか?」
「それはどういうことだ?」
「いや、俺の身体ってこれでも1か月くらいは寝てないから……」
当たり前のような反応の哭鵺はあり得ないと言いたげの表情を浮かべる相手に対して不思議そうにしていた。
「普通死ぬだろ、それ」
「まぁ、俺はこれでも悪魔のハーフだし……えっと、お前の名前は?」
「マジで言ってんのかよお前……そうだな……サファイアって呼んでくれていいんだぜ?」
悪魔と聞いて驚きながらも名前を聞かれてから、にやりと笑いながらそう言えば哭鵺は少し考える仕草をしてから思い出したように彼は紙に書き始めた様子につまらなさそうにする。
「蒼玉な」
紙に自分の名前と蒼玉を書いていたが、手が止まる哭鵺を見てサファイアは不思議そうにした。
「どうしたんだ?」
「いや、試しに借りてみるか?」
平然とお試しで身体を貸そうとする彼に困惑の表情を浮かべながら悩み始める。
それもそうだろう。サファイア自身が言い出したこともあったが、人の身体を借りないと動けない状態なのだろう。
「そんな、平然と……普通は嫌がるもんじゃねぇの?」
「でもその間、俺は休めるんだろう?」
「休めるって休みたいのか?」
「いや?別に休まなくても死にはしないから起きて動いてるだけだが?」
今までも身体を借りることをこうやって会話をしていたのだろう。
レナートも嫌がっても無理矢理借りたこともあったのかサファイアは困惑をしながら嫌がる様子のない哭鵺に悪魔のハーフにしても流石に寝ないのはよろしくないと首を横に振る。
「それはさすがに寿命が縮むだろお前」
「寿命なんてあってないようなもんだろ。これでも俺は不老不死なんだよ」
だからってそこまでして寝ない理由になるのかと思うような哭鵺の言葉に対して引き気味になりつつサファイアはため息をついて身体を借りることはやめると言い出す。
そんなサファイアに何故自分の身体を借りることをやめるのかと不思議そうに首を傾げる彼を見て立ち上がって近づく。
「性別不明だからこそ、男にも女にもなれんの知ってるか?」
ふいにそんなことを言いながら近づくものだから何故唐突にそんなことを言い始めたのだろうと首を傾げる哭鵺の額にでこピンを食らわせた。
頭上に複数の疑問符を浮かべる彼に対してサファイアはそういう人だからこそ無茶をしやすいんだろうと思うと呆れて何も言えない。
「……純粋にお前の心配をし始めちゃったんだよな。なんでかはわからねぇけど」
けれど、サファイアは困惑してい自分の気持ちを素直に言えば哭鵺は苦笑いを浮かべた様子から他の人にも心配をかけていたのだろうと理解する。
「よく言われるよ、元の世界でも弟に毎回怒られるくらいにはな」
「弟いんのか……そういえば、この本に見覚えは?」
頷いてから双子であることも言えば、サファイアはため息をつきながら何かを考えるような仕草をし、思い出したように哭鵺の前に本を置くと彼の表情が変わる。
どうやらその本が何かを知っているようで何か言いたげにサファイアの方を見てこの本をどこで手に入れたのかを言いたげにしていた。
「拾ったんだよ、遺跡でな」
話によると遺跡、この世界で一番古い歴史を持っているらしいがその遺跡には強力な魔力が閉じ込められている水晶が存在していたが誰かが持ち去って今はないらしい。
水晶の置いてあった場所の前に本があったのを拾って読んでは見たが数字、漢字、ひらがなのでたらめな文字の羅列がずっと並んでいただけだったとのこと。
「これ、俺が元の世界にいた時に探していたものだ」
本を開いて内容を確認するように軽く捲っている様子からして大切な本なのだろう。
「何が書いてあるんだ?」
サファイアが聞くと哭鵺は首を横に振って、特には何もと答えられたがその表情はそんなことはないだろうと思うように深刻そうだった。
「そうかい」
「……あのさ、この本を見つけたら俺の所に必ず持ってきてくれねぇ?」
申し訳なさそうに哭鵺が息をのんでから聞いてくる様子に何かあるのだろうと察したようにサファイアはため息をつきながらどうしようか悩み始めた。
「俺のパーティーに入って俺の身体を好きにしても構わないから、持ってきてくれ……」
「……じゃあ、お前と結婚する」
「は?」
にっこり笑うサファイアに目を丸くする哭鵺は既婚者なのだから結婚なんてできるわけがないと首を横に振るが、魔物やモンスターと同等の扱いであるから浮気にならないだのと言っていたがそれだけは哭鵺は許せなかったらしく、結婚の話だけは首を横に振る。
「でも、お前の身体を好きにしていいんだろ?」
明らかに悪い顔をしながらにっこり笑うサファイアに対して哭鵺は目を逸らす様子からして自分が言ってはいけないことを言ってしまったのではないかと顔を青ざめていた。
「さすがに、不倫まがいというか不倫はよくねぇし……もとよりお前は人の身体を探してたんだろ?だったら――」
「だが、さっきオレはお前の身体を借りることをやめたんだから観念しろよ」
いつの間にか哭鵺の右手の薬指にカイヤナイトの指輪が付けられていて、左手の薬指じゃないだけマシかと安堵したと同時に先ほどまで離れていたはずのサファイアの距離が近く、何かの危機を感じて離れようとするがホールドされてしまい動けない。
何が起きているのか何をされているのか理解できないままの哭鵺の顎を人差し指で上げたサファイアの青い瞳に吸い寄せられるように2人の唇が重なった。
***
「っ!?」
慌てて起き上がると白いカーテンが揺れてまぶしいほどの太陽の光、優しく真っ黒な髪を撫でるような優しい風が部屋を通り抜ける。
夢から覚めたのだとわかると深く息を吐くようにため息をつくとノックをする音が聞こえ、扉の方に目を向けるとアルビフローラが入ってくる。
「哭鵺様、お目覚めになられましたか?」
「あ、あぁ……」
自分は今、どういう表情をしているのだろうなんて思っていたのだろう。
慌てるように右手で口元を隠した哭鵺に首を傾げてアルビフローラが心配そうに顔を覗き込んだ。
「まだ、体調すぐれませんか?顔が赤いですが……」
顔が赤いことを指摘されると視線を逸らしながら彼女と目を合わせないようにする。
「だ、大丈夫だ……ただ、夢見が……悪かっただけだ……」
「ふふっ、哭鵺様の可愛い一面が見られましたね。けれど、閻魔大王様なのですから嘘はよくないと思います」
嬉しそうにアルビフローラが言えばそれはそうなんだが、言いよどんで見た夢を思い出さないようにしようとする前に眼鏡を取ろうと棚の上に手を伸ばす。
眼鏡のそばには夢で見た本があり、哭鵺は手に取ると夢で見たのとまったく同じものだった。
「あれ?その本は昨日まではなかったのですが……」
「……もしかして、そんなに時間経ってないのか?」
「え?あ、はい。哭鵺様が倒れたのは昨日の出来事ですので……」
きょとんとしてアルビフローラが言うと哭鵺は夢だからそんなに時間はかからなかったのかと本を触りながら思っていた。
ため息をつきながら軽く本を立てて上に投げるように上げると本は消えていった。
「仲間が一人増えたぞ」
諦めたようにアルビフローラに言った彼の右手の薬指にあるカイヤナイトの指輪が太陽に照らされて小さく輝いた。
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