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〜閻魔大王様の冒険の始まり〜
地獄の閻魔様が異世界へ?
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俺は普通に当たり前に仕事をしていただけだった。
なのに、どうして……。
「こんなことになってんだよ……」
ショート髪だが少し長いはねっ毛がある黒髪、目が悪いのか細い黒ぶち眼鏡に黒い瞳、黒を基調とした赤い帯の和服姿で草履を履いて道端の人に邪魔にならないところで壁によりかかって頭を抱える男が一人いた。
彼の名は閻魔哭鵺。
街並みを見渡せば歩く人々の中にエルフや狼など様々な種族が歩いていた。
「まさか、異世界に飛ばされるとは……」
街中には馬車も走っているのを見送りながら、自分がいる場所は異世界と認識するには十分だった。
彼は地獄の閻魔大王、死後の世界である地獄の住民であった。
哭鵺がなぜ地獄ではないところに来たのかは数分前に遡る。
「哭鵺くん、お休みしないの?」
ウェーブがかかった赤い髪、緋色の瞳にスタイル抜群の豊満な胸を強調した白い肩紐ワンピースを着た女性が哭鵺に話しかける。
「架凛、お前がサボるたびに俺の休みは減るんだよ。 仮にもお前、此処の女王様だろ?」
巻物を手に取って内容を読みながら質問に答える。
「だって、父の仕事なんて飽きてしまうわ。 現世にはとっても楽しいことがいっぱいあるもの」
くすくすと笑いながら哭鵺に架凛と呼ばれた女性は言いながら彼女も巻物を一つ手に取って読むが不満げにしながら戻す。
「お前なぁ……地獄の女王だって自覚を持てよ……」
「でも、哭鵺くんが閻魔大王の仕事引き受けてくれたじゃない? 私の夫として」
「あれは無理やりだっただろ。 弟の方だって引いてたろうが……閻魔大王様だって……」
「今はあなたが閻魔大王なのよ? 結婚したんだから。 お父さんは早々と変わりたかったんだもの」
ため息をつきながら架凛との会話を続ける。
彼の妻、閻魔架凛は人差し指を立ててウィンクをする様子にさらに深いため息をついた哭鵺は内心うなだれていた。
「だからって、仕事を放りだすのはよくねぇって言ってんだろ」
彼女は地獄の裁判を務める閻魔の女王であり、そして仕事を投げ捨てて現世で買い物やらをするサボり魔だった。
今日こそは捕まえると思ったのか腕を掴もうと手を伸ばす前に架凛が哭鵺の手首を掴む。
「えぇ、だからしばらく哭鵺くんには休暇をあげちゃうわ♪」
「はぁ?!」
「門番くんにお願いしてあるから大丈夫よ、しばらく帰ってこれないように設定してあるけど。 それ以外は哭鵺くんはなんでもできるようにしてあるのよ? チート能力っていうのかしら? まぁ、哭鵺くんならきっと大丈夫よ」
唐突な架凛の言葉に驚きながら彼は資料室から連れ出されていき、彼女は彼女で楽しそうにしながら何かを言っているが、哭鵺にとってはそんなことよりも引きずられていく自分に驚いていた。
必死に抵抗しているのにそれをものともしない架凛に引きずられてついたのは大きな扉の前。
嫌な予感がすると思っている哭鵺を他所に扉が開けば風が吹き、緑の葉っぱの香りや人々の声が聞こえてくるが扉の先は真っ暗闇だった。
けれど、この先はきっと自分が知ってる現世じゃないという認識が哭鵺にはあったが、彼女にその扉を開けてどうするつもりだと言いかけた瞬間だった。
「えっ……?」
架凛が満面の笑みを浮かべて哭鵺の手首を掴んだまま、砲丸投げの要領で彼女は哭鵺だけを扉の中へと放り込む。
目を丸くして暗闇の中に沈んでいく哭鵺は慌てて架凛の手を掴もうとするが彼女は手を引っ込めてしまう。
「楽しんでね」
そう言って架凛に扉を閉められると哭鵺は後ろに引っ張られる力に抗えずに舌打ちをしながら目を瞑る。
風の音とにぎやかな人の声、そしてこれはやばいと危機感を感じた哭鵺は目を開けて落下していく自分の身体をくるりと回転させ、指先で円を描けば落ちる速度が緩やかになっていき、右足を前に出してまるで空中を歩いていくように静かに地面へと着地する。
そして現在に至る。
大きくため息を再度ついた哭鵺は服の袖などを調べればある程度の金額が入っている財布があり、一文無しのまま放り出されたわけではないのかと呆れた顔をしながら何処か泊まれる場所はないかと探す。
「……しばらく帰れないって言ってたよなあいつ。 それ以外は使えるって……魔法つーか、翻訳もできるんなら会話もできるんだろうけど……金は無限にあるわけじゃないならいったん仕事探して戻る方法でも探すか……」
街中を目立たないようにと歩きながら、街の人々の姿を見て冒険ギルドが存在するはずだとそれらしきところへと向かうことにした。
なのに、どうして……。
「こんなことになってんだよ……」
ショート髪だが少し長いはねっ毛がある黒髪、目が悪いのか細い黒ぶち眼鏡に黒い瞳、黒を基調とした赤い帯の和服姿で草履を履いて道端の人に邪魔にならないところで壁によりかかって頭を抱える男が一人いた。
彼の名は閻魔哭鵺。
街並みを見渡せば歩く人々の中にエルフや狼など様々な種族が歩いていた。
「まさか、異世界に飛ばされるとは……」
街中には馬車も走っているのを見送りながら、自分がいる場所は異世界と認識するには十分だった。
彼は地獄の閻魔大王、死後の世界である地獄の住民であった。
哭鵺がなぜ地獄ではないところに来たのかは数分前に遡る。
「哭鵺くん、お休みしないの?」
ウェーブがかかった赤い髪、緋色の瞳にスタイル抜群の豊満な胸を強調した白い肩紐ワンピースを着た女性が哭鵺に話しかける。
「架凛、お前がサボるたびに俺の休みは減るんだよ。 仮にもお前、此処の女王様だろ?」
巻物を手に取って内容を読みながら質問に答える。
「だって、父の仕事なんて飽きてしまうわ。 現世にはとっても楽しいことがいっぱいあるもの」
くすくすと笑いながら哭鵺に架凛と呼ばれた女性は言いながら彼女も巻物を一つ手に取って読むが不満げにしながら戻す。
「お前なぁ……地獄の女王だって自覚を持てよ……」
「でも、哭鵺くんが閻魔大王の仕事引き受けてくれたじゃない? 私の夫として」
「あれは無理やりだっただろ。 弟の方だって引いてたろうが……閻魔大王様だって……」
「今はあなたが閻魔大王なのよ? 結婚したんだから。 お父さんは早々と変わりたかったんだもの」
ため息をつきながら架凛との会話を続ける。
彼の妻、閻魔架凛は人差し指を立ててウィンクをする様子にさらに深いため息をついた哭鵺は内心うなだれていた。
「だからって、仕事を放りだすのはよくねぇって言ってんだろ」
彼女は地獄の裁判を務める閻魔の女王であり、そして仕事を投げ捨てて現世で買い物やらをするサボり魔だった。
今日こそは捕まえると思ったのか腕を掴もうと手を伸ばす前に架凛が哭鵺の手首を掴む。
「えぇ、だからしばらく哭鵺くんには休暇をあげちゃうわ♪」
「はぁ?!」
「門番くんにお願いしてあるから大丈夫よ、しばらく帰ってこれないように設定してあるけど。 それ以外は哭鵺くんはなんでもできるようにしてあるのよ? チート能力っていうのかしら? まぁ、哭鵺くんならきっと大丈夫よ」
唐突な架凛の言葉に驚きながら彼は資料室から連れ出されていき、彼女は彼女で楽しそうにしながら何かを言っているが、哭鵺にとってはそんなことよりも引きずられていく自分に驚いていた。
必死に抵抗しているのにそれをものともしない架凛に引きずられてついたのは大きな扉の前。
嫌な予感がすると思っている哭鵺を他所に扉が開けば風が吹き、緑の葉っぱの香りや人々の声が聞こえてくるが扉の先は真っ暗闇だった。
けれど、この先はきっと自分が知ってる現世じゃないという認識が哭鵺にはあったが、彼女にその扉を開けてどうするつもりだと言いかけた瞬間だった。
「えっ……?」
架凛が満面の笑みを浮かべて哭鵺の手首を掴んだまま、砲丸投げの要領で彼女は哭鵺だけを扉の中へと放り込む。
目を丸くして暗闇の中に沈んでいく哭鵺は慌てて架凛の手を掴もうとするが彼女は手を引っ込めてしまう。
「楽しんでね」
そう言って架凛に扉を閉められると哭鵺は後ろに引っ張られる力に抗えずに舌打ちをしながら目を瞑る。
風の音とにぎやかな人の声、そしてこれはやばいと危機感を感じた哭鵺は目を開けて落下していく自分の身体をくるりと回転させ、指先で円を描けば落ちる速度が緩やかになっていき、右足を前に出してまるで空中を歩いていくように静かに地面へと着地する。
そして現在に至る。
大きくため息を再度ついた哭鵺は服の袖などを調べればある程度の金額が入っている財布があり、一文無しのまま放り出されたわけではないのかと呆れた顔をしながら何処か泊まれる場所はないかと探す。
「……しばらく帰れないって言ってたよなあいつ。 それ以外は使えるって……魔法つーか、翻訳もできるんなら会話もできるんだろうけど……金は無限にあるわけじゃないならいったん仕事探して戻る方法でも探すか……」
街中を目立たないようにと歩きながら、街の人々の姿を見て冒険ギルドが存在するはずだとそれらしきところへと向かうことにした。
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