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第71話 ご一行様来ちゃいましたけど!?
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『看板ゴブリン』たちが看板を嬉々として抜きながら、草原の果てまで消えた頃。
その仕事ぶりを見守っていた俺と『地獄骸』がそろそろ暗黒城に戻ろうかと思った時、『地獄骸』が地平線の彼方に何かを発見したようで、俺を引き止めた。
「召喚主……申し上げにくいのですが、あれをご覧ください」
「……ちょっと待て。それっていい知らせ? 悪い知らせ?」
俺は『地獄骸』の指さす方向を見ず、彼と向き合ったまま問いかける。
「よ、良くはないでしょうな……はは」
普段、冷静な『地獄骸』が思わず乾いた笑いをもらした。
明らかに異常事態だ。そして、なんとなくの予想がついているところがさらに嫌だ。
「いいか『地獄骸』、俺は今から振り返る」
「召喚主、お気を確かに頑張ってください」
『地獄骸』の励ましを受けながら、俺は意を決して『地獄骸』の六本の腕が指す方向へと視線を向けた。
地平線の向こう。うっすらと見えるのは人影。
しかし、その数は一つではない。十、二十、いや五十さえ超えるかもしれない。
「おい……『地獄骸』……あれってもしかして……」
「はい、残念ながら……」
「やっぱりそうだよな……」
俺は一度俯き、現実をなんとか受け止め、もう一度、視線を上げる。
そこにはさっきよりも少しだけ大きくなった人影の集団。
彼らはこっちに向かってきているが、敵意は感じない。
むしろ、そこにあるのは高揚と好奇心、そして大きな期待である。
そう、あの集団はおそらく――
「ご一行様だ……!」
暗黒城観光ツアーご一行様である。
遅かった。レーナの思惑を潰す前に、彼女の計画は果たされてしまったのだ。
「どうすんだ、『地獄骸』! ご一行様来ちゃってるじゃん!?」
「わ、私に言われましても……早くお土産品を作らせた方が良いのでは? としか……」
「いやいやいやいや、通すのか!? 城の中に!? 敵の刺客とか絶対紛れてるぞ、あれ!」
「ですが、暗黒城の門前でお引き取り願っては、召喚主の評判はガタ落ちになってしまうでしょう。形だけでも歓迎し、速やかに帰って頂くのがよろしいかと」
「マジか~~。マジで暗黒城観光地化しなきゃダメなのか~~!」
「見てください、召喚主。あのご一行様の笑顔を。ギルダム独立自治区の守護者である召喚主の顔を一目見ようと期待している眼差しを……」
「うっ……!」
確かに賑やかで楽しそうなご一行様である。先程は見えなかったが、後方には荷馬車もいくつかあり、護衛の冒険者風の人間たちもいるようで、本格的なキャラバンを形成して向かってきている。
それなりに準備が大変だっただろうことは想像がつく。
「くそ……暗黒城に戻るぞ! 『地獄骸』!」
「結局、どうなさるおつもりで?」
そう問われ、俺は覚悟を決めて宣言した。
「――暗黒城をさらに改築して、観光地として盛大にもてなす!」
その仕事ぶりを見守っていた俺と『地獄骸』がそろそろ暗黒城に戻ろうかと思った時、『地獄骸』が地平線の彼方に何かを発見したようで、俺を引き止めた。
「召喚主……申し上げにくいのですが、あれをご覧ください」
「……ちょっと待て。それっていい知らせ? 悪い知らせ?」
俺は『地獄骸』の指さす方向を見ず、彼と向き合ったまま問いかける。
「よ、良くはないでしょうな……はは」
普段、冷静な『地獄骸』が思わず乾いた笑いをもらした。
明らかに異常事態だ。そして、なんとなくの予想がついているところがさらに嫌だ。
「いいか『地獄骸』、俺は今から振り返る」
「召喚主、お気を確かに頑張ってください」
『地獄骸』の励ましを受けながら、俺は意を決して『地獄骸』の六本の腕が指す方向へと視線を向けた。
地平線の向こう。うっすらと見えるのは人影。
しかし、その数は一つではない。十、二十、いや五十さえ超えるかもしれない。
「おい……『地獄骸』……あれってもしかして……」
「はい、残念ながら……」
「やっぱりそうだよな……」
俺は一度俯き、現実をなんとか受け止め、もう一度、視線を上げる。
そこにはさっきよりも少しだけ大きくなった人影の集団。
彼らはこっちに向かってきているが、敵意は感じない。
むしろ、そこにあるのは高揚と好奇心、そして大きな期待である。
そう、あの集団はおそらく――
「ご一行様だ……!」
暗黒城観光ツアーご一行様である。
遅かった。レーナの思惑を潰す前に、彼女の計画は果たされてしまったのだ。
「どうすんだ、『地獄骸』! ご一行様来ちゃってるじゃん!?」
「わ、私に言われましても……早くお土産品を作らせた方が良いのでは? としか……」
「いやいやいやいや、通すのか!? 城の中に!? 敵の刺客とか絶対紛れてるぞ、あれ!」
「ですが、暗黒城の門前でお引き取り願っては、召喚主の評判はガタ落ちになってしまうでしょう。形だけでも歓迎し、速やかに帰って頂くのがよろしいかと」
「マジか~~。マジで暗黒城観光地化しなきゃダメなのか~~!」
「見てください、召喚主。あのご一行様の笑顔を。ギルダム独立自治区の守護者である召喚主の顔を一目見ようと期待している眼差しを……」
「うっ……!」
確かに賑やかで楽しそうなご一行様である。先程は見えなかったが、後方には荷馬車もいくつかあり、護衛の冒険者風の人間たちもいるようで、本格的なキャラバンを形成して向かってきている。
それなりに準備が大変だっただろうことは想像がつく。
「くそ……暗黒城に戻るぞ! 『地獄骸』!」
「結局、どうなさるおつもりで?」
そう問われ、俺は覚悟を決めて宣言した。
「――暗黒城をさらに改築して、観光地として盛大にもてなす!」
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